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システム統合延期で他行が虎視眈々
みずほのジレンマ

みずほの林信秀新頭取 Photo:Jiji

 2016年春に予定されていたみずほ銀行の勘定系システム統合が、約1年延期されることが明らかになった。

 三井住友銀行は02年、三菱東京UFJ銀行は08年にシステム統合を終えている。だがみずほは第一勧銀、富士、興銀の三行統合が発表されてから15年経つのに、いまだ完全統合されていない。

 金融庁内部では「1年以上も前から『延期もやむなし』と予言する声が上がっていた」(金融庁幹部)という。

 なぜなら、「みずほはメガバンクの中で最も難易度が高く、コストも高い統合方式を選んだからだ」(同前)という。

 三菱東京UFJや三井住友は、どちらか一方のシステムにする『片寄せ』方式にした。だが、「みずほは三行のバランスに配慮しすぎた結果、現在稼働している2つのシステムを破棄して一から作り直している」(みずほ関係者)という。

 現在稼働しているのは旧第一勧銀と旧興銀のシステムだが、25年以上にわたり部分的に見直しながら利用してきたため、もはや限界だ。

「とくに国際部門は、数十年以上前の旧態依然とした紙や磁気テープのシステムがベース。他メガより2世代ぐらい遅れている」(金融関係者)

 システム統合延期の代償は大きい。数百億から1000億円規模のコストアップは避けられず、効率化も先送りされる。

「何より危険なのは、自行が抱えているリスクを瞬時に把握できないこと。そのため、収益力でも他二行に大きく水をあけられたままだ」(同前)

 そんなみずほに、4月から三井住友などが強烈な攻勢を掛けてくる。他行の狙いは、中小企業融資だ。

「三井住友は15年ぶりに国内営業体制を刷新する。4月から、中小企業のオーナーなどの事業承継や資産運用を専門とする拠点を100カ所強展開。それにあわせて本部行員を100人単位で現場に派遣している」(三井住友関係者)

 また、三菱東京UFJも、中小企業向け融資とリテールを強化する予定だ。

「みずほを支える顧客基盤が、他行の草刈り場になる可能性が高い。このままでは、みずほは3メガの一角から脱落しかねない」(前出・金融関係者)

 外からは他行の攻勢を受け、内にあってはシステム統合という難題を抱える。みずほの課題は深刻である。

森岡 英樹 (ジャーナリスト)

※この記事の公開期間は、2017年03月25日までです。

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2014年4月3日 55周年特大号
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