北部3州の州都を占領、タリバンの進攻続く アフガニスタン
アフガニスタンの反政府組織タリバンは8日、北部3州の州都を占領した。6日以降にタリバンに制圧された州都はこれで5カ所となった。
8日に占領されたのは、クンドゥーズ州の州都クンドゥーズ、タハール州タールカーン、サーレポル州サーレポル。わずか数時間で次々と占領された。
特にクンドゥーズは、首都カブールを含む諸地域とのアクセスが良い立地で、タリバンにとって今年最大の戦果となった。
クンドゥーズ住民の1人は、市内の状況は「完全に混沌(こんとん)としている」と話した。
20年にわたり駐留していたアメリカ軍や外国部隊が撤退を開始して以降、タリバンは国内で急速な進攻を続けている。ここ数種間で地方の大部分を占領し、現在は主要都市を標的にしている。
アフガニスタン政府は、政府軍は主要施設を奪還するために戦っていると述べている。
戦闘は西部ヘラート州ヘラートやカンダハール州カンダハール、南部ヘルマンド州ラシュガル・ガーでも激化している。
クンドゥーズの重要性
クンドゥーズ占領はタリバンにとって、今年5月に進攻を開始して以降で最大の戦果だ。人口27万人のこの都市は、鉱山資源が豊富なアフガニスタン北部の玄関口として知られている。
また、首都カブールを含む大都市や、タジキスタンとの国境地域などと高速道路でつながっており、戦略上も重要な場所に位置している。
タジキスタン国境は、アフガニスタン産のアヘンやヘロインの密輸ルートになっており、中央アジアからゆくゆくは欧州にわたる。クンドゥーズを手に入れることは、この地域最大の麻薬密輸ルートを制圧したことになる。
さらにタリバンにとっては、2001年に政権を追われるまで北部の要衝だったクンドゥーズ占領は、象徴的な意味も大きい。タリバンは2015年と2016年にも同市を占領したが、いずれも長くは続かなかった。
家を追われ学校に避難
アフガニスタンでは今年に入り、数千人の市民が家を追われた。北東部のアサダバードでは、多くの子連れの家族が学校に避難している。
AFP通信の取材に応じたグル・ナアズさんは、「村にたくさん爆弾が落とされた。タリバンがやってきて何もかも壊した。私たちは無力で、家を出なければならなかった。子供も私たちも、ひどい状況の中で野宿をした」と語った。
別の住民は、「銃撃があって、7歳の娘が飛び出したままいなくなってしまった。生きているか死んでいるか分からない」と話した。
アメリカ軍は、タリバンの拠点への空爆を激化させており、アフガニスタン政府軍も、空爆でタリバン戦闘員に犠牲が出ているとしている。一方でタリバンは、空爆がラシュガル・ガーの病院や学校に当たったと発表。どちらの主張も、第三者による確認が取れていない。
在アフガニスタン米大使館は声明で、タリバンの「アフガニスタン諸都市に対する新たな攻撃」を非難。「支配を強制しようとする行為は受け入れられない」と述べた。
「タリバンは福祉や市民の権利を理不尽に踏みにじり、アフガニスタンの人道危機を悪化させている」
カブールで取材しているBBCニュースのカリル・ヌーリ記者は、外国部隊の完全撤退が迫る中、今後は戦場が大きく変わることが予想されると指摘。アフガン政府にとっては、軍備の整った35万人の政府軍が占領された地域を奪還できるかどうかの正念場だと述べた。
一方で、ドーハで行われている和平交渉は行き詰まっているものの、これが再開されれば、双方はより大きな権力を手に入れるために占領地域を拡大しようとするだろうと伝えた。
ポール・アダムズ外交担当編集委員は、政府軍の敗退が続き、英米政府が在留市民にアフガニスタン脱出を呼びかける現状は、アフガニスタンの「孤立」を招く危険な文脈を形成しかねないと解説。
しかし、現段階ではアメリカ軍による空爆も続いており、イギリス駐留軍も戦争を押しとどめる手立てを持っているはずだと、アダムズ記者は指摘している。