現在位置:asahi.com>ニュース特集>地球環境> 記事

市民も潤う太陽光発電 脱温暖化社会へ 欧州の挑戦・2

2007年05月11日16時32分

 緑がまぶしいドイツ・バイエルン州の農業地帯。15畳大の太陽光発電パネルが約1500台、見渡す限り続く。

写真かなたまで続く太陽光発電施設。パネルは太陽の動きに合わせて向きを変える=ドイツ・バイエルン州で、石井徹撮影

 設備の容量は1万2000キロワット。世界最大級だ。太陽の動きを追う可動式で、発電効率は据え付け式に比べて30%高い。約4000世帯分の電力をまかなえる。

 入り口の看板にはこう書かれている。「キョウトは実行可能です」。散歩に訪れていたユルゲン・スティールさんは「ドイツ人は自然エネルギーが好きだが、まだまだ少ない」と話した。

   *

 ドイツは05年、太陽光発電の設備量で日本を抜いて初めてトップとなった。ドイツの自然エネルギーの発電比率は11.8%。2010年の目標値12.5%は今年中に達成できる見通しだ。日本の14年度の目標1.63%とはけたが違う。

 急拡大を促したのが、00年に始まった「固定価格買い取り制度」。電力会社に、割高な価格で自然エネルギーを買い取るよう義務づけた。今年、太陽光発電を始めた人は、1キロワット時あたり約60円で20年間、買い取ってもらえる。逆ざやを埋めるのは、電力料金に約3%上乗せしてつくった「基金」で、消費者が負担する。

 長期にわたって政府に保証された割高な価格で電気を売れるので、安定した利益が見込める投資先として、個人の年金資金などが自然エネルギーに流れ込んだ。

 この太陽光発電所に出資したのも1000人以上の個人投資家で、高齢者が多い。ドイツでも高齢化が進み、年金は減らされる傾向にある。目減り分を自然エネルギーで埋め合わせようとする動きがあるのは、安全で確実な投資と思えばこそだ。

 06年初めには、日本人100人もこの発電所に1億円を出資した。日本では、電力会社が自主的に1キロワット時23円程度で買っている。だが、発電コストを下回り、投資先としてうまみがない。

 呼びかけた太陽光発電向け投資開発会社グリーンファンド(東京)の山内浩一社長は「自然エネルギーを普及させるためには、市民投資家がもうかる仕組みが必要だ」と話す。

 この固定価格買い取り制度を導入しているのはスペイン、フランス、デンマーク、韓国など約20カ国。その多くで自然エネルギー利用が大幅に伸びている。電力会社に自然エネルギー利用を義務づけるRPS制度をとる英国や日本よりおおむね成功している。

   *

 欧州連合(EU)は、2020年に自然エネルギーの利用割合を20%にすると決めた。欧州再生可能エネルギー評議会は、40年には世界のエネルギーの半分を自然エネルギーにすることが可能とするリポートを発表している。

 現在はほとんどゼロの太陽光発電も、約6%を占めるようになると予想している。いま世界の太陽電池の需要の半分以上は欧州とされる。シャープは2月、英国のウェールズ・レクサムにある組み立て工場の生産能力を2倍に増強した。

 世界の風力発電の設備量も06年、10年前の10倍の7390万キロワットに増えた。10年にはさらに倍以上の1億6000万キロワットに達するとみられ、うち半分以上は欧州が占める見通しだ。

 太陽光発電も風力発電も設備の供給が追いつかず、1年待ちや2年待ちはざらという。

 太陽電池の出荷量は住宅への設置補助が05年度で打ち切られて減り、風力も伸びていない日本とは対照的な光景が欧州には広がっている。

PR情報

このページのトップに戻る