写真●東京大学先端科学技術研究センターの中邑賢龍教授
写真●東京大学先端科学技術研究センターの中邑賢龍教授
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「発達障碍(がい)の子供は全国の小中学校に68万人いる。テクノロジは彼らを支援できるはずだ」。東京大学先端科学技術研究センターの中邑賢龍教授はこう話す。同教授の研究グループとソフトバンクモバイルは、障碍を持つ子供の学習を支援する「あきちゃんの魔法のポケットプロジェクト」を2009年6月30日に開始した。

 プロジェクト名にある「あきちゃん」とは、音声でのコミュニケーションを苦手とする実在の人物。対面よりも、携帯電話を使ってメールをやり取りするほうがスムーズにコミュニケーションを図れる。この「あきちゃん」のように発達障碍を持つ子供や自閉症、知的障碍、肢体障碍をもつ子供にとって、「携帯電話はまさに、魔法のポケット」なのだという。

 たとえば書字障碍を持つ子供にとっては、文章を読むことはできても、ペンで時を書くことは難しい。「障碍のために学校の学習についてこれず、自信を失い、将来に絶望してしまう子供が少なくない」(中邑教授)という。

 携帯電話のメモ機能を使えば、書字障碍の子供も比較的楽に、漢字交じりの文章が書けるという。「録音機能やタイマー機能、辞書機能など、携帯電話にはたくさんの機能がある。技術を利用すれば彼らの学習機会は大きく広がる」(中邑教授)。

 同プロジェクトでは携帯電話34台を、北海道、和歌山県、香川県、愛媛県、山口県の障碍者施設学校に配布。9月末まで利用してもらい、その活用事例を、子供の障碍別、携帯電話の機能別にまとめて公表する。「将来的には障碍を持つ子供たちも、携帯電話を使いながら大学受験が可能になるようにしたい」と中邑教授は話す。

 ソフトバンクモバイルは携帯電話を提供する。内訳は、iPhoneが20台、Windows Mobile搭載スマートフォンが4台、それ以外の携帯電話が10台である。