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2010 伝書鳩による実験

リアルタイムに彼方を飛ぶ鳥の
観測を世界最初に成功した!


研究・設計 自然環境保護無線協会 Hal.T

2010/05/01 - 2010/06/25 - 2010/10/11
2010/10/13 - 2011/02/10
Index 
共同研究者
  • 自然環境保護無線協会 玉置晴朗、矢澤正人
  • 我孫子市 鳥の博物館 学芸員 時田賢一 
  • 鳩の飼育者であり鳥の専門家 内田さん兄弟
  • 数理設計研究所 菅正信、藤永清和
ここに掲載する情報は研究共有物として扱います。したがって、誰でも引用や解釈を
して文献化や公開をしていただいてかまいませんし望む所でもあります。
→ 数理設計の転載と引用、サイトの趣旨に沿います。

目的

野鳥への装着に対する影響や情報獲得の精度や確実性、電波伝搬の評価のために、野生動物ではなく人の管理下にある伝書鳩で実験をする。放鳥地は結城市、帰巣地は松戸市、予定の飛翔距離は55km、つくば受信地から放鳥地まで約20km。

実験計画

送信機
コールサイン JQ1YUR  
周波数 144.450MHz  
形式 G1D BPSK
出力 4.5dBm 2.82mW
等価DP出力 -10dBm 100uW
送信高度 10m, 50m, 100m  
アマチュア無線局はすでに免許を持っていれば、そのまま別の送信機で実験することが少なくありませんが、当方はも合法性を維持するのがもともとの趣旨なので、多くの送信機を第X号送信設備としてTSSの保障認定によって申請保持しています。
受信システム
アンテナ高 2m, 6m 受信局
JP1COK, JA1QPY, JG1KBY,
受信限界 -125dBm
  1. 目的
    1. 電波伝搬の実験
    2. 受信地の設定法を確立する
    3. 鳥学会、動物学会への広報
    4. 未知のことがわかる可能性が高い
  2. パラメータ
    1. 放鳥地 茨城県の結城
    2. 到着先  千葉県の松戸
  3. その他、既知の注意点
    1. 巣箱の中で1週間ほど装着をして慣らしておき、十分観察をして体力に注意するが、もし重すぎる送信機でも、帰巣さえすれば装着を解除できる

受信地の評価

飛行経路  茨城県の結城 ⇒ 千葉県の松戸 およそ55km
●飛翔経路の全部をカバーする好適受信地 (全経路を十分にカバーする)
●限界検出に適した限界受信地を選定 (限界検出とは半数が受信できない受信地点)
2つの観測は性質が異なり、前者は飛行状況を知り、後者は伝搬の限界と数値実験の差をを知るためである。

パラメータ 送信 100uW 145MHz 、 受信感度 -125dBm
全体をカバーできそうな受信地 シミュレータの原図
BaseMap.png
全体地図
Google BaseMap.kmz へのリンク
A 放鳥地 結城
B 帰巣地 松戸
C 筑波 男体山
D 佐野IC そばの山
E 常総 地域交流センター
PmapBase.png

筑波 男体山

標高 853.2m 、 アンテナ高さ 6m 、 受信限界 -125dBm 、 送信電力 100uW 、 周波数 145MHz
北側から登る自動車道えの受信は北方面にしか開けていず、放鳥地も見えないのでNG
高度100mのほうが50mよりも届かない場所が多く見えるが、これはリング状に不感地帯があるためで、全体的には高度100mの方が遠距離までカバーする。筑波から高度100mを対象とすれば三浦半島から前橋までカバーする。

飛行高度 10m 飛行高度 50m 飛行高度 100m
Hato10mTukuba.png Hato50mTukuba.png Hato100mTukuba.png

不動峠そばの山頂

標高 456.6m 、 アンテナ高さ 6m 、 受信限界 -125dBm 、 送信電力 100uW 、 周波数 145MHz
県道236号と138号の交わる動峠南にある山頂

地図 飛行高度 10m 飛行高度 50m 飛行高度 100m
fudouMAP.jpg Fudou10mA.jpg Fudou50mA.jpg Fudou100mA.jpg

