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第135回:大盛況の「ワールドシリーズbyルノー」とは? イベント責任者に成功の秘密を聞く

2011.12.20 エディターから一言 大谷 達也

第135回:大盛況の「ワールドシリーズbyルノー」とは?イベント責任者に成功の秘密を聞く

日本ではあまり知られていないが、ルノーはヨーロッパで「ワールドシリーズbyルノー」という独自のレース選手権を開催し、大成功を収めている。
今回はその成功の秘密をイベントの責任者で、ルノー・スポールのモータースポーツディレクターであるジャン-パスカル・ドゥース氏に聞いた。

2011年は欧州8カ国で全9戦が開催された。写真は9月、フランスのポールリカールでの「フォーミュラ・ルノー3.5」。
2011年は欧州8カ国で全9戦が開催された。写真は9月、フランスのポールリカールでの「フォーミュラ・ルノー3.5」。 拡大
ルノー・スポールでモータースポーツディレクターを務めるジャン-パスカル・ドゥース氏。イベントの責任者だ。
ルノー・スポールでモータースポーツディレクターを務めるジャン-パスカル・ドゥース氏。イベントの責任者だ。 拡大
「ワールドシリーズbyルノー」はパドックへの入場を含めてすべてが無料。平均入場者数は10万人を超える。
「ワールドシリーズbyルノー」はパドックへの入場を含めてすべてが無料。平均入場者数は10万人を超える。 拡大

「入場無料」で10万人超の集客

ドゥース氏は今回、ルノーと提携関係にある日産のモータースポーツイベント「NISMOフェスティバル」を視察するために来日した。日産とルノーのアライアンスは、乗用車の生産台数においてトヨタ、GM、フォルクスワーゲンに続く世界第4位に位置する。「ところが、われわれより上位の3メーカーは、いずれも『ワールドシリーズbyルノー』に関心があるといって、私のところに話を聞きに来ました」。

巨大自動車メーカーが、このイベントに興味を持つのも無理はない。2011年、ワールドシリーズbyルノーはフランス、スペイン、イギリス、ドイツ、イタリア、モナコ、ベルギー、ハンガリーの計8カ国で全9戦を開催。その平均入場者数が10万人を超えるというのだから驚く。モータースポーツが盛んというイメージが強いヨーロッパだが、F1グランプリやルマン24時間などを例外とすると、たいていのイベントは1万人程度しか観客が集まらないという。そうしたなか、ルノー1社しか登場しないワールドシリーズbyルノーがどうしてこれだけの人気を博しているかといえば、答えは単純で、入場料が無料なのである。

しかも、入場料が無料であるだけでなく、パドックに入るにも、ピットウォークに参加するにも追加の料金は発生しない。つまり、すべて“ルノー持ち”。この気前の良さが、ワールドシリーズbyルノーの人気の源泉だといえる。

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ルノーブランドの強化が目的

ワールドシリーズbyルノーでは、「フォーミュラ・ニッポン」に相当する「フォーミュラ・ルノー3.5」、同じくF3に相当する「ユーロカップ・フォーミュラ・ルノー2.0」、「SUPER GT」の「GT300クラス」に匹敵するパフォーマンスの「ユーロカップ・メガーヌ・トロフィー」、「ヴィッツ・レース」とイメージが重なる「ユーロカップ・クリオ」の4レースを開催している。それでいながら入場料が無料では採算がとれるはずがない。ルノーが莫大(ばくだい)な経費を負担していることは容易に想像がつく。

「莫大かどうかはわかりませんが、ルノーが費用を負担しているのは事実です」とドゥース氏。「レーシングチームから支払われるエントリーフィー、それにイベント会場で販売される商品の売り上げなども運営費に充てられますが、残りはルノーが支払います」。

しかし、どうしてそれほどの費用を払ってまでルノーはワールドシリーズbyルノーを開催するのか? 「われわれの調査によると、観客は平均で約6時間、正確にいうと5時間45分をサーキットで過ごします。この間、観客はレースだけでなく、ルノーF1のデモ走行、元ラリードライバーであるジャン・ラニョッティの曲芸運転、『デジール』や『トゥイジー』といったルノーのコンセプトカーのデモ走行などをノンストップで楽しみます。また、パドックではルノーやダチアの市販車を展示して商談を行ったり、お子さま向けに小さな人工のビーチを作ったりして、家族そろって楽しめるように工夫しています」

