EUがキーウで初の外相会合 来年に最大50億ユーロの支援提案 「支援疲れ」払拭狙い

キーウで開催されたEU外相会合に参加した各国外相やウクライナのゼレンスキー大統領(中央)ら=2日(ウクライナ大統領府提供・AP=共同)
キーウで開催されたEU外相会合に参加した各国外相やウクライナのゼレンスキー大統領(中央)ら=2日(ウクライナ大統領府提供・AP=共同)

【パリ=板東和正】欧州連合(EU)は2日、ロシアの侵攻を受けるウクライナの首都キーウ(キエフ)で外相会合を開いた。EU域外での外相会合の開催は初めて。EUの外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は会合後の記者会見で、来年に最大50億ユーロ(約7800億円)の支援を実施する方針をウクライナに提案したと表明した。欧米で「支援疲れ」が懸念される中、EUとしてウクライナへの連帯と支援継続を強調する狙いがある。

外相会合には、ボレル氏とEUに加盟する27カ国の外相らが一堂に会した。ウクライナのゼレンスキー大統領やクレバ外相も参加し、ウクライナへの軍事支援の拡充や同国が目指すEU加盟などを協議した。クレバ氏は記者団に「歴史的な出来事だ」と開催を歓迎。ゼレンスキー氏は会合で、ウクライナがロシアに勝利できるかどうかは「(EU諸国)の協力にかかっている」と訴えた。

ボレル氏は外相会合後の会見で、会合をキーウで開いたことで「EUはウクライナに連帯と支援の強いメッセージを送った」と強調。軍事支援に使えるEU基金「欧州平和ファシリティ」の下で、来年に50億ユーロを上限とする支援策をウクライナ側に提案したと述べた。また、同国のEU加盟を認めることが「安全保障上、最も強力な約束だ」との見解を示した。ボレル氏は9月30日にもウクライナ南部オデッサに訪問し、支援継続を表明した。

ウクライナへの支援をめぐっては、ウクライナ軍の反転攻勢が難航する中、欧米諸国で「支援疲れ」が目立ちつつある。米国では、9月30日に可決・成立した11月中旬までの政府支出を手当てするつなぎ予算から、ウクライナ支援が除外された。中欧スロバキアで9月30日に実施された国民議会選では、ウクライナへの軍事支援の停止を訴えるフィツォ元首相率いる左派「スメル(道標)」が第1党となった。

仏紙ルモンドによると、2日の会合に出席したコロナ仏外相は「(会合は)ウクライナが勝利できるまでEUが同国を断固として永続的に支援する方針を示した」とした上で「(EU諸国の)疲弊をあてにすべきではないというロシアへのメッセージだ」と訴えた。

クレバ氏は2日、ロイター通信などに「米国の支援が損なわれたとは感じていない」と指摘。スロバキアの国民議会選の結果については、今後同国で連立交渉が行われるとして「(状況を)判断するには時期尚早」と述べるにとどめた。

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