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アーティスト・樋口了一さんのこと。
Name: 杉山 | 2003. 7/23(WED) 23:19
突然ですが、ふと思いついた事がありまして書かせて頂きます。
テーマは、表題の通りアーティスト・樋口了一さんの事です。
お断りしておきますが、
「ドラバラ」とは一切まったく関係ありません。

それなのにしかも!えらく長いです。

大変申し訳ありませんが、
樋口さんに興味のある方に読んで頂ければ幸い、
という内容になっております。

ご了承の程よろしくお願い致します。

☆☆☆☆☆☆☆☆

皆様もご存知、
「水曜どうでしょう」のエンディングテーマ
「6分の1の夢旅人」でお馴染みの
シンガーソングライター・樋口了一さん。

彼との初めての出会いは、もう8年前に遡ります。

当時の僕は「モザイクな夜V3」という深夜番組で
チーフディレクターを担当しており、その中で
デビュー間もない彼の特集を組んだのがきっかけでした。

今では「モザイク」と言うとHなイメージで語られる事が
多いようですが(事実Hな企画が多かったから仕方ないか)、
実は意外と真面目な企画や音楽モノなどもあったのです。

現在ではドラバラのCDシリーズをプロデュースして頂いている
サッポロサウンズというAir−G系音楽制作会社の
プロデューサー・藤井要一さん。
(※何にでもすべて「OK」を出すので通称「オッケー藤井」と
 呼ばれています。)

彼とは当時から音楽モノの企画でアイデアを出し合いながら
テレビとラジオの連動企画などを実験的に展開していました。

そんな中、ある日藤井さんから
「最近、樋口了一っていう良いアーティスト見つけたんだけど
企画で乗りませんか?」という電話が入りました。

これまでもアーティストを見抜く力には長けていた藤井さん。
デビュー間もないブレイク前の大物アーティストに目をつけ、
番組を持たせたりパワープレイしていたという例は
挙げればきりがありません。
ミスチル、スピッツ、ルナシー・・・。

ですから僕には彼の目を絶対的に信じているところがあり
樋口さんの時も同様に、
「藤井さんが良いと思うならやりましょ」と二つ返事で
快諾したのでした。

そして早速、彼の初めてのワンマンライブを
東京・新宿のリキッドルームというライブハウスに
藤井さんと共に見に行ったのです。

その時のライブの印象そのものは、正直に言うと
「ん〜・・・微妙。」という感じでした(スンマセン)。

ただ、ライブ後に初めて会った印象が
「まったく飾らない好青年」。
僕より2つほど年上で、既に20代後半だった彼が
「遅すぎるデビュー」をしていたこともあるのかも知れません。

「彼にはとにかく頑張ってほしい」

という気持ちがとにかくまず先に立ったのです。

同世代。とても良く似ている音楽体験。酒飲みながらのバカ話。
そんな友達的な親近感が、まず僕の中に生まれたのです。

そしてそこで渡されたリリースされたばかりの3rdアルバム。

「GOGH(ゴッホ)」と名づけられたそのアルバムが
僕の「樋口了一さん」に対する思いを
決定的なものにしました。

名盤。

とにかく、素敵なアルバムなのです。

CDを聞いて感動するなんて、
ホントに何年ぶりだったでしょうか・・・。

このアルバムは、今でも僕の
「邦楽フェイバリット・トップ5」に入るぐらいの
お気に入りです。

かつてその昔、RCサクセションの名盤「シングルマン」が
“こんな素晴らしいアルバムを廃盤にしていてすみません”
というレコード会社の謝罪をジャケットの帯に掲載して
再発売された事がありました。

当時、東芝EMIから出された「GOGH」。
現在はどうやら廃盤になってしまったらしく
入手困難のようですが、できればいつの日か
「シングルマン」のように再発売されないかなと
密かに期待しています。

もし手に取る機会がありましたら
是非聴いてみて下さい。

さて、このアルバムですっかり感動してしまった僕は、
その場ですぐに藤井さんに電話。

「まるまる30分、樋口さんで行きましょう。」

こうして、世間ではまだ殆ど知る人のいない
「樋口了一」という名前が、
ある日の新聞のラテ欄に並んだのです。

「モザイクな夜V3・樋口了一特集!!」

今思うとかなり捨て身なラテです・・・。

「視聴率なんかいらねぇ!」という男の気概が
ビシビシと伝わってきます・・・。

内容は、「GOGH」収録曲から4曲を選び
全体を30分のストーリー仕立てにした
プロモーションビデオを番組で制作する、というものでした。

ストーリーと絵コンテを藤井さんが担当、
監督には「どうでしょうコスタリカの旅」で現地案内人として
登場した清水浩君が就きました。

脱線しますがこの清水君(我々はピロチと呼ぶ。ヒロシに由来)、
とにかく大変面白い人物です。

とにかく粘り屋。HTB一と言っても良いくらい。
例えば5分のVTR企画を担当したとします。

まず、人の何倍もの時間をかけて丹念にVTRを作ります。
(※通常5分であれば単純計算で編集時間10時間程度、と
見積ります。
ところがピロチ君は平気で7〜80時間、編集機と
格闘するのです。)

