財務・管理とは? わかりやすく解説

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財務管理

読み方ざいむかんり
【英】:financial management

概要

経営管理財務的側面を扱う管理の方法で, 企業が行活動資金の調達と運 用の面から総合的に管理する方法である. 企業資金調達の方法, 資金運用の有 利性の評価, 資本構成, 支払い能力維持, 配当政策, 合併買収, 会社更生, 企 業の評価, 清算など, 企業日常の業務において, また特別な状況において直面 する様々な問題財務的な側面から管理することを含んでいる.

詳説

 財務管理は, 経営管理財務的側面を扱う管理の方法である. このことは, 財務管理が, 経営活動金額資金流れによって表示し, 資金調達資金運用即して, 経営管理総合的に行う用具であることを意味している. 財務管理のために用い資料は, 価値移動を, 発生主義ベース把握する会計数値と, 資金流れとしてとらえるキャッシュ・フローである.したがって, 財務管理は, キャッシュフロー会計両方関連する経営管理部分をなしている.

 財務管理は, はじめ, アメリカ合衆国において, 株式会社誕生してから清算するまでに直面する, 様々な財務に関する問題対処する株式会社財務として発展した. それを代表する教科書がデューイングの「株式会社財務政策」[1] である. しかし, 企業経営における財務問題は, 日常的な経営活動と密接に関係し, 経営者にとって企業内部意思決定のためにキャッシュフローに関する情報が必要である. そのため財務管理は, この要請応える分野として, 第2次世界大戦後経営者のための財務あるいは経営財務として発展した. これにより, 財務管理は経済的分析方法大幅に取り入れ, 経営者財務的側面関わる意思決定問題扱う分野となった [2].

 いうまでもなく, 財務管理は, キャッシュフローベースあるいは会計ベースいずれのデータ用いにしても, 経営活動過去, 現在, 将来わたって金額という数値表示したデータがもとになる. したがって, 外部投資家貸手にとっても, 内部経営管理にとっても, 意思決定目的に添ったモデル構築し, データをより精緻分析することによって, 得られデータからより有用な情報引き出すことができるようになる. そのため, 第2次世界大戦後, 財務管理において, 次第にORや統計の手法が活用されるようになった. 今日では, それらが特に顕著であった領域次のようである.

 第1に, 企業支払い不足を来さないように, 資金管理を行う必要があるが, この資金管理いくつかのOR手法用いられるようになった. 支払い不足に陥らないためには, 経常的な資金収支長期的な資金の調達運用バランスを取る必要がある. この管理は, 運転資金管理といわれ, 資金運用調達運転資本源泉別, 運転資本運用別に対比した資金運用表がよく用いられるが, とくに短期的な資金収支計画資金繰りでは, 支払い充てる資金一定水準保ちながら, 短期資金調達によって発生するコスト最小化する必要がある. このコスト最小化のために, 在庫管理でよく知られ経済的発注量(Economic Order Quantity: EOQ)のモデル用いられ, さらに資金収支計画資金繰り表の作成に, 整数計画法援用することが提案されるようになった [3].

 第2に, 経営者にとって, 長期間わたって大量資本拘束する設備投資決定は, 資本予算(capital budgeting)として財務管理の重要な課題1つとされるようになった [4] が, この課題は, 長期間問題になるため, 財務管理に不確実性の処理を持ち込んだ.

 第3に, 企業評価のために, すでに, 19世紀末から財務諸表データとして財務比率計算し, 企業財務内容についての分析を行う財務諸表分析あるいは経営分析が行われてきたが, 多変量解析方法計算機発展は, これらの分析方法大きな変化もたらした. 企業過去財務行動分析して評価するだけでなく, 財務諸表分析通して, 企業将来予測することも行われるようになった. そのような分析によって, 企業信用評価企業発行する債券格付け基礎的データ得られることになる [5].

 第4に, モジリアニ・ミラー(F. Modigliani and M. H. Miller)の資本構成対す市場評価命題 [6] が発表され, これらの理論が, 企業資本構成配当政策評価, さらに企業内部財務的意思決定方法重要な影響与えることになった.

 第5に, 企業直面する様々なリスク回避方法開発されてきたが, それらの多くは, 統計学を基礎にし, シュミレーション手法駆使することによって可能になってものである為替リスク回避のために用いられる為替先物通貨オプションなどのデリバティブはその代表的な例である.さらに, 天候デリバティブ活用, 経営上の意思決定が持つ柔軟性評価明示的に含めようとするリアル・オプション評価法活用など, 財務管理における計量的方法重要性は, 近年いっそう大きくなってきている [8],[9].

 第6に, 近年新し会社法活計情報開示みられるように, 新株予約権など, デリバティブ性質を持つ各種資金調達方法発行されているストック・オプション価値開示することが必要になったが, それには, 数理的デリバティブ評価することが不可避になっている

 このように, 財務管理は当初, 株式会社財務問題記述的に説明する分野とされてきたが, ORや統計工学方法結びつき, いまでは両者が密接に関連し合う領域となっている. 現在の代表的な財務管理のテキスト[4], [7]を, およそ40年前代表的なテキスト比較すると, 内容著しく計量的, 分析的になり, 財務管理が, 多くの点でORの方法不可分になっていることは明らかである.



参考文献

[1] A. S. Dewing, The Financial Policy of Corporations, Ronald Press, 1920.

[2] J. F. Weston, Managerial Finance, Holt, Rinehart and Winston, 1962.

[3] S. A. Ross, R.W. Westerfield and B. D. Jordan, Fundamentals of Corporate Finance, Irwin, 1991.

[4] J. Dean, Capital Budgeting: Top-management Policy on Plant, Equipment, and Product Development, Columbia University Press, 1951.

[5] B. Lev, Financial Statement Analysis: A New Approach, Prentice-Hall, Inc., 1974. 柴川林也寺田徳訳『現代財務諸表分析』, 東洋経済新報社, 1978.

[6] F. Modigliani and M. Miller, "The Cost of Capital, Corporation Finance and the Theory of Investment," in American Economic Review, 48 (1958), 261-297.

[7] J. Van Horne and J. M. Wachowicz, Jr., Fundamentals of Financial Management, 9th edition, Prentice-Hall, Inc., 1995.

[8] R.Brealey and S.Myers, Principales of Corporate Finance, 6th ed. The MaGrew-Hill Company, 2000(邦訳, 藤井真理子国枝監訳コーポレート・ファイナンス(上・下)」)第6版, 日経BP社, 2002)

[9]今井潤一リアル・オプション中央経済社, 2004

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