警報システム
警報システム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/12 20:56 UTC 版)
21世紀現在生産されている大型旅客機には、さまざまな異常を乗員に知らせるために多くの警報システムが備わっている。警報システムは機能から3種に分類される。 飛行状態が異常となった事を知らせる スイッチやレバーなどが正しい位置にないなど、誤操作を知らせる 制御システムのいずれかが正常に作動しない、機内環境に異常があるなどを知らせる 機内の警報システムは主警報システムにまとめられており、それぞれ個別の警報システムの赤やオレンジの警報灯のいずれか1つでも点灯すれば、乗務員から最も目につきやすい位置にある赤またはオレンジの主警報灯が点灯して、乗務員は個別の警告灯を確認するように促す。警報はランプの点灯に同期してブザーやチャイム、ホーン音、音声メッセージといった音でも伝えられ、機械的なものではフラッグで示すものもある。警報を伝える手段や調子には、人間工学に基づき危険度に応じた工夫が加えられている。以下に個別の警報システムを示す。 操縦等に関するもの 離陸警報システム(Take-off warning system) 離陸時にフラップ、水平安定板、スポイラーなどの角度や位置が正しくないと、ブーブーブーという断続警報音で操縦士に知らせる。 着陸警報システム(Landing warning system) ブーという持続警報音を発する。 着陸装置警報システム(Landing gear warning system) 着陸装置が正しい脚下げ位置になっていないのに着陸操作を行うと、赤色警報灯が点灯し操縦士に知らせる。 自動操縦システム開放警報システム(Auto-pilot disengage warning system) 操縦士が意図したか予期せずに行われたかにかかわらず自動操縦システムが自動操縦モードから外れた場合に、ワゥワゥワゥという警報音と共に警告灯を点滅させて知らせる。 最大運用速度警報システム(Max air-speed warning system) 運用限界速度 (Operation limitation speed) を越えると、カタカタと音を鳴らして操縦士に知らせる。 失速警報システム(Stall warning system) 失速速度手前で7-10%ほどの余裕しかなくなると、操縦桿をガタガタと揺らせて失速の危険を操縦士に知らせる。 ウインドシア警報システム(Wind-shear warning system) ウインドシア警報システムはB-747やDC-10より後のすべての大型旅客機に備わっており、離着陸時にウインドシアを受けると危険であるため、気象レーダー等の情報を分析して飛行前方でウインドシアが発生する危険性が高い場合に警告灯と警報メッセージを発して機首上げを指示する。離着陸時には低速で高度も低いため過剰な機首上げは失速を招く。失速を避けるために新しい機種では失速を招かない機首上げ角や機首上げ余裕度を示すようになっている。 高度警報システム(Altitude warning system) 選択した高度に近づきつある時、または、選択した高度から外れてゆく時に、ドミソの和音による警報音を発し、警告灯を点灯、または点滅させて操縦士に知らせる。 低高度警報システム(Decision height aural warning system) 着陸侵入中に着陸続行か着陸復行かの決心を求める高度であるデシジョンハイト(着陸決心高度)に達すると、ドミソの和音による警報音を3度鳴らして、デシジョンハイト灯を点灯させて操縦士に知らせる。 TCAS 詳細は「空中衝突防止装置」を参照 TCAS(衝突防止装置、Traffic alert and Collision Avoidance System)と呼ばれる装置によって空中衝突の危険性が最小化されている。 GPWS 詳細は「対地接近警報装置」を参照 GPWS(対地接近警報装置、Ground Proximity Warning System、TPWS; Terrain Proximity Warning System)は、地上からの高度を監視して危険なほど近づいた時に警報を発する装置である。電波高度計とCADC、グライドスロープ受信機、脚センサ、フラップ角度センサ、フラップ・オーバーライド・スイッチからの入力を受けて、操縦席へスピーカーとライトによる9種類の警報を発する。多くの旅客機が搭載している。 機内環境に関するもの 火災警報システム(Fire warning system) エンジン火災、APU火災、脚格納室加熱、貨物室の発煙などを検知して大きなベル音と場所を示すランプで知らせる。 客室与圧異常警報システム(Cabin altitude warning system) 客室の与圧が高度1万フィート以上に相当する低い圧力まで低下すると断続的な警報音で知らせる。 ドア警報システム(Door warning system) 与圧部分のドアにロックが掛かっていないとオレンジ色の警報表示版が点灯する。
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