日本最大の航空会社、国民航空のジャンボジェット機による航空史上最大最悪の事故が発生した。国民航空の恩地元(おんちはじめ)(渡辺謙)は、遺族係として事故現場の前線で遺族たちの遺体確認作業に付き添うことに。空の安全のために戦ってきた企業戦士である恩地は、混乱を極める現場の惨状を目の当たりにし、自らの絶望を深めていく…。
昭和30年代。恩地は国民航空の労働組合委員長を担当。副委員長の行天(ぎょうてん)(三浦友和)をはじめ、スチュワーデスの美樹(松雪泰子)、部下の八木(香川照之)ら理想に燃える同僚とともに、労働環境の改善を求めて激しい闘争を繰り広げ、充実した毎日を送っていた。恩地の粘りの甲斐あって組合は賃金の大幅アップを勝ち取るが、そんな恩地を待ち受けていたのは、パキスタン・カラチへの海外赴任人事だった。
2年間のはずの恩地の海外赴任は、社長交代を受けて思いがけず長期化。恩地はカラチからイラン・テヘラン、そして遂には国民航空の路線が就航していないケニア・ナイロビへ転勤することに。会社の言う通りにすれば日本に戻すという取締役の八馬(西村雅彦)の甘い言葉にも、自らの信念を曲げることはできない恩地。しかし、妻のりつ子(鈴木京香)ら家族は、終わりの見えない海外勤務に不満を募らせ、遂に恩地は家族を日本に帰すことに。一方、同じ理想を抱いていたはずの行天は、いつの間にか自らの出世と引き換えに組合を解体する側に回り、栄転を重ねていた。会社に頭を下げてでも出世して家族の幸せを守るべきか、自分の理想を貫くべきか…。苦悩する恩地にもたらされたのは、ケニア政府との定期路線就航交渉が決裂したという非情な決定、そして最愛の母・将江(草笛光子)の死の一報だった。
海外生活も10年を経過し、ようやく日本に帰ることが許された恩地。行天が社内で重用される一方で、かつて組合で共に戦った同僚たちは見せしめのような人事に苦しんでいた。そんな中で発生した国民航空機墜落事故。事故原因もわからないまま、恩地は息子一家を失った阪口(宇津井健)ら遺族の対応に追われることに。誠意のある恩地の態度は少しずつ遺族たちに受け入れられるようになるが、冷徹に補償交渉を進める会社側と亀裂が深まっていく。同じ頃、事故機の担当を後輩の恭子(松下奈緒)に代わってもらった美樹は、彼女の死に心を痛めていた。美樹は、愛人関係にある行天に会うためにそのフライトの仕事をキャンセルしたのだ。しかし行天は、そんな美樹に恭子の母から遺族会の名簿を手に入れるよう命じる。行天の強引なやり方に疑問を抱きながら、彼との関係も清算できず、美樹は深く悩み続ける。
墜落事故の事後処理が進む中、管理責任を問われた社長の堂本(柴俊夫)が辞任。内閣総理大臣の利根川(加藤剛)率いる政府では、国民航空の新たな人事をめぐる駆け引きが展開していた。結果、関西紡績出身の国見(石坂浩二)が会長に就任。穏やかながらも冷静に社内全体を見渡す目を持った国見は、新設した会長室の室長に恩地を抜擢。国見と恩地は、現場レベルから国民航空を立て直すため奔走することになる。
そんな恩地の前に立ちはだかるのは、ナショナル・フラッグ・キャリア=国を象徴する航空会社だからこその、政界をも巻き込んだ巨大な権力の渦。そして会社の利益のため、ひいては自らの出世のための行天の行動は、ますますエスカレートしていく…。企業人として、父として、そして一人の人間として。自らの理想を追い求め続ける恩地の、激動の半生の行く手に待つものとは…?