子宮頸がんワクチン知って 勧奨中止6年、自治体危機感

 子宮頸(けい)がんを予防する「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン」について国の積極的な勧奨中止が続く中、ワクチン接種の存在すら知らない人も増え、将来的に患者が増えかねないという危機感が自治体で高まっている。HPVワクチン接種は公費で賄われる「定期接種」で、国は接種を進めたいのか進めたくないのか、態度が煮え切らない。一部自治体では事態打開のため、家庭に定期接種であることを通知する独自の動きも進んでいる。

 子宮頸がんは性交渉による感染が原因で女性が罹患(りかん)する。HPVワクチンは性交渉を始める前段階の接種で、より予防効果が期待できるとされ、国は平成22年度に公費助成を始め、25年4月には小学6年~高校1年相当の女子を対象に計3回行える定期接種とした。

 しかし、ワクチン接種者から体の痛みなどの「健康被害報告」が相次いだことから、同年6月には接種の積極的な勧奨を中止。健康被害との因果関係が認められていないため、定期接種という位置付けは変えていないが、実際に接種を行う現場の多くの自治体で、住民への案内を取りやめるなどの対応が続いている。

 これに対し、勧奨中止から6年が過ぎた今年7月、千葉県いすみ市が高1女子がいる保護者向けに独自の通知を発送。定期接種の対象であることや、年度内に3回の接種を終えるには、1回目を9月30日までに行う必要があると伝えた。他にも青森県八戸市は今年度、小6~高1女子がいる世帯に定期接種を知らせる文書などを配布。県レベルでも、岡山県がワクチンの有効性やリスクなどが書かれたリーフレットを学校を通じ、定期接種対象者らへ届ける意向を示す。

 背景にあるのは子宮頸がんに対する認識が薄くなることへの危機感。いすみ市は「接種の機会があるのを知らずに、時期を逃してしまうケースも考えられる」と説明する。

 勧奨中止後も接種案内を続ける自治体もあり、兵庫県姫路市では昨年度、147人が接種したという。厚生労働省は「自治体の判断」と静観姿勢だが、自治体側からは「接種をどうしていくか国は指針を示すべきだ」との声が出ている。

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