【本ナビ+1】キャスター、タレント ホラン千秋 つらさを幸福に変える発想『じいじ、最期まで看るからね 育児と介護のダブルケア奮闘記』
『じいじ、最期まで看るからね 育児と介護のダブルケア奮闘記』高橋里華著(CCCメディアハウス・1540円)
CMやドラマなどで活躍してきた著者が、16年目に入った介護の日々とそこから見えてくる家族のあり方をつづったエッセー。介護に奮闘するひとりの女性の等身大の記録として、興味深く読んだ。
30歳を過ぎてからモデルとして再び芸能活動を始めた著者は33歳で結婚する。そんななか、祖父母や母、義父母が次々と体調を崩し始める。38歳で長女を出産してからほどなくして義父母と同居することになる。お料理上手な義母(ばあば)は透析が必要な体。義父(じいじ)は88歳のときにレビー小体型認知症と診断され、暴言を吐いたり幻視があったりする。2人の幼いわが子を育てながら介護にも奮闘する、忙しいダブルケアの日々が始まる。
描かれている介護生活はとてもリアルだしヘビーだ。じいじの認知症は進み、ばあばが亡くなったことすら忘れる。暴力もたびたびで、オムツも欠かせない。甘えたい盛りに甘えられなかった次女が5歳で「赤ちゃん返り」した事実からもその忙しさは想像できる。でも、そんなつらさを柔軟な発想転換によって幸福へ変えていく著者の姿が印象に残る。
介護をする側もつらいけれど、実は本当につらいのは今までできたことができなくなった本人の方かもしれない。じいじの身になって考え、行動する著者は「本当の親子」になれたことを実感する。〈大変さと幸せは、実は同じところにある気がしています。大変さを克服したり、大変なことがちゃんとできたときの達成感が私にとっての幸せだとわかったのです〉
超高齢化社会の現代、家族の介護は誰もが通る道といっていい。どこまで自分で頑張り、どこで周囲に助けを求めればよいのか。介護生活は答えのない選択の連続だということも改めて思う。
『新装版 矢沢永吉激論集 成りあがり How to be BIG』矢沢永吉著(角川文庫・748円)
矢沢永吉さんと番組でご一緒することになったのを機に手に取ってみた。当然ながら、どんな大スターにも日の当たらない下積みの時代がある。幼少期から故郷の広島を出たころ、キャロルの結成と解散…。そんな半生が、あの「永ちゃん」そのままの口調と表現で、リズミカルに書かれた驚きの自叙伝。