ここからサイトの主なメニューです
原子力分野の人材育成について

平成19年2月
文部科学省
経済産業省

1. 大学等の現状
(1) 原子力関係の学部及び大学院の現状
近年、原子力分野においては、原子力産業の低迷職業・研究対象としての魅力が乏しいとのイメージから、進学・就職を希望する学生は減少傾向。

これを背景に、近年の学部及び大学院の改組・大括り化の動きの中で、従来の原子力学科・専攻は、他学科・専攻との統合や名称変更により、エネルギーや環境等より広い分野を扱う学科・専攻の一部へと改組され、例えば学部については、平成7年度の7学科から、平成17年度の1学科に減少。一方、原子力が教育課程に含まれる学生数で見れば、昭和50年代前半よりほぼ横ばいであるものの、学科・専攻の改組により原子力の専門科目が必修から外れるなど、原子力の体系的な専門教育のレベルは一般に低下。教授人材の関連他分野への流出も進展。

インターンシップや他大学・原子力機構等の設備における現場教育は、重要な専門教育カリキュラムであるとともに、原子力の研究や職業としての実態や魅力を知る上で極めて有効であるが、大学内の予算配分の減少に伴い、こうした教育が実施困難となっている状況。また、大学内の実験・研修設備の老朽化に伴って必要となる修理や更新も難しい状況。

このため、原子炉物理学、放射線安全学、核燃料サイクル工学等原子力特有の基礎分野に関する十分な専門知識を持ち、実習等を通じて実践的な技術・技能を習得した人材の育成が困難となった。

(2) 原子力を支える基盤技術分野の大学・大学院の状況
原子力プラントの開発・建設・運営には、原子力工学のみならず、機械・電気・材料・化学等多くの基盤技術分野の知見が不可欠。

技術的議論(安全規制の議論等)や、事業者における想定外の技術的問題(トラブル対応等)への対応においては、構造強度、材料強度、腐食・物性等幅広い基盤技術分野の大学研究者の参画が必要

しかしながら、こうした基盤分野は、原子力にとって致命的に重要であるにもかかわらず、極めて地味なことから、近年の大学法人化や競争的資金への依存の高まりに伴い、IT、ナノテク等の先端分野へ研究者が移行。このため、基盤分野の研究者の厚みの低下や大学における知見蓄積の希薄化が懸念されている状況。(例:溶接工学の講座は既に消滅。タービンを体系的に研究する研究者はほとんどいなくなっている。また、材料分野でも腐食分析は衰退し、ナノテク関係にシフトする傾向。)

(3) 高等専門学校の現状
原子力に関する知識及び技術・技能を有する高等専門学校の卒業生への期待は高いものの、現在、原子力の授業を行っている高等専門学校は極めて少ない。

2. 「原子力人材育成プログラム」の構築(平成19年度新規要求)

 以上の状況を踏まえ、大学・大学院等における原子力の人材育成の充実を図るため、文部科学省と経済産業省が連携し、「原子力人材育成プログラム」事業を平成19年度新規事業として要求
 なお、各大学・大学院等の特色や、学生の就職先として想定する産業のニーズ、地域の近隣産業・研究施設等のポテンシャル等により、人材育成のあり方は異なるため、提案公募方式により、事業趣旨にふさわしい提案を採択。

実施内容(文部科学省分)

 大学・高等専門学校における原子炉物理学、放射線安全学、核燃料サイクル工学等原子力特有の基礎分野における人材育成機能を強化するため、その研究・教育基盤の整備・充実を図ることを主眼として、以下の4つのプログラムを実施。

<期間>   平成19年度〜
<19年度政府原案>   1.5億円
<スキーム>   大学・大学院・高専に対する補助 (1)〜(3)
  民間団体等に対する委託 (4)
提案公募方式により採択先を決定

(1) 原子力研究基盤整備プログラム(3年間)
 大学院の原子力関係学部等における、ポテンシャルを活かした研究基盤整備に関する意欲的な取組みを支援。
(事業のイメージ)
  補助対象: 大学 5,000万円程度かける2校
教員による指導に必要な経費
原子力に関する共同研究の実施に必要な経費
教育研究スペースの確保に要する経費
教育研究支援職員の雇用等に要する経費
学科の運営 等

(2) 原子力研究促進プログラム(1年間)
 原子力関係専攻・学科等における、学生の創造性を活かした研究・研修活動の取組みを、講座などの小単位で支援。
(事業のイメージ)
  補助対象: 大学 250万円程度かける5校、高専 150万円程度かける4校
研究費補助
教育課程の一環としての原子力関連施設等での研修への補助 等

(3) 原子力教授人材充実プログラム(1年間)
 原子力関係専攻・学科における教授人材の質の向上や教授体制の強化を支援。
(事業のイメージ)
  補助対象: 200万円程度かける4校、高専100万円程度かける2校
教員の国内外での会合・関係機関への派遣への補助
外部からの講師招聘による教授体制の強化 等

(4) 原子力コアカリキュラム開発プログラム(3年間)
 原子力関係学科で採用されるべき標準的なカリキュラム及び教材を調査・開発。
(事業のイメージ)
  委託先: 民間団体等 1,700万円程度

実施内容(経済産業省分)