「こうして、ルノーをより深く理解していただき、ブランドのバリューを高めることがわれわれの目的なのです。それを考えれば、ルノーが負担している費用が不当に高いとはいえません」

F3に相当する「ユーロカップ・フォーミュラ・ルノー2.0」。
F3に相当する「ユーロカップ・フォーミュラ・ルノー2.0」。 拡大
イベントはレースだけでなく、ルノー車を使ったさまざまな催しを楽しむ。これは名手ラニョッティの曲芸運転。
イベントはレースだけでなく、ルノー車を使ったさまざまな催しを楽しむ。これは名手ラニョッティの曲芸運転。 拡大
「ルノー・デジール」や「トゥイジー」のようなコンセプトカーまで登場して、ファンサービスを行う。
「ルノー・デジール」や「トゥイジー」のようなコンセプトカーまで登場して、ファンサービスを行う。 拡大

F1への登竜門としても機能

もっとも、タダだからといって手抜きのレースが行われているわけではない。ワールドシリーズbyルノーは、これまでにもロバート・クビサ、セバスチャン・ベッテル、ハイメ・アルグエルスアリなどのF1ドライバーを輩出した。2011年にフォーミュラ・ルノー3.5を戦ったシャルル・ピックは、来季ヴァージン・レーシングよりF1にステップアップすることが決まっている。ドゥース氏の言う「フォーミュラ・ルノー3.5はF1の直下にあたるカテゴリー」という言葉に偽りはないのだ。

一方で、ロータス・ルノーGPは引き続きF1グランプリに参戦しているし、今季もF1グランプリを席巻したレッドブル・レーシングはルノー・スポール製エンジンを搭載している。ルノーエンジンがF1コンストラクターズを制したのは、これが通算10回目。ヨーロッパでルノーとモータースポーツが切っても切れない関係にあることは、このことだけからもわかるだろう。

ワールドシリーズbyルノーを大成功に導いたドゥース氏。しかし、どうしても解消できない悩みがひとつだけあるという。「雨です。ワールドシリーズbyルノーは無料なので、たとえチケットを持っていても、雨が降るとサーキットに足を運ばない方が増えます。もうこれはどうしようもないことですよね。もちろん、雨の降りにくい時期や場所を選んで開催していますが、それでも雨は大敵です。だから、すべての準備を整えて迎えたイベント当日の朝に雨が降っていると、もう一度ベッドに潜り込みたくなります」

サーキットでは盤石の強さを誇るルノーも、どうやら空模様だけには勝てないようだ。

(文=大谷達也/写真=ルノー・スポール、webCG)

2011年にフォーミュラ・ルノー3.5を戦ったシャルル・ピックは、F1へのステップアップが決定している。
2011年にフォーミュラ・ルノー3.5を戦ったシャルル・ピックは、F1へのステップアップが決定している。 拡大
「ユーロカップ・メガーヌ・トロフィー」のパフォーマンスは、日本の「SUPER GT」の「GT300クラス」に匹敵する。
「ユーロカップ・メガーヌ・トロフィー」のパフォーマンスは、日本の「SUPER GT」の「GT300クラス」に匹敵する。 拡大
左からドゥース氏、2011年の「メガーヌ・トロフィー」のチャンピオンであるステファノ・コミニ選手、そして「日産GT-R」でFIA GT1世界選手権のシリーズチャンピオンに輝いたミハエル・クルム選手。この日、コミニ選手はチャンピオンの「ごほうび」としてGT-R GT1仕様のステアリングを握った。
左からドゥース氏、2011年の「メガーヌ・トロフィー」のチャンピオンであるステファノ・コミニ選手、そして「日産GT-R」でFIA GT1世界選手権のシリーズチャンピオンに輝いたミハエル・クルム選手。この日、コミニ選手はチャンピオンの「ごほうび」としてGT-R GT1仕様のステアリングを握った。 拡大
大谷 達也

大谷 達也

自動車ライター。大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌『CAR GRAPHIC』の編集部員へと転身。同誌副編集長に就任した後、2010年に退職し、フリーランスの自動車ライターとなる。現在はラグジュアリーカーを中心に軽自動車まで幅広く取材。先端技術やモータースポーツ関連の原稿執筆も数多く手がける。2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考員、日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本モータースポーツ記者会会員。

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