さつま‐いおうじま〔‐いわうじま〕【薩摩硫黄島】
読み方:さつまいおうじま
⇒硫黄島
薩摩硫黄島(鹿児島県)
704m 北緯30度47分35秒 東経130度18分19秒 (硫黄岳) (世界測地系)
概 要
東西6km、南北3km の火山島、竹島とともに鬼界カルデラ(東西23km、南北16km)の縁を なす。主峰の硫黄岳は鋭い円錐形の流紋岩の火山で硫気活動が盛ん。稲村岳は玄武岩の火 砕丘と溶岩流。有史後の噴火は付近海底で起こり、新島(昭和硫黄島)が形成され、現存す る。硫黄島と昭和硫黄島の岩石は流紋岩(SiO2 69~ 72% )だが、稲村岳は玄武岩・安山岩(SiO2 51~ 54% )からなる。島民103 名(平成16 年)。別名、鬼界ヶ島。火山名として「トカラ硫 黄島」の名が用いられたこともある。
最近1万年間の火山活動
薩摩硫黄島は、約7300 年前(暦年補正)に広域火山灰であるアカホヤ火山灰を噴出した鬼界カルデラ のカルデラ壁に生成した火山島で、5000 年前以降に形成された流紋岩質の厚い溶岩流や溶 岩ドームからなる小型成層火山の硫黄岳と、3000~ 4000 年前に形成された玄武岩質の稲村 岳からなる。このうち硫黄岳では、500~ 600 年前に火砕流を伴うマグマ噴火が発生してい る。薩摩硫黄島の南東に広がる鬼界カルデラ内部には、カルデラ形成後の活動による噴出 物が確認できる。また、この地域では1934 年に溶岩の流出を伴う海底噴火があり、岩礁(昭 和硫黄島)として残っている(小野ほか,1982, 福沢,1995,Kawanabe and Saito,2002)。
記録に残る火山活動
- 1934(昭和9)年9 月~ 1935(昭和10)年3 月 付近で海底噴火(大噴火)
- 9 月6 日から地震群発。9 月20 日に東方2km の海底で噴火。12 月に硫黄島新島(昭和硫黄島)生成し現存。
- 1936(昭和11)年10 月26 日 地震、硫黄岳の噴煙増加、鳴動。
- 1998(平成10)年 地震、降灰
- 島内に設置している地震計では、4 月に入ってから人体に 感じない微小な火山性地震が急増し、それまで1 日当たり数回だった地震回数が60 ~ 80 回になり、100 回を超える日もあった。6 月に入ると次第に減少し、6 月下旬以 降は日に20 回以下で推移した。9 月からはふたたび増加し、10 月下旬には日に80~ 110 回となった。一時、11 月上旬には日に数回まで減少したが、11 月中旬以降、60 ~ 100 回程度に増加した。5 月初旬の現地調査では火口周辺に厚さ5mm 程度の火山灰 が堆積していた。4 月下旬から5 月初めにかけて火山灰噴出があったと推察される。 地質調査所(現、独立行政法人産業総合技術研究所)の火山灰分析によると、火山灰の 主な成分は珪化変質した硫黄岳溶岩の破片であり、新鮮なマグマ物質は大量には含ま れていなかった。三島村役場によると、5 月14 日に灰混じりの雨が降ったほか、8 月 に入ってから島内で時々弱い降灰があり、8 月11 日には竹島でも降灰があった。鹿 児島中央警察署硫黄島駐在所によると、10 月には少量の降灰が数回あった。地質調 査所が11 月に行った現地調査では、火口から時々火山灰が放出され、展望台付近(硫 黄岳南東側中腹)まで降灰を確認している。
- 1999(平成11)年 噴火、地震
- 火山性地震は、1~ 6 月はじめにかけて1 日あたり50~ 130 回と多い状態で推移した。6 月中旬~ 10 月にかけては、1 日あたり数~ 30 回に減少し た。三島村役場によると、1、2、5~ 8、11 月に島内で少量の降灰があり、有色噴煙 が時折観測された。
- 2000(平成12)年 噴火、地震
- 火山性地震は日に数回と少ない状態が続いていたが、1 月 21 日から40 回前後に増加した。2 月10 日以降は50~ 70 回とさらに増加し、100 回 を超える日もあった。また、12 月5 日から振幅が小さく間欠的に発生する火山性微 動を観測した。三島村役場によると、1、5、6、7、9~ 12 月に島内で降灰があった。
- 2001(平成13)年 噴火、地震
- 火山性地震の多い状態が続き、日に40~ 100 回発生した。 また、間欠的に発生する火山性微動も観測した。三島村役場によると、2、4~12 月 に島内で降灰があった。
- 2002(平成14)年 噴火、地震
- 5~ 7 月にかけて火山活動がやや活発化し、集落(硫黄岳の 西約3km)では降灰がたびたび確認された。それ以外の期間は、比較的穏やかな状態 で経過した。5 月中旬から地震活動が活発化し、6 月はじめまで継続した。日別発生 回数は観測開始以来最も多い967 回を観測した。また、連続的な火山性微動も発生し た。
- 2003(平成15)年 噴火
- 6~ 10 月にかけて火山活動がやや活発化し、時々噴火が発生した。 それ以外の期間は、噴火が4 月に2 回、5 月に1 回発生したが比較的穏やかな状態で 経過した。地震活動は比較的静穏であったが、連続的な火山性微動が主に7~ 8 月に かけて発生し、継続時間の短い火山性微動は月に数回から数十回程度発生した。
- 2004(平成16)年 噴火
- 3、4、6、8 月に時々噴火が発生。微動も2~ 8 月まで時々発生(8 月現在)。
<「概要」、「最近1万年間の火山活動」、「記録に残る火山活動」については日本活火山総覧(第3版)(気象庁編、2005)及びその後の観測成果による。>
火山観測
気象庁では,硫黄岳の南側中腹に地震計>1点,西側中腹に地震計1点,硫黄岳の西麓に空振計1点と遠望カメラ1点を設置し,薩摩硫黄島の火山活動の監視・観測を行っています。
