ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げ成功、宇宙で最初の星を観測へ

ジョナサン・エイモス、科学担当編集委員

画像提供, ESA

画像説明, ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、フランス領ギアナのクールー発射場からロケット「アリアン5」に搭載されて宇宙へと飛び立った

アメリカ航空宇宙局(NASA)は25日、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げに成功した。宇宙で最初に輝き出した「ファースト・スター」を観測する。

100億ドルをかけた最新の宇宙望遠鏡は、フランス領ギアナのクールー発射場からロケット「アリアン5」に搭載されて宇宙へと飛び立った。

望遠鏡は30分後には軌道に到達し、ケニア・マリンディにあるアンテナが、打ち上げ成功の信号を受け取った。

ウェッブ宇宙望遠鏡は、これまで外宇宙を観測してきたハッブル宇宙望遠鏡の後継機。アメリカや欧州、カナダの宇宙当局が協力して開発し、先代と比べて100倍もの観測能力を持つという。

名前の由来となったジェイムズ・E・ウェッブ氏は、NASAの2代目長官。アポロ計画にも携わった。

NASAのロブ・ナヴィアス氏は打ち上げの瞬間、「熱帯雨林から打ち上げられ、時間の端そのものへと向かうジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、宇宙の誕生へとさかのぼる旅を始めた」と語った。

大きな期待の寄せられた打ち上げは、同時に多くの不安も抱えていた。この計画には過去30年にわたって世界中の数千人もが関わってきた。「アリアン5」はきわめて信頼性の高いロケットだが、ロケットというものに万全の保証はあり得ない。

画像提供, Arianespace

画像説明, アリアン5から分離したウェッブ宇宙望遠鏡

ウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げは、今後6カ月にわたる複雑な初期活動の始まりに過ぎない。

同望遠鏡は現在、地球から約150万キロ離れた観測ポイントへと移動している。

この道中で、さなぎから出てくるチョウのように、打ち上げのために折りたたまれていた望遠鏡本体を展開する必要がある。

NASAのビル・ネルソン長官は、これは簡単な作業ではないと認めた。

「今後もおびただしい数の作業を完璧にこなす必要がある。それは留意しなくてはならない。しかし、偉業達成には大きなリスクがつきものだ。宇宙開発とはそういう商売だし、だからこそ我々はあえて宇宙を探索しようとするのだ」

ウェッブ宇宙望遠鏡の核となるのは、全長6.5メートルの主鏡だ。これは、ハッブル宇宙望遠鏡の主鏡に比べてほぼ3倍の長さだ。

この拡大鏡と4つの超高感度機器で、これまでより遠くの宇宙、つまり、より過去の時間を観測できるという。

主な目標は、「ファースト・スター」の時代を観測することだ。135億年以上前のビッグバンの直後、宇宙は暗闇だったとされるが、そこで最初に生まれたのが「ファースト・スター(初代星)」だという。

ファースト・スターで発生した核反応が、生命の誕生に不可欠な炭素、窒素、酸素、リン、硫黄といった重元素を形成したと考えられている。

また、地球から遠い惑星の大気の計測も、ウェッブ宇宙望遠鏡の重要な役割の一つだ。これは、宇宙のどこかに生命が暮らせる環境があるのかを研究する手掛かりになる。

惑星天文学者で、この計画に学際研究員として携わっているハイディー・ハメル氏は、「我々はこれから全く新しい宇宙物理学、未開拓の場所へと入っていく。だからこそ、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡に多くの人が興奮している」と話した。

望遠鏡の展開作業は2週間にわたって行われる。それから、巨大な主鏡のピント調整がある。この反射鏡を構成する18個の部品の裏には小さなモーターがついており、それが曲率を調整する。

欧州宇宙局(ESA)のマーク・マコークラン上級科学顧問は、「それから重要なのは、望遠鏡自体を非常に冷たい状態にすることだ」と指摘する。

「この宇宙望遠鏡は実際、摂氏マイナス233度まで冷却される。そこで初めて望遠鏡自体が赤外線を放射しなくなり、望遠鏡を動かしたい環境になる。それでやっと、最初の銀河が生まれた遠方宇宙や、星々の周りをまわる惑星の繊細な画像をとらえられる。なのでまだまだ先は長い」

画像提供, NASA/Chris Gunn

画像説明, ウェッブ宇宙望遠鏡は非常に大きいため、発射時には折りたたまれていた