金閣寺 (小説)とは? わかりやすく解説

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金閣寺 (小説)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/30 23:24 UTC 版)

金閣寺』(きんかくじ)は、三島由紀夫長編小説。三島の最も成功した代表作というだけでなく、近代日本文学を代表する傑作の一つと見なされ、海外でも評価が高い作品である[1][2][3]金閣寺に憑りつかれた学僧が、それに放火するまでの経緯を一人称告白体の形で綴ってゆく物語で、戦中戦後の時代を背景に、重度の吃音症宿命、人生との間に立ちはだかる金閣の美への呪詛と執着のアンビバレントな心理や観念が、硬質で精緻な文体で綴られている。それまで三島に対し懐疑的否定的な評価をしていた旧文壇の主流派や左翼系の作家も高評価をし[1][4]、名実ともに三島が日本文学の代表的作家の地位を築いた作品である[3][5]


注釈

  1. ^ これと同時に、豪華限定版200部も刊行された。
  2. ^ 『金閣寺』の直筆生原稿の一部の白黒コピーも、「三島由紀夫文学館」に展示されており、推敲や削除の苦心の跡が見える。三島の原稿はあまり直しがないという伝説があったが、実際には清書の前に細かな手入れや推敲が重ねられている[13]
  3. ^ 奥野健男によれば、三島はミンコフスキーの著書『精神分裂病』(La schizophrénie) 中の理論の「生きる接触感の喪失」「自閉性」についての感想を奥野に伝え、読んでいるうちに自分のことが書かれている心持がして「自分は精神分裂病じゃないかと恐ろしかった」と言っていたとされる[1]
  4. ^ ドイツ語のSein。「実在」「存在」の意。
  5. ^ ドイツ語のSollen。「当為」の意。
  6. ^ 酒井順子は、有為子の「有為」は仏教用語の「生滅変化する全てのもの(サンカーラ)」という意味であり、有為子と脱走兵の部分は歌舞伎の『祇園祭礼信仰記』(別名『金閣寺』)を思い出させると解説している[21]