県道236パーキング

236A.lzh へのリンク 保存してから開くといい kmzファイル

飛行高度 50m
Hato50mParking.png

佐野IC そばの山

標高 114m 、 アンテナ高さ 6m 、 受信限界 -125dBm 、 送信電力 100uW 、 周波数 145MHz

飛行高度 10m 飛行高度 50m 飛行高度 100m
Hato10mSanoIC.png Hato50mSanoIC.png Hato100mSanoIC.png

常総市地域交流センター

標高 18m 、 アンテナ高さ 48.5m (45m) 、 受信限界 -125dBm 、 送信電力 100uW 、 周波数 145MHz

飛行高度 10m 飛行高度 50m 飛行高度 100m 100m 電力1mW(+10dB)
Hato10mJyousou.png Hato50mJyousou.png Hato100mJyousou.png Hato100mJyousouP10.png

宇都宮市の周辺

飛行高度5m、受信限界 -125dBm 、 送信電力 100uW 、 周波数 145MHz

 宇都宮大学 峰校舎 地上高 20m  
Umine5mP.png Umine10mP.png Umine20mP.png
Umine5m.png Umine10m.png Umine20m.png
飛翔高度 5m 飛翔高度 10m 飛翔高度 20m

 競馬場公園 地上高 6m  
Utower5m.png Utower10m.png Utower20m.png
飛翔高度 5m 飛翔高度 10m  飛翔高度 20m

第1回実験 2010/07/11

記録

  1. 放鳥場所(http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.aspx?b=361741&l=1395426)北緯36度17分41秒、東経139度54分26秒(北緯36.294601度、東経139.907278度)付近
  2. 放鳥時間 午前7時ごろ(勿論各自持ち場に着いてスタンバイOKで放鳥:放鳥地に出向くNECoRAの指示による)
  3. 事前に慣らしの為、ダミーを装着しケージ内で飼育、慣れはじめたら松戸の鳩舎の周りを訓練飛行(通常の放鳥・帰還)、放鳥実験決行日の1〜2日前に鳩Bird-GPSと交換。

2010/07/10 実験前日のハト

IMG_2147_2.jpg 2010/07/10 伝書鳩にBird-GPSを装着。
 数日前も19.3km(鳩小屋から利根川目吹橋「茨城県坂東市」)を2回ほど飛んだとのこと。アンテナはもっと細いもので充分だと思います。アンテナに強度があるため余程大きな鳩ケースでないとアンテナの先端部がケースにあたりアンテナ基部の損傷も万が一と言うこともあります。
 研究員K.T

 ハトが小さいので装置は防水加工のための樹脂充填を避けて軽く作ってあり、およそ15gぐらい。ただし、アンテナ線も含めるともう少しある。(3gほど重くなり18gぐらい)

2010/07/11 実験

放鳥地での撮影 結城
DSC03034.JPG
 ハトに背負わせた送信機+補修した電池がずれて飛び立てず。左下の赤丸内。

 受信局を3ヶ所に配置して、さて放鳥!。あれっ電池がカラだ・・・・・、じたばたして別の電池を追加して載せたら、ハトがこんないいかげんな装置じゃイヤだってんで、飛ばずに歩いてしまった。そりゃそうだよなあ、てなわけで大失敗。ハトさんには申し訳ないねと謝ってランドセルの紐を切ったら、「セイセイしたぜ!」と言ったか言わないか、すっ飛んで帰りついたと言う。めでたしめでたし。

つくばでのレポート
 前橋を2:30ごろに出発し北関東道で太田、そこから50号経由で佐野、小山、結城、築西、つくばへ向かい、筑波山神社の前を通り表筑波スカイラインを南へ行くと現地。前橋から115km。
tukuba_kosazuke.jpg
 目的としていた道脇の駐車スペースは大きな鉄骨でふさがれていてNG。少し戻って「つくばねCCの東尾根にある「子授け地蔵」の駐車場に腰を落ち着けた。他メンバーは放鳥地点、主水水門。
20100711.kml(Google) 20100711tukuba_hato.gdb(Garmin)

DSC03136.JPG 朝早く4:30には準備完了。自動車内で仮眠しようとするが、周囲はおにいさん?おじさんの触合いの場となっていて少々やかましい。耳栓をしてしんなりゆったりと体を休めた。
 日が昇っても曇りでそれほど暑くは無く、汗をかくほどにはならない。


