ドイツ連邦議会、同性婚の合法化を可決

連邦議会の採決を受けて、緑の党が虹色のケーキで祝った(30日)

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画像説明, 連邦議会の採決を受けて、緑の党が虹色のケーキで祝った(30日)

ドイツ連邦議会は30日、同性婚を合法化する法案を393対226の賛成多数で可決した。アンゲラ・メルケル首相が採決への反対姿勢を転換したのは、ほんの数日前だった。

合法化によって、同性カップルは結婚に伴う権利を完全に認められ、子供を養子にすることもできる。

ドイツでは現在、同性カップルは市民婚しか認められていない。

採決には4人が棄権。メルケル首相は26日にキリスト教民主同盟 (CDU)議員は 党議拘束をしない方針を示したが、本人は反対票を入れた。

CDUと連立を組む社会民主党(SPD)は法案を強く支持していた。

AFP通信によると、ドイツの法律は今後、「結婚は、異性もしくは同性の二人の人間が終生の前提で始めるもの」と定義することになる。

メルケル首相

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画像説明, 同性婚に反対していたメルケル首相は、養子8人を育てるレズビアン・カップルと出会い「人生観が変わった」と話した

メルケル首相は2013年総選挙で、「子供の福祉」を理由に同性婚に反対し、自分としては「受け入れにくい」問題だと認めていた。

しかし、26日に女性誌「ブリギッテ」主催のイベントに出席した首相は、他党が合法化を支持しているのを認識し、今後は自由投票を認めると表明。独メディアを驚かせた。

普段は何事にも慎重姿勢を見せる首相は、イベントの壇上で、地元の選挙区で養子8人と暮らすレズビアンのカップルと夕食を共にし、「人生観が変わる」経験をしたと話した。

首相の姿勢転換の情報がツイッターで広まると、合法化を支持する人たちは「#EheFuerAlle(すべての人の結婚)」というハッシュタグで、できるだけ早く採択するよう呼びかけた。

30日の採決の後、メルケル氏は記者会見で、自分にとっては結婚とは男女の間のものだが、法案可決によって「社会が落ち着く」ことを期待すると述べた。

国内の支持は なぜ今

政府調査によると、国民の83%が結婚の平等(同性婚の合法化)を支持していた。

2015年5月にアイルランド議会が同性婚を可決した翌日には、ドイツのほぼすべての新聞各社が一面に、同性愛を象徴する虹の絵や写真を載せた。

緑の党のカトリン・ゲーリング=エカルト党首は当時、「もうそういう時期です、メルケルさん。全員のための結婚の議論に、メルケル一派だけ参加しないのではすみません」と呼びかけていた。

ドイツでは9月24日に総選挙が予定されている。メルケル首相が同性婚についていきなり方針を変えたため、野党はこの点については首相と与党を攻撃できなくなった。

CDUと連立を組む中道左派のSPDは、同性婚について合意できない限り今後は連立を解消するという方針を示していた。

緑の党や左翼党、経済界寄りの自由民主党も同様の姿勢だった。

公然と同性婚に反対するには、右派「ドイツのための選択肢 (AfD) 」のみ。

一方で、与党CDU内の保守派や、CDUと統一会派を組むバイエルン・キリスト教社会同盟 (CSU)は、合法化に反対していた。メルケル氏は党内保守派やCSUの支持を秋の総選挙で必要としているため、これまで同性婚合法化の採決を容認してこなかったのではないかと言われている。

欧州では、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク(フェロー諸島を除く)、フィンランド、アイスランド、オランダ、ベルギー、スペイン、ポルトガル、ルクセンブルク、フランス、英国(北アイルランドとジャージー島を除く)では、市民婚が法的に結婚として認められている。

一方でオーストリアとイタリアでは、これまでのドイツと同様、同性カップルには市民婚しか認められていない。