一般職の経験から痛感した「人間力」の大切さ 元プロ・啓明学園の芦沢監督歩んだ紆余曲折の道
啓明学園の芦沢真矢監督
2013年に始まった「学生野球資格回復制度」。プロ野球経験者が教員の実務経験がなくても、指導資格を取得できるようになった制度だが、スタートからこれまで多くの元プロ選手が学生野球の指導を行うようになってきた。
啓明学園の芦沢真矢監督も、「学生野球資格」を取得して高校野球の指導を行っている1人だ。芦沢監督の経歴は異色と言える。
山梨県の巨摩高からヤクルトスワローズに入団した芦沢監督は、30歳の時に現役を引退。その後は広島東洋カープで9年間コーチを務め、台湾のリーグでも3年間コーチを務めた。
帰国後は郷里の山梨で、産業廃棄物の処理センターで約4年間勤務したが、2005年に四国アイランドリーグの香川オリーブガイナーズ初代監督に就任し、その後独立リーグ2チームを渡り歩いた。2011年には横浜ベイスターズの一軍ブルペンコーチを務めて再びプロ野球界に復帰するも、退任後は工事現場での勤務を経験した。
その後、2014年に学生野球資格を取得した芦沢監督は、2015年に啓明学園の関係者に声を掛けられ、現在の啓明学園野球部監督へ就任に至った。まさに紆余曲折とも言える経歴を歩んできた芦沢監督だが、これまでの経験から指導を行う上で最も大切にしていることは「人間力」だと語る。
「大事なのは『人間力』しかないと思っています。野球が上手でも世の中では生きていけないのだから、『人間力』があれば生きていけますので、挨拶や人を思いやる心や、人の痛みがわかるだとか、そういうことが大事だと思います。」
芦沢監督が「人間力」の大切さを感じたのは、野球界を離れて一般の仕事に就いた時だと話す。「元プロ野球選手」という肩書きが何の役にも立たずに、肝心なのは「人間力」であることを痛感したという。
「ただ野球が上手なだけで他に何かあるのって言われたら、何も言えないですよね。僕は野球ではあんまり怒りませんけど、普段の生活面ではきつく叱ることが多々ありますよ」
現在は、「一番望むところだった」と話す高校野球の舞台で奮闘を続ける芦沢監督。そんな芦沢監督の人間味に惹かれて、啓明学園野球部に入部を希望する選手は年々増加している。芦沢監督率いる啓明学園の「人間力野球」に注目だ。
文:栗崎 祐太朗
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