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飯島晴子

飯島晴子の俳句

いつまでもかくれてゐたく萩青し
うしろからいぼたのむしと教へらる
うすうすと稲の花さく黄泉の道
うたたねの泪大事に茄子の花
かげろふの坂下りてくる大あたま
これ着ると梟が啼くめくら縞
さきほどのひとは盥に冷えてをりぬ
さつきから夕立の端にゐるらしき
さるすべりしろばなちらす夢違い
ていねいにからだを拭いて黒鯛くふ
ねんねこから片手でてゐる冬霞
はんざきの傷くれなゐにひらく夜
らしくともらしくなしとも猪の跡
わが末子立つ冬麗のギリシアの市場
一徹の弘法麦の穂なりけり
人の身にかつと日当る葛の花
今頃は桜吹雪の夫の墓
先頭を行くことにして黴の花
八頭いづこより刃を入るるとも
冬虹のいま身に叶ふ淡さかな
凍蝶を過のごと瓶に飼ふ
初夢のなかをどんなに走つたやら
十薬の蕊高くわが荒野なり
友の棲む氷の島の見えて来し
吊柿鳥に顎なき夕べかな
土筆飯ならば少々神妙に
天網は冬の菫の匂かな
孔子一行衣服で赭い梨を拭き
寂しいは寂しいですと春霰
寒晴やあはれ舞妓の背の高き
年迎ふ鈴を惜まず三番叟
弱音吐かなくて何吐く雲の峰
恋ともちがふ紅葉の岸をともにして
拝みたき卒寿のふぐり春の風
旅客機閉ざす秋風のアラブ服が最後
春深くエゴン・シーレの男女かな
春田のなかしきりに勇気勇気といふ
昼顔は誰も来ないでほしくて咲く
月光の象番にならぬかといふ
樹のそばの現世や鶴の胸うごき
死ぬ人の大わがままと初蛙
泉の底に一本の匙夏了る
玉葱はいま深海に近づけり
男らの汚れるまへの祭足袋
白髪の乾く早さよ小鳥来る
祭笛袋より抜く海静か
穴惑刃の如く若かりき
竹植ゑてそれは奇麗に歩いて行く
筍をゆがく焔の快楽かな
箱庭の草心外にそよぎをり
 





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