DSC03138.JPG 受信機は自動車の後ろ。
DSC03140.JPG144.488.71MHz USB


DSC03142.JPG 南西方向、つくば市、放鳥地の結城市はこの写真の右に外れた所で、筑波山の南西斜面の向こうだし、霞が濃く、まったく見えない。


20100711tukuba_hato.WMV 観測地の全景ビデオ


メモと評価
  • 装着状態でしばらく過ごすのはハトぐらいなので、諸対策は一般性があるかどうか良く考える必要がある。
  • 電源SWは磁石でなくてリード線で良かったのでは
  • 枠台とモックを分離しておいて慣らし、本物と換装するときには銅線などでしばりあげても、ハトならば耐える
  • アンテナは上向きになるように突合せ圧着端子を使う
  • 熱収縮チューブで全体をカバーすると収縮で内部基盤を壊しやすい・・・・私は両端だけを固定するのかと思っていた。

第2回実験 2010/08/04

放鳥地の記録

放鳥時間 午前7時ごろ 寝坊したものがいて9時になってしまった、痛恨の出来事!

08:35 BirdGPS動作開始
08:36 BirdGPS初期測位完了、ハーネス取り付け開始
08:40 ハーネス取り付け完了、計量(機器総重量 15.4g)
08:47 装着完了
08:50 鳩運搬用の籠を車外へ運搬
09:00 放鳥
09:06 鳩が休止
09:41 鳩の休止地点へ到着、鳩を視認
09:56 鳩が旋回、隣の電柱へ移動
10:36 電池終止により送信停止

別記録  放鳥担当矢澤の記録  SPG

KMLファイル 3D20100804 hato_plus100m.kml DLしてサフィックスをkmlにすること

つくば観測地の記録

DSC_2538sora.jpg DSC_2541furtari.jpg  3時ごろに到着、時間があるので仮眠して朝6時ごろに目覚める。
2010/08/04 6:21:29
受信アンテナの組み立てをして、ワクワク。
DSC03204.JPG DSC03215.JPG 2010/08/04 6:41:48
2系統の受信システムを用意
6mポールの先端は 時田さんが使う
3mほどの所にある八木は玉置が使っている
感度はどちらも良好だった
準備完了、そろそろ放鳥組みからの連絡があるころだ・・・
DSC03209.JPG 2010/08/04 7:17:40
内田さんから、矢澤がまだ来ていないと連絡。
・・・・・、寝過ごしているしかない・・・・
最初は何だか「不幸せの汗臭い青いタオル」なんてアンテナ見ながら言ってましたけど
お手上げ!!!!途中で事故ってるよりもマシだなあと慰めあう
RIMG0001.JPG  2010/08/04 7:25:16
内田さんに連絡を取って、BirdGPSをつけずに放鳥をお願いしようとするが、河川敷に降りているようで連絡が取れない。
そのうちに連絡がつき、内田さんが「曇っているので待とう」、と提案があり、矢澤の失態は救われた。
 09:00 放鳥 
RMOV0024.wmv SANY1342.wmv  ビデオ
2010/08/04 9:04
飛んでる・・・・・時田さんの受信
RIMG0023.JPG   2010/08/04 9:04
飛んでる・・・・・時田さんの受信画面
快挙、21km先のハトからの電波、そして動きがもたらされたとき、アンテナ見ながら乾杯しながら「幸せの清い青いタオル」・・・祝・快挙
 09:06 鳩が休止 
SANY1344.wmv SANY1347.wmv ビデオ  2010/08/04 9:16
受信した位置が動かないのでじっと見つめる。どうしたのかなあ???? 隼に襲われた、無線機が脱落した、ハトのストライキなど
MOV03216.MPG ビデオ 
2010/08/04 9:50
玉置側の受信 ToughBook
DSC03222.JPG 2010/08/04 9:51:47
どうしたのかな・・・・
BirdGPSが脱落した、鷹に襲われて喰われた、暑いので飛ぶのがイヤになった

