8 Stücke Op.76とは? わかりやすく解説

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ブラームス:8つの小品

英語表記/番号出版情報
ブラームス8つの小品8 Stücke Op.76作曲年1878年  出版年1879年  初版出版地/出版社Simrock 

作品概要

作品解説

2010年1月 執筆者: 伊藤 萌子

本作品集は1871年より第1番作曲開始されたが、曲集としてまとめられたのは1878年ペルチャハ滞在であった。この時期とりわけ1877年から79年は、ブラームス創作活動が最も盛んな時期とされている。
 本項目ではまず1871年からの1878年頃までのブラームス活動において、とりわけ重要だ思われる作品触れながら、その様子を述べることにする。
ブラームス38歳1871年には、(その前年普仏戦争勝利により)宰相ビスマルク据えたドイツ帝国成立するブラームス熱烈なプロイセン及びビスマルク礼賛者でもあり、普仏戦争勝利を祝してドイツ勝利凱旋歌》Op.55作曲している。これはヴィルヘルム2世(1859-1941) に献呈されている。また、管弦楽合唱による《運命の歌Op.54作曲行っている。これは、ドイツ詩人思想家ヘルダーリン(1770-1843)の歌「ヒュペーリオン」にインスピレーション受けた作品で、1871年5月完成初演された。ブラームス死生観あらわした傑作として位置づけられている。1871年12月よりブラームスウィーン楽友協会音楽監督就任しており、1875年4月3日まで務めた彼の演奏会では同時代作曲家取り上げられることが少なく1516世紀音楽ヘンデルバッハなど古い時代音楽中心としていたことが特徴としてあげられる
1873年からは《交響曲 第一番》Op.68への足がかりとなるような作品例えば《弦楽四重奏曲Op.51、《ピアノ四重奏曲第3番》Op.60、《ハイドンの主題による変奏曲Op.56といった作品書き上げられている。この年には、ワーグナーパトロンとして名高いバイエルン国王ルートヴィヒ2世(1845-86)より、「科学芸術のためのマクシミリアン勲章」を授けられた(同時にワーグナー授賞している)。また1874年にはプロイセン芸術アカデミー名誉会員選ばれるなど、ブラームス名声高まっていったのである
1875年にはオーストリア国家奨学金選考委員引き受け若きドヴォルジャーク作品審査している(ブラームス彼の才能高く評価し出版社ジムロック紹介する等した)。ブラームスこの年楽友協会との不和により音楽監督辞任したが、職を失うことで生活が貧しくなるともなく、むしろ彼は作曲報酬のみで生活を送ることの出来た最初作曲家でもあった。1876年にはブラームス初の交響曲である《交響曲 第一番》Op.68初演される。この交響曲は、最初の構想から完成までに約二十年要した大作である。ブラームス作曲開始した1850年代から完成に至る1870年代は、交響曲というジャンル転換期にもあたっており、リストが「交響詩」と呼ばれる新たなジャンル生み出すなど、様々な方向動き出した時代であった
1877年から1879年にかけて、ブラームスは夏の間、オーストリア南部ケルンテン州にあるペルチャッハという町で過ごしたペルチャッハアルプス山々囲まれケルンテン州最大の湖、ヴェルダー湖のほとりにある保養地で、風光明媚の地として現在でも沢山の人で賑わっている。
1877年には同年6月から取り掛かっていた《交響曲第ニ番》Op.73完成させている。第一番に比べて短期間作曲され第二番はのびやか雰囲気持っている。その他、歌曲集9つの歌》Op.69や《5つの歌》Op.71二重唱曲《バラードロマンスOp.75など多く作品作曲された。
翌年ペルチャッハにおいて本項目で扱っている作品群の内、残りの5曲が作曲されそれまでの曲とあわせて、《8つの小品Op.76としてまとめられている。初版1879年出版された。
1877年79年ブラームス状況については、1879年作曲された《2つのラプソディOp.79解説参照のこと)
全曲初演1879年10月29日ハンス・フォン・ビューロー(1830-94)によってベルリン行われたビューロードイツでも指折り指揮者でありピアノ名手で、初期とりわけワーグナー傾倒しており、ワーグナーの《トリスタンとイゾルデ》や《ニュルンベルクのマイスタージンガー》の初演行っている。後にワーグナーから離れ1880年マイニンゲン宮廷楽団音楽監督・指揮者となったことから、ブラームスとの親交生まれたワーグナーブラームス音楽史上、対立的に語られることも多いが、実際はそう単純なものではない(ブラームスワーグナー作品多くを耳にしているし、またその音楽語法を自らに取り入れてすらいる)。ビューロー両者深く関わり、かつブラームス良き理解者でもあった。彼はこの曲集を好み各地演奏したという。
本曲集は二部構成となっており、第1番から第4番第一集第5番以降第二集となる。第一集第二集ともカプリッチョインテルメッツォ含まれている。この作品は、ブラームス後期作品の出発点とみなすことも出来るとされており、全体的に見てカプリッチョ動きの多い曲で、インテルメッツォ内省的な性格持っている。しかし、彼はこれらの作品のタイトル決めるのを困難に思っていたようで、出版社ジムロック宛に何か良いタイトル思いつくかどうか尋ねている。ブラームスは、インテルメッツォという名称を気まぐれでも情熱的でもないものに対して付けていたようである。

