アダルトレーベルの歴史研究

人気女優がずらりと専属に名を連ねる熟女専門メーカー「マドンナ」は、2003年に誕生。多くの競合メーカーがあるなかで、「いい女優」と「いいドラマ」にこだわり続け、「人妻・熟女 No.1 メーカー」を標榜するまでに成長した。今月は主力レーベル「Madonna」について、チーフプロデューサーの冨野氏に聞いた。

第12回 Madonna「熟女AVの常識を打ち破りたかった」


『『また僕のポストに、奥さん宛の郵便物が届いていました…。』 偶然を装い誘う人妻 水戸かな』(画像提供:マドンナ)

第12回 Madonna「熟女AVの常識を打ち破りたかった」

いまや熟女AVのジャンルでは、スター性の豊かな美熟女が百花繚乱の観がある。だが、マドンナが発足した当時、後にこのような状況が出現するとは、筆者を含めた多くのユーザーは想像もしていなかったし、当のメーカーサイドも同様だった。

「当時はまだ熟女物はマニア向けのジャンルでした。30歳を越えた女性で、女優然としたタイプの熟女は、当時のAV界にほぼいませんでしたからね」

マドンナのチーフプロデューサー・冨野氏はこう振り返る。たしかに、かつての熟女AVはマニア向けどころか、キワモノ扱いすらされることもあった。「どこかの普通のおばさん」が出演している作品が大半だったからだ。


『アナタの全てが、欲しいの──。年上の人妻に溺れる、甘噛み性交。 遥あやね』(画像提供:マドンナ)

そんな時代にあって、マドンナは『男喰い熟女〜ザーメン搾り〜』『麗しの団地妻1』『麗しの団地妻2』『熟女おもらし恥態6連発 1』の4作品をリリース。2003年の12月5日のことだ。マドンナの歴史はここから始まった。

「もともとは、CS放送用の素材だったんです。そうして撮り溜めた映像をDVD作品として販売するためにマドンナが立ち上げられました。『ドラマと熟女』をコンセプトに掲げ、軌道に乗り始めたのは発足から5年目あたりだと思います。女優さんも増え、企画のバリエーションも広がっていきました。マドンナは、女優さんの色気や艶っぽさ、背徳感といったものに徹底してこだわってドラマを作り続けています」


『母さんの腋の毛 友田真希』(画像提供:マドンナ)

2007年に入社した冨野氏も、こうしたマドンナ発展の歴史の早い段階で、しっかり足跡を残している。

「私が入社する前のマドンナは、チーフ含めて3人のプロデューサーで制作していました。作品へのこだわりや仕事に対する熱意などの面で先輩たちには圧倒されることばかりで、まさに少数精鋭の完成されたチームでしたね。そんなところで一緒に仕事をできたおかげで、かなり鍛えられましたね」

マドンナの初期を支えた女優の1人として冨野氏は友田真希を挙げるが、『母さんの腋の毛 友田真希』(2008年)は、彼の出世作となった。

「当時のチーフから『友田真希さんの腋毛で何か1本撮れ』と言われたのがきっかけなんですけど、僕は『腋毛』ではなく『腋の毛』にしたんです。こっちのほうが、しっとりとした印象があると思って」


「『夫よりも義父を愛して…。浜崎りお』(画像提供:マドンナ)

美熟女+腋毛のインパクトは抜群だし、この指示を出した当時のチーフは慧眼である。だが、それと同じくらいに、冨野氏が作った斬新なパッケージもヒットに貢献しているはずだ。

「それ以前のパッケージ写真は、女優さん単独のニコパチ(正面からの笑顔写真)ばかりだったんですが、目線を外して、男優の姿を写し込んでドラマ内容が伝わるようなものにしたんです。このパッケージのデザインもヒットした一因でしょうし、他のメーカーさんにもずいぶんと影響を与えたように思っています」

そしてもうひとつ、熟女AV界に新風を吹き込んだ冨野氏の功績が、若妻路線の導入である。冨野氏の入社以来、長らくマドンナでは従来のマニア好みの熟女路線が主流だったが、それが切り替わる大きなきっかけになったのが、冨野氏が手がけた『夫よりも義父を愛して…。浜崎りお』(2010年)だ。

「当時の浜崎りおちゃんは巨乳のキカタン(企画単体女優)として人気絶頂でした。僕は『熟女AV=マニアック』という常識を打ち破りたくて、20代の女優さんに初めてマドンナに出演してもらったんです。売れなかったらクビになるだろうと覚悟しての挑戦でしたね」


「【マドンナ】抱かれたくない男に死にたくなるほどイカされて… 総集編3時間」(放送:フラミンゴ)

社内の懐疑的な視線や、従来の熟女AVファンからの「若すぎる」といった苦言をよそに、冨野氏のチャレンジ作品はヒットした。

「好結果が出たことで、若いコが人妻役を演じるのもアリなんじゃないかという意見が出るようになり、成瀬心美ちゃんなど、人気のある若手女優がマドンナで起用されるようになったんです。ライトなユーザーさんたちがマドンナ作品を見てくれるようになったことが大きかったですね」