けっきょく
暑いので飛ぶのがイヤになった ってことらしい。翌朝の朝6時に帰還した。
IMG_3192A.jpg IMG_3192B.jpg  2010/08/04 9:44:53
GPS座標を元に矢澤が自動車でそこまで行き捜したが、「いない」?別の車で来た内田さんが、矢澤の困っているのを見て、@:
「自動車の真上にいるよ!」、そんな精度でした。
ちゃんとアンテナが見える。(矢澤の撮影)
 10:36 電池終止により送信終了 8時に電源を入れているのでちょうど2時間半でした。 
RIMG0028.JPG  2010/08/04 10:53:52
撤収 ニコニコ顔でよかったあ。世界初のリアルタイム観察だったわけだ。
DSC03223.JPG  2010/08/04 11:54:41
最後にGPS情報が届いた地点に行ってみた、周囲景観
その後、眠いながらも皆でそばを食って解散。いやあご苦労様。

第3回(公開)実験 2010/10/11

公開のお知らせ

予定日 2010/10/11

 突然ですが、鳩飼育者の経験値に基づく天候による伝書鳩の挙動予想から、明日9日の放鳥実験を
11日に延期しました。
11日の午前零時ごろから駐車場にいる予定です

「放鳥された鳩は、太陽が見えない場合は上空を旋回し帰るべき方角を探査する」この時、ハンディーを背負っている鳩は集団から遅れる。今回、気温は低いので飛ぼうとするが昼間の単独飛行させるにはリスクが大きい。帰路はオオタカ、ハヤブサの巣窟だ!

放鳥時間 朝の7時と8時 およそ1時間で鳩小屋に到着の予定
放鳥地は結城市、帰巣地は松戸市、概距離は55km
おすすめ観察地↓
 

大きな地図で見る
公開実験 筑波の受信局 googleMAP 
参加登録→yazawa@mail.wind.ne.jp 事前に連絡をいただければ予定変更時には連絡します。
アマチュア無線家、鳥が好きな人、誰でもOK 現場にはJQ1YUR関係者、JA1QPY,JP1COK,JK1WHNがいます。

実験環境(送受信機、観測値)はこのページに掲載してある以前の実験と同じです。

参観は無料、筑波山の表筑波スカイライン内の「子授け地蔵駐車場」がおすすめ。
ここで約22km離れた場所の放鳥地(茨城県結城市)で放鳥された伝書鳩の移動経路を受信します。
温かい飲み物と、軽食の用意をするつもりなので、参加登録していただければ嬉しい。
 つくば第3回電波伝搬実証実験について(公開実験の実験担当者向けの内部通報)
 実施日:平成22年10月11日(土)
 放鳥場所:36°16'42.12"N、139°54'17.18"E(第1回、第2回と同地点)
 実験者の集合時間:遅くとも6時(放鳥地)、受信地つくば(つくば子授け地蔵駐車場)、遅くとも5時
      受信地松戸(主水水門)6時で大丈夫でしょう。
 放鳥時間:7時・8時の2回
 放鳥数:2羽
 放鳥種:カワラバト(伝書鳩)
 装着用の平組紐調達(黒、茶各15m)→ 放鳥地へは内田さんが持参します。
 装着者:内田聖・内田優 各氏

記録

第3回つくば伝書鳩実験その他のデータ by Ken.T
  1. 伝書鳩の重量   1羽目 470g   2羽目 430g
  2. 1羽目の伝書鳩の飛翔距離 31.65km (放鳥地から直線距離 29.96km)
    2羽目の伝書鳩の飛翔距離  9.22km (放鳥地から直線距離 5.36km)
  3. 帰巣出来なかった主な理由
    1羽目 ハヤブサによる捕食と思われる
    2羽目 ハヤブサの捕食
  4. BirdGPS装着以外の鳩は無事帰還
KML/NMEファイル IEではDLしてからファイルサフィックス名をkmlにしてね
1羽目 2010_10_11BirdGPS1.kml TIME_GPGGA2010_10_11No_1.nme
2羽目 2010_10_11BirdGPS2.kml TIME_GPGGA2010_10_11No_2.nme
別記録 SPG

1羽目の解説

1羽目 9:30に放鳥
← 20101011_1A.kmz 図とデータの解説
青色 近傍の高圧線と鉄塔 HV1.kml HV2.kml HV3.kml
濃青 1羽目の飛翔経路 2010_10_11BirdGPS1.kml
TIME_GPGGA2010_10_11No_1.nme
赤線 伝書鳩の予定飛翔経路 pas.kml
黄線 つくば観測地からの最遠距離 32.4km
Google Earth で観察できる。DLするときに上記を参考にしてkmlやkmzの名を補正する必要があるかもしれない。

