関西の議論

泳ぐイノシシ、琵琶湖にも…「源氏落ち武者の島」に渡って定住、深刻被害も打つ手なし

 イノシシは身を隠せる茂みの多い環境を好むため、個体数が増えると、耕作が放棄され下草が生い茂ったかつての農地まで山から下りてくる。こうして、イノシシと人間の居住域が重なり出したという。少子高齢化や過疎化の思わぬ影響だ。

 滋賀県の場合、琵琶湖岸近くの田畑まで生息域を拡大しており、さらに新たな生息域を見つけるため湖を泳いで渡ったと考えられる。高橋名誉教授は「イノシシは鼻がいいので、島の作物のにおいをかいで島を目指したのかもしれない」と話す。

 「泳ぐイノシシ」は沖島だけの現象ではない。高橋名誉教授が平成25(2013)年に西日本の自治体に行ったアンケートでは、沖島のほか、小豆島(香川県)や壱岐島(長崎県)など110の島でイノシシの上陸が確認された。同様の調査では1980年代は3島、90年代は17島、2000年代は42島だったといい、イノシシの上陸は近年急増している。

 高橋名誉教授は「5キロ程度の遊泳は珍しくなく、最長20キロ程度は泳ぐ。山の動物という観念をなくし、海岸付近でも対策が必要」と訴える。

 欧米ではイノシシが海や川を泳ぐことはよく知られ、「グッド・スイマー」とも呼ばれているという。

 滋賀県では平成28年、国宝・彦根城(彦根市)の外堀沿いの遊歩道にイノシシが出現。観光客ら4人にかみつくなどして重軽傷を負わせたことがあった。イノシシは直前に彦根港周辺で目撃されており、川や琵琶湖を泳いでやってきたとみられている。沖島では人的被害は出ていないが、対策は急務だ。

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