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理想はリバプール…縦に速い攻撃は「形」見せるも、生かせなかった「5人交代制」【名古屋グランパス連載(中)】

2020年12月23日 06時00分

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今季9得点8アシストと急成長を果たしたマテウス

今季9得点8アシストと急成長を果たしたマテウス

グランパスにとって理想的と言える得点は、11月21日の湘南戦(豊田ス)。後半11分、ピッチ中央でFWシャビエルの圧力を受けた湘南の選手が、苦し紛れに近くの味方へパスを送る。そこを獲物を狩るように「狙っていた」のがMF稲垣。受け手の後ろからボールを奪うと、一気にゴール前へ。最後はFWマテウスの左クロスを、シャビエルがボレーで決めた。
 奪ってから約10秒のカウンターで敵陣を陥れた。稲垣は「スプリントをかけるFWがいたことで、パスをカットできた」とシャビエルに感謝。「守備からの攻撃という一連の流れがよかった」と手応えを口にした。
 開幕前、フィッカデンティ監督が理想に掲げたのはリバプール(イングランド)のような前からプレスをかけ、縦に速く攻めるスタイルだ。1トップに金崎らをターゲットとして配置し、機動力のあるサイドMFを生かすため、布陣は4―2―3―1を採用。結果、ボール奪取から得点までの平均時間が昨季に比べ約6秒短縮されるなど、一定の「形」は見せた。
 昨季は出番に恵まれなかったマテウスが、9得点8アシスト。うれしい急成長の一方、誤算も多い1年だった。今季の戦いに大きな影響を与えたのが特例の「5人交代制」。しかし、グランパスの交代数は平均3・35人でリーグ最少。攻撃の停滞ムードを変える手札は乏しく、途中出場による得点は川崎の26に対してわずか3にすぎない。
 シーズン終盤は金崎と山崎が負傷し、1トップが不在となる不運もあった。アジア・チャンピオンズリーグなどに向け、選手層の拡大が求められる。最終節後、指揮官は「単純に数を増やさないと、試合数をこなせない」と訴えた。
 今季リーグ最少の失点数だった堅守はチームにとって最大の武器。しかし、得失点差はグランパスの17に対し、優勝した川崎は57と圧倒されており、来季の優勝に向けて攻撃力の強化が不可欠となる。MF阿部は「毎試合掲げるテーマとして、複数得点は絶対に必要」と語る。9度の「ウノゼロ(1―0)」による勝利は飛躍の証し。来季はウノゼロを超えて栄冠をつかむ。

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