高級ピアノ・スタインウェイの身売り先、別ファンドに
高級ピアノメーカー「スタインウェイ・アンド・サンズ」を傘下に持つ総合楽器製造会社、米スタインウェイ・ミュージカル・インスツルメンツは14日、米著名投資家ジョン・ポールソン氏のファンドに総額約5億1200万ドル(約500億円)で会社を売却すると発表した。
スタインウェイは、1853年にドイツ移民の家具職人がニューヨークで創立した老舗ピアノ企業。ドイツのベヒシュタイン、ヤマハ傘下のオーストリアのベーゼンドルファーと並ぶ世界の三大ブランドとされる。
ビリー・ジョエルやハリー・コニック・ジュニアなど愛用する有名な音楽家は多い。日本でのグランドピアノの中心価格帯は1千万円前後。傘下にはピアノ以外にトランペットやサックスなどの楽器ブランドが名を連ねる。
スタインウェイは7月に別のファンドへの売却を決めていたが、ポールソン氏側の提案額が上回ったために売却先を変更した。同氏のファンドは、スタインウェイ株1株あたり現金40ドルを株主に払う。先に買収提案していたコールバーグ・アンド・カンパニーの案は、1株あたり35ドルだった。
ポールソン氏は買収理由について「創業160年で培った製品の質と職人技は、今後、業績が伸びる基盤」と説明。手続きは9月下旬の完了を目指す。その後、同社は非上場企業となる。
楽器業界は売上高を継続的に伸ばすのが難しい状況にある。同氏は買収による非上場化で、既存株主の圧力を避けて大胆な経営改革に踏み切るとみられる。
(ニューヨーク=清水石珠実)