そして一旦出来上がったら、チェックのため
それを番組チーフ(当時で言えば僕)に見せます。

そこでOKなら良いのですが、誰が作っても
大概の場合一度や二度の「ダメ出し」は出るものです。

「ここ、もうちょっと間があった方がいいんじゃないかなぁ」
「ここ少し短くしようよ」・・・などなど。

普通は、指摘された所をちょこちょこっと直して
「OK」となる訳ですが、このピロチは違う。

頭からまったく「別物」に作り直して来るのです。

それも徹夜して、たった一晩で・・・。

もっとひどい時などは、「OK」が出てるのに
次の日にまた全然違う作品を持ってきたりもする・・・。

とにかく無類のこだわり派。
こんな人、なかなかいません。

そんな彼を我々は別名「陶芸家」と呼びます。

せっかく一度作ったものでも自分が気に入らなければ
「えぇ〜い!こんなモノ!!」と言って叩き壊して
また一から作り直す・・・、という姿がだぶるので。

私生活でもその「こだわりぶり」は徹底しています。

たとえば気に入った靴があるとします。
その当時ピロチはKスイスのスニーカーをいたく
気に入っていました。

ある日のこと。僕らが彼の部屋に遊びに行くと、玄関には
Kスイスの靴がずらりと並んでいるのです・・・。

「え・・・?」

そう、彼は一度気に入ったらもうそれしか履かないんです。

しかも、買った順に並んでいるのか、汚れ具合が
見事なグラデーションを作り出しているのです。

古いものから順に最新のものへと・・・。

色違いと言うわけでもなく、同じ色・デザインの靴が
5足・・・です。

あるいは、気に入ったブルーのダンガリーシャツがあるとします。

彼は毎日、同じ色・デザインのシャツを着て会社に来ます。

「ピロチィ、たまには着替えろよ」

「え?毎日着替えてますよ・・・。」

彼の部屋の物干し竿には、同じ色のダンガリーがビシッと
綺麗に並んでいるのです・・・。

すべてが同じです。

「堅あげポテト」にはまったら、部屋中に「堅あげポテト」の
空き袋が散乱しているのです・・・。

ピロチ、現在35歳。独身。
不思議な魅力溢れるこのこだわり男は、
今はHTB夕方の情報番組「イチオシ」を担当しています。

さてさて閑話休題。

そんな人物が30分のプロモーションビデオなんていう大作に
臨んでしまったのだからさぁ大変!

僕や企画者の藤井さんも毎晩のように徹夜に付き合わされ、
制作予定日数4日のところが実に倍の1週間強を要して
やっと完成に至ったのでした・・・。

ちなみにこのピロチ、実に温厚な人柄で腰も低い。
普段は「こんな僕が生まれてきちゃってすいません」的な、
逆に暴力にも似た腰の低さを最大の武器にする男です。

そんな彼だからこそ、この死の1週間は計り知れない
張り詰めた空気に満ち満ちた時間になってしまいました。

ある時は編集中、イスがあるのになぜか立って
ウロウロと歩きながら編集機に向かうピロチ。
「どしたの??」と聞くと、
「座ったら寝ちゃうんです。」
顔は、全然笑ってないんです・・・。

またある時は深夜の3時。
編集に集中してるかと思いきや、いきなり振り向いて
こちらをキッと睨みつけ、どうした??と思っていると
「ガム、噛んでもいいっすか?」

「あ、ガム・・・、どうぞどうぞ・・・。」

「ガム噛んでないと寝ちゃうんで。」

真っ赤な目は、こちらを睨んだまま・・・。

怖いったらありゃしない。
(ガムくらい聞かんでも食えよ・・・)なーんて思いつつも
そんな事言ったらどんな空気になっちゃうか分かりゃしない。


と、まぁこんな感じで。
なかなか味わう事のできない、
そして未だに忘れる事が出来ない苦労の日々が、
樋口さんと我々の出会いとなった訳です。

その後、ラジオ・テレビで様々な企画を展開し、
HTB/Air−Gと樋口さんの
末永いお付き合いが始まりました。

「モザイク」が様々な理由により「水どう」へと形を変えた後。
サイコロ3では、旅の始まりが樋口さんの家でした。

そしてどうでしょう班が長期ロケで留守の間、
鈴井さんのレギュラーラジオ番組「GOIS」で
ピンチヒッターDJとして番組を守ったのも
樋口さんでした。

この応援DJをしていた時、
旅に出ている4人に向けた応援歌として
樋口さんが作って下さったのが
「元祖・6分の一の夢旅人」でした。

その後、樋口さんは作家(ソングライター)として
売れっ子になっていきました。

SMAP、TOKIO、V6などのジャニーズ系をはじめ
沢田研二さんや織田裕二さんなど様々なアーティストに
曲の提供をしています。

僕らも、知り合いが活躍する姿を嬉しく頼もしく
遠い北の空から見つめておりました。

そしてもうひとつ、樋口さんに関する忘れられない出来事が
あります。

これも7年程前の事になりますが、
鈴井さんのラジオ番組「GOIS」の中で、
リスナーから寄せられたエピソードを元に
樋口さんが曲を作り、鈴井さんがお芝居を作る、という
企画がありました。