出典

  1. ^ a b c d e f 「『金閣寺』の狂気と成功」(奥野 2000, pp. 317–356)
  2. ^ 「川端康成」(キーン 2005
  3. ^ a b c d e 山中剛史「才華繚乱の文学『金閣寺』の時代」(太陽 2010, pp. 48–61)
  4. ^ a b c d e f g h 「第三章 問題性の高い作家」(佐藤 2006, pp. 73–109)
  5. ^ a b c d e f g h i 佐藤秀明「金閣寺」(事典 2000, pp. 92–97)
  6. ^ 井上隆史「作品目録――昭和31年」(42巻 2005, pp. 410–413)
  7. ^ a b c 「第七回 美の呪縛」(徹 2010, pp. 90–103)
  8. ^ 時代超え支持される三島文学 文庫の累計トップは「金閣寺」(時事ドットコムニュース、2020年11月25日)
  9. ^ 久保田裕子「三島由紀夫翻訳書目」(事典 2000, pp. 695–729)
  10. ^ 「第五章『鏡子の家』の時代」(年表 1990, pp. 117–160)
  11. ^ a b c d e f 小林秀雄との対談「美のかたち―『金閣寺』をめぐって」(文藝 1957年1月号)。『源泉の感情 三島由紀夫対談集』(河出書房新社、1970年10月)。『小林秀雄対話集』(講談社文芸文庫、2005年9月)191頁。39巻 2004, pp. 277–297に所収
  12. ^ a b c 「『金閣寺』創作ノート」(6巻 2001, pp. 651-)。没後30 2000, pp. 87–140。ノートの一部はアルバム 1983, pp. 44–45に写真掲載
  13. ^ 有元 2008
  14. ^ a b c 「II 自己改造をめざして――『仮面の告白』から『金閣寺』へ 第二の人生」(村松 1990, pp. 233–260)
  15. ^ 佐藤秀明「『金閣寺』ノート解説」(没後30 2000, pp. 153–156)
  16. ^ a b 「室町の美学―金閣寺」(東京新聞夕刊 1965年2月20日号)。33巻 2003, pp. 400–402に所収
  17. ^ a b 「自己改造の試み――重い文体と鴎外への傾倒」(文學界 1956年8月)。『亀は兎に追ひつくか』(村山書店、1956年10月)。29巻 2003, pp. 241–247に所収
  18. ^ a b c 磯田光一「戦後的反逆の文学」(豪華版『日本文学全集』解説 河出書房、1967年1月)。磯田 1979, pp. 115–132に所収
  19. ^ 「十八歳と三十四歳の肖像画」(群像 1959年5月号)。31巻 2003, pp. 216–227に所収
  20. ^ a b 雷蔵丈のこと」(日生劇場プログラム 1964年1月)。32巻 2003, pp. 653–654に所収。市川雷蔵『雷蔵、雷蔵を語る』(飛鳥新社、1995年)に序文で再録
  21. ^ 酒井 2010, pp. 190–192
  22. ^ 坂上弘「三島由紀夫著『金閣寺』」(三田文学 1957年1月号)。事典 2000, p. 94
  23. ^ a b c 中島健蔵安部公房平野謙「創作合評」(群像 1956年11月号)。旧事典 1976, p. 123、佐藤 2006, p. 90
  24. ^ a b c 臼井吉見河上徹太郎中村光夫「現代文学の諸表情10 文学者の自己表現」(新潮 1956年11月号)。佐藤 2006, p. 90
  25. ^ a b c d e f 中村光夫「『金閣寺』について」(文藝 1956年12月号)。金閣・文庫 2003, pp. 303–308に所収
  26. ^ 「第七章 世界破滅の思想――『金閣寺』と『鏡子の家』――」(野口 1968, pp. 165–192)
  27. ^ 「同人雑記」(聲 1960年10月・第8号)。30巻 2003, pp. 662–668に所収
  28. ^ a b 佐伯彰一「三島由紀夫 人と文学」(金閣・文庫 2003, pp. 294–302)
  29. ^ a b c d e f 「三島由紀夫の問題作(1)『金閣寺』」(伊藤 2006, pp. 139–141)
  30. ^ a b c d e f 「IV 『金閣寺』――美・悪・虚無と人生」(田坂 1977, pp. 183–208)
  31. ^ a b c 橋川文三「夭折者の禁欲――三島由紀夫について」(『三島由紀夫自選集』集英社、1964年7月)。『増補 日本浪曼派批判序説』(未来社、1965年4月)、橋川 1998, pp. 28–35に所収
  32. ^ a b 橋川文三「主要作品解説 金閣寺」(『現代日本文学館42 三島由紀夫』文藝春秋、1966年8月)、『新版 現代知識人の条件』(弓立社、1974年)。橋川 1998, pp. 96–101に所収
  33. ^ 酒井 2010
  34. ^ 昭和音楽大学オペラ研究所 オペラ情報センター
  35. ^ 昭和音楽大学オペラ研究所 オペラ情報センター
  36. ^ 昭和音楽大学オペラ研究所 オペラ情報センター
  37. ^ 昭和音楽大学オペラ研究所 オペラ情報センター
  38. ^ 昭和音楽大学オペラ研究所 オペラ情報センター
  39. ^ 黛 敏郎 : 歌劇「金閣寺」(指揮 : 下野 竜也 / 演出 : 田尾下 哲) 2015年12月 5日 神奈川県民ホール”. 川沿いのラプソディ. 2017年2月13日閲覧。
  40. ^ 宮本亜門の新演出オペラ『金閣寺』、日仏で上演へ…東京二期会が初の日仏共同制作。日本人歌手も両バージョンに出演(SPICE、2017年6月23日)



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