 学生に対し進路・職業としての原子力の魅力を伝えるとともに、原子力を支える基盤技術分野まで含めて、産業界のニーズに即したカリキュラムや研究等の充実を図ることを主眼として、以下の3つのプログラムを実施。

<期間>   平成19年度〜
<19年度政府原案>   2.6億円
<スキーム>   大学・大学院・高専に対する委託 (1)及び(2)
  大学・大学院に対する補助 (3)
提案公募方式により採択先を決定

(1) 大学・大学院等における原子力教育支援プログラム(3年間)
 大学、大学院、高専において、産業界等の外部の人材育成ニーズやポテンシャルも取り込みつつ、専攻や講座等の新設、既存専攻のカリキュラムの充実を図る取組を支援。
(事業のイメージ)
  委託先: 大学・大学院等 1,500万円程度かける5事業
炉物理などの原子力基礎教育、保全工学などの実践的講義等、新たなカリキュラムの実施に必要となる教材開発。
産業界や研究機関からの講師招聘

(2) チャレンジ原子力体感プログラム(3年間)
 大学、大学院、高専の学生が実習を通じて実践的な技術を習得するとともに、原子力産業や研究現場の実態と魅力を知る機会の充実を図るため、大学などの教育研究炉を活用した実践的な実習教育や、研究機関、学会、海外機関のプログラム等を活用したインターンシップ等への旅費を含めた参加費への支援。
(事業のイメージ)
  委託先: 大学・大学院等 900万円程度かける8事業
大学の教育研究炉、研究機関等の施設を用いた実地教育。
海外の原子力施設や国際機関等における実習制度を活用した、海外インターンシップ。

(3) 原子力の基盤技術分野強化プログラム(3年間程度)
 近年、研究活動や研究者の希薄化が懸念される、原子力を支える基盤技術分野(構造強度、材料強度、腐食・物性、溶接、熱・流体・振動、放射線安全)において、産業界の参画・ニーズ提示のもと大学で行われる研究プロジェクトに対し、提案公募方式により国が支援。
 これにより、大学において、材料の腐食特性データ等、原子力のプラント開発や信頼性確保に欠かせない基盤的な知見の充実を図るのみならず、産業界のニーズと大学の研究シーズのマッチングを通じ、基盤技術分野の研究活動の活性化や研究者の涵養にも資する。
(事業のイメージ)
  補助対象: 大学・大学院等 2,000万円程度かける5事業

(参考)原子力関係学部・大学院の新設の動き
原子力にかかわる学部、大学院は、全体として厳しい状況にある一方で、近年、原子力の研究開発拠点である福井県、茨城県等において、原子力教育の重要性が認識され、以下の原子力関係学部、大学院が新設されている。
1学部
福井工業大学(私立)原子力技術応用工学科
  (平成17年度設立、学部20名)
 原子力分野における、実務能力と工学倫理を備えた技術者の育成が目的。専門教育に加え、地域と原子力発電所の関係等、人間とエネルギーの関係を考察する教育を実施。
また、武蔵工業大学(私立)においても、原子力専門の学科の新設を予定。

2大学院
福井大学大学院工学研究科独立専攻 原子力エネルギー安全工学専攻
  (平成16年度設立、修士課程27名、博士課程12名)
 原子力以外の学部の卒業生も対象とし、幅広い素養を持つ技術者の育成が目的。専門教育に加え、原子力の安全や地域共生に関する教育を実施。

茨城大学大学院理工学研究科 応用粒子線科学専攻
  (平成16年度設立、修士課程25名、博士課程9名)
 中性子線をはじめとする放射線やレーザー等を利用して、タンパク質等の構造解析とその応用を中心とした教育・研究を推進。J-PARC(大強度陽子加速器研究施設、独立行政法人日本原子力研究開発機構にて現在建設中)等の近隣研究施設と連携。

東京大学大学院工学系研究科 原子力国際専攻
  (平成17年度設立、修士課程17名、博士課程8名)
 国際舞台で活躍できる、原子力分野の研究者の育成が目的。原子力のエネルギー利用に加え、原子力と社会の関係を考える社会工学や、放射線等を活用した医学物理についても教育・研究も実施。客員講座として独立行政法人日本原子力研究開発機構が協力。

東京大学大学院工学系研究科 原子力専攻(専門職大学院、1年制)
  (平成17年度設立、定員20名)
 原子力分野の専門技術者の育成が目的。原子力分野での就業経験のある社会人を主な対象とし、茨城県東海村において、理論教育及び原子炉運転実習を実施。客員講座として独立行政法人日本原子力研究開発機構が協力。平成17年度には、第1期生として15名(うち電力の現役社員が7名)に学位授与。
(注) この他、核燃料サイクル施設が立地する青森県の八戸工業大学において、平成17年度より原子力のカリキュラムが設けられているところ。



平成19年度「原子力人材育成プログラム」実施方針(PDF:146KB)
平成20年度「原子力人材育成プログラム」実施方針(PDF:184KB)

(お問い合わせ先)
文部科学省 研究開発局 原子力計画課
福井、前澤
(直通) 03-6734-4159
(FAX) 03-6734-4162
経済産業省 資源エネルギー庁 原子力政策課
横田、今井
(直通) 03-3501-1991
(FAX) 03-3580-8447

(研究開発局原子力計画課)


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