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【伊原剛志】年商10億円のお好み焼きチェーン経営!これも役者のため

2012.07.20


伊原剛志【拡大】

 21日公開のブラジル映画「汚(けが)れた心」に主演。今年3月、南米ウルグアイで開催されたプンタデルエステ国際映画祭で、日本人初の主演男優賞を受賞した。硬軟自在の演技派は、国際俳優として大きな一歩を踏み出した。

 第二次大戦後、日本との国交が絶たれたブラジルで、日本の勝利を唱え続ける“勝ち組”の日本人たちが、敗戦を認識した同胞を国賊として粛清した実話の映画化。“勝ち組”の刺客に指名され、人生を狂わされていく主人公タカハシ役を、オーディションで勝ち取った。

 「約2カ月の全編ブラジルロケで、ブラジル人監督とスタッフたちと過ごしました。ブラジルの日本人の話をちゃんと撮る、というこの作品の全部にひかれました」

 大和魂と倫理観の間で葛藤し、心が悲鳴をあげていくタカハシを演じ、改めて人間とは何かを考えた。

 「何かに流され、とんでもないことをやってしまう。いろいろなことを背負うと、個人の感情を言えなくなる状況っていっぱいありますよね。最近のオウム関連事件の報道を見ても、そんなことを考えました。この映画には、現代に通じるノーと言えない人間の弱さがあると思います」

 海外作品への出演は3作目。世界への視野が広がったきっかけは、クリント・イーストウッド監督作「硫黄島からの手紙」(2006年)への出演だった。

 「今回の映画に出演させてもらったことで、どこの国に行っても大丈夫だという自信がつきました。映画を作ろうとする思いが、僕らの共通の言葉ですから。今はロスに家もあるので、まとまった時間ができると英語スクールや演技科目のある大学で学んでいます」

 役者を選んだのは、「束縛されることなく、自由に生きたい」という思いから。「いろいろな人生を演じられれば自由になれる」と高校2年のころに決意し、大阪の居酒屋でアルバイトをして上京資金を稼いだ。卒業後、貯めた約70万円と「食える役者になる」との目標、そして大きな不安を胸に、「新幹線って感じじゃないな」と、夜行列車で上京した。「若かったね」と照れ笑いで振り返る。

 千葉真一主宰のJAC(ジャパンアクションクラブ)の試験に合格して入団。1年後にはオーディションで舞台出演を勝ち取りデビュー。6年後にJACを卒業し、その後の活躍はご存じの通り。来年にはデビュー30年を迎えるが、上京時の気持ちは変わらない。

 「この30年間は、今後役者を続けていけるための基礎作りです。自分が完璧だと思ったことはないし、負けてばかりですよ」

 見た目通り、ストイックな人だ。

 「いや、仕事の時だけ。他ではルーズです。オフは何もしないし、ハハハ」

 俳優業の一方で、実業家としても知られている。1992年に自己資金で起業したお好み焼き店はチェーン展開に成功し、いまや年商約10億円。だが、それも役者の志を貫くためという。

 「お金のために役者をしなくていいようにしたかった。母親が飲食店をやっていたのを近くで見ていたし、居酒屋でのバイト経験も生かせていると思います」

 プライベートでは再婚しており3人の男児の父。「上の2人(前妻との間の息子)は離れて暮らしていますが、息子たちには『オヤジは何でこんなに人生を楽しそうに生きているんだろう?』と思わせる背中を見せられれば」という。

 役者を極める気持ちには一片の“汚れ”もない。飽くなき情熱があるだけだ。(ペン・斉藤蓮 カメラ・高橋朋彦)

 ■いはら・つよし 1963年11月6日生まれ、48歳。福岡県小倉市(現・北九州市)生まれの大阪府育ち。83年、「真夜中のパーティ」で舞台デビュー。翌年、「コータロー・まかりとおる!」で映画初出演。出演映画「BRAVE HEARTS 海猿」が現在公開中。

 92年、お好み焼き店「ごっつい」を起業し、現在23店舗を展開中。2006年、半生を赤裸々につづった自伝本「志して候う」(アメーバブックス)を出版し、話題に。私生活では01年に一般女性と再婚。

 映画「汚れた心」は、「善き人」(08年)などで世界的注目を集めるブラジル人若手監督、ヴィンセンテ・アモリンが映画化。出演はほかに常磐貴子、奥田瑛二ら。

 

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