いまや同社の「ヤングマドンナ」路線はすっかり定着しており、他社では女子●生を演じている根尾あかりや、ギャル役も得意な星奈あいといった20代の人気女優を、若妻役で次々に起用している。


「【マドンナ】抱かれたくない男に死にたくなるほどイカされて… 総集編3時間」(放送:フラミンゴ)

たとえば、今月のフラミンゴで放送される「【マドンナ】抱かれたくない男に死にたくなるほどイカされて… 総集編3時間」は、まさにそれ。神宮寺ナオ八乃つばさ、星奈あい、川上奈々美松本菜奈実などの豪華メンバーを立てた人気シリーズの総集編だ。監督はドラマ巧者として知られる朝霧浄である。

「僕は女優さんの面接を担当しているんですが、彼女たちと話していると、イケメンではなく、ブサイクで嫌いなタイプの男に犯されてみたい願望を持っている人がけっこういるんですよね。そこから着想を得たシリーズです。表現力のある女優を起用し、彼女たちの力を発揮してもらうために、台本を書ける監督に依頼しました。朝霧監督と出会えたことは、大きかったですね。多くの男性がきっと感情移入して興奮できるはずです」

かつては、若い女優に「人妻役」でオファーを出すと、所属プロダクションから難色を示されることもあったものだが、昨今では様子が変わっているという。

「よくプロダクションから言われていたのが、『そのコはまだ人妻物に出すのは早い』ですね。だけど、若い女優さんが他のメーカーではやらないような役で、なおかつ本格的なドラマ物に出演すると、新たな魅力を見せたということでセールスがいいんですよ。S1さんも本格的な人妻ドラマをやるようになってきたし、昨今ではプロダクションも含めて、AV業界全体が人妻物に目を向けているように感じます」


「【マドンナ】業界トップクラスの美魔女W豪華初共演!!北条麻妃×並木塔子 逆3Pハーレム同窓会」(放送:ミッドナイト・ブルー)

ヤングマドンナたちのおかげで、多くのメーカーが、カワイコちゃんな人妻の魅力に気づいたというわけだ。こうして人妻・熟女AVの裾野を広げたという点で、同社がいま掲げている強気のキャッチコピー「人妻・熟女 No.1 メーカー」には納得がいく。

もちろん、同社の原点である熟女作品も、活発なリリースが続いている。たとえば、今月のミッドナイト・ブルーで放送される「【マドンナ】業界トップクラスの美魔女W豪華初共演!!北条麻妃×並木塔子 逆3Pハーレム同窓会」。マドンナ専属の北条麻妃と、「スカパー!アダルト放送大賞2020」熟女女優賞にノミネート中の並木塔子が共演するという豪華絢爛な番組だ。

「実力、エロさともに文句のない2人の共演という部分が最大の売りですが、内容も練り込まれていますよ。学生時代は冴えない存在だった女の子が、大人になって美人になり、同窓会に現れたというもの。これ、男なら誰もがそそる設定のはずですよ」


『幼い頃から大好きだった彼女のお母さんと布団の中でこっそり密着スローSEX 白木優子』(画像提供:マドンナ)

しかも主人公の男は、学生時代は成績優秀なスポーツマンだったのに、今は落ちぶれてしまっているというのがミソだ。

「昔と今とでは立場が逆転してしまった男が、女たちにひれ伏すところにロマンがあると思って作りました」

こうした専属女優による作品群の中で、看板女優として強烈な存在感を放っているのが、白木優子だろう。専属デビューした2012年から今日まで、マドンナ一筋のレジェンドである。

「白木さんは80本くらいに出演していますが、どんな企画に対しても高いポテンシャルを見せるところがすごい。コミカルなものも凌辱系も、気持ちを作って作品に入り込んでくれる女優さんなんですよ」


『専属復活 友田真希』(画像提供:マドンナ)

走り続ける彼女のエネルギー源についても聞いてみた。

「彼女の基本は攻め好きのSなんですね。身長は低い(150センチ)んですけど、『上から見おろしたい』というプライドを持っていて、楽しんで痴女をやっている。特に印象的だったのが、ロケで一緒に南の島に行ったときのこと。そこで展望台を見つけた白木さんは、『周りを見おろしたい』って言って上って、すごくうれしそうにしていました。彼女にはそういう秘めた強い気持ちがあるんです」

そしてもうひとり、冨野氏にとって格別な思い入れのある専属女優が友田真希だ。彼女は2010年に引退したが、2016年にマドンナ専属として業界に復帰している。

「彼女がいなかったら今の僕はいないといっても過言じゃないくらい、彼女は僕の恩人です。だから引退した後もずっとコンタクトを取っていて、戻ってくるならぜひマドンナで、と言い続けてきたんです。そのつながりがあったから、『Madonna10周年記念作品 マドンナ熟女祭 〜10年に1度の大祭を仕切るのは誰!?愛液乱れ飛ぶ婦人会対抗の乱〜』(2013年)にカラミのないエキストラとして出てもらえました」


