新出の植物図譜を発見 江戸と京都の蘭学者が協力
西洋人植物学者がインドネシアで描いた植物などの絵を、江戸後期に活躍した2人の蘭学者が協力して模写、翻訳した植物図譜(図鑑)が20日までに見つかった。近代的な植物画は1823年に来日したドイツ人医師で博物学者のシーボルトが日本人に初めて指導したとされていたが、発見された図譜は現存する最古の近代的植物写生図の可能性があるという。
図譜を作成したのは蘭学の第一人者、宇田川榕菴(うだがわ・ようあん、1798~1846年)と、京都の公家に仕え、独自のオランダ語研究を開拓した蘭学者、辻蘭室(つじ・らんしつ、1756~1836年)。
調査グループの京都大の松田清名誉教授(日本洋学史)は「植民地で発展した西洋の植物学の初期の成果を、蘭学者が受容した過程を示す貴重な史料。江戸蘭学と公家文化の融合という側面も初めて分かった」と話す。
「彩色ジャワ植物図譜」と名付けられた図譜は縦約31センチ、横約22センチの和とじ本で、ショウガ科の草など植物130図と九官鳥など鳥4図が精密に描かれていた。
京大の永益英敏教授(植物分類学)の研究を基に、ロンドンやパリの自然史博物館に現存するスペイン人植物学者フランシスコ・ノローニャ(1748~88年)の写本などと比較。原本は、ノローニャがジャワ島のボイテンゾルグなどで86年に描いた植物図などであることを突き止めた。
植物図に付けられたアルファベット表記の筆跡や絵の特徴から、酸素、細胞などの用語を造語したことで知られる蘭学者の榕菴が模写したと判断した。
17の植物図には、オランダ語の解説文とその和訳があり、花園大の益満まを非常勤講師が、京都の公家の久我家に仕えた蘭室の筆跡と鑑定した。
京都御所の宮中役人を務めた旧家の所蔵品が10月、東京の古書市場に出され、群馬県高崎市の古書店主、名雲純一さんが見つけ、研究グループが調査していた。神田外語大(千葉市美浜区)が近く入手し、2018年7月以降、研究者らに公開する予定。〔共同〕