第42回 親子をつなぐカンボジア版お好み焼き
そういって、セレイさんがパテをひと切れくれた。塩がほんのりきいたシンプルな味で、コリコリとした食感が小気味いい。聞けば、豚肉のミンチに刻んだミミガーとキクラゲが入っているという。「昔、フランス領だった影響でカンボジアではパテをよく食べるんです。手軽に買えるし、日本でもアジアの食材店に置いてあります。でも日本だと1キロ3000円くらいするんです。だから自分でつくったそうです」と、カンナさんが言う。カンボジアは食事の価格が安いため基本的に外食が多く、海外にいる人のほうが料理をするそうだ。
「酒のつまみにぴったり」と言ったら、「このパテはノムパン・パッテェイに入れるんですよ」とセレイさん。同じフランス領だったベトナムでもよく食べられている、フランスパンのサンドイッチだ。セレイさんはパンに切り込みを入れてバターをたっぷり塗り、パテ、キュウリ、挽き肉、ニンジン・大根の和え物と、次々に具材を入れていく。味付けはカンボジアの魚醤、タァック・トレイと特製の出汁だそうだ。
「バンチャエウができるまで、先にこちらをどうぞ」と1つ渡してくれた。パテとバターのふくよかな味と、日本のナマスのように酢がきいた和え物のさっぱり感が絶妙なバランス。肉のうま味がたっぷりなのにしつこくないので、いくつでも食べられそうだ。これからの季節、ピクニックに持って行きたくなる。
「いま、カンボジアにはノムパン・パッテェイの専門店がたくさんあるんですよ。味付けや種類はさまざまですが、広い駐車場に店がぽつんとあって、車を停めると売り子さんが売りにくるんです。みんな、10個、20個とたくさん買う。田舎に帰る時には欠かせませんね」と、カンナさん。わかるなあ、ドライブにもぴったりだもの。
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