『専属復活 友田真希』(画像提供:マドンナ)

古巣の10周年記念とあって友田は腰をあげたが、まだこの時点では本格復帰の意思はなかったようだ。

「でも僕は『いつでも待ってます』と熱意を伝えたんです。これがあったからか、2016年に友田さんが復帰する際に、いくつものメーカーからオファーがある中で、マドンナを選んでもらえました。復帰作『専属復活 友田真希』(2016年)の彼女は、やはりまったく色あせていませんでした」

友田真希の魅力を、冨野氏はこう語る。

「白木優子さん同様、美しくて演技力もあって、カラミになるとSEXを楽しんでやっているのが伝わってくるところですね。四十路のしっとりした色気をまといつつ、茶目っ気がかわいらしさにつながっている。そこにおじさんはメロメロになってしまいますよね」


「【マドンナ】新人 圧倒的クビレと神々しいGカップ 栗栖みなみ 28歳 AVDebut!」(放送:フラミンゴ)

北条麻妃、白木優子、友田真希に加えて、次代のマドンナを担う三十路の専属女優も続々とデビューしている。ここ数年で言えば、水戸かな、遥あやねにハートを鷲掴みされたおじさんは多いだろう。多くの候補者の中から彼女たちのような専属女優を選ぶ際、マドンナはどんなポイントに着目してジャッジしているのか。

「女優としてのオーラはもちろんのこと、プレミアム感も求めていますね。例えば、今月のフラミンゴでは『【マドンナ】新人 圧倒的クビレと神々しいGカップ 栗栖みなみ 28歳 AVDebut!』の放送がありますが、彼女のモデル体型の8頭身ボディは、素晴らしい。最高と言っていいでしょう。目が大きくて愛くるしい顔だちながら、からむときは本気の表情で感じてくれる。柔らかい美巨乳も特筆もので、撮るたびに大人の色気を増しているように感じます。見れば即、とりこになること必至です。視聴者の皆さん、栗栖みなみちゃんには要注目ですよ!」

最後に筆者は、マドンナへの長年の疑問をぶつけてみた。「人妻と義父」をテーマにしたマドンナ作品では、男優の小沢とおるが頻繁に起用されているのはなぜなのか。


『汗が滴る夏の日の69~シックスナイン~情交 俯瞰映像で見る卑猥な中年交尾 一色桃子』(画像提供:マドンナ)

「僕が、小沢とおるさんの大ファンなんです。多くの男優さんは女優さんに体がかぶらないように反らして正常位をやるじゃないですか。小沢さんは、とにかく女体をむさぼるようにして本気のカラミを見せる。そこがいいと思い、『夫よりも義父を愛して…。』の第2作目から小沢さんに出てもらったんです。女優さんの体にかぶさってもいいからリアルな性交を見せてほしい、とお願いして」

実際、『夫よりも義父を愛して…。』シリーズの撮影にあたっては、まず真っ先に小沢とおるのスケジュールをおさえにかかったというから、「小沢とおるありき」と言えるだろう。さらに聞くと、筆者がひそかに「小沢とおる物」と呼んでいたマドンナの「人妻+義父」作品は、すべて冨野氏の手によるものだったのだ。

「僕は学生時代から、ヘンリー塚本監督のFAプロ作品が好きだったんです。だからヘンリー塚本監督に師事していたながえ監督も大好きで。その流れで、FAプロやながえスタイルの看板男優でもある小沢とおるさんを義父役で起用しているんです」

冨田氏のこの情熱は、小沢とおるだけでなく、人妻ドラマの名手であるながえ監督までもマドンナに呼び寄せている。


『汗が滴る夏の日の69~シックスナイン~情交 俯瞰映像で見る卑猥な中年交尾 一色桃子』(画像提供:マドンナ)

「ずっとながえ監督にはラブコールを送っており、2012年のマドンナ9周年記念作品や、2016年のながえスタイル10周年記念作品では、ながえ監督とのコラボが実現しました。そしてついに2018年からはマドンナで定期的に監督をしてもらえるようになったんです。その第1作目の『汗が滴る夏の日の69~シックスナイン~情交 俯瞰映像で見る卑猥な中年交尾 一色桃子』(2018年)から、もう会心の出来でした。もちろん男優は、小沢とおるさんです」

こう話す冨野氏は、友田真希と白木優子を語るときと同じように、いい笑顔を見せてくれた。

「小沢とおるさんも、ながえ監督も、僕が立てた企画ですごくレベルの高い仕事をしてくださって、プロデューサー冥利に尽きます」

やはり、熱い想いを実現させるには、「好き」と言い続け、伝え続けることが大事なのだろう。

Profile

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文・沢木毅彦
さわき・たけひこ 1961年生まれ。フリーライター。AV草創期よりAV専門誌にレビュー、取材記事を寄稿。月刊誌、週刊誌、WEBで細々と執筆中。香港映画と香港街歩きマニア。ビールは香港の海鮮屋台で飲むサンミゲル(生力)とブルーガール(藍妹)が最好。
twitter:@berugiisan

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