E型肝炎とは?

E型肝炎

読み方:イーがたかんえん

E型肝炎ウイルスによって引き起こされる肝炎A型肝炎と並んで食中毒の主要因となることが多い。

肝炎には「A型肝炎」「B型肝炎」にはじまりG型肝炎」まで7種類区分がある。特に経口感染するA型肝炎とE型肝炎は、特定の時期集団食中毒引き起こす事例多発する。

E型肝炎(いーがたかんえん)(hepatitis E)

ウイルスによって引き起こされる肝臓疾患のひとつ

感染すると体内に免疫ができ、病原体体内残ったまま一生消えないという特徴がある。感染しても発症せずに終わる「不顕性感染」で、感染本人気づかないうちに感染広がるおそれもある。

現時点では、肝炎引き起こすウイルスとして、A型B型C型D型E型の5種類が知られている。E型肝炎は、他のウイルス性肝炎比べ感染力弱く死亡率が低いと考えられている。

国立感染症研究所は、日本人20人に1人がE型肝炎に感染している可能性が高いという研究結果報告した。これまで海外感染する例は多く見られたが、日本国内でのまん延が疑われている。

(2002.08.14更新


E型肝炎

E型肝炎は、従来経口伝播型非A非B型肝炎とよばれてきたウイルス性の急性肝炎で、その 病原体E型肝炎ウイルスHEV)である。E型肝炎の致死率A型肝炎10倍といわれ、妊婦 では実に20%に達すことがあるまた、日本ヨーロッパ諸国北米大陸においては非A非B 肝炎といえばC型肝炎を意味するが、発展途上国では事情異なり大部分はE型肝炎である といわれる。E型肝炎はアメリカ日本ヨーロッパ等の先進各国では散発的発生し、その大 半は輸入感染症考えられてきた。しかし最近アメリカ日本において全く渡航歴の無いE型 急性肝炎患者がみつかるようになってきたことから、従来、非流行地と思われる地域にもHEV は既に土着していると考えられる

疫 学
HEVアジアにおける流行性肝炎の重要な病因ウイルスである。中央アジアでは、E型肝炎はA型肝炎同じく秋にピークに達するが、東南アジアでは雨期に、特に広い範囲洪水の後に発生する。伝播糞口経路で、主に水系感染である。1955年ニューデリーで共通感染源による流行発生したが、これは飲用上水糞便汚染原因であった。この流行では、黄疸肝炎診断された症例だけでも29,000人に及んだ。これに似た水系感染流行インド中央アジア中国北アフリカメキシコなどでも報告されている。

E型肝炎の多発地域でのIgG抗体保有率は通常80%以上である。一方、E型肝炎の非流行地域考えられている日本で、900人の健常人IgG抗体保有率をELISA法調べたところ、地域間に抗体保有率の差が見られたが、平均抗体保有率は5.4%であった。ヒト以外の動物では、アメリカをはじめ、日本台湾中国韓国インドネパールカナダオーストラリアスペインなどの国々の豚から血中HEV抗体検出されている。豚以外の動物ではラット、牛、羊、山羊ニホンザルなどでやはり血中HEV抗体報告されており、多く動物HEV暴露されている可能性がある。一方HEV遺伝子検出されたのは豚、ラット、それにシカだけである。
現在、HEVにはG1からG4まで4つの遺伝子型報告されているが、理由不明であるが、豚から検出された遺伝子型G3G4だけである。

感染実験では、種を超えてHEV感染成立するとの報告いくつかある。G3G4ヒト由来HEVブタ静脈注射すると、臨床的には無症状経過するが、肝組織は明らかな肝炎を呈し、血液肝臓などの組織からHEV遺伝子検出される。ヒトHEV対す抗体も急速に上昇する。このことから、ヒトHEVブタ複製することが示唆されている。興味深いことに、G1G2HEVでは感染成立しない。つまり、遺伝子型によって、HEV宿主対す感受性異なることが推測される。ブタ由来HEVヒト感染するかどうかはまだ明らかではないが、ブタ由来HEV接種したアカゲザルではウイルス血症がおこり、便にウイルス排泄される。

わが国でも、イノシシ生レバー摂食原因と見られる急性肝炎での死亡例が報告されるなど、これまで動物由来HEVヒト感染することを間接的証明する症例いくつか報告されている。市販豚レバー調べ結果、1.9%からHEV遺伝子検出され、さらに10人のE型肝炎患者について豚レバー摂取歴を調べたところ、発症の2~8週間前に9人の患者が生豚レバー、あるいは加熱不十分の豚レバーを食べたことがある答えている。また、野生シカ肉を生で食べた4人がE型肝炎を発症したことが報告され、患者血清残存したシカ肉から、ほぼ同じ配列を持つG3遺伝子検出されている。これは、動物からヒト感染することが直接証明された初め症例でもある。このように、E型肝炎が人共感染症である可能性強く示唆されている。しかし、シカ抗体保有率やHEV保有状況などはまった把握されておらず、感染状態は依然として不透明である。

