紅世の徒とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 紅世の徒の意味・解説 

紅世の徒

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/14 00:07 UTC 版)

“紅世の徒”(ぐぜのともがら)は、高橋弥七郎ライトノベル作品『灼眼のシャナ』およびそれを原作とする同名の漫画アニメコンピュータゲームに登場する架空の生命体の種族名。

原作の文中では「“紅世の徒”」とダブルクオートで囲って表記される他、単に「“徒”」(ともがら)と言えば“紅世の徒”を指す。作中では特に、生まれ故郷の“紅世”を離れ、人間そのものを軽視し人間の“存在の力”を浪費する者に限定した呼称として用いられることも多い。

概要

この世の“歩いて行けない隣”にある別世界“紅世”の住民達であり、端的に言い表せば異世界生命体である。“紅世”と“徒”という名称はどちらも“歩いて行けない隣”にある別世界の様子や、その住民の様子を聞いた人間の詩人によって名付けられている。

人間に似た精神構造を持ち、離れた場所の強い感情や意思と共感する能力や、この世の“存在の力”を自在に操る能力を持つ。また、自らの“存在の力”も持つ。人間と同様に(実際には若干異なるが)男女の別があり、存在の分化(この世の生き物で言う生殖)の際の機能や、根本的な性質が酷似している。この世で数千年生きている“徒”もおり、老若の概念があるが、作中“徒”の自然死には触れられておらず、寿命などは不明。生まれた時からある程度の力と意識を持ち、すぐさま生きるための戦いを始めるとされる。その他の詳細は、作中の描写が少なく不明瞭な部分が多い。

“徒”の生まれ故郷である“紅世”は、この世とは異なる物理法則によって成り立つ異世界である。“紅世”においてこの世で言う五感は意味をなさず、「力そのものが混じり合う世界」「あらゆるものが、現象による影響と意思による干渉の元、延々変化し続ける世界」とされている。そのため生きる上での無駄を持つ事が許されず、互いの力の鬩ぎ合いを延々と続けなければならない、生きていくには過酷な世界である。“紅世”と名づけられる以前、彼らはその有様を“渦巻く伽藍”と表現していた。

この世での“紅世の徒”

生まれ故郷の過酷な環境を嫌った一部の“徒”は、「より自由」で気侭な生活を望んでこの世へ渡り来たり、欲望のまま放蕩の限りを尽くすために行動する。具体的な欲望は個々の“徒”によって異なり、この世の物品を集める者、人間との交流を望む者、人間が生み出した文化などに魅せられた者、戦いにしか興味のない者など、非常に多彩である。

また、単なる好奇心からこの世へ渡り来る“徒”も多く、この世で行動するうちに自身の在りようや欲望に適った目的を見出す場合もある。

顕現
本来この世の存在でない“紅世の徒”は、“存在の力”を消費することで自分自身の“存在の力”(『本質』とも呼ぶ)を変換しこの世に“実体化”する。“徒”自身がこの世に実体として現れることや、己の意思や存在を自在法としてこの世に現す事を「顕現」と呼ぶ。
この世に顕現し実体となった“徒”は通常、その“徒”の本質を「形ある何か」で表した姿となる。具体的には、この世に存在する人間や獣に似た姿、植物道具、この世の生き物にはありえない怪物、それらの形状が混在した姿など、個々の“徒”により千差万別である。これらの姿はあくまでも「この世」での姿であり、“紅世”での姿とは異なる(そもそも五感が意味を成さない世界なので、『姿』の概念が通用するかは不明)。また近代以降は、人間社会への憧れから「本質に見合った人間の姿」に変換する「人化の自在法」を常用する“徒”も増えている。
“徒”にとってのこの世の“存在の力”
この世での“徒”の行動は全て“存在の力”の消費の上で行われる。“徒”は通常、この世に存在するだけでも常に“存在の力”を消費する。また消費する“存在の力”の量は、その実現が困難であるほど多くなる。
この世で欲望のままに行動する“徒”は、この世で存在を維持するために人間の“存在の力”を喰らい、これを自分の力に変えて「顕現」する。“徒”にとって、この世の“存在の力”を喰らい自分の力に変える事は、呼吸に等しいほど容易な行動である。
この世の“存在の力”を使わず“徒”自身の“存在の力”(すなわち自身の『本質』)を消費して「顕現」することも可能だが、それは自分の身を削る行為であり、自身の“存在の力”が尽きればその“徒”は死滅する。また、何らかの理由で負傷すると、“徒”自身の“存在の力”が火の粉と化し傷口から失われる。負傷からの回復には“存在の力”を摂取する必要があり、負傷の程度が大きいほど回復に必要な“存在の力”の量も多くなり、負傷の程度によっては死亡することもあり得る。
“徒”が喰らう“存在の力”が人間のものに限定されるのは、人間がこの世で最も“徒”に近い存在だからである。人間以外の動物や物質も“存在の力”を持つが、これらは“徒”には合わず、喰らえば逆に力が薄められてしまう。なお、これらとは別に純粋な“存在の力”も存在するが、『都喰らい』と呼ばれる秘法を使った後にしか作中では言われていない(詳細は不明だが、「純度」という表現が使われていることから、“徒”が喰らう“存在の力”は通常、何らかの「不純物」を含んでいるとも推測できる)。
また、“徒”には“存在の力”を自分の力に変換し統御できる限界があり、それを超えた量の“存在の力”を“徒”が取り込むと、自分の意思総体が逆に飲み込まれ薄められ消えてしまう。
真名と通称
“徒”には“紅世”での本名にあたる真名と、この世で付ける呼び名である通称がある。真名は名字)、通称は下の名前のようなニュアンスで用いられており、名乗る場合は真名の後ろに通称を付けて名乗る。“徒”同士の場合は基本的に、親しくない間柄では真名のみ、もしくは真名と通称を繋げて呼び合い、親しい場合は通称だけで呼び合う。
真名は、“徒”の本名であると同時にその“徒”の本質を表しており、この世においてはこの世の言語に訳して用いられる。各国語には自在法『達意の言』によってその本質を伝えていると思われる。
“徒”は自分で自分の通称を定めるため、その由来も個々の“徒”により様々である。気分で改名することや、異なる文化圏ごとに複数の通称を持つ者もいる。なお、あだ名や愛称とは別物である(芸名ペンネームハンドルネームのような概念に近い)。
古代、人知を超えた力を持つ“徒”を見た人間が彼らを崇め畏れて異名を付け、“徒”もそれを自らの力の証・誇りとして名乗ったことが通称の始まりである。そのため、神話・伝説・伝承に登場する神や悪魔などの中には、その正体が“徒”である場合もある(ただし全ての神や悪魔が“徒”というわけではない)。後世になると、他者から神や悪魔の名(元は“徒”の通称であったものも含む)を当てはめられた者のほかにも、自ら通称を名乗る者も現れるようになった。参考程度の傾向としては、古株の“徒”は神の名を名乗る者が、時を経るごとにそれ以外の名を名乗る者が多い。
なお、討ち手と契約する“王”は真名が全て「○○の○○」で統一されているが、これは彼らが人間の側に立っていることの暗喩。
“徒”の死後
本来この世の存在でないためか、死亡すると“存在の力”を感じ取れない人間には忘れ去られ、写真や書いた文字なども消えてしまう。ただし、暗号や秘文字を使った文章は稀に“徒”の死後も残る事があり、人間から人間へ移動した“徒”の情報も何らかの形で残る事がある。
死んだ“徒”の情報や遺物がどの程度残るかは、その情報が“徒”にどれだけ深く関連しているかによって異なる。“徒”への関連が深い情報や遺物ほど消失しやすく、不正確で難解な情報は比較的残りやすい。
“徒”たちは相当な分量でこの世の伝承に入り込んでいるが、それらはほとんどが『この世の本当のこと』を知らない人間の残した不正確な誤伝ゆえに、関連性があまりにも離れているため、“徒”の死後にもこの世から消えずに残っている。ただし正確かつ大真面目に記されていたならば、“徒”が死んだ場合、その“徒”が記された神話体系の存在はこの世から消える。
この世での“徒”の歴史
この世と“紅世”の行き来がなかった古代、“徒”らはこの世の人間の感情と共感し、「歩いて行けない隣」にあるこの世の存在を知る。そして間もなく“徒”の一人、ある“紅世の王”が狭間渡りの術を編み出し、“徒”らは“紅世”とこの世を往来するようになった。
この世との往来が始まった当初、“徒”らはこの世を自分の意のままに出来る楽園と考え、容赦なく人間を喰らい、この世の事象を弄り、欲望のままに行動していた。しかし、これらの放埓によりこの世に「世界の歪み」が生じ、この世と“紅世”の境界が歪み荒れ始め、そこを通る“徒”達が傷ついたり消滅や行方不明になる事態が発生し始める。
この「歪み」の発生により一部の“徒”らは、いつか両世界に致命的な大災厄が発生することを危惧、予測し恐れ始めるようになる。彼らの中から、同胞を殺してでもこの世の“存在の力”の乱獲を阻止しようと考える者が現れ始め、「同胞殺しの道具」とも呼ばれる元人間の討滅者フレイムヘイズを生み出し、戦うようになった。
一方、欲望のために行動する“徒”らにとって、欲望を邪魔するフレイムヘイズは面倒で厄介な存在であった。そこで、フレイムヘイズを引き寄せる「歪み」を一時的に緩和させる道具「トーチ」を作り出した。こうして欲望のままに生きる“徒”と、そうした“徒”を滅ぼす討滅者フレイムヘイズは、果てることの無い戦いを現代に至るまで延々と続ける事になった。
“徒”と人間との関わり
古代、この世に渡り来た当初の“徒”は、人間と近しく接していた。“徒”は己の本性のままに自分の姿を現し、人間からは神や天使や悪魔、妖精や妖怪、時には仙人や奇人変人として認識されつつ、人間社会と関わっていた。
しかしフレイムヘイズの忌避、産業革命によって発達した人間文明への憧れ、隠蔽の自在法「封絶」の発明などから、多くの“徒”が活動を水面下へ移していった。
現代の“徒”
しかし現代では、高度な文明を持つようになった人間という種族に対する憧れや、絵描きやギャンブル、煙草や高級な食品など、人間社会の中に己の欲望の目当てを見つけ、「人化の自在法」を用いて人間社会に溶け込む“徒”も多く、この世にとって異形である「本性の姿」を陳腐とする風潮も生まれている。なお、“徒”は最初に踏んだ国を贔屓する傾向にあり、人化の際もその影響でその国の人種の姿をとる。
特に決定的な変化をもたらしたのが、19世紀後半に二人の天才により生み出された自在法『封絶』であり、“紅世”に無関係な存在(通常のトーチを含む)を停止させ、“徒”達の行動を隠蔽するこの自在法が多用されるようになった現代では“徒”と人間の関わりは非常に薄くなった。復讐心が生まれる機会も減少した為、フレイムヘイズの発生も減少傾向にあった。