樋口さんが作った曲は「Words Of Life」
というタイトルでプレゼントCDとなり、
更に小劇場マリアテアトロ(当時)で樋口さんのライブと
鈴井さんの書き下ろしのお芝居を上演する、という企画でした。

当時鈴井さんは人気劇団オーパーツを主宰、
札幌では右に出る者もないNo.1の動員力を誇っていました。

ですからまだ「水どう」は生まれておらず
鈴井さんの知名度も今ほどではなかったにせよ、
当時でもかなり話題となるはずのイベントでした。

ところが、告知がうまく徹底されなかった事が大きな原因となり
無料イベントにもかかわらず訪れたお客さんは50人そこそこ、
という残念な結果に終ってしまったのです・・・。

終演後のスタッフの顔には、お互いの労をねぎらいながらも
作り笑いしか浮かびません。

その中でも、鈴井さんの悔しそうな表情は、
今でも鮮明に僕の目に焼き付いています。

「いつか必ず、この借りを返してやる・・・。」

悔しさと怒りに満ちた目で、鈴井さんは
そう呟いたのです。


あれから7年。
時代も変わり、状況も変わりました。

あの頃からは考えられないような状況が、
我々の周りで一大ムーブメントとなって
巻き起こっているように思います。

でも、僕が今、鈴井さんや樋口さんを見ていて思うのは、
「この人たち、変わらないなぁ・・・」という事です。

これは決して、「進歩しない」という意味ではありません。

あの頃の悔しさや怒りが原点となり、今の進化した現状がある。
普通はそう考えます。

ところが、彼らは違うんです。
あの日あの時のままの彼らで、ずっと居続けているのです。

変わったのは、周りの目と数字上の年齢だけ。
何年経っても姿勢は、一向に変わらない。
勢いは、変わらない。
意欲も、変わらない。
落ち着こうとは、しない。

悔しさをバネに今を手に入れ、「ざまぁみろ」と言って
少しぐらい胡座かいてもいいんじゃないかと思うんです。
凡人の僕なんかは。

でも、違うんですねぇ。
彼らにはきっと、まだまだ上があるのでしょう。

あるいは、まだまだ走り続けたい先があるのでしょう。

だから、止まろうとはしないんです。

彼らとこうして付き合って来てしまった僕らも、
だから止まれないんですね、なかなか。

もう腹はくくっています。
彼らのスピードは速すぎて、僕なんかだと常に2〜3歩後ろを
走っている状態ですが・・・
なんとか離されずに何十歳になっても「ハァハァゼェゼェ」
くっ付いて行こうと思っている次第です。

さて、そんな上だか先だかを目指して走る男達の一人、
アーティスト・樋口了一さんが
実に7年ぶり(?くらいだろうか・・・)に
札幌のステージに立ちます。

ライブです。

「夢旅人2002」を引っさげての、凱旋ライブです。

あの日の悔しさをバネに、今日も走り続ける生の姿が、
そこにはあります。

7年前の借りを返せるだけのチケットが、売れたらしいです。

とりあえず(敢えてね。敢えて。)、心から嬉しいです。
ライブを見て下さる皆さん、本当に有難うございます。

HTB勢も大挙して応援に駆け付けようと思っています。

でも、もちろんこれが終わりじゃない。

ほんの途中。

でも、7年前よりは確実に大きくなった男の生き様。

そしてこれからも走り続けるであろう男の姿。

できるだけ多くの人に見てもらいたいと思います。

チケットが、まだ若干(ホントに若干ですが)
手に入るらしいです。
早い者勝ちだと思いますが。

今からでも見たくなった方、興味のある方がいらっしゃいましたら
是非今週末、ススキノのライブハウスへ足をお運び下さい。

心よりお待ちしております。

2003年7月26日(土) in 札幌
会 場 / KRAPS HALL 
      札幌市中央区南4条6丁目タイムズスクエア地下
開 場 / 17:30
開 演 / 18:00
料 金 / ¥3,000(税込み)
ローソンチケット Lコード 19611 
問い合わせ先:ユアソング 011−242−2200

長々と取りとめもない文章を読んで下さった方々
有難うございました。

注目の白取Dによる「裏話」も近日公開予定です。
お楽しみに!


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