病原体

 HEV直径約38nmのエンベロープを持たない小型球形ウイルスで、内部に約7.2Kbのプラス一本鎖RNA遺伝子として持っている形態学的にはノロウイルス類似し、かつてカリシウイルス科分類されていた。しかし、ウイルス遺伝子上のウイルス蛋白配置、特に非構造蛋白機能ドメイン配置カリシウイルスとは全く異なることが明らかになり、2002年国際ウイルス命名委員会では一時的に、「E型肝炎様ウイルス属(“Hepatitis E-like viruses”;一時的命名であるので、ダブルクオーテーションでくくられる)に分類されている(http://www.ictvdb.iacr.ac.uk/Ictv/fr-fstg.htm)。 図1

図1. HEV粒子電子顕微鏡直径は約38nmである。この図では抗体によってウイルス粒子凝集しているようにみえる。

HEV効率よく増殖する培養細胞系は確立されておらず、その複製機構はあきらかではない。チンパンジータマリン、ミドリザルのほか、アカゲザルカニクイザルなどが感受性を示す。これら感染サル胆汁中には多量ウイルス排泄され、研究出発材料として有用である。精製ウイルスの塩化セシウム平衡密度勾配遠心法での比重は1.35g/cm3蔗糖密度勾配遠心法での沈降定数176 s~183 sである。図1 に感染サル胆汁中にみられたウイルス粒子を示す。

臨床症状

他の肝炎ウイルス同様、HEVにとって肝臓主たるターゲット器官考えられる。E型肝炎の臨床症状A型肝炎似ている(図2)。潜伏期間1550日、平均6週間で、これは平均4週間といわれるHAV感染潜伏期比べ、やや長いボランティア糞便材料経口投与した実験では、投与後約5週間発症見られている。悪心食欲不振腹痛等の消化器症状を伴う急性肝炎呈する症状としては、褐色尿を伴った強い黄疸が急激に出現し、これが1215日間続いた後、通常発症から1カ月経て完治する。

図2

図2. E型肝炎の典型的臨床経過

黄疸先立ってウイルス血症出現し、ウイルスは便へも排泄される。A型肝炎と同様、E型肝炎は慢性化しないが、稀にIgM抗体長時間持続したり、便中への排泄伴って長期間ウイルス血症状態が続く例も見られる

E型肝炎の特徴一つとして妊婦劇症肝炎割合が高く、致死率20%にも達すことがある母子感染に関してはっきり分かっていないが、治癒した妊婦胎児発育には影響がないとする報告がある。HEV感染による致死率は1~2%であるが、これもHAV比べ10倍の高さである。E型肝炎の罹患率は、大流行でも散発例でも青年大人1540歳)で高い。小児における不顕性感染A型肝炎比べて低く、対照的である。E型肝炎での肝臓の病理所見は、急性期組織学病変を示す。胆汁うっ滞性の肝炎像は一つ特徴である。

病原診断
遺伝子型間でよく保存される領域塩基配列基づいて、共通のプライマー設計し、これを用いたRT-PCR遺伝子増幅が可能になっている。使われるプライマー増幅領域は各研究グループ異なっているが、よく使われる領域ORF1N末端500塩基、およびORF2中間部分500塩基である。通常患者血清糞便検査材料として使われる。サンプル採集時期によってRNA検出率異なるが、RNA検出期間は発症後の2週間程度考えられる。しかし、発症1カ月後に検出されたケース報告されている。増幅される領域塩基配列系統解析することによって遺伝子型同定できるので、ウイルスの感染源の手かりにもなる。ただし、HEV遺伝子RNAであるため、検出感度サンプル保存条件などに左右される
また、操作中のコンタミにも十分な注意を払う必要がある

 肝炎発症した時点で、HEV対す特異的血中IgM抗体大量産生されるので、診断にはこのIgM抗体検出迅速、かつ最も確実である。抗原には組換えバキュロウイルス作製した、平均密度1.285g/cm3直径23~24nmの中空粒子を用いる(図3)。この粒子を用いたELISAによって、急性期患者血清感染サル血清からHEV特異的IgMIgG抗体を、回復期患者血清感染サル血清からIgG抗体検出することができる。また、この粒子免疫原として作製した高力血清用いて患者糞便からHEV抗原特異的検出するELISA開発されている。したがって、この中空粒子は、ネイティブ粒子に近い抗原性免疫原性を持つ粒子であることも明らかになった。
海外ではAbottGene Labなどから診断販売されているが、わが国へは輸入されていない上記中空粒子を用いたELISA市販されていないが、血清診断下記行政検査として受け付けている。

