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金口イオアン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2012/05/04 05:10 UTC 版)

(イオアンネース・クリュゾストモス から転送)

金口イオアン
(ヨハネス・クリュソストモス)
金口イオアン(ヨハネス・クリュソストモス)のイコンコンスタンディヌーポリ(コンスタンティノープル)アギア・ソフィア大聖堂にあるモザイク画主教祭服をつけ、右手で祝福を与え、左手に福音経を持つ姿で描かれている。
正教会で:成聖者・聖神父・大司祭首
西方教会で:教会博士
他言語表記 : Ἰωάννης ὁ Χρυσόστομος
生誕 347年
アンティオキア
死没 407年
コマナ・ポンティキ(Comana Pontica
崇敬する教派 正教会
東方諸教会
カトリック教会
聖公会
ルーテル教会
記念日

正教会

西方教会

金口イオアン(きんこういおあん、ギリシア語: Ἰωάννης ὁ Χρυσόστομος344年または349年 - 407年9月14日)は4世紀キリスト教神学者、説教者、コンスタンディヌーポリ大主教(当時はまだ総主教制は無かった)。「金口」とは、名説教で知られたことから「黄金の口」を意味する「金口(クリュソストモス・Χρυσόστομος)」を付して呼ばれるようになったことによる尊称である。「ヨハネス・クリュソストモス」「ヨアンネス・クリュソストモス」などとも表記される。イオアンイオアンネスイオアンニスヨハネスヨハネといった各種表記については#表記・呼称を参照。

正教会東方諸教会カトリック教会聖公会ルーテル教会で、聖人として崇敬される。

正教会において最も頻繁に用いられる聖体礼儀の形式には金口イオアンの名が冠せられ「聖金口イオアン聖体礼儀」と呼ばれる。三成聖者の一人でもある。

カトリック教会においては33人の教会博士の一人でもある。

目次

生涯

修道士として、神品として、アンティオキアで声望の高かった金口イオアン(イオアンネス・クリュソストモス)は、ネクタリオスの後を継いでコンスタンディヌーポリ大主教(当時まだ総主教制は存在していなかった)に推挙されて着座した[1]

しかしながらイオアンがその地位に着く事に反対し、着座後もその地位を嫉むアレクサンドリア大主教セオフィロスや、イオアンから職務怠慢によって叱責を受けたり免職された神品達はイオアンを憎んでいた[1]

金持ちの婦人の奢侈を戒めるイオアンの説教につき、皇后を指しているのだと讒言した人々によって怒った皇后は、大主教セオフィロス、およびイオアンに反感を抱く主教達と結託し、皇帝にイオアンを告発した[1]

その後、イオアンを守ろうとする民衆と、皇帝側の役人の間で小競り合いが何度も繰り返され、その度にイオアンに対しては捕縛と釈放が繰り返されたが、結局ニケーアへの流刑となった。ニケーアに到着後、アルメニアのククザに流刑先が変更された。流刑先にはイオアンを慕う多くの人々が訪れ、イオアンを物心両面から支援した[1]

最終的に黒海沿岸にイオアンの移送が決まったが、炎天下や雨の日も歩かせ続けるという残酷な処遇がイオアンの体力を奪い、イオアンは道中のコマナ・ポンティキ(Comana Pontica)で永眠した。永眠前には領聖し、「全て光栄は神に帰す」と唱えて永眠したと伝えられる[1]

30年後、イオアンの不朽体コンスタンティノープルに移された。コンスタンティノープルの海峡は、不朽体を迎えるための民衆の舟で満ち満ちたという[1]

イオアンの説教は、簡潔でありながら自在に『聖書』を引用し、あるいは聖書の挿話や信者の生活を身近なものに喩え、対句や反復などを用いて、わかりやすく信仰の要点を示した。彼の著作としてモーセ五書聖詠ヨハネによる福音書パウロ書簡についての注釈などが残っている。

表記・呼称

  • 日本正教会ではごく僅かな例外を除き「金口イオアン」(きんこう—)と呼ばれる。名の「イオアン」は中世ギリシア語の発音「イオアンニス」が教会スラヴ語を経てロシア語風に再建された読み(イオアン)に由来する。「金口」はクリュソストモスの漢訳である。
  • Ιωάννης は、ギリシャ正教会で用いられているコイネー表記の現代ギリシア語読みをカナ転写するとヨアニスないしはイオアンニスが近い。
  • ロシア正教会では、名の中世ギリシア語発音「イオアンニス」が教会スラヴ語に転写され[2]、「金の口」の部分を教会スラヴ語に直訳したイオアン・ズラトウーストИоанн Златоуст)で呼ばれる[3]
  • 英語では John Chrysostom と表記される。
  • 歴史関係の書籍などでは、ラテン語などに基づく慣用形のヨハネス・クリュソストモスが用いられることが多い。



  1. ^ a b c d e f 『諸聖略伝 11月』82頁 - 110頁、日本ハリストス正教会、2004年
  2. ^ 正確を期すならば「イオアン」は「教会スラヴ語のロシア風再建音」と言うべきである。古代の教会スラヴ語においてギリシア語人名 Ἰωάννης の転写である Иоанн が実際にどのように発音されていたのかは現在不明であり、再建音は推測でしかない。そもそも教会スラヴ語をグラゴル文字ではなくキリル文字を用いて表記している段階で、一定の綴りの変化は避けられない。正教会の奉神礼においては、聖歌においても「イオアン」と発音されて歌われる。ちなみにロシア語人名では「イヴァン(イワン)」が同系であり、これが当該人物の聖名である場合、ロシア正教会奉神礼では「イオアン」、日常生活においては「イヴァン(イワン)」と呼ばれることになる。
  3. ^ なお、ウクライナ正教で用いられるウクライナ語では「ゾロトウースティイ(Золотоустий」のように形容詞語尾を伴って表記される場合がかなりあり、ロシア語でもそれと同様「ズラトウーストゥイ(Златоустый)」のように表記されることがないわけではないが、それほど一般的でない。


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