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NEJM誌から
4価HPVワクチンは男性同性愛者の肛門上皮内腫瘍も予防

 子宮頸癌の予防に用いられている4価のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを男性同性愛者に接種すると、ワクチンがカバーしている4タイプのHPVの感染に関連する肛門上皮内腫瘍のリスクが有意に低下することが、米California大学San Francisco校のJoel M. Palefsky氏らが行った無作為化試験で明らかになった。ワクチンの有効率は、intention-to-treat分析で50.3%、per-protocol分析では77.5%だった。論文は、NEJM誌2011年10月27日号に掲載された。

 肛門癌の罹患率は男女ともに上昇しているが、特に男性同性愛者で顕著だ。肛門癌の発生には、子宮頸癌と同様にHPV(主にHPV16型と18型)の感染が関係し、その場合には異型度が高い(グレード2または3)上皮内腫瘍を経て癌になることが知られている。

 著者らは、男性同性愛者を対象に、HPV-6、11、16、18型を標的とする4価のHPVワクチンの安全性と、感染に関係する肛門上皮内腫瘍と肛門癌の予防における有効性を調べた。

 04年9月3日から08年8月29日まで行われた大規模な二重盲検試験のサブスタディとして、7カ国(オーストラリア、ブラジル、カナダ、クロアチア、ドイツ、スペイン、米国)で16~26歳の健康な男性同性愛者602人を登録、無作為にワクチン(Merck社の「ガーダシル」)または偽薬に割り付けて、1日目と3カ月後、6カ月後に計3回接種した。組み込み条件は、それまでの性交のパートナーの数が5人以下、過去1年間に男性間の肛門性交または口腔性交があった、などとした。

 有効性の主要評価指標は、ワクチンがカバーする4つの型のHPVの感染に関連する肛門上皮内腫瘍または肛門癌とし、intention-to-treat分析とper-protocol分析を行った。2次評価指標は、4つの型のHPVの持続感染(半年以上離れた2回以上の検査で、同型のHPVが連続して肛門スワブまたは生検標本から見付かった場合と定義)に設定。有害事象発生率についても評価した。

 Per-protocol集団は、(1)初回接種時に4つの型のHPVに感染していない(血清反応、肛門スワブと生検標本のHPV DNAがいずれも陰性)(2)4つの型のHPV陰性の状態が登録の7カ月後まで持続(3)3回の接種を完了―という条件を満たした人々とした。この集団を対象に、感染の有無の評価を7カ月時に開始した。

 Intention-to-treat集団は、ベースラインの4つの型のHPV感染の有無にかかわらず、割り付けられた治療を1回以上受けた人々とした。感染の有無の評価は1日目から行った。

 登録された患者のうち、299人がワクチン、299人が偽薬の接種を受けた。432人(71.8%)が36カ月間の追跡を完了した。Per-protocol集団(条件を満たしたワクチン接種者194人と偽薬接種者208人)については7カ月時点から平均2.2年追跡することができた。

 ベースラインで165人(27.4%)が、HPV-6型またはHPV-11型について血清反応陽性またはHPV DNA陽性を示した。同様に、99人(16.4%)がHPV-16型について、68人(11.3%)がHPV-18型について、血清反応陽性またはHPV DNA陽性を示した。

 追跡期間中に肛門癌と診断された患者はいなかった。

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