鳩の行動の想像
 いくつかの仮説があるが、最後に直角に飛翔経路を変更した時に鳩は遠方にハヤブサなどの猛禽類を発見した。その後、高度を上げて逃げ切れた。しかし利根川を越えて鳩舎に向かう途中にある高圧線の鉄塔で待ち受けている別の猛禽に捕獲され、地上に落下した。その時に軽量化のために防水していない送信機が破損した。何に捕獲され送信が停止したのか確実ではなく、同時に放鳥した数羽は鳩舎に帰還したが、この鳩は帰還しなかった。距離が遠くて電波が到達できなかったわけでないのは電波強度の記録から言えるが、結末は想像にすぎず確実に言えるのは時刻と位置座標のみで、その瞬間にそこにいたということだけなのだ。
20101011Pigeon1.wmv
経路に沿って飛行した感じに作った ビデオ(手動飛行)
2010.10.11BirdGPS1.kmz へのリンク この中に飛行操作を表現したものがある。

2羽目の解説

伝書鳩の行動2(詳細)
2羽目 10:34に放鳥
← 20101011_2A.kmz 図とデータの解説
青色 近傍の高圧線と鉄塔 HV1.kml HV2.kml HV3.kml
濃青 2羽目の飛翔経路 2010_10_11BirdGPS2.kml
TIME_GPGGA2010_10_11No_2.nme
赤線 伝書鳩の予定飛翔経路 pas.kml
黄線 つくば観測地からの最遠距離 22.5km
Google Earth で観察できる。DLするときに上記を参考にしてkmlやkmzの名を補正する必要があるかもしれない。

2羽目の鳩の解説 by K.T
 10時34分頃に放鳥した。直後、伝書鳩は1羽目の放鳥時と同様に鬼怒川を渡り帰巣地へ向かうように思えた。しかし、急旋回して鬼怒川を渡り直し、およそ1km先で旋回しながら上昇しているのが見えた。
 鳩レースの経験豊富な内田さんにお聞きしたところ、もし帰巣する方向が分からなくて旋回したとするならば、放鳥直後に旋回しているはず。1kmも飛んだ後の旋回は他に原因がある。例えば、放鳥直後に伝書鳩はオオタカやハヤブサなどの捕食者を目ざとく認知して回避のために急に鬼怒川を渡り直し旋回しながら上昇したと思われる。
 GPS情報からは振り切ったと思われたが、飛翔経路に沿う距離にして7.8kmまでの地点でハヤブサに捕獲されたようだ。その後、送電線鉄塔の中段に運ばれハヤブサの餌食になってしまった。
 受信情報から得られた緯度経度の位置情報を放鳥組に伝え、それを基に状況の把握に務めてもらったところ、最終的に観測できたGPS位置にある鉄塔からヒラリ・ヒラリと伝書鳩の羽毛が落ちてきてハヤブサがお食事中であった。GPS精度で得られたBirdGPSデータの正確さが裏付けられた。
TowerKT.jpg
最終地点・・・鉄塔の踊り場
DSC03471.JPG
 現場で回収した羽毛と翼羽。
 鉄塔の下まで行って見あげると、ハラハラと羽が落ちてきた。

電波伝搬

 9:30に放鳥した。つくば受信地では少し離れた周波数のFMからスプラッタ(シャリシャリ雑音)によって若干の混信があった。FMは10W、こちらは1万分の1W、50dBも小電力なのだからしかたない、おそらくFM受信機ではよっぽど近距離でなくては受信すらできないだろう。
 受信地では6m高さの垂直系と地上1mぐらいで水平においた5素子の八木アンテナを使った。八木アンテナは利得を稼ぐ目的ではなく、指向性で混信を排除する目的に非常に役立つことが判明、鳩が背負って飛んでいるので偏波面はあまり関係ないようだ。(JA1QPY)

●観測法
  • 八木アンテナは利得を稼ぐためではなく、サイドやバックの切れを利用して混信を避けるために使える
  • 2つの異種アンテナ+受信システムてデータ合成するのが良い
  • 垂直系と水平系はこだわる必要が無い
  • 八木アンテナの高さや向きは受信利得を稼ぐように操作するのではなく、妨害が少なくなるように動かすべきだ
  • 受信能力は目的受信波とそれ以外の雑音と妨害電力との比で決まる
●評価法
  • SNRと高度と距離を手掛かりに数値計算と対応させる
伝搬解析用 JA1QPY

