- 透き通るほど白く長い麺、コシの強さとのど越しのよさが讃岐うどんだ。特有の風土で培われたうどん文化が根付く本場讃岐で、30年に渡り、冷凍うどんの開発を続ける者たちがいる。美味しさの陰に奮励する、その想いに魅せられた。
- 讃岐の風土がうみだす、コシとつやのうどん
- 瀬戸内海から吹き込む優しい潮風とゆるやかな山の稜線が美しく広がる讃岐平野。ご存知のとおり讃岐うどんの本場、四国香川県では、一人当たり一年間に食べるうどんの量が、200玉近いと言われるほど、日頃からよくうどん食べている。昼食やおやつにうどんを食べる讃岐の人々、そうしたうどん文化が生活の中に根付いている理由には、讃岐の風土にこそある。
- おわんをふせたようななだらかな山と溜池が多い土地柄は、降水量が少なく温暖な気候といった特有の自然条件がうみ出したもの。その昔、讃岐の農作の歴史は、干ばつの歴史とも言われるほど厳しく、生産しにくかった米作に代わって、良質な小麦を収穫できる農地を作り上げたのが、その始まりとなる。小麦から作ることのできる手打ちうどんが「讃岐うどん」として米より主流となっていったのだ。また、一説には弘法大師が中国からうどん技術を広めたともいわれ、江戸時代には大衆化が一気に進み、現在に至っている。
- 時代を越え、食卓の変化や流通の発展で、手打ちうどんは減り、市場のニーズに答えるべく冷凍うどんは昭和30年頃から登場した。加ト吉の冷凍うどんもその頃から商品開発を続けている。いまでこそ、一般家庭でも手軽に食べられる「讃岐うどん」として浸透した加ト吉の冷凍うどんも、当時の市場では数々の苦難があった。今、我々が全国のどこにいても美味しい「讃岐うどん」が食べられるのは、開発者たちの熱い想いと挑戦があったからだ。
- 本場讃岐の名に恥じない、冷凍うどんへの挑戦
- 讃岐の風土で培われた、うどんの美味さを一人でも多くの人に食べさせたいという想いから、カトキチの冷凍うどん開発は始まった。そこには、本場讃岐うどんの純粋なうまさを追求し、挑戦し続けた先人の辛苦の結晶があり、その意志が今に受け継がれているから。現在、商品統括部商品開発チームで冷凍うどんの開発に力を注ぐ樋口俊彦さんをはじめチームメンバーは、開発の現場をこう語る。
- 商品開発チーム「近年の凍結技術(瞬間冷却)の向上もあるが、それ以上に、うまい冷凍うどんを作るための試作の繰り返し、製造現場の確立、販売経路の開拓、メニュー提案のすべてが連動しなくてはならない。冷凍うどんの開発に携わる技術者をはじめ、それを販売するセールスに至るまで、それぞれの立場で試行錯誤を重ねたんだ」
- 現在のように、冷凍うどんが市場に出回るまでには数々の尽力があった。「実験室段階での商品試作は成功したものの、いざ生産ラインでの製造になると、冷凍段階でコシを失ったり、だんごの様になったり…失敗はたくさんあったよ。それでも冷凍、解凍という大前提をもとに、小麦粉、塩、水の原料配合から見直し、捏ね方も改善、ゆで時間、凍結、その製法すべてが冷凍うどんにベストなものへ改良し続けたんだ。地元で愛される讃岐うどんと自分達がつくる冷凍うどんを何度も食べ比べてね」
- また、1日50万食の冷凍うどんを生産する加ト吉中央工場工場長の大西久雄さんは、冷凍うどんの製造現場をこう語る。「冷凍うどんの製造工程は、原料粉(小麦粉)・加水(塩水)・ミキシング→麺帯→圧延→麺帯カット→ゆで→凍結→包装。
- その間に、きん計、X線確認、目視チェックがあり、最高水準品質管理体制の基で製造が行われている。うどんの生地作りの技術改善、特に真空ミキサーや連動ミキサーといった技術開発は、讃岐うどんらしいコシを再現できたんだ。それに、これまで以上の生産量を正確かつ可能にもね」打ったうどんをすぐに茹で上げた、一番、美味しい状態を急速凍結する冷凍うどんにこそ、讃岐うどんの美味しさは実現できる。「茹で上げ直後のうどんは、表面の水分含量が80%前後なのに対して、中心部は約50%前後と水分勾配があり、コシがある。しかし、時間が経つほど水分に均一化が進んで、コシのないうどんになるんだ。だから一番美味しい茹で上げのその状態を瞬間冷却し冷凍の状態で保存する。茹で上げ状態のまま凍らせることで、解凍した時、うどんはまた茹で上げの状態に戻れる。うどんの特性を冷凍して生かしているかんじかな」
- 開発で繰り返えされた小さなマイナーチェンジが、こうして製造現場でベストな形になっていく。「讃岐うどん発祥の地でこそ実現できる本物の味にこだわりたい。そして、美味しい讃岐うどんをいつでも手軽に食べてもらえるような冷凍うどんでありたい」と語る彼らの言葉は、本場讃岐の名に恥じない冷凍うどん作りに挑戦し続ける想いなのかもしれない。