“紅世の王”

"ぐぜのおう"と読む。単に“王”とも称される。“紅世の徒”の中でも、強大な力を持っている者の総称。特に明確な基準があるわけではなく、“徒”たちの間の風聞や力の大きさ・強さによって“王”であるか否かが決まる。中には実力的には“王”であっても、その強さを世に示さずにいるせいで“王”とは呼ばれず“徒”と扱われている者もいる。

なおここで言う「力の大きさ」とは、自身で統御できる“存在の力”の規模のことであり、大規模な“存在の力”を統御できる者が「強大な力を持つ」者とされる。“徒”がモーターボートだとすれば“王”は戦艦であるとも言われ、仮に“王”が持ち得るほどの莫大な量の“存在の力”を、それだけの力を統御できない“徒”が得た場合、逆に意思総体を飲み込まれ、存在を希釈されて消えてしまう。

“徒”も人間と同じように成長するため、“徒”だった者が強くなり“王”になることもできる。しかし、その成長の度合いもやはり人間と同じくその者の才能や努力によって決まるので、生まれた時から“王”であった者もいれば、後天的な鍛錬や研鑽によって“王”に上り詰める者もおり、逆に一生努力しても“王”になれずに“徒”のままで終わる者もいる。

“紅世”における世界の法則の一端を体現する超常的存在の総称。この世の神とは意味合いが異なり、宗教で崇められる象徴や概念的な存在ではなく、実際にどこまでも現実的に存在する。世界の法則の体現者ではあるが、神が“紅世”を留守にしても“紅世”の世界法則自体が無くなるわけではないため、特に問題は出ない。

“紅世”において通常の“徒”はこの世での人間にあたる存在であり、通常の“王”も強大な力を持っているというだけの同一種であるが、神は“徒”や“王”と呼称されることはあっても、通常の“徒”や“王”と違って“紅世”での人間には相当しない異なる類別の存在である。とはいえ普段は他の“王”となんら変わりのない存在(特にフレイムヘイズと契約している場合)であるが、それぞれが特異な権能を司っており、祈りと代償、運と神自身の意思によって、神としての絶大な力を発揮する。中には神霊状態の者もいる。

神の降臨を要請する儀式を『召喚』と呼び、儀式は「神の意思をその力を欲する者に向けさせること」「了解を得るための代償として犠牲を払うこと」の二つに大別される。神としての権能の威力を最大限に発揮させるための神威の召喚を神威召喚(神威そのものであり実体を持たないシャヘルは神召喚となる。なおXXII巻での「召」は誤字)と呼び、その儀式を行う際に生贄が必要だが、神威召喚が成されると、神は“存在の力”を消費することなく、他の“徒”には無い「神としての力」を振るう事ができる。

なお、フレイムヘイズ誕生の際の契約と呼ばれる行為は、ある“紅世の王”が神の召喚の儀式の手法を応用し、真似た物である。

作中では儀式“天破壌砕”で召喚される『審判』と『断罪』の権能を持つ『天罰神』。儀式“祭基礼創”で召喚される『造化』と『確定』を権能とする(その権能は「踏み出し見出す力」とも言われる)『創造神』。儀式“嘯飛吟声”で召喚される『喚起』と『伝播』の権能を司る『導きの神』の神格が確認されている。

眷属

“紅世”の神の権能を効率的に発揮させるために存在する“紅世の徒”。定義は『神の権能を補助する存在』であり、存在そのものが世界法則の一部であり神に仕えることを定められた特異な存在。元々“紅世”に眷属は存在していなかったが、太古の時代に創造神“祭礼の蛇”が“紅世の徒”たちの願いを束ね叶えた結果、当時の“徒”たちが神に直接願いを奉じて生贄を捧げるのを憚り、気軽に話を通す窓口を欲しがったことが反映され世界法則に『眷属というシステム』を加えたことで生み出された。仕える神や眷属によって役割や在り方はそれぞれ異なり、中には眷属ではない生まれの“徒”に啓示を行って後天的に眷属として選ぶ任命制とも言うべき手法の神もいる。また、眷属というシステムは欲望の肯定者である創造神が“徒”の願い(欲望)を叶えた結果であるため、欲望の抑止力たる例外的な存在(=出来れば動いて欲しくない神)である天罰神“天壌の劫火”には眷属は生まれなかった。

作中では『創造神』“祭礼の蛇”によって作り出された“千変”“頂の座”“逆理の裁者”、『導きの神』“覚の嘨吟”から眷属に任命された“笑謔の聘”が確認されている。

“燐子”

"りんね"と読む。“紅世の徒”が作り出した、“徒”の下僕。この世の物に“存在の力”を吹き込む事で作られ、その存在には作り主の“徒”の在り様が反映される。人間の“存在の力”を喰らう事は出来るが、その“存在の力”を自分の力に変えることはできず、作り主である“徒”から“存在の力”を供給されることでしか存在を維持できない。そのためほとんどの“燐子”は主から離れて数日で消えてしまい、低級なモノでは作り主が討滅された時点で活動を停止したり消滅するモノもいる。

物によってかなり性能が異なり、自立した意識を持たず、“徒”の自在法の補助のみに使われる道具同然の“燐子”もいれば、自在法や宝具を使う事すら可能な高度な知性と自立した意思総体を持った“燐子”もおり、その差は元となるこの世の物体の違いや、その“燐子”の使い道や、作り手である“徒”の技量によって異なる。

