落合博満、ロッテ時代の「打てない時期」を支えた稲尾監督の「名手腕」がスゴすぎる…!

週刊現代 プロフィール

就任会見のあと、新監督以下、首脳陣が飲みに繰り出そうとしたとき、「私も行っていいですか」と一人の選手が稲尾に声をかけた。それが、主砲の落合だった。

店に着くなり、落合は稲尾にこう問うた。

「監督は『管理野球』ですか。それとも、選手に任せるんですか」

選手の食事制限から練習まで、こと細かに制御することでパ・リーグ二連覇を達成した西武・広岡達朗の「管理野球」は、当時の流行語だった。

就任直後の監督に、一選手がいきなり「施政方針」を問いただす。普通であれば、激怒されてもおかしくはない。しかし、稲尾の反応は違った。

「残念ながら、俺は”西鉄”ライオンズで育った人間だから、管理されたことがないんだよ。だから俺も管理はしないよ」

 

稲尾の言葉を聞くと、落合は安堵したかのように肩の力を抜いた。

怪童・中西太や青バット・大下弘、名ショート・豊田泰光……。強烈な個性を知将・三原脩がまとめ上げ、西鉄の黄金時代を築いた「野武士軍団」のエースだった稲尾にとっては、選手を管理するという発想は端からなかった。

むしろ、落合のように群れを嫌い、世をすねる人間を懐深く受け入れる度量があった。

「常にニコニコしていて、酒が入っても他人の悪口は絶対に言わない」(元ロッテ・得津高宏)

「ベンチの奥でどしっと構えている。負けても淡々としていて、怒鳴るようなことは絶対にしない」(同・古川慎一)

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