休眠特許買い取りファンド設立 官民で知的財産活用促進
官民ファンドの産業革新機構は25日、電機メーカーが活用できない「休眠特許」を買い取るファンドに約30億円を出資すると正式に発表した。ファンドは集めた特許を新興国企業などに貸し出して収益を得る。ファンドにはパナソニックや三井物産も出資し、官民を挙げて日本の知的財産の活用を進める。
ファンドは、三洋電機で特許管理に携わった吉井重治氏が社長を務めるアイピーブリッジ(東京・墨田)が7月に設立した。革新機構は同社とファンドに出資。当初は電機メーカーから携帯電話などに関する5000件の特許を取得し、将来的には300億円規模のファンドを目指す。
国内の企業などが保有する約135万件の特許のうち、約半数は収益を生まない休眠特許となっている。特に携帯電話や薄型テレビなど、同じ分野で多くの企業が競合してきた電機メーカーには休眠特許が多い。特許は保有するだけで更新費がかかるため、活用が課題となっていた。
ファンドは休眠特許を買い取るだけでなく、特許取得に携わった技術者を複数の企業から集めて事業化する役割も担う。特許が無制限に海外に流出するのを防ぎ、国内のベンチャー企業の研究開発をうながす。
特許や商標など知的財産を生かしたビジネスは国内で停滞気味だ。2012年の日本の特許出願件数は08年比で12%減った一方、中国や米国では増加している。経済産業省関係者は「企業が特許を取得しても生かす道がない」と、伸び悩みの背景を解説する。
ファンドの設立で休眠特許の活用がすすめば、電機メーカーの技術開発を後押しする可能性もある。25日に記者会見した吉井氏は「家電メーカーの知的財産の再編を進めたい」と話した。
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