かつては槍代わり足代わりに強力な魔獣型“燐子”が作られたが、人間が文明の利器を発展させるにつれそれに置き換えられていき、現在では「複雑な仕掛けのピース」か「簡単な雑役の他の下僕」の二種に分化した。

“燐子”の作成やその維持には相応の“存在の力”やそれを繰る技量が必要なため、“徒”によって“燐子”を無数使役したり、一体も使わなかったりとまちまちである。“徒”やトーチ同様、燃え尽きると、存在の消失を感じ取れない人間には忘れ去られる。

“紅世の徒”の一覧

ダブルクオート(“”)で括られた分が『真名』と呼ばれる“紅世”での本名であり、それ以外はこの世で自分で名付けた、あるいは名付けられた通称であり、愛称のようなもの。通名とも呼ぶ。フレイムヘイズと契約した状態で登場した“紅世の徒”についての詳細は、フレイムヘイズの一覧を参照の事。

担当声優はアニメ版 / 『電撃hp』で誌上通販された2004年のドラマCDの順。1人しか記載されていない場合は特記無い限りアニメ版のキャストとする。

無所属

無所属の“王”

“狩人(かりうど)”フリアグネ[Friagne]
声 - 諏訪部順一[1] / 松風雅也
男性の“紅世の王”。の色は薄い白。近代以降では五指に入るであろう強大な“王”で、フレイムヘイズ側には「フレイムヘイズを狩る“狩人”」として知られる。御崎市で起こる一連の事件の契機となる。
人化の自在法による姿は、純白のスーツを纏った線の細い美青年。本性の姿は鳥だと推測されている。
この世に渡り来た動機は不明だが、アルチザンやこの世の道具に興味があった模様。人形好きで、愛する“燐子”のマリアンヌを独立した一個の存在とするため、かつて“棺の織手”アシズが用いた秘法『都喰らい』で、膨大な“存在の力”を得ようとしていた。
宝具コレクターとして知られ、自身のコレクションである様々な宝具の特性を活かした戦闘を得意とする。フリアグネ曰く“狩人”の真名は宝具の収集家である事を意味し(ただし、この世と“紅世”の狭間の産物である宝具はトーチ同様、“紅世”には存在しないため、これはフリアグネの勝手な解釈である思われる)、『物事の本質を見抜く』固有の能力から、入手した宝具の能力や使用法を即座に看破できるという。 また、“燐子”作りに関して優れた技量を持ち、恋人であるマリアンヌを初めとして自在法や宝具を使うことすら可能な高度な意志総体を持つ自律型の“燐子”(アニメ 新井里美)を多数率いる。
作中では、フリアグネ本人は炎を消し去る結界を張る指輪型宝具『アズュール』、絡んだ武器型宝具の能力の発動を封じる金の鎖を生み出すコイン型宝具『バブルルート』、実体のない弾丸を命中させたフレイムヘイズの内に眠る“王”を目覚めさせ器を破壊する拳銃型宝具『トリガーハッピー』、“燐子”の鼓動と共鳴させ爆発させるハンドベル型宝具『ダンスパーティ』といった多数の宝具を用いた他、彼の“燐子”たちも多数のカードをシャッフルして場に出す能力を持つカード型宝具『レギュラーシャープ』や刀剣型宝具などを駆使して戦う。
これらの宝具の特性を活かして幾多のフレイムヘイズを葬っており、戦闘(主に対フレイムヘイズ)に関しては、最古参で歴戦のフレイムヘイズであるカムシンでも苦戦する程の強さとされる。作者曰く、本来なら第I巻に登場させるには強力過ぎる敵、とのこと。
御崎市の廃デパート高層階に、巨大な箱庭を形成して一定地域の人間と“存在の力”を監視する銅鏡型宝具『玻璃壇はりだん)』を設置し拠点として、配下の“燐子”たちと共に人間を喰らって『都喰らい』に必要な大量のトーチを作り出していた。彼の『都喰らい』は宝具『ダンスパーティ』でトーチを一斉起爆させて連鎖破壊を起こすため、トーチの数がアシズの『都喰らい』よりも少ない数で実行できる。このことが、違和感の発生を抑えて敵の襲来を減らし、また目的が『都喰らい』であることを隠蔽する要素にもなっていた。
本編が始まる少し前[2] にも、御崎市を訪れたフレイムヘイズを気配隠蔽を施した“燐子”の軍団の炎弾一斉射撃と『バブルルート』『トリガーハッピー』の連携攻撃で完勝するなど、計画を順調に進めていたが、成就寸前に『炎髪灼眼の討ち手』が現れたことで彼の計画は狂っていく。
シャナと“ミステス”坂井悠二の共闘により、トーチに施された仕掛けから『都喰らい』の可能性に気づかれ、トーチを次々と減らされたため、計画の破綻を防ぐべくシャナたちとの対決を強いられることになる。持ち前の計算高さで準備を進めつつ、悠二を人質に取ることに成功し、彼に有利な状況で直接対決に持ち込むものの、幾人もの強力なフレイムヘイズを葬ってきた戦術が『変わり者』のシャナにはほとんど通じなかったという誤算、さらに最終段階まで進んでいた『都喰らい』の布石を崩さないために行動や戦力を大幅に制限されたことから、苦しい状況に追い詰められる。状況を打破するため自ら犠牲となったマリアンヌの献身で逆にシャナを追い詰めるものの、異常な感知能力を持つ悠二の存在を軽視したことで『都喰らい』に不可欠な『ダンスパーティー』を破壊され、計画は失敗に終わる。
計画が失敗したことで正気を失い、その原因となったシャナに『トリガーハッピー』を撃ち込むものの、シャナは爆死せずアラストールが“紅世の王”として顕現することになり、顕現したアラストールによって討滅された。しかし、これらのいくつもの要素が揃った為にシャナたちは勝利し、なおかつ『都喰らい』を阻止することができたという、綱渡りの勝利であった。
彼のコレクションであった宝具の多くはシャナとアラストールにより破壊されたが、戦闘用以外の宝具は彼の死後もいくつか遺された。中でも『玻璃壇』は彼の死後マージョリー・ドー達に発見され、大いに活用されたが、後に本来の持ち主である“祭礼の蛇”が回収した。
なお、彼は挿絵を担当するいとうのいぢのお気に入りのキャラクターであるらしく、質問コーナー『狩人のフリアグネ』ではマリアンヌと共に回答と解説役を務めている。
第1期アニメでは原作と『都喰らい』の表現が異なり、また原作にはなかったマージョリー・ドーとの戦いが描かれた。最期も原作とは異なり、戦闘中に正気を失ってマリアンヌの死にも気付かずひたすら『ダンスパーティ』を振り続け、最後はシャナに斬殺された。また、アニメでは演出の都合か、彼の炎は薄い水色に色づいている。アニメでも『フリアグネ&マリアンヌのなぜなにシャナ!なんでも質問箱!』としてアニメで語られていない原作設定を補完する役割として登場していた。
フレッド・ゲティングズの『悪魔の事典』では同名の天使が「エノクのデーモン」として記載されている。「ヘプタメロン」や天使魔術論などの古い魔術文献に登場する精霊の名である。
マリアンヌ[Marianne]
声 - こやまきみこ[1]
フリアグネに「可愛いマリアンヌ」と呼ばれる“燐子”でありフリアグネの恋人。元は粗末なこの世の人形だったが、トリノで馬車から捨てられた所を偶然見かけたフリアグネが、あまりに可憐なその姿に心に雷霆億激の如き衝撃を受け一目惚れ、その後色々あって高度な“燐子”になって愛し合うようになったらしい。彼女を他者の“存在の力”に頼らず生きてゆける存在へと組み換えこの世に定着させる『転生の自在式』発動のための莫大な“存在の力”を得るため、フリアグネは『都喰らい』を起こそうとしていた。
フリアグネ一党の“燐子”は作り手たるフリアグネの卓越した技量・強大な力のために全員が他の“徒”の“燐子”に比べて非常にハイスペックであり(ヴィルヘルミナに一手駒としては破格の強さであると言わせる程)、自立した高度な意思を持ち宝具を使える。その中でもマリアンヌはそこらの“徒”など全く問題にならない程の大きな“存在の力”が注ぎ込まれていた。
