TPP交渉、関税撤廃の決着に時間 シンガポール会合閉幕
【シンガポール=柳迫勇人】米国など9カ国がシンガポールで開いていた環太平洋経済連携協定(TPP)の第6回拡大交渉会合は1日、6日間の協議を終え閉幕した。今会合では関税の取り扱いを含む市場アクセスなど、ほとんどの分野で交渉のたたき台となる草案が出そろった。ただ、関税撤廃などでは意見の隔たりも残っており、決着にはなお時間がかかりそうだ。
1日の記者会見ではホスト国シンガポールのウン首席交渉官が「交渉の着実な進展があった」と説明した。モノやサービス、投資、政府調達の市場開放について各国が意見を出し合い、協定の法的文書を巡る議論が本格化した。
ただ、米国のワイゼル首席交渉官は「いくつかの非常に敏感な問題では合意に至っておらず、いくらか時間がかかる」と述べ、砂糖や乳製品の市場開放を巡る交渉が難航していると示唆した。一方、米国への乳製品輸出拡大をめざすニュージーランドのシンクレア首席交渉官は「関税撤廃の例外は認めない」と改めて強調した。
今回の会合ではまた、中小企業の貿易促進や規制の調和、供給チェーン効率化など「横断的事項」について新たに作業部会を立ち上げた。
日本は東日本大震災の対応を優先するため、6月メドとしていたTPP参加是非の結論を先送りした。シンクレア交渉官は日本の対応に理解を示し「時間がたてば日本がTPP問題に取り組めるようになると期待している」と述べた。
9カ国は今後、5月の米国でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合に合わせてTPPも協議する。事務方の交渉は6月(ベトナム)、9月(米国)、10月(ペルー)と残り3回。ワイゼル米首席交渉官は11月のAPEC首脳会議までにTPP交渉で「相当な進展」をめざすとしている。