制約なし最適化とは? わかりやすく解説

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制約なし最適化

読み方せいやくなしさいてきか
【英】:unconstrained optimization

概要

実数値関数 f:\mathbf{R}^n\to \mathbf{R} \,与えられたとき, f(x) \,変数 x\in \mathbf{R}^n \, について最小化もしくは最大化する問題を制約なし最適化問題という. このとき f(x) \,目的関数呼ばれる.

詳説

 関数 f:\mathbf{R}^n\to \mathbf{R}与えられたときに,f(x)\,変数 x \in \mathbf{R}^n について最小化(もしくは最大化)する問題制約なし最適化 (unconstrained optimization) 問題という.ここで,f(x)\,目的関数という.ある x^*\in \mathbf{R}^n に対して


f(x^*) \le f(x) \quad \forall \, x \in \mathbf{R}^n


成り立つとき,x^*\,最適解,あるいは大域的最適解という.また,ある x^*\, とその適当な近傍 N(x^*)\, に対して


f(x^*) \le f(x) \quad \forall x \in N(x^*)


成り立つとき,x^*\,局所的最適解という.f(x)\,x^*\,微分可能であるとき,x^*\,局所的最適解ならば


\nabla f(x^*) = 0


成り立ち,さらに2回微分可能ならば,ヘッセ行列 \nabla^2f(x^*)半正定値行列になる.逆に\nabla f(x^*)=0成り立ち,かつ,\nabla^2 f(x^*)正定値行列ならば,x^*\,局所的最適解になる.こうした最適性条件基づいて多く数値解法停留点,すなわち \nabla f(x)=0満たすx^*\, を見つけることを目指している.

 制約なし最適化問題を解くための数値解法は,目的関数値の情報だけを用い直接探索法微分情報用い勾配法 (gradient method) とに大別される[2, 3, 4, 5].勾配法反復法分類されるもので,適当な初期x_0\, から出発してk\, 回目反復近似解 x_k\,探索方向 d_k\,与えられたときに


x_{k+1} := x_k + d_k\,


によって点列 \{x_k\}\,生成していくものである.このとき探索方向決め方によっていろいろな数値解法考えられる探索方向決めるために,目的関数何らかの意味で近似したモデル関数局所的に最小化することが考えられている.モデル関数として,1次モデル2次モデル


\begin{array}{lll} 
f(x_k+d) &\approx& f(x_k)+\nabla f(x_k)^{\top}d, \\
\\
f(x_k+d) &\approx& f(x_k)+\nabla f(x_k)^{\top}d
 +\frac{1}{2}d^{\top}\nabla^2f(x_k)d 
\end{array}


がよく用いられる.1モデル最小化基づいた解法として最急降下法 (steepest descent method) がある.この方法は探索方向d_k :=-\nabla f(x_k) に選ぶものである他方2次モデル最小化基づいた解法には,ニュートン法 (Newton's method),準ニュートン法 (quasi-Newton method),共役勾配法 (conjugate gradient method)などがある.ニュートン法連立1次方程式


\nabla^2f(x_k)d_k=-\nabla f(x_k)


解いて探索方向d_k\,決定するまた,準ニュートン法ヘッセ行列行列 B_k\in \mathbf{R}^{n\times n}近似して,連立1次方程式


B_kd_k=-\nabla f(x_k)


解いて探索方向d_k\,決定するその際勾配ベクトル \nabla f(x)\,情報含んだ更新公式を利用して B_k\,逐次生成していくのが特徴である.いろいろな更新公式が提案されているが,特にBroyden-Fletcher-Goldfarb-Shanno (BFGS) 公式が有効であることが認められている.共役勾配法はこれらとは異なった立場解法で,探索方向


d_k := -\nabla f(x_k) + \beta_kd_{k-1} \qquad
(\beta_k\in \mathbf{R}適当なパラメータ)\,


定義される\beta_k\,選び方として Fletcher-Reeves公式やPolak-Ribiére-Polyak公式がある.ここで,ニュートン法2階偏導関数用いているのに対して準ニュートン法共役勾配法1階偏導関数しか利用しないことに注意されたい

 数値解法有効性特徴づける指標として局所的な収束速さ尺度である収束率 (rate of convergence) と初期点の選び方によらず停留点への収束保証する大域的収束性 (global convergence) がある.収束率観点からみれば,最急降下法高々1次収束しかしない方法ニュートン法2次収束する方法,BFGS公式を用いた準ニュートン法超1収束する方法であるといえる実用的には,超1収束2次収束する方法であることが望ましい.他方大域的収束性そのままでは達成出来ないので,何らかの補助手段を必要とする.代表的な手段として直線探索法 (line search method) と信頼領域法 (trust region method) がある.直線探索法は,探索方向 d_k\,与えられたときに,その方向でステップ\alpha_k\,調節して関数減少 f(x_k+\alpha_kd_k)<f(x_k)\,実現しx_{k+1} :=x_k+\alpha_kd_k\, とおく.直線探索枠組みで,最急降下法準ニュートン法共役勾配法大域的収束性示されている.それに対して信頼領域法は,2次モデルによる近似が妥当であると思われる領域2次モデル最小化するステップ s_k\,選んで x_{k+1} :=x_k+s_k\, とする解法である.2次モデルヘッセ行列用いた場合(ニュートン法対応する)やその近似行列用いた場合(準ニュートン法対応する)の信頼領域法大域的収束性示されている.

 実際応用では,目的関数値を単調に減少させることを緩和した単調アルゴリズムや,ニュートン法において連立1次方程式厳密には解かない非厳密ニュートン法などが効率的であることが知られている.また,大規模問題を解くためには,共役勾配法ヘッセ行列スパース構造用いた信頼領域法ベクトルの形でヘッセ行列情報更新する記憶制限準ニュートン法などが利用されている.なお,実際数値計算では,導関数解析的与え代わりに有限差分近似自動微分利用することも試みられている.

 以上で微分可能な関数最小化問題数値解法取り上げたが,実際には,目的関数が必ずしも滑らかであるとは限らないこうした関数最小化(もしくは最大化)する問題微分不可能最適化 (nondifferentiable optimization) 問題といい,滑らかな関数最小化する問題よりも解くのが難しくなる目的関数 f(x)\,凸性などの仮定をすれば,最適性条件は次式で与えられる


0 \in \partial f(x) \qquad (\partial f(x)劣勾配集合を表す)\,


この条件を満たす点を見つけるためには,前述した数値解法そのままでは使えないので,何らかの工夫をしなければならない目的関数劣勾配利用したヘッセ行列代用品利用することが考えられており,たとえば,バンドル法や一般化ニュートン法 (generalized Newton method) などがある[1, 2].



参考文献


[1] J.-B. Hiriart-Urruty and C.Lemaréchal, Convex Analysis and Minimization Algorithms (I and II), Springer, 1993.

[2] 伊理正夫今野浩刀根薫監訳,『最適化ハンドブック』,朝倉書店, 1995.

[3] 今野浩山下浩,『非線形計画法』, 日科技連, 1978.

[4] J.Nocedal and S.J.Wright, Numerical Optimization, Springer, 1999.

[5] 矢部博,『最適化とその応用』, 数理工学社, 2006.

「OR事典」の他の用語
非線形計画:  凸集合  分数計画問題  分枝限定法  制約なし最適化  制約付き最適化  劣勾配  勾配




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