図3

図3 . H E Vウイルス中空粒子(VLP)
組換えバキュロウイルスウイルス構造蛋白ORF2)を発現することによって、この粒子無限に産生することができる。直径は約24nmである。

連絡先
  国立感染症研究所ウイルス第二第一
  〒208-0011 東京都武蔵村山市学園4-7-1
  電話:042-561-0771(内線357
  ファクス:042-561-4729、あるいは042-565-3315
  電子メール:ntakeda@nih.go.jp


治療予防
治療としては、他の急性肝炎同様に対症療法のみである。劇症肝炎に対しては、血漿交換などによる治療が必要となる。一般的な予防としてはA型肝炎同様に汚染地域考えられる地域旅行する場合に、飲料水食物注意し、基本的に加熱したもののみを摂取するように心がけるワクチンはまだ開発されていない

感染症法における取り扱い
E型肝炎は4類感染症定められており、診断した医師直ち最寄り保健所届け出る報告のための基準以下の通りとなっている。
○  診断した医師判断により、症状所見から当該疾患が疑われ、かつ、以下のいずれか方法によって病原体診断血清学診断がなされたもの
血清抗体検出
  例、 特異的IgM抗体陽性のもの
病原体遺伝子検出
  例、 RT-PCR法による遺伝子検出

国立感染症研究所ウイルス第二部 武田直和

  






E型肝炎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/04/02 01:43 UTC 版)

E型肝炎(Eがたかんえん、: hepatitis E)は、ウイルス性肝炎の一種で、E型肝炎ウイルス(略称HEV)と呼ばれる接触感染性ウイルスによって起こる。ウイルスが発見されるまでは日本においては経口伝播型非A非B型肝炎と呼ばれていた。日本の感染症法での取り扱いは4類感染症[1]




  1. ^ 感染症法に基づく医師の届出のお願い 厚生労働省
  2. ^ 病気がみえるVol.1 「消化器」第4版 P190 メディックメディア社発行 ISBN 978-4896323245
  3. ^ Balayan MS, Andjaparidze AG, Savinskaya SS, Ketiladze ES, Braginsky DM, Savinov AP, Poleschuk VF. Evidence for a virus in non-A, non-B hepatitis transmitted via the fecal-oral route. Intervirology 20: 23-31, 1983
  4. ^ 矢野公士、玉田陽子、八橋弘、E型肝炎の臨床 日本消化器病学会雑誌 Vol.106 (2009) No.2 P188-194, doi:10.11405/nisshoshi.106.188
  5. ^ 三好龍也、李天成、武田直和ほか、野生イノシシの肝臓, 血液からE型肝炎ウイルス遺伝子の検出 肝臓 Vol.45 (2004) No.9 P509-510, doi:10.2957/kanzo.45.509
  6. ^ 注目すべき感染症 E型肝炎 国立感染症研究所 感染症発症動向調査週報 第47号ダイジェスト 2004年第47週(11月15~21日)
  7. ^ 田中栄司、清澤研道:E型肝炎 肝臓 Vol.42 (2001) No.3 P114-119, doi:10.2957/kanzo.42.114
  8. ^ 岡野宏、赤地重宏、中野達徳ほか、三重県北中部で持続発生しているE型肝炎の主たる感染株(ヨーロッパ型3e/3sp株)の県内産豚からの特定 肝臓 Vol.55 (2014) No.9 p.553-555, doi:10.2957/kanzo.55.553
  9. ^ 岡本宏明:E型肝炎の現況 日本内科学会雑誌 Vol.95 (2006) No.5 P945-951, doi:10.2169/naika.95.945
  10. ^ a b c d イヤーノート 2015: 内科・外科編 B-33 メディック・メディア ISBN 978-4896325102
  11. ^ 野生イノシシ肉がE型肝炎感染源に 国立感染症研究所 感染症情報センター
  12. ^ E型肝炎について(ファクトシート) 厚生労働省 検疫所
  13. ^ 李天成、武田直和、E型肝炎ワクチン 日本消化器病学会雑誌 Vol.106 (2009) No.2 P195-200, doi:10.11405/nisshoshi.106.195
  14. ^ 豚レバーを生で食べるリスクに関する注意喚起 厚生労働省 医薬食品局食品安全部監視安全課 平成24年10月04日


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