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『失点しない強さ』の裏に潜む危うさ 下位に取りこぼしをしないためには【J1名古屋2021総括】

2021年12月9日 07時38分

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仙台に敗れ、肩を落とす中谷(左)ら名古屋イレブン=5月26日

仙台に敗れ、肩を落とす中谷(左)ら名古屋イレブン=5月26日

◇悲願から常勝へ〈下〉
 DF中谷には、忘れられない思い出がある。「フロンターレにボロクソで負けた時のホーム、ベンチから見ていた光景。というかシンプルに悔しさ」。4月29日の川崎戦(豊田ス)のことだ。グランパスは早い時間から堅守を破られ、0―4で大敗。自らは欠場した試合での悔しさが、今でも中谷の脳裏をよぎる。
 失点しない強さが崩れた時、グランパスは多くの得点を奪えないもろさが出る。リーグ戦で失点した17試合の成績は、3勝4分け10敗。完封を前提においた試合運びには、危うさが潜む。
 下位相手の試合で、その課題がより顕著になる。結果としてJ2に降格した4チームとの戦績は、4勝2分2敗。勝つべき試合の半数で勝ち点を落とした事実が、終盤のACL争いに響いた。
 下位に苦戦する要因は、引いた相手を崩すパワー不足。5月22日の徳島戦(鳴門大塚)では最後まで得点を奪えずドローに終わり、同26日仙台戦(豊田ス)は相手の個人技で奪われた失点が響いて、不覚をとった。総得点は、リーグ9位タイの44得点だ。
 課題解消の鍵は、今季途中に加入したFWシュビルツォク。「そこまで守備に参加するわけではないけど、(ボールを)取った時に真ん中にいるから高い位置で基点になりやすい」とMF稲垣。来季は、シュビルツォクをピッチに置いた状態の、守備のバランス調整が求められる。
 もう1つのヒントは、11月7日の仙台戦(ユアスタ)の先制点。左サイドのFW相馬からFW前田がヒールで柿谷へ落とし、滑り込みながら柿谷が押し込んだ。エリア内の連動性が光るゴールを、フィッカデンティ監督も「パーソナルではなく、チームで決めたと言えるゴール」とたたえた。人数をかけられた守備を崩しきる技術と連係を見せれば、得点力不足を感じる試合は減るはずだ。
 シュビルツォクの存在を念頭に置いたバランス調整と、技巧派攻撃陣の連係成熟。早い時間にリードを奪えば、守備にも余裕が生まれる。好循環へと乗せていくための、破壊力ある攻撃が来季の課題だ。

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