福井銀、福邦銀と間接部門を統合 10月に連結子会社化
福井銀行は14日、同じ福井県が地盤の福邦銀行を10月1日付で連結子会社化すると発表した。50億円の第三者割当増資を引き受け、議決権ベースで51.98%の普通株式を取得する。店舗やATMを統廃合するほか、総務や管理といった間接部門は福邦銀と統合する。地銀を取り巻く経営環境は厳しく、体質強化と経営判断の迅速化が必要だと判断した。
福井銀・福邦銀グループは福井県に本店を置く唯一の地銀となり、同県内の預金シェアで55%、貸出金シェアで49%を占める。コスト削減や投資抑制といった相乗効果は、2025年3月期までに累計70億円、30年3月期までには累計180億円と見込む。
福井銀の林正博頭取は同日午前の決算発表会見で2ブランドの維持を強調した。「福邦銀のトップを福井銀から出す考えはない」と明言、将来の合併にも「効果が出なければ次の方法もあるが、スタートではこのやり方をしたい」と否定的だ。勘定系システムの統合も「そこまでする必要はない」とした。
福邦銀の渡辺健雄頭取も同日午後の決算会見で「福邦銀は零細企業や個人事業主など、規模に見合った顧客を支えていく。我々単独ではできないことは協調するなど、福井銀と関係を強化することが重要だ。連結子会社だが(吸収されるわけではなく)一つのグループになるのだと強調したい」とした。
福邦銀は24年3月末を期限として60億円の公的資金の注入を受けているが、増資の払込期日と同日の10月1日付で返済する計画だ。
来期の役員改選時期に合わせ、福井銀から1~2人を福邦銀に派遣する。総務、管理といった間接部門も25年3月までに集約する。まずは同一拠点に両行の行員を集めて事務手続きを共通化。業務や人員を削減し、浮いた人員は営業、融資、企画・人事といった両行に残る業務にそれぞれ再配置する。
現在、両行合わせて110拠点ある店舗数は店舗内店舗化や統廃合などを含め、25年3月末までに約2割、370台あるATMの台数は約1割を削減する。すでに小松支店(石川県小松市)は両行の支店が同じ建物に入る店舗内店舗の形式で運営されており、ATMの共同化も進みつつある。
福邦銀の渡辺頭取は「これまでのビジネスモデルは変わりつつあり、総合金融サービスとしていろいろなことをしていく。若手や中堅は(子会社化を)前向きに捉え、あらためて福邦銀の役割を考えてくれているようだ」と話した。
経営統合などが条件となる日銀の地銀支援策について、福井銀の林頭取は「検討開始時にはなかった話だが、非常にありがたい。今の形なら申請できると思う」と話した。福邦銀の6月の株主総会で正式に増資が決まり次第、申請するとした。
同日発表した福井銀行の21年3月期の連結純利益は前の期比19%増の25億円、本業のもうけを示す単体のコア業務純益は38%増の51億円だった。福邦銀行は19%増の2億6100万円、コア業務純益は70%増の3億6900万円だった。22年3月期の業績予想については、両行とも連結子会社化の影響が見通せないとして未定とした。(鈴木卓郎)