■自民党の重鎮が語る“安保政策の大転換”「あり得ない」 起点は「安倍内閣」

元自民党総裁で衆議院議長も務めた、河野洋平氏。岸田総理の出身派閥、宏池会に所属していた自民党の重鎮だ。


防衛費倍増と敵基地攻撃能力の保有という、安保政策の大転換について話を聞いた。

河野洋平 元衆院議長
70数年前に日本は決心したじゃないかと。尊い命を犠牲にして、我々今ここに繁栄を得ているのです。決して忘れません、決してあの過ちは繰り返しません。何十年も言い続けて、その結果がこの政策転換というのは、私はあり得ないと、そう思っているのです

政策転換の起点は、安倍内閣だという。


河野洋平 元衆院議長
安倍政治というものに非常に大きな問題があったと思います。全体の流れを先に作ってしまうというこの手法は、議会制民主主義の手法としては、ちょっとやっぱり違うのではないかと私は思います。安倍内閣、そして菅内閣、岸田内閣と内閣が3つ変わって、岸田さんがバトンを受け取ったときには、かなりもう勢いがついていて。この勢いを簡単に変えるとか止めるとかいうことは、なかなか難しい状況であったことは想像できます」
「しかし、そうであっても、変化をさせようとするなら、もっとやるべきことがたくさんあったのではないか。少なくとも国会で議論をする、あるいはもっと言えば、これをテーマに解散して総選挙で国民の意思を問うというぐらい重要な問題だと、私は思いますね。戦後最大と言ってもいいかもわからない、国の性格を変えるという意味で。それをやるだけの信念というか、それだけの深い考えがあったんでしょうかね

軍事増強を加速させる中国について、安保関連3文書では「深刻な懸念事項」と明記している。

河野洋平 元衆院議長
「中国が自分の言い分を正当化して押しかけてきている。それなら、やっぱり話し合う必要がありますね。その努力をどのくらいしたのか。外交関係でこの問題をテーブルにのせて、真剣に議論したことはあるか。私はそういう情報を聞いておりません。現状の倍の国防力負担を国民にさせようという状況なら、どれだけその前に外交的努力が行われたのかを問わなければいけないと思います」


アメリカ製のトマホークの購入には、2100億円あまりをあてるというが…

河野洋平 元衆院議長
「米中関係というものが今や最大の課題だと思っているアメリカにとってみれば、最も中国に近い最前線の日本を自分の味方に完全に取り込んで。その証拠を示すために、あれだけの金額を日本が使えますということを、これだけあからさまにしたというのは、やはりアメリカは大喜びでしょう」


ロシアのウクライナ侵攻で世界的に軍拡の動きが広がる中、日本のあるべき姿とは?

河野洋平 元衆院議長
反撃能力というのは威嚇ですよね。明らかに武力による威嚇。武力を予算化しようとしている。どう説明をなさるのか、私にはわかりません。政治や外交の努力を抜きにして、ただ壁だけ立てていく。壁ならまだいいけれども、壁の隙間から向こうに鉄砲を向けて狙うというのは本当の安全だと思わないです」
「日本には、日本の歴史的な事情、反省に基づいて、あるいは日本の置かれている立場を考えて、やれる範囲、やるべきこと、やってはいけないことをもう少しはっきりさせるべきではないでしょうか。戦わないために何をするかということを、深刻に考えるべきだと思います