アフガニスタンから米軍撤退完了 20年の軍事作戦 意義問われる

アメリカのバイデン大統領はアフガニスタンからの軍の撤退が完了したと宣言し、2001年の同時多発テロ事件を受けて始まった「アメリカ史上、最も長い戦争」とも言われる軍事作戦は終了しました。ただ、現地では国際社会が支援してきた政権が崩壊し、治安も不安定化するなど、20年にわたった軍事作戦の意義が問われることになりそうです。

アメリカのバイデン大統領は30日、声明を発表し「アフガニスタンでの20年に及んだアメリカ軍の駐留は終わった」として軍の撤退の完了を宣言しました。

これに先立って記者会見したアメリカ中央軍のマッケンジー司令官は、撤退期限としていた今月31日に日付がかわる1分前の、現地時間30日午後11時59分に最後の軍用機がアフガニスタンの首都カブールの国際空港を離陸したと発表しました。

アメリカ政府の監察官の報告書によりますと、アフガニスタンで軍事作戦が行われた20年間で犠牲になった市民は4万8000人以上で、この間にアメリカ政府が投じた戦費はブラウン大学の研究所の試算で2兆3000億ドル余り、日本円でおよそ253兆円に上ります。

バイデン大統領は軍事作戦によって国際テロ組織「アルカイダ」を打倒したなどとして、当初の目的は達成したと強調していますが、国際社会が支援してきたガニ政権は崩壊し武装勢力タリバンが権力を掌握したことで、市民の安全や女性の権利が守られるのか、不安視されています。

さらに、マッケンジー司令官は会見で、アフガニスタン国内にはいまも過激派組織IS=イスラミックステートの強硬派の戦闘員が少なくとも2000人いるという見方を示すなど治安は不安定化していて、20年にわたった軍事作戦の意義が問われることになりそうです。

最後の兵士が現地を離れる瞬間

アメリカ国防総省はツイッターに、アフガニスタンに駐留していたアメリカ軍部隊の最後の兵士が現地を離れる瞬間だとする写真を投稿しました。

写真では駐留していた部隊の隊長が暗闇の中、赤外線ライトに照らされアメリカ軍の輸送機に乗り込む瞬間が写っていて「カブールでの任務が終わり、最後のアメリカ兵がアフガニスタンを離れる」という文章が添えられています。

また、AFP通信が首都カブールの国際空港で現地時間の30日深夜に撮影した映像には、アメリカ軍の軍用機が飛び立つ瞬間が捉えられています。

周辺は暗く、空港の照明だけが辺りを照らす中、軍用機の機影が滑走路を走って離陸する様子が確認できます。

この直後には、地上から空に向かって銃弾を撃ったり花火を打ち上げたりする様子も写っていて、アメリカ軍の撤退を喜ぶ人たちによるものと見られます。

加藤官房長官「きょう以降の具体的対応 情勢見極めつつ検討」

加藤官房長官は閣議のあとの記者会見で「日本政府としては、アフガニスタンの安定が国際社会の平和と安定にとって、引き続き、極めて重要であると認識している。その観点から、アメリカを含む国際社会と連携して取り組んできており、アフガニスタンにおけるアメリカのこれまでの取り組みを評価をしている」と述べました。

そのうえで「出国を希望する人々の退避は最優先課題で、安全な退避に向けて、引き続き、各国と緊密に連携し、国際機関などの人道支援要員の安全確保が不可欠だ。テロ対策について、タリバンがテロ組織との関係を断ち切ることが不可欠で、国際社会が一致してタリバンに求め、周辺諸国を含む国際社会が連携して対応することが重要だ。アフガニスタンの平和と安定に向けて、国際社会とも連携して、対応していきたい」と述べました。

また加藤官房長官は、今後の対応について「現地の情勢を見極めつつ、アメリカをはじめとする関係国とも連携を図りながら、現地に残る邦人、大使館やJICAの現地職員などの安全確保や必要な出国支援のため、引き続き全力で対応していく。きょう以降の自衛隊機の運用を含む政府の具体的な対応については、現地の情勢を見極めつつ、検討を行っているところだ」と述べました。