デパート屋上での決戦にて、シャナに追い詰められたフリアグネを救い「二人の願い」を叶えるために、フリアグネと違い自分は修復できるかも知れない、という僅かな希望を託してフリアグネに自分を『ダンスパーティ』で自爆させ、シャナに大ダメージを与えると共に消滅した。第1期アニメでは死に様が異なり、正気を失ったフリアグネを見かねてシャナに立ち向かって死亡した。
その後、残された『アズュール』はシャナを通じて悠二へと渡ったが、刻まれたまま気づかれず放置されていた『転生の自在式』は、後に全く意外な形でその力を表すこととなった。
記者会見時に使用するためにスタッフが作った彼女の人形は髪が伸びていっている模様(『劇場版 灼眼のシャナ』ディレクターズカット版コメンタリーより)。
ニーナ
声 - (未登場) / 浅野真澄
“狩人”フリアグネ配下の“燐子”の一体で、猫の人形型の“燐子”。フリアグネの5918番目の“燐子”。主であるフリアグネを強く慕い、主亡き後に、執念から“ミステス”悠二を襲い、シャナに戦いを挑み討滅される。『灼眼のシャナ』ドラマディスクが初出であり、それを小説としたM巻収録の『ノーマッド』に登場している。漫画版にも多少エピソードを変更された上で登場し、漫画版では討滅される前に悠二に吐いたセリフは、第II巻前半での悠二の無気力の原因の1つとなった。アニメには未登場。
ローレッタ
“狩人”フリアグネ配下の“燐子”の一体で、陶器の馬四頭立てに懸架装置を備え、花の浮き彫りで彩られた二階付き乗合馬車の姿をしていた“燐子”。1864年頃、フリアグネが『内乱』で荒れる北米大陸へ渡った際に同行していた。フリアグネの指示にはっきり声に出して返答するなど、高度な意思総体を備えていることを窺わせた。現代まで存在していたかは不明。アニメには未登場。
“探耽求究(たんたんきゅうきゅう)”ダンタリオン[Dantalion]
声 - 飛田展男[3]
男性の“紅世の王”。炎の色は馬鹿のように白けた緑。初登場はVI巻。この世と“紅世”に関する研究と実験と発明に生き甲斐を感じ、そのためなら自分の命すらも捨てるマッドサイエンティスト。天才かつ変人で、さらに力そのものは強大な“王”である為、最も始末に負えない。通称「教授」。作中きっての変人であり、作中で「とある変人」と表現される何者かは多くの場合彼を差している。
ガサガサの長髪の長い白衣を着たひょろ長い男で、太いベルトのようなものを体中を巻きつけ、首にカメラやメモ帳、双眼鏡や拳銃など様々なものを紐でぶら下げている。目付きは鋭いが、近眼であり分厚い眼鏡で隠されている。人間の姿をしているが、腕や腰などの関節がありえない方向にありえないほど曲がったり、伸びたり手をマジックハンド状に変化させる事もある。
興味の赴くまま、この世と“紅世”に関する研究実験と発見発明を繰り返すマッドサイエンティスト。研究第一の性格で悪意はないものの、かなり自分勝手で他人を振り回し、研究実験により周囲が受ける迷惑や被害を一切考慮せず、協力者を破滅に追い込むこともあるなど、いたる所でトラブルを頻発させる稀代のトラブルメーカー。本人は研究のためならばフレイムヘイズにも協力するが、“紅世の徒”であっても彼を恨んでいる者は多い。特に『契約のメカニズムの研究』を目的として『強制契約実験』を行い、彼以外誰も喜ばない大惨事を引き起こしたうえ、結果的に強力なフレイムヘイズ(『鬼功の繰り手』サーレ・ハビヒツブルグ)を生み出した事も、彼への怨嗟の声を高める一因となっている。
その思考や行動は荒唐無稽で奇想天外、他人には理解不能(たまに自分でもわからない時があるらしい)の超変人で、「意表をつく」という点では世界でも指折りの“王”。興味の移り変わりも激しく、「その場で思いついた名案」で直前の研究を安易に放棄したり、現在興味ない事象であれば過去の自分の行動を忘れていることも多い。
技術者としては紛れも無い天才で、彼の研究成果が他の自在師によって実用化され普及した事例もある(封絶の自在法など)。そのため[仮装舞踏会]からたびたび招かれ、客分待遇として組織の中核を担う研究を行っている(興味の移り変わりやトラブルで逃げ出しては、必要な時にベルペオルに連れ戻される)。また、20世紀初頭にはハワイで[革正団]サラカエル一派に技術面で協力していた。
自在法の研究も度々行っており、自在法に関しての知識は深いが、自在法を使わないためか自在師とは呼ばれていない。
まともに相手にするには非常に疲れる性格であるため、彼に関わった者の大半が2度と出会いたくないと考えており、積極的に討滅しようとするフレイムヘイズもほとんどいない。唯一、「研究の成果」であるサーレが(比較的)積極的に研究実験を阻止しようとするため、サーレを「失敗作」として酷く嫌っている。
妙なところで伸ばして妙なところで早める、特徴的かつハイテンションな口調や仕草が特徴。剣をドリルに改造、自爆装置のスイッチが目の前にあるとつい押してしまう、手をやたら飛ばすのが趣味など、独特の嗜好も持つ。
この世に渡り来た動機は不明だが、その性格から、この世への強い好奇心と研究のためと推測される。
本来自身のみに行われる『顕現』を、『他の物体』として具現化し永続的に実体化させるという特異な能力を持ち、その能力で実験や発明に必要な道具の『素材』を生み出す(この『素材』は大抵が使い道のないガラクタである)。それらの『素材』を、独自の理論体系によって創造された『我学』に基づき、この世の道具に組み込んで、様々な実験物を生み出している。彼の作った数万に及ぶ有形無形の実験物はまとめて『我学の結晶』と呼ばれ、各々には『我学の結晶エクセレント(通し番号)』というシリーズ名が付けられている(『強制契約実験』の産物である「合体無敵超人(サーレ)」のみエクスペリメント)。大部分は性能自体は無駄に良いものの、製作目的や見た目、付随効果が珍妙だったりと、周りに迷惑な物が多い。
敵が現れても自ら戦うことはなく、必要ならば『我学の結晶』を用いて「実験を邪魔する者」の行動を妨害したり、逃亡を図ったりする。そういう面では非常に用意周到でもある。
性格と信条上、敵が多いため、逃げ足は誰よりも速い。
時期は不明だが[仮装舞踏会]から最高機密である自在式『大命詩篇』の一部を刻んだ金属板を無断で持ち出し、15世紀末~16世紀初頭に[とむらいの鐘]が『壮挙』を引き起こす遠因となっている。
本編では7月、御崎市で世界の歪みを修復する自在法『調律』に対して効果逆転の自在法『逆転印章アンチシール)』を起動させ、極限の歪みを作りどんな結果になるかという実験を試みるが、フレイムヘイズ達に阻止され失敗に終わった(VII巻)。
その後はベルペオルに『零時迷子』を餌に『星黎殿』へ連れ戻され、ヘカテーが持ち帰った『大命詩篇』の一篇を解析・実働させたり、[仮装舞踏会]全構成員への大命布達での技術面での解説を任される等(XVI巻)、[仮装舞踏会]に協力している。『大命』が第二段階へ移行するに伴い、異世界の調査のために、持てるだけの機材を厳選して“祭礼の蛇”坂井悠二らと共に『久遠の陥穽』に同行し(XVII巻)、『詣道』の崩壊や両界の狭間など、貴重な観測データを収集した。また、『詣道』の崩壊によって引き起こされた異変を『朧天震』と命名した。そして、追いついて来たシャナたちの妨害を撥ね退けて、“祭礼の蛇”神体と共にこの世に帰還する(XIX巻)。
