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菌類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2012/01/12 08:50 UTC 版)
(菌界 から転送)
| 菌界 | ||||||
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| 地質時代 | ||||||
| 約4億1000万年前 - 現世 (古生代デボン紀前期中盤[プラギアン〈cf.〉]- 新生代第四紀完新世末[サブアトランティック〈cf.〉]) |
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| 分類 | ||||||
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| 学名 | ||||||
| Regnum Fungi (L., 1753) R.T. Moore, 1980 [1] |
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| 和名 | ||||||
| 菌界 | ||||||
| 英名 | ||||||
| Kingdom Fungus | ||||||
| 下位分類群(門) | ||||||
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Hibbett, D. S. et al.(2007)
伝統的な四大分類 |
菌類(きんるい)とは、一般にキノコ・カビ・酵母と呼ばれる生物をまとめたもので、菌界(学名:Regnum Fungi )に属する生物の総称である。細菌などと区別するために真菌(しんきん)とも呼ばれることもある。外部の有機物を利用する従属栄養生物であり、分解酵素を分泌して細胞外で養分を消化し、細胞表面から摂取する。
目次 |
概要
菌類に属する生物は、原則として運動能力がなく、固着性の生物である。微視的には、細胞壁のある細胞からなり、先端成長を行うものが多い。これらは高等植物と共通する特徴であり、菌類が当初において植物と見なされた理由でもある。しかし、葉緑体を持たず、光合成もおこなわない従属栄養生物である。その点は動物と同じであるが、体外の有機物を分解し、細胞表面から吸収する、という栄養摂取の方法をとる。
形態的には単細胞の微生物であるものから、肉眼的大きさ以上に発達する多細胞生物までを含む。しかし、多細胞体を持つものにおいても、菌糸と呼ばれる1列に配置する細胞列までしか持たず、真の組織を発達させない。体が多数の菌糸(きんし)と呼ばれる管状の細胞から構成されているものは糸状菌(しじょうきん)と呼ばれ、単細胞のままで繁殖するものは酵母と呼ばれる。キノコ、カビ、あるいは糸状菌および酵母はいずれも分類上の単位ではない。糸状菌は胞子により増殖する。胞子が発芽すると菌糸と呼ばれる管状の構造となり、先端生長する。
生殖には、胞子を形成するものが多い。生活史は様々であるが、無性生殖と有性生殖を含むものが多く、それぞれに異なった胞子を形成するものが多い。生活環においては、核が単相の状態が優占する。複相の期間は限られる。担子菌および子嚢菌は単相 (n) の一次菌糸が体細胞接合により二核の二次菌糸となり、他の多くの有性生殖を行う生物に見られる複相 (2n) に対してこれを重相 (n+n) 世代と呼ぶ。酵母は出芽または分裂により増殖する[2]。
植物寄生のものが多く、農業上重要なものも多い。他方、菌根など、共生のものも知られる。動物に寄生するものは少ないが、重要な病原体も含まれる。より一般的には、生態系において分解者として働くと考えられる。他に発酵に関わって重要なもの、抗生物質を産出するものなどがある。
菌界は大まかに言えばツボカビ類、接合菌類、子嚢菌類、担子菌類などから構成される。ツボカビ類は鞭毛をもつ遊走細胞を形成し、祖先的形質を持つ。
ツボカビ類以外は生活史のどの部分でも鞭毛を形成しない。それらは有性生殖(接合後の減数分裂で生じる胞子のあり方)で分類される。接合菌は接合胞子のうを形成するグループで、ケカビなどを含む。子嚢菌は子嚢の中に胞子をつくるグループで、ビール酵母などを含む。担子菌はキノコの多くを含む分類群である。
伝統的には、これに有性生殖の型が不明なものをまとめた不完全菌、それに菌類と藻類の共生体である地衣類を独立群とし、上記4群に併置した。また、胞子形成の共通性などから変形菌類を菌界に含めた。
しかしながら、20世紀終盤よりの生物分類全般の見直しの中で、これらに大きな見直しがなされており、2010年代現在でも変更が繰り返されている。ツボカビ類と接合菌類は特に変更の幅が大きく、他に新たに認められた群、菌界から排除された群も多い。また、近年の分子系統解析により、これまで原生動物とされてきた微胞子虫も特殊化した菌類の一群であると考えられている。それらについては後述の分類の項に詳細が解説されている。
菌界
菌類と細菌類は微生物として一括りに扱われる場合もあるが、前者は真核生物、後者は原核生物であり、細胞構造が全く異なる生物群である。
菌界は真核生物に含まれる界 (Kingdom) の一つであり、動物界や植物界などと同じレベルの分類群である。生物を二界に分類していたころは、菌類には運動性がなく細胞壁を持つことなどから植物に分類されていた。この場合、構造が単純であることもあって、葉緑体を失った退化的な植物である、と考えられることが多かった。しかし、菌類についての理解が深まるにつれ、細胞構造や分子遺伝学的な系統解析などの研究から得られる情報などから、植物とは異なる、独自の生物群であると考えられるようになり、5界説の頃より独立した界として広く認められるようになった[3]。現在の分子遺伝学的情報からは、植物よりも動物に近い系統であることがわかっている。動物と菌類を含む系統のことをオピストコンタという。
なお、かつてはその胞子形成の類似等から、変形菌類を菌界に含めて扱っていた。変形菌類、細胞性粘菌、ラビリンチュラ類をまとめて変形菌門(旧)とし、他の菌類を真菌門とするのが通例であった。また、卵菌類・サカゲツボカビ類なども菌類と考えられていたため、これらをツボカビ類とあわせて鞭毛菌亜門に位置づけていた。しかし、現在ではこれらは別の系統に属するものと判明したため、菌類として扱っていない。それらをまとめて偽菌類と呼ぶことがある。
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- ^ Moore RT. (1980). “Taxonomic proposals for the classification of marine yeasts and other yeast-like fungi including the smuts”. Botanica Marine 23: 361–73.
- ^ 以上、ウェブスター・椿、p.1より、変形菌関連を除いて記述
- ^ Cavalier-smith,2001,p3
- ^ ウェブスター・椿より
- ^ Hibbett et al. A higher-level phylogenetic classification of the Fungi. Mycological research (2007) 111:509-547