弁護士会 地殻変動(4)

タクシー運転手に暴行、預かり金の着服…不祥事多発、イデオロギーより現実的な対策必要

 「おい、なにやってんだ! なめんなよ、コラ!」

 昨年11月6日夜、札幌市内を走るタクシー車内。運転手に激高して何度も座席を蹴りつけ、最終的に仕切り板まで破壊し、「こんなカスに(払う)金ないわ」と吐き捨てて無賃乗車に及んだ男は、札幌弁護士会所属の30代の弁護士=暴行、器物損壊罪で罰金30万円の略式命令=だった。

 暴力団員顔負けの暴れっぷりがドライブレコーダーに克明に記録され、テレビのワイドショーでは「これで弁護士か…」とコメンテーターをあきれさせた。

 司法制度改革による大量増員というコインの裏面なのか、弁護士の不祥事が多発している。懲戒処分の件数は平成26年に初めて100件を超え、28年も114件と過去最多を更新した。

 業務も基準も異なるが、全国に約29万6千人の職員がいる警察の場合、28年の懲戒処分者数は266人だった。弁護士の数はいくら増えたとはいえ、4万人足らず。警察組織よりはるかに高い不祥事の発生率だ。

 背景には、かつてない過当競争に弁護士特有の事情も複雑に絡む。

ベテランに集中の理由

 「若い弁護士が懲戒処分を多く受けているわけでもない。懲戒にも『適齢期』があるんだよね」。東京弁護士会の高中正彦(66)はそう切り出した。

 日本弁護士連合会(日弁連)の副会長を務めた高中によると、適齢期とは十分に経験を積んだ50代前後のベテランを指す。弁護士の懲戒処分で目立つのは依頼人からの事件放置に加え、預かり金の着服。若手には痴漢や酒気帯び運転など「質」の低下を思わせる非行が目立つが、着服などではベテランに懲戒処分が集中しているというのだ。

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