【93式空対艦誘導弾】(きゅうさんしきくうたいかんゆうどうだん)
ASM-1(80式空対艦誘導弾)の発展型として開発された国産の空対艦ミサイル。
通称「ASM-2」。
航空自衛隊のF-2支援戦闘機などを発射母機として運用される。
ASM-1開発当時からの技術進化に合わせて改良が加えられ、動力に88式地対艦誘導弾で実用化されたTJM2ターボジェットエンジン(推力260kgf(2,550N))を搭載することにより、ASM-1の3倍以上の射程を有する。
また、誘導方式を慣性誘導(中間誘導)と赤外線画像誘導(終末誘導)との組み合わせとすることによって、敵側のECMを無効にし、個艦識別能力と命中点選択機能を獲得している。
弾頭はASM-1同様にPBX系炸薬を使用した徹甲榴弾であるが、ASM-1と異なり、新たに焼夷剤が付与されている。
現在では、弾頭部にGPS誘導装置を設置して地上の固定目標を狙えるようになったASM-2Bの配備が進んでいる。
これによって、ASM-2は対艦攻撃から対地攻撃までできるオールマイティなミサイルになったといえる。
そのほかステルス翼が存在しており、ステルス翼を装着することにより残存性を向上させることもできる。
改良の一環として慣性航法装置へリングレーザージャイロを追加して誘導精度を高める試みがなされているほか、データリンク装置を追加してさらなる誘導精度の向上と目標選択能力を高めたASM-2 D/Lの開発が三菱重工より提案されている。
スペックデータ
全長:3,980mm
直径:350mm
主翼幅:1,190mm
(翼取り付け根部):940mm
操舵幅:905mm
(翼取り付け根部):215mm
全備時重心位置質量 (誘導装置先端から):2,230mm(金属翼)、2,102mm(ステルス翼)
全備重量:528kg(金属翼)、532kg(ステルス翼)
信管:着発延期信管
弾頭:焼夷剤付徹甲榴弾(PBX系炸薬を使用)
シーカー:赤外線画像シーカー
誘導方式:慣性誘導(中間誘導)/赤外線画像誘導(終末誘導)
推進装置:TJM2ターボジェットエンジン
最大射程:170km以上
93式空対艦誘導弾
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/04 13:35 UTC 版)
93式空対艦誘導弾(きゅうさんしきくうたいかんゆうどうだん)は、日本が開発・配備した空対艦ミサイル(対艦誘導弾)別称はASM-2[1]、1993年から航空自衛隊に配備されている。改良版(ASM-2/B)は誘導方式にGPSを用いているため、座標を入力すれば対地攻撃も行うことができる。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 技術研究本部50年史 P196-198
- ^ a b c d e f g h 「F-1の誘導兵器とFCS」,川前久和,世界の傑作機No117 三菱F-1,P42-47,文林堂,2006年
- ^ 図解 戦闘機の戦い方,毒島刀也,遊タイム出版,2014年,P186,ISBN 978-4860103491
- ^ a b c d 新空対艦誘導弾“ASM-3”,宮脇俊幸,「軍事研究」,2013年6月号,P38-50,株式会社ジャパン・ミリタリー・レビュー
- ^ 政策評価書(本文)(事前の事業評価)事業名 新空対艦誘導弾(XASM-3)平成14年
- ^ a b 制式要綱 93式空対艦誘導弾
- ^ 誘導武器の開発・調達の現状 平成23年5月 防衛省経理装備局システム装備課
- ^ 平成23年版 日本の防衛 資料18 誘導弾の性能諸元、平成23年度 防衛白書
- ^ 防衛庁技術研究本部 編『技術研究本部50年史 2 技術開発官(航空機担当)』防衛省、2002年11月、117-120頁。
- ^ “ASM-2B改善弾の実射試験時の様子”. Twitter. 2021年1月19日閲覧。
- 1 93式空対艦誘導弾とは
- 2 93式空対艦誘導弾の概要
- 3 主要構造(制式要綱に基づく)
- 4 登場作品
93式空対艦誘導弾(B)(ASM-2B)
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「93式空対艦誘導弾」の記事における「93式空対艦誘導弾(B)(ASM-2B)」の解説
平成13年度(2001年度)に航空自衛隊第4補給処より、既存技術の適用を図ることによりASM-2の運用の柔軟性向上と取得経費低減を目的として「ASM-2の技術改善」(仕様書番号:4補LPS-X02556)が調達要求され、三菱重工業と契約が締結された。契約内容は主にASM-2の誘導部と部隊用点検器材の改修であり、誘導部の改修対象は以下の通りである。 構成及び数量項品名数量備考1 誘導装置 1 改修 2 慣性装置 1 新造 3 GPS受信機 1 新造 4 高度計 1 改修無し 5 オートパイロット電子装置 1 新造 6 電池 1 改修無し 7 誘導部胴体 1 改修 誘導部の改修内容は以下である。 慣性装置の機能を慣性装置及びオートパイロット電子装置に再配分。 慣性装置のセンサ方式を機械式ジャイロから光学式ジャイロへ変更。 民生用GPS受信器を追加。 オートパイロット電子装置の演算補償計測機能に関し、アナログ方式からデジタル方式へ変更。 将来発展性として、オートパイロット電子装置の能力の向上が可能であることが規定されている。さらに上記の機器を搭載するため、CFT器材の搭載ポッドも改修の対象となっている。 上記の納入機器を用いたに各種試験に基づき、航空幕僚監部技術部長より装備部長に対して空幕技1第12号(平成15.1.31)「93式空対艦誘導弾(B)の技術要求事項について(通知)」が通知され、これにより従来の93式空対艦誘導弾の仕様書(CP-Y-0067)が改定された。これが93式空対艦誘導弾(B)である。従来の93式空対艦誘導弾と93式空対艦誘導弾(B)の違いを以下に示す。 93式空対艦誘導弾(B)と従来型との違い誘導部構成品93式空対艦誘導弾93式空対艦誘導弾(B)慣性装置 機械式ジャイロ 光学式ジャイロ GPS受信機 無し 有り オートパイロット電子装置 アナログ方式 デジタル方式 93式空対空誘導弾(B)ではGPS受信器の新規装備により慣性装置へGPS併用航法機能を獲得したことによって、自己位置情報のアップデートが可能となり、航法精度を大幅に向上させた。また、機械式ジャイロから光学式ジャイロへ変更したことにより、ジャイロの低価格化とメンテナンス性を向上させている。さらに、オートパイロット電子装置をデジタル式へ変更したことにより、ソフトウェア更新によるアップデートが容易となった。このソフトウェアの更新が後に改善弾となる。なお、GPS誘導装置は官給品であり、民生品ではなく軍用GPS装置(米国からFMS調達品)となっている。
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