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【社会】

盲導犬、痛み我慢する訓練してません 関連団体が理解求める

オスカーの腰付近にある刺し傷

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 埼玉県で七月に全盲男性(61)の盲導犬「オスカー」が何者かに刺された事件が発覚した後、「盲導犬は痛みを我慢する訓練を受けている」との誤解が広がっている。オスカーが刺されたときに鳴き声を上げなかったとみられるからだ。実際はそんな訓練は行われていないが、「犬がかわいそう」と非難された視覚障害者も。盲導犬の複数の関連団体が誤解を打ち消す声明を出すなど、対応に追われている。 (井上真典、谷岡聖史)

 「盲導犬、かわいそうだね」。関西地方に住む全盲の四十代男性は二十九日、盲導犬と入った飲食店で、中年の男性客から突然声をかけられた。「なぜですか」と聞くと、「痛くても鳴かない訓練をしてるんでしょ」と言われたという。

 「全日本盲導犬使用者の会」(全犬使会(ぜんけんしかい))にはこの数日間、そんな報告が相次いでいる。関西盲導犬協会(京都府亀岡市)の担当者も「『盲導犬に痛みに耐える訓練をさせているのか』と、怒りの電話がかかってきた」と打ち明ける。

 盲導犬が人前などで無意味にほえないための訓練はあるが、そもそも「痛みに耐える訓練」はない。全犬使会の深谷佳寿(よしかず)問題対策部長(43)は「今回の事件でそんな訓練があると誤解され、『盲導犬はたとえ刺されても我慢して働く』と誤ったイメージが広まった」と嘆く。

 オスカーと男性は七月二十八日、さいたま市内の自宅を出て職場に到着した後、同僚がオスカーの腰付近のけがに気付いた。通勤中にフォークのような凶器で刺されたが、鳴き声を上げなかったとみられる。

 オスカーを育てた「アイメイト協会」(東京都練馬区)の塩屋隆男代表理事(59)は「盲導犬が痛みを感じて鳴くことはある。ただオスカーは人間のように、刺されたことに驚きすぎて声を上げられなかったのかもしれない」と推測する。

 全犬使会と関西盲導犬協会は三十日にそれぞれ声明を出し、「盲導犬が訓練で我慢を強いられている、との誤解を望んでいない」などと理解を求めた。

 

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