御崎市決戦では、『星黎殿』を『真宰社』に変形させ、“冀求の金掌”マモンと共にその西側の防衛を担当。新兵器として小型の『久遠の陥穽』を発生させる『我学の結晶エクセレント252580-揮拳の圏套』を両拳に搭載した数十体の鉄巨人を『真宰社』の機器管制室から操作し、サーレと戦わせる(XXI巻)。更には『揮拳の圏套』を一段推し進めた直径30メートルを一撃で葬る『揮散の大圏』も用いて戦わせる。しかしサーレの妙技で『揮散の大圏』を機器管制室に投げ込まれ、咄嗟に緊急脱出装置を作動させるも、開かれるはずの通路に逃げ込んでいた『百鬼夜行』のパラが『ヒーシの種』で機能を麻痺させていたために不発に終わり、ドミノ共々機器管制室ごと消滅した(XXII巻)。
アニメ版では歪みの拡大の実験を行わず、登場した『我学の結晶』も名前が同じであっても見た目も用途も原作とは異なるなど、出番が大きく変更されている。第1期終盤では[仮装舞踏会]と共に、無限に“存在の力”を生み出し続ける『渾の聖廟』を製作し、第2期終盤では再び[仮装舞踏会]と共に本来“紅世”でしか生まれない“徒”をこの世で生み出そうとする実験『敷の立像(ごうのりつぞう)』を始めたが、2度ともシャナたちによって阻止された。第1期登場話数は第17話 - 19話 ・21話(台詞はなし)23話 ・24話、第2期登場話数は第15話 ・16話 ・22話(台詞はなし) - 24話。
ソロモン72柱の1柱にダンタリオンという同名の悪魔が登場する。
ドミノ[Domino]
声 - 加藤奈々絵
ダンタリオンの助手を務める“燐子”。正式名称は『我学の結晶エクセレント28-カンターテ・ドミノ』。フレイムヘイズ側は「お助けドミノ」と呼んでいる。膨れた発条に大小の歯車で両目を付け、頂にネジ巻きを刺した頭部と、ガスタンクのような鉄の胴体に(いい加減にそれらしく作られた)細長い機械仕掛けの腕と短い足をつけたロボットの姿。首だけになっても活動可能で、胴体は周辺の物体を使って再構築できる。温厚で“徒”には常に敬意を払う性格だが、主人であるダンタリオンの研究を否定する者には怒りを表す。語尾に「~でありますです」とつけるなど、妙な敬語を話す。一言多いタイプで、ダンタリオンに余計なツッコミを入れてはその都度(時には何もなくても)つねられる。宝具を使用できるなど、(実は)かなり高性能な“燐子”。『大命』の第二段階においても教授と共に行動し続け、この世に帰還した後に教授からロフォカレがとある神の眷属だと聞かされる。その後も教授と共に行動し、御崎市決戦でサーレたちによって教授と共に消滅した。
アニメでは機械仕掛けの“燐子”と位置付けられ「フレイムヘイズはその気配を認識できない(御崎市駅潜伏時)」という特性があった。また、アニメオリジナルのキャラクターとしてドミノの量産型である「27 1/5」(自我は無く、ダンタリオンの機械から発せられる“存在の力”で動いている)も登場した。
“髄の楼閣(ずいのろうかく)”ガヴィダ[Gavida]
声 - 不明
男性の“紅世の王”。炎の色は乳白色。X巻に登場。人間の作り出す「芸術」の魅力に取り憑かれて以降、人間と協力して様々な宝具を作り出した老成の“徒”。
姿は六本腕を備えた板金鎧。
この世に渡り来た動機は不明だが、当時は他の“徒”と同様に人間を喰らっていた様子。芸術に惚れこんで人間好きとなった後は、芸術(特に建築や彫刻と言った立体造形物)にこだわりを持ちながら様々な宝具を作っていた。その後、人間を喰らわなければ顕現出来ない自身の立場を疎み、“徒”と人間の垣根を越えて芸術について語らうために、“存在の力”を消耗せずにこの世に自らを留め置く宝具『カイナ』を作り、隠居した。
世話好きで人情に厚く、人間に対し好意的な“徒”としても知られる。
戦いに際しては、柄の長い大金槌型宝具『キングブリトン』を武器とする。かつては無数の敵を叩き潰したらしいが、元々戦いは得意でも好きでもなく、16世紀の時点で実戦から長く遠ざかっていた。
かつては[仮装舞踏会]と協力関係にあったが、「とある変人」が絡んだ騒ぎをきっかけに袂を分かち、その代償として移動要塞型宝具『星黎殿』を譲り渡した。自身はその後、『カイナ』を設置した移動城砦型宝具『天道宮』に隠居し、姿をくらます。
16世紀初期の『大戦』の折、親友であった人間の画家ドナートからの言伝を“螺旋の風琴”リャナンシーに伝えるべく、マティルダたちを乗せて『天道宮』ごとブロッケン要塞へ接近、その後『天道宮』に侵入してきたチェルノボーグによって殺害された。
なおマティルダたちが『天道宮』を借り受けに行った際、ガヴィダは『天道宮』と『星黎殿』を迂闊に近づけてはいけないという忠告とその理由を話した。それを聞いたヴィルヘルミナは数百年後、『星黎殿』に拉致されたシャナを奪還する為に、海中に没していた『天道宮』を浮上させて『星黎殿』内部と繋がる通路が修復する距離まで『星黎殿』に接近させ、修復した通路からカムシンやレベッカと共に『星黎殿』へと突入した。
第3期アニメではヴィルヘルミナの回想の中で登場した。
ケルト神話ゴヴニュの別名をもつ同名の鍛冶神が存在する。
“彩飄(さいひょう)”フィレス[Pheles]
声 - 井上麻里奈
女性の“紅世の王”。炎の色は琥珀色。I巻からその存在が示唆され、IX巻で初登場。『永遠の恋人』ヨーハンと二人で『約束の二人エンゲージ・リンク)』と呼ばれる。これは自称であり、定着に百年ほどかかった。
外見は黄緑色の長髪の華奢な美女で、各所に布を巻き付けたツナギのような服を着ている。両肩の人または鳥の貌を象ったプロテクターと両手の無骨な手甲はいずれも強力な武器。
この世に渡り来た動機は不明だが、後に人間であるヨーハンと恋仲となり、彼と「ずっと一緒にいたい」という願いから、ヨーハンと共に宝具『零時迷子』を作り上げた。
ヴィルヘルミナ曰く、本来はデタラメで明るく楽しい女性らしいが、ヨーハンが傍にいないと途端に機嫌が悪くなる。基本的に自由奔放に生きているが、時にはフレイムヘイズと協力もし、幾人か友人もいる。また恋人ヨーハンには絶対の信頼を置いており、彼の言いつけならば自身の意に沿わない行為にも従う。
ヨーハンと『零時迷子』の能力により「顕現を維持するため人間を喰らう」という枷から解放され、そのためフレイムヘイズの掣肘を受けることもなく、気ままに放埓を尽くすとされる“徒”の中でも本当の意味で自由な、極めて特異な存在でもある。
風を操る技を得意とし、周囲に発生させた風に自身の気配を宿らせ相手を包み込む事で、相手の気配察知や“存在の力”の流れの見極めを妨害する自在法『インベルナ』や、人間同士の接触によって伝達を続け、その際の走査で目標物を探索し、目標物を探し当てると伝達経路上の“トーチ”から僅かずつ集めた“存在の力”で意志総体を複製した傀儡を形成し本体の到着まで状況を調査、調整する独自の自在法『風の転輪』を使う。優れた自在師であるヨーハンと協力することで、さらに戦闘力を増す。本編開始の2年前には、周囲に地を這う巨大な竜巻を作り出す風の自在法『カラブラン』を編み出していた。
中世、ゲオルギウスという大法螺吹きの修士を気に入り、共に行動していたが、ある出来事を契機にゲオルギウスを殺し、彼の息子ヨーハンを育てることになる(XI巻より)。やがて青年となったヨーハンと恋仲になり、二人で『零時迷子』を作り(XII巻より)、“ミステス”と化したヨーハンと共に真に気ままな生を謳歌するようになった。
1901年、ハワイ諸島で活動していた[革正団]“征遼の睟”サラカエル一派を壊滅させる(XV巻)と、その一員であった人間ハリエット・スミスが逝去するまで、彼女と共にハワイに潜伏する。このため『約束の二人』に関する風聞は途絶え、“徒”やフレイムヘイズたちには両者とも死亡したと思われていた。
『零時迷子』の能力は“徒”にとって基本的に「あれば便利、なくても困らない」程度であり、また『約束の二人』のどちらも共に強大な実力の持ち主であるため、“徒”からは狙われていなかった。またフィレスという“徒”も、ヨーハンに諭され「決して人間を喰らわない」と誓い、毎晩回復するヨーハンの“存在の力”のみで顕現を維持し続けたため、フレイムヘイズの討滅対象にもならなかった。