測器種類 | 地点名 | 位置 | 設置高 | 観測開始日 | 備考 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
標高 | |||||||
地震計■ | STI1点 | 30 47.271 | 130 18.061 | 0 | 1997.9.10 | ||
地震計■ | STI2点 | 30 47.622 | 130 17.67 | 0 | 2003.2.4 | ||
空振計◆ | STI0点 | 30 47.0 | 130 16.8 | 2001.10.24 | |||
遠望カメラ★ | STI0点 | 30 47.0 | 130 16.8 | 2002.11.16 |
世界測地系による
火山活動解説資料
気象庁が実施した火山観測データの解析結果や,火山活動の診断結果を掲載します。毎月1回,上旬に公表します。
硫黄島 (鹿児島県)
(薩摩硫黄島 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/21 08:18 UTC 版)
硫黄島(いおうじま)は、薩南諸島北部に位置する島である。郵便番号は890-0901。人口は125人、世帯数は62世帯(2020年5月1日現在)[1]。薩摩硫黄島(さつまいおうじま)とも呼ばれる。大隅諸島に含まれるとする説と含まれないとする説とがある。
注釈
- ^ 2019年11月2日の噴火時点での報道では115人。
出典
- ^ a b “三島村の概要 > 地区別世帯数と人口(令和2年5月1日現在)”. 三島村. 2020年5月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月13日閲覧。
- ^ “火山防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある火山”. 気象庁. 2016年2月25日閲覧。
- ^ a b c d e f g 篠原宏志「薩摩硫黄島の火山ガス・温泉・熱水系」 地質ニュース472号, 1993年12月
- ^ 「ものがつなぐ世界史」(MINERVA世界史叢書5)p136-141 桃木至朗責任編集 中島秀人編集協力 ミネルヴァ書房 2021年3月30日初版第1刷発行
- ^ 鹿児島県『資料鹿児島県労働運動史 第1巻』鹿児島県。1967年。
- ^ 比企忠、柴田勝熊『近世応用鉱物精義』 積善館本店。1915年。
- ^ a b c d e f g 三島村地域公共交通総合連携計画 計画書 三島村・枕崎市平成21年2月(pdf)
- ^ 三島村におけるレンタサイクルの予約について三島村
- ^ a b c d e みしま村について
- ^ -Tam Tam Mandingue Japan-
- ^ a b c d “総事業費5億円の「冒険ランドいおうじま」 鹿児島市が三島村に譲渡検討 直近3年間の収入は計2.5万円 村「方針決まっていない」”. 南日本新聞. 南日本新聞 (2022年6月16日). 2022年6月17日閲覧。
- ^ 鹿児島市冒険ランドいおうじま
- ^ 「ものがつなぐ世界史」(MINERVA世界史叢書5)p139-150 桃木至朗責任編集 中島秀人編集協力 ミネルヴァ書房 2021年3月30日初版第1刷発行
- ^ a b 硫黄岳の登山記事
- ^ 気象庁、1988
- ^ 地質調査所(1997):薩摩硫黄島火山の硫黄岳の活動状況、火山噴火予知連絡会会報、67, 79-82.
- ^ 西 祐司・松島喜雄・斉藤英二・井口正人(2002):薩摩硫黄島硫黄岳の火山活動2001-2002, 2002 年地球惑星科学関連学会合同大会予稿集、V032.
- ^ 井口 正人 「薩摩硫黄島火山における最近の火山活動―1975 年~2001 年―」 京都大学防災研究所
- ^ GPS 観測結果および硫黄岳山頂火口の地形変化 第97 回火山噴火予知連絡会資料 2004年1月27日産総研地質調査総合センター 京大防災研火山活動研究センター
- ^ “薩摩硫黄島 有史以降の火山活動”. 気象庁 (2019年4月11日). 2019年11月6日閲覧。
- ^ “薩摩硫黄島の噴火警戒レベルを2へ引上げ”. 気象庁 (2019年11月2日). 2019年11月6日閲覧。
- ^ “薩摩硫黄島で噴火発生 噴火警戒レベル2に引き上げ 鹿児島”. ウェザーニューズ (2019年11月2日). 2019年11月6日閲覧。
- ^ 篠原宏志 火山研究解説集:薩摩硫黄島 つくば中央第七事業所 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
- ^ 薩摩硫黄島空港
- ^ “硫黄島八朔太鼓踊り”. 鹿児島県 (2021年12月7日). 2023年9月14日閲覧。
- ^ a b “三島村のまつり”. 三島村. 2023年9月14日閲覧。
- ^ a b c d “薩摩硫黄島のメンドン”. 国指定文化財等データベース. 文化庁. 2023年9月14日閲覧。
- ^ “薩摩硫黄島のメンドン”. かごしま文化財事典. 鹿児島県教育庁文化財課. 2023年9月14日閲覧。
- ^ a b “三島村硫黄島の九月踊り”. かごしま文化財事典. 鹿児島県教育庁文化財課. 2023年9月14日閲覧。
- ^ a b c “無形民俗文化財 県指定(鹿児島・南薩地区) 三島村硫黄島の九月踊り” (pdf). 鹿児島県教育委員会 (2022年2月18日). 2023年9月14日閲覧。
固有名詞の分類
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