日本からの報告 原子力を問う
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世界でも珍しい交付金
 
 過疎対策 試算で1000億円

 珠洲市をはじめ、原発誘致を計画した自治体の多くは過疎に悩んでいることで共通している。その自治体の狙いは過疎対策の財源となる交付金・固定資産税の獲得であり、モデルケースでは二十年間で総額約九百億円に上る。原子力推進はエネルギー安定供給などを図るための「国策」だが、世界でも類を見ない巨額の国費投入で支えられているのが実態だ。

 国は一九七四年に設けた電源開発促進税法、電源開発促進対策特別会計法、発電用施設周辺地域整備法のいわゆる「電源三法」に基づき、原発が立地する自治体や周辺自治体に交付金、補助金を出して立地促進を図ってきた。

 ただ、立地の段階や使う目的などによって電源立地等初期対策交付金や電源立地促進対策交付金などさまざまに分かれ、使途も決められていた。制度が複雑で使い道も道路やスポーツ施設の建設などハード整備中心との批判が根強く、昨年十月から電源立地地域対策交付金に一本化。地場産業振興や観光開発、老人福祉サービスなどソフト事業にも使えるように変更された。

 自治体にどれだけ交付金や固定資産税が入るのか―。資源エネルギー庁が出力百三十五万キロワット、建設費四千五百億円、建設期間七年で試算したモデルケースでは、二十年間で総額八百九十三億円となる。内訳は、電源立地地域対策交付金が五百四十五億円、固定資産税が三百四十八億円だ。

 年次別では、環境影響評価開始の翌年度から着工前までの交付金は五億円余で、着工すると五十億円以上にアップ。固定資産税が入る運転開始の翌年度は七十億円台にアップしてピークを迎える。それから次第に減っていき、運転開始十年で半減状態となる。

 原発の運転は現在、三十年から六十年へと延長され始めている。百万キロワット級原発が立地すれば、自治体に入る収入は廃炉になるまでには総額一千億円を超えることになる。

 電源立地地域対策交付金以外にも、企業への低利融資や雇用増加につなげる地域振興事業の支援などさまざまな種類の交付金、補助金の制度がある。これらは、電力会社が販売した電力量に応じて国に納める電源開発促進税(一千キロワット時当たり四百二十五円)が財源だ。つまり、消費者が電気料金の一部として負担している。

 二〇〇四年度予算では、電源立地地域対策交付金だけで千百二十四億円が計上されている。欧米では立地地域へのこうした巨額の交付金は珍しく、フィンランドのように固定資産税率などで立地地域を優遇している程度。原発の誘致は主に雇用対策や経済波及効果への期待が中心である。

 一方、日本の制度では運転開始後十年、二十年とたつと自治体の収入が細る。このため地元は再び原発の建設を求めがちであり、集中立地が目立つ背景には、こうした交付金制度の存在がある。


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