しかし、本編開始の二年ほど前から“壊刃”サブラクに狙われ始め、あるとき二人と間違えられ重傷を負った『万条の仕手』ヴィルヘルミナ・カルメルを助けた(S巻『ヤーニング』)。その後、ヴィルヘルミナとも行動を共にするようになり、彼女の協力もあってサブラクの襲撃から逃れ続けたが、本編開始の少し前の襲撃で遂に敗れてしまう。瀕死の重傷を負ったヨーハンを助けるため、彼を『零時迷子』に封じ込め『戒禁』を施し無作為転移を行い、自らはサブラクとともに自在法『ミストラル』で転移して瀕死のヴィルヘルミナの逃走の時間を稼いだが、その為『零時迷子』に生じた異変を知る事ができなかった(IX巻、XII巻より)。その後は自らは一箇所に留まり続け、探査の自在法『風の転輪』を世界中に撒き、転移した『零時迷子』を捜索していた。
御崎高校の文化祭初日、『風の転輪』により『零時迷子』を発見し、御崎市へ急行する(XI巻)。同時に『風の転輪』で現場に分身を形成し、ヨーハン復活のために行動させるが、それが妨害された後もヨーハン復活のためにシャナたちを欺き、状況把握と情報収集を行った。そして『零時迷子』の異変を知ると、今まで異変を知ることが出来なかった後悔とヨーハンへの強い思慕から「自分とヨーハン以外の全て」を切り捨て、本体到着と同時にヨーハン復活を強行するが、代わりに現れた“銀”に胸を貫かれ、失敗に終わる(XII巻)。その後、一時的に悠二から変化したヨーハンに説得されてヨーハン復活を断念し、彼に頼まれた三つの仕事を果たすために御崎市を去った(XIII巻)。しかしヨーハンの頼み事は彼の消滅を前提としたものであり、その前提はフィレスにとって「絶対に受け入れられない」ものであった。そこで彼への愛から彼の指示に従いつつ、愛が「そこまでの奇跡」を起こせるのかどうかを試すべく(XX巻、XXI巻)、宝具『ヒラルダ』に自分を召喚する自在式を込め、去り際に「最も行く道の険しい愛」を抱く吉田一美へ授けた。
その後は一箇所(かつて“征遼の睟”サラカエル一派の基地だったと思われる場所)に留まり、ヨーハンからの一つ目の頼み事「巨大で複雑な銀色の自在式(描写された特徴からすると『大命詩篇』らしい)の改変」を行いつつ、二つ目の仕事「[百鬼夜行]への仕事の依頼」のため『風の転輪』で捜索を行なっていた。またハワイ諸島一帯に張っていた風の警戒網で『星黎殿』を感知すると、『風の転輪』で追跡、中国奥地で停泊した座標を独断でチューリヒ外界宿総本部に送り、フレイムヘイズ兵団(と切り捨てたはずの友人ヴィルヘルミナ)の作戦を助けた(XX巻)。
御崎市決戦の最中、吉田が起動した『ヒラルダ』により、悠二の前へ出現。ヨーハンを悠二から分離させ、吉田を攫ってヨーハンや[百鬼夜行]と共に逃亡する。その最中、ヨーハンの最後の頼み事として、改変した自在式で自分とヨーハンの存在そのものを素材として『両界の嗣子』ユストゥスを生み出し、ヨーハンと共に消滅した(XXII巻)。
第2期アニメから登場していたが、アニメでは『零時迷子』が無作為転移した時にヴィルヘルミナが所用で離れていて行動を共にしていなかったので、サブラクが『零時迷子』に自在式を打ち込むのを目撃していた。またフィレスの本体が到着した時には、ヨーハンの解放より先にシャナたちを嘲笑しこき下ろすなど、ヨーハンのために手段を選ばないだけでなく、他人を見下し貶すような性格になっていた。
ドイツの民間伝承にメフィストフェレスという似た名前の悪魔が登場する。
“壊刃(かいじん)”サブラク[Sabrac]
声 - 黒田崇矢
男性の“紅世の王”。炎の色は茜色。VII巻やIX巻にて存在が語られ、XIII巻で初登場。依頼を受け対象を抹殺する文字通りの「殺し屋」で、強大なフレイムヘイズをも葬り去ってきた強大極まる“王”。護衛や自在式の打ち込みなど、殺すことが目的ではなく手段である依頼を請け負うこともある。
マントを纏い、全身をくまなく厚手の革つなぎとプロテクターで覆い、長髪を立て、顔を長いマフラー状の布で隠した長身の男。
“徒”には珍しく明確な欲望も望みも持っておらず、この世に渡り来たのも、別の世界の存在を知って「行ってみるか」と気まぐれを起こしたため。殺し屋を行っているのも、たまたま自分の在り様がそれに向いていたというだけの理由であり、特別なこだわりはないらしい。また刃物収集家であり、気に入っている物以外は使い潰すことも躊躇わない嗜好品程度の物ではあるが、殺し屋としての依頼にも剣を報酬としている。戦闘時に使用する大きさも種類も異なる無数の剣は、全て彼のコレクションであり、“存在の力”で強化は加えているが宝具ではない普通の武器。
普段は思考も言動も全てが長口上。よくブツブツと喋っているが、大半は相手に語りかけているのではなく自分の思考を垂れ流しているだけである。かなりの不平屋であるものの、怒るという場面はそうそう無いらしい。
「戦技無双」を謳われるヴィルヘルミナですら四分半間違えば死に直結する程の非常に卓越した剣士。加えて、洪水とも津波とも思える圧倒的な量の(攻撃力としての)炎を自在に操るうえ、その炎に無数の剣を混ぜ操ることで攻撃力を向上させ、更にそれらの剣で傷付いた傷口を時と共に広げていく自在法『スティグマ』を使う。また攻撃が当たっていないと錯覚させるほどの異常な耐久力を持つ。
初撃に限定されるが、“徒”やフレイムヘイズにすら彼自身の存在と攻撃の予兆を全く感じさせず、複数個所に絶大な規模と威力の同時攻撃を行えるという特性を持つ。炎の濁流と無数の剣による攻撃を完全な不意打ちで放つが故、初撃で並の者ならば即死、強者であっても運任せで、生き残ったとしても『スティグマ』の効果で傷を深められ、放置すれば死に至る状況で戦わなければいけないという恐ろしく厄介な“王”。正面から戦闘を挑めば、『スティグマ』の効果とサブラクの圧倒的戦闘力によって倒されてしまうが、反面、広範囲に効果を及ぼす“王”には珍しく、知覚能力が人一人の分しか備わっていない。そのため、姿を現した後は初撃のような広範囲の一斉攻撃は行わず目の前の敵に対処するのみで、また出現地点から遠くへ逃げると追ってこないため、(困難だが)初撃をかわしその後のサブラクの攻撃から逃れる実力があれば、逃げることだけは容易く出来るという極端な特徴を持つ。
その正体は街の大部分を覆えるほどの桁外れに巨大な体と力を持ちながら、感覚域は司令塔となる人間サイズの分しかないという非常にアンバランスな体の“徒”。『実体を持った“紅世の徒”』としてのサブラクは、巨大な体のごく一部をそれらしい形にした「人形」に意思総体を宿したもの(オルゴンと同系統の手法)で、体の「人形でない部分」が周囲にある限り即座に「人形の身体」を作り直すことが可能。体の「人形でない部分」は通常、フレイムヘイズや“徒”に気配を察知させないほど薄めて付近の地域に広く浸透させており、その範囲内であれば必要に応じて、予め見当をつけた位置に一撃入れる(ため実は命中精度は低い)、戦いの最中に人間を喰らうなど簡易な行動も可能。まともに倒そうとすればサブラクが浸透している範囲全てを凄まじい破壊力によって破壊し尽くさなければならないが、「人形」にはサブラクの全体を統御する意思総体が宿っているため、「人形」を「人形でない部分」から切り離せば、体全体を無力化することができる。その戦闘スタイルゆえに、戦争などの所を定めない広域・大規模な戦闘は不向き。広範囲に不意打ちの初撃を叩き込むのは、体の浸透する範囲の大体どの辺りに敵がいるのか、見当をつけるための行動である。