第1番 奇想曲 嬰へ短調 "Capriccio" fis moll
1871年作曲同年9月クララ・シューマン誕生日贈られとされる低音域を用いた嬰へ短調主和音上の分散和音から静かに始まり分散和音はより低音域へと向かう一方、一小節ごとに打ち鳴らされる和音次第高音域に向かい、9小節目でお互いフォルテッシモ属和音へと至る。次にあらわれるCis-D-Fis-Eisの新たな旋律繰り返されるごとに低音域に移り後半に至ると転回形中声部にあらわれる。同時に奏する伴奏左右の手弾き分ける形を取っている。

第2番 奇想曲 ロ短調 "Capriccio" h moll
本曲は最も早く初演が行われており、1879年10月22日 イグナーツ・ブリュル(1846-1907)によって披露された。スタッカート絶え用いられている、躍動感溢れ作品冒頭主題には、左手奏される音の弱拍アクセント付けられているのが特徴的である(楽曲後半冒頭旋律異なった伴奏とともに再びあらわれる際にはアクセント付けられていない)。

第3番 間奏曲 変イ長調 "Intermezzo" As dur
1878年頃までに作曲されたとされている。冒頭にはドイツ語で「優雅に表現豊かに(Anmutig, ausdrucksvoll)」との指示もあり、弱拍から始まる高音域の旋律印象的な静かな作品。この曲及び第4曲に用いられている、虚ろとも言える和声ブラームス音楽及び人生転換期暗示しているのではないかとの指摘をする研究者もいる。

第4番 間奏曲 変ロ長調 "Intermezzo" B dur
1878年頃までに作曲されたとされている。三部形式旋律付点リズム多く用いられている。右手内声Es音のシンコペーションによる持続音を置き、また左手伴奏リズム執拗に保持されている。主調変ロ長調であるが、明瞭に認識出来部分中々現れず、優雅な様相中にも不穏さをにじませている。その為、高音域へときらきら上っていく楽曲終結部がより効果発揮している。

第5番 奇想曲 嬰ハ短調 "Capriccio" cis moll
第二集最初の曲であり、1878年頃に作曲されたとされている。冒頭にはドイツ語で「きわめて興奮して、しかし速すぎずに(Sehr aufgeregt,doch nicht zu schnell)」と指示あるように、前曲と打って変わってオクターヴ打ち鳴らす激しい曲。本曲集の中では規模大き部類入りピアノ技巧的に比較難度のある曲だと思われる冒頭主題では8分の6拍子は、4分の3拍子的にとられているが、次のオクターヴ多用した主題では2拍でとられているように多層的なリズム扱い特徴あげられる最後フォルティッシモ劇的に閉じる。

第6番 間奏曲 イ長調 "Intermezzo" A dur
1878年作曲されたとされている。ドイツ語指示は「穏やかな動きをもって(Sanft bewegt)」となっているように、落ち着いた作品ポリリズム(異なリズムあるいは拍節重ね合わされることを意味する中世多声音楽あるいはジャズなどによく見られる)が用いられている。

第7番 間奏曲 イ短調 "Intermezzo" a moll
1878年作曲されたとされている。冒頭主題重々しく和音主体で、この主題楽曲始め終わり用いられている。中間部にはE-Dis-E-C-Gis(As)を多用した旋律挟まれており、その音形を用いた転調繰り返され、再び元の旋律回帰している。シンメトリー捉えることも可能な形式になっている

第8番 奇想曲 ハ長調 "Capriccio" C dur
1878年作曲されたとされている。ドイツ語指示は「優雅に生き生きと(Anmuthig lebhaft)」とあるように、華やかさ備えている。分散和音の音形と幅広い音域用いたピアニスティックな作品楽曲終結部は、第一集終曲第4番同じように、しかしさらに華やかに高音域へと駆け上がって閉じられる作りになっている




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