つくば受信地の情景

DSC03395.JPG 前夜の11時ごろに到着、焼肉で酒を飲み、それぞれ自動車の中でくたばる。
DSC03396.JPGDSC03398.JPG
朝5:28 目覚めてみると一面の雲海だ。公開実験なので誰が来てもいいようにNECoRAのロゴマークと無線局免許のコピーを掲示しておく。コピーでは良くないのだが、野外に張り出すわけにも行かないのでコピーをパウチしておいた。JK1WHNはこの小さなキャンピングカー。なかなかよろしい。
DSC03400.JPGSANY2210.JPG
 それぞれが持ち寄った朝飯を食う。前夜の焼肉はもう無いので、私はブドウパンにイワシを挟んでイワシバーが。けっこううまい。海辺ならサザエを買ってくることが良くある。
SANY2212.JPG7:39 アンテナや机などを設備して放鳥を待つ。しかし放鳥地から、霧があり雲の高度も低いので、ハトのためにはしばらく待った方がいいと通報があり待機。けっきょく9:30に放鳥した。
DSC03407.JPG9:30 1羽目の放鳥
 混信が多いがそれなりに抜けはなく受信できる。けっこう混信耐性はあるようだ。6m高さの垂直ホイップは時田さん。私はガードレールの向こう側に三脚で5エレ八木を水平において受信。それぞれが補完しあうような感じだ。後で受信データを合成したらほぼ抜けのない飛翔経路を取得できた。

MOV03403.wmv受信中ビデオ
DSC03410.JPG 私が使っていた八木アンテナ。これは感度を上げるよりもサイドの切れを利用して混信を回避するつもりで使った。
DSC03408.JPG 赤いのが私、シルバーが時田さんの車、垂直のポールを立てている。
20101011.wmvビデオ実験風景

2011/07/04 鳩実験201107

放鳥地(結城市)の気温(小山市アメダス)
2011年07月04日 小山(オヤマ)
北緯:  36 度 20.3 分 東経:  139 度 49.8 分 標高: 44 m
時刻 気温 降水量 風向 風速 日照時間
mm 16方位 m/s h
1 25.0 0.0 東北東 0.8  
2 25.0 0.0 0.6  
3 25.1 0.0 1.1  
4 24.7 0.0 0.5 0.0
5 24.5 0.0 静穏 0.2 0.0
6 25.0 0.0 北北東 0.5 0.0
7 26.9 0.0 南南西 1.5 0.0
8 28.6 0.0 2.7 0.5
9 29.2 0.0 南西 4.1 0.7
10 30.1 0.0 南西 4.5 0.6
11 31.6 0.0 西南西 4.8 0.7
12 32.7 0.0 西 2.5 1.0
13 33.1 0.0 西 1.7 0.5
14 35.4 0.0 西南西 2.3 0.7
15 36.5 0.0 4.2 1.0
16 34.4 0.0 5.8 1.0
17 32.3 0.0 4.8 0.6
18 31.2 0.0 3.5 0.0
19 30.6 0.0 南南西 2.5 0.0
20 29.1 0.0 南西 3.0 0.0
21 28.5 0.0 東南東 1.4  
22 28.4 0.0 南南東 2.4  
23 26.9 0.0 北北西 1.6  
24 26.1 0.0 北北東 0.7  
写真記録

電波状況

測定器 MS2034A
アンテナ FT817付属の ヘリカル

全般的なノイズ状況 MAX HOLDで観察
144.450MHz は静か-130dBm程度
MAX HOLDで観察

中心の144.450MhzがMAD-SS JQ1YUR
ピークで-120dBm程度

左右の山 144.440/144.460MHz はFM局。
彼らは700Hzほど周波数がずれている。
ピークで-85〜-90dBmの受信電力。

混信状況、わずかにスプラッタが感じられるが、全く問題なかった。

20kHz単位で設定されている隙間の周波数に設定したのは正解だった。

144.470MHzの→にある小山はSSB(USB)を144.470MHzに設定して送信したのだと思える。左の小さい山はSSBのLSB側が漏れている、あまり性能のよくないSSB送信機だ。でもピークよりは30dB落ちているから実用には耐える、おそらくフィルタがよくないのだろう。

逐次状況

..end