非常に強大な力を持ちながら、正体を隠した上で不意打ちを放ってから闘う戦法を取るのは、「陰にこもる」というサブラクの“徒”としての本質の現れ。“戯睡郷”メアには、その特性が「刃という攻撃力」を「鞘に収めて隠す」剣という道具にそっくりと評された。
本編開始の2年ほど前に[仮装舞踏会]参謀“逆理の裁者”ベルペオルから依頼を受け、『約束の二人』を襲撃し始める。その幾度目かに誤って『万条の仕手』ヴィルヘルミナ・カルメルを攻撃し襲撃に失敗(SII巻『ヤーニング』)、その八つ当たりも兼ねた気まぐれから“戯睡郷”メアを助け(外伝『ジャグル』)、以後、共に旅するようになる。それからも機会があるごとに『約束の二人』とヴィルヘルミナを襲撃しつづけ、本編開始直前に『零時迷子』に『大命詩篇』の一篇を打ち込み、依頼を達成した(XII巻より)。
その後は一時期、“探耽求究”ダンタリオンに雇われていたが、秘蔵の剣である宝具『ヒュストリクス』を「イカレたからくり」(教授の付けた正式名称は『浪漫の結晶ドォ――リル付き西洋風の両手剣』)に改造され激怒し、袂を分かった。教授の方も自身の発明を「イカレたからくり」と言われたことで激怒し、お互いに相手を嫌い合うようになった。
ベルペオルに依頼達成を報告した後、その一端である『零時迷子』の“ミステス”の情報を気まぐれでメアに聞かせ、彼女に『零時迷子』に挑む決意をさせてしまう。サブラク自身は、弱小の“徒”であるメアが強者のシャナに挑む無謀を諭したが、彼女の決意は変えられず、再会を約束して彼女の粗末な短剣を預かった。その後、待ち合わせ場所である日本を訪れ、約束の日の最後までひたすら待ち続けたが、既に討滅されたメアが現れることはなかった(XIII巻より)。
メアの死を知った後、ベルペオルから『零時迷子』に関する二度目の依頼を聞かされると、標的にシャナたちが含まれていたため、自分の聞かせた情報でメアを死なせてしまった事に対する自分なりのけじめと、それに伴うメアへの弔いのために依頼を承諾(XIII巻)、クリスマス・イヴに御崎市に現れる。“ミステス”坂井悠二に最後の『大命詩篇』を打ち込むと同時に『非常手段(ゴルディアン・ノット)』を仕込み、依頼は達成したが、そのまま御崎市に滞在中の三人のフレイムヘイズとの交戦を開始。ヴィルヘルミナが『スティグマ』破りの自在法を完成させたこと、不死身とも思える耐久力と能力の正体・対処法を悠二に見破られたこと、これまで一度も追い詰められた経験がなかったために油断して敵を侮っていたことなどが重なり、悠二とフレイムヘイズらの連携によって敗北。討滅される直前に、囮兼不意打ちの手段としていたビフロンスが持っていた宝具『非常手段』に込められていた転移の自在法で辛うじてその場を逃れた(XIV巻)。
以降はベルペオルに雇われる形で[仮装舞踏会]の本拠地『星黎殿』に留まり、『大命』の第二段階への移行に伴って“祭礼の蛇”坂井悠二らと共に『久遠の陥穽』へと護衛役として同行する。盟主一行から離れて万が一現れる追手への待ち伏せを行い、『詣道』の途中に一人留まる。そして『詣道』に現れたヴィルヘルミナ、レベッカ、カムシンの三人と交戦に入るが、『スティグマ』を解呪不能の一点にのみ絞って強化した自在法『スティグマータ』(自動で傷が広がらず、傷から伸びる自在式をサブラクが攻撃することで広がる)と、御崎市で露見した弱点すら利用した罠と戦闘スタイルで終始三人を圧倒し続け、勝利するのは時間の問題となっていた。しかし、復活し『詣道』を遡って現れた“祭礼の蛇”神体を目の当たりにし、自分が敵し得る領域を遥かに超えた圧倒的な存在の大きさを前にした「どうしようもない感覚」の一端を生まれて初めて得て、その感覚を完全に掴むことに心からの興味と欲望を感じる。その結果、フレイムヘイズの総攻撃と『詣道』の崩壊による自身の命の危機をも無視してその感覚に浸ることを優先し、ベルペオルの助けをも断ち切って、自ら両界の狭間に飲まれて消滅した(XIX巻)。
“戯睡郷”メアと別れて以降、彼女のことを非常に気にかけているが、なぜメアのことが気に掛かるのか自身にも分からず、旅の代償として受け取りメアの形見となった粗末な短剣を大事に持ち、彼女への想いについてずっと考えていた。サブラクが“祭礼の蛇”神体を見たことで受けた甚大な衝撃を実感することに命も顧みない深い欲望を感じたのは、その「圧倒的な存在」に対する何を以ても埋めがたい畏れを感じた事で、メアがサブラクに抱いていた気持ちと感覚を感じ理解する事ができたためであり、彼女と同じ感覚を知ったことで自身のメアへの想いにも気付き、最期は彼女を「愛しい蝶」と言い表して消えて行った。
第2期アニメから登場していたが、登場する時期が原作より早かった。サブラクがベルペオルからの2度目の依頼を受ける場面や、戦闘後何故生きているかなどの場面が無くなっていた。
ソロモン72柱の1柱にサブナックという似た名前の悪魔が登場する。
“皁彦士(そうげんし)”オオナムチ[Oonamuchi]
男性の“紅世の王”。炎の色は弁柄。外伝『ヴァージャー』に登場。古代より長きに渡って世界中を荒らし、幾人もの強力なフレイムヘイズを倒してきた強大な“王”。カムシンには「黒金の大百足」と形容されていた。
巨大な百足の姿をしている。
動機は不明だが、この世と“紅世”の行き来が容易であった時代にこの世に渡り来ていた模様。
自らの巨体の有利不利を知り尽くし、小細工は使わず、自らの身体を武器にした直接攻撃と、全身の至るところから放たれる強力な炎を併せて戦う。また、普通の百足と同程度の大きさの百足型の“燐子”を無数使役しており、まともな知性や戦闘力も持たない代わりに微弱すぎて気配の察知が困難なそれらを見張りとして配置・利用し、また森から動けない自身の代わりに“存在の力”を刈り取らせている。
“祭礼の蛇”が『久遠の陥穽』に放逐された『大縛鎖』創造の儀式にイルヤンカと共に列席しており、“祭礼の蛇”の放逐後はカムシン達と戦った模様。
かつて古代日本のとある山を住処としており、フレイムヘイズに敗北し追われて以降、世界を流浪していた。後に最初の宿敵であったフレイムヘイズ『理法の裁ち手』ヤマベとの幾度かの交戦を経て、ついにこれを討ち果たすが、不可思議な虚脱に陥る。しかし、それまで軽くあしらってきた『戈伏の衝き手』クレメンス・ロット『荊扉の編み手』セシリア・ロドリーゴとの4度目の交戦で、2人が予想外に腕を上げていたことで、2人を新たな好敵手として認めて生き甲斐を取り戻す。クレメンスの発言からヤマベとはライバル関係にあった。
『ヴァージャー』の1年前、クレメンスを倒した際、彼がフレイムヘイズとして契約した頃にオーストリアの森の村に残した遺品をセシリアに見せないよう探して壊すことを頼まれるが、なぜか探しはしたものの壊さずにおり、遺品を探そうとやって来るセシリアを阻むために森に陣取っていた。以来、セシリアの救護要請を受けて外界宿から4度に渡って派遣された討ち手ら五人(内、四度目の二人は腕利きの討ち手であった)を屠ってきた。そして、ピエトロ・モンテベルディからオオナムチ討滅の依頼を受けた『贄殿遮那』のフレイムヘイズ(=シャナ)と激突し、シャナを足止めに利用して遺品が入っている木箱を取ろうとしたセシリアに対して、自分でも理由がわからぬまま逆上して殺害する。そしてセシリアが死んでも消えずに在り続けていた遺品を見て、それがセシリアだけにではなく、彼らと自分が長く共に在り、結び合わされた証であることに気付き、同時に箱を壊さなかった理由と逆上した理由を悟る。その証を守るために再びシャナと激突し、討滅された。
日本神話に、大国主神(オオクニヌシノカミ)の別名をもつ、大穴牟遅神(オオナムチノカミ)という同名の神が登場する。

無所属の“徒”

“屍拾い(しかばねひろい)”ラミー[Lamies]
声 - 清川元夢
“紅世の徒”。炎の色は深緑。初登場はII巻。
風格ある痩身の老紳士の姿をしている。この姿は自身の姿ではなく、寄生したトーチの姿である。
ある事件でこの世から失われた大切な絵を復元するため、膨大な“存在の力”を集めている。ただしフレイムヘイズの討滅対象になることを避けるため、人間を決して喰らわず、他の“徒”が作った消えかけのトーチのみを対象に“存在の力”を集め、またトーチに寄生することで力の消耗を抑え、この世のバランスに極力気を使っている。
なお、ラミーはただの“徒”であり、大規模な“存在の力”は統御できないため、長い年月をかけて集めた“存在の力”を毛糸玉に編み上げて持ち歩いている。彼を討滅すると逆に、集められた膨大な量の“存在の力”が制御を失い、世界のバランスを崩す可能性の方が高いとされる。
この世に渡り来た当初は他の“徒”と同様、餌として人間を喰らい遊び感覚で放蕩していたが、ドナートという人間と交友を深めた後、紆余曲折を経て、大切な絵を復元することを目的に行動するようになる。
性格は非常に思慮深く、シャナとの関係に悩む悠二に様々な助言を与えた。また、冷静沈着な性格でもあり、討滅するために現れたマージョリーに対しても大して動揺せず、シャナにマージョリーを討つ機会を与えるために自ら囮になったりした。
トーチから“存在の力”を集めたり、追跡を逃れるため多くのダミーを配置したり、わずかな動作で特定の人物だけを眠らせたり、と言った技巧に優れる自在師。
本編では、“徒”を無差別に討滅する『弔詞の詠み手』マージョリー・ドーに追われつつ御崎市を訪れ、偶然から悠二と出会う。マージョリーをねじ伏せ自身を守ってくれたシャナと悠二に報いるべく、集めた“存在の力”で戦場を修復し、去っていった(II巻)。
アニメ版から登場していた。
番外編では坂井悠二から「師匠」と呼ばれている。
死骸を掘り出して喰らうラミーという同名の悪魔が存在する。
“螺旋の風琴(らせんのふうきん)”リャナンシー[Leannán-Sídhe]
声 - 浅倉杏美
実は“屍拾い”ラミーの名と姿は、正体を隠すための仮のもの。その正体は、『封絶』をはじめとする数多くの自在法を編み出した、“紅世”最高の天才自在師“螺旋の風琴(らせんのふうきん)”リャナンシー。少女の姿をした女性の“徒”で、統御できる“存在の力”の量は少ないが、異常に高効率な自在法を、望むままに即座に構成することが可能。その名と能力は“徒”に広く知られており、ある“紅世の王”に捕らえられてその能力を操る鳥籠に入れられ、宝具『小夜啼鳥ナハティガル)』にされていた時代もある。 彼女が正体を隠しているのは、こうした過去によるものであった。
御崎市を去った後、年が明けてから[仮装舞踏会]の本拠地『星黎殿』に招かれ(XVI巻)、予定外の不安要素を内包した『大命詩篇』の解明を任される(XVII巻)。
リャナンシー自身は世界の行く末にも[仮装舞踏会]とフレイムヘイズ陣営の戦争にも興味がなく、大切な絵を復元すること、そのために莫大な“存在の力”を平穏に集めることだけを考えている。[仮装舞踏会]への協力も、世界最大規模の組織に逆らって睨まれるよりも、非常時に協力することで普段の行動を見逃してもらえる方が目的のために都合がいいからである(XVII巻)。また『大命』成就の暁には、その副産物である莫大な“存在の力”の一部が、彼女への報酬として約束されていた(XXI巻)。
[仮装舞踏会]対フレイムヘイズ兵団戦の最中、『星黎殿』の機密区画で旧友ヴィルヘルミナと再会し、彼女へ警告を与えつつ、僅かな友誼で司令室への通路に誘導した(XVIII巻)。
御崎市決戦では、『真宰社』の機関大底部にある『吟詠炉』で新世界『無何有鏡』創造の作業の補佐(『調律』の逆転印章の起動)を行う傍らで、吉田一美と語り合う。そして、『真宰社』がカムシンの『儀装』によって倒壊しかけた直後に、吉田一美から「遺言」を託される(XXI巻)。その後は、やって来たマージョリーが『吟詠炉』に保存されていた『大命詩篇』のバックアップを改変するのを黙過しながら成り行きを見守っていたが、“徒”が新世界『無何有鏡』へ旅立った際に置いていった莫大な“存在の力”を使って、念願の自在法を起動。それによって再生したドナートの板絵を抱き、リャナンシー本来の姿に戻って悠二にかねてからの約束である遺失物を復元する自在式を手渡し、悠二の持つ『アズュール』に刻まれた『転生の自在式』を条件付きで発動するようにし、悠二固有の自在法を『グランマティカ(文法)』と名付けて、新世界『無何有鏡』へ旅立った(XXII巻)。
第三期アニメで、リャナンシー本来の姿に戻って再生した板絵の感想を呟くのは、原作と違って悠二固有の自在法を『グランマティカ』と名付けた後になっている。
欧州の伝承に、芸術家に才を与える代償に夭折させるというリャナンシーという同名の妖精が存在する。
“愛染自(あいぜんじ)”ソラト[Sorath]
声 - 白石涼子
男性の“紅世の徒”。炎の色は山吹色。III巻およびIV巻に登場。妹のティリエルと合わせて『愛染の兄妹』と呼ばれる。
人化の自在法による姿は金髪碧眼の美少年。本性の姿は不明(漫画版ではアニメ版とは服装が異なり、通常時は黒いブレザーにショートパンツ、戦闘時は鎧を纏った戦闘服)。
その中身は幼児に等しく、欲望のままに行動し、特に興味を持った物に異常な執着を見せる物欲の権化のような性格。純粋ゆえに他者への配慮を知らず冷酷。その他の面では意志薄弱で、妹に依存する言動が特徴。
“存在の力”を込める事で刃に触れていた者に傷を付ける能力を持つ片手持ちの大剣型宝具『吸血鬼ブルートザオガー)』の使い手。また、戦闘時は鎧を一瞬にして装着する。高い身体能力とシャナに匹敵する一流の剣の腕を持つ反面、自在法は不得手で、初歩的な自在法である封絶や達意の言もまともに使えない(台詞は全てひらがなとカタカナで、漢字が一文字もない)。数少ない力として、欲するものを、見なくとも在処を感じることができる自身の存在の本質『欲望の嗅覚』を持ち、その力はどんなに離れていても、邪魔があっても、存在そのものと繋がり感知するため、通常の探索の自在法では全く感知できない『秘匿の聖室(クリュプタ)』に隠蔽された『星黎殿』さえ感じ取ることが出来る。
『贄殿遮那』を狙って御崎市に来訪しシャナを襲撃、ティリエルのサポートもあり一時はシャナを圧倒するものの、戦いの末にティリエルに続いてシャナに討滅された。
討滅後、『吸血鬼』はマージョリーが持ち帰り、マージョリーが現実を知らせる為に佐藤田中に与え、彼らの手に余った為にマージョリーからシャナに譲られた後、最終的にヴィルヘルミナとの戦いを経て坂井悠二の手に渡った。
太陽を司る同名の悪魔が存在する。
“愛染他(あいぜんた)”ティリエル[Tiriel]
声 - 田村ゆかり
女性の“紅世の徒”。炎の色は山吹色。III巻およびIV巻に登場。兄のソラトと合わせて『愛染の兄妹』と呼ばれる。
人化の自在法による姿は「フランス人形」と形容される金髪碧眼の美少女で、ソラトと瓜二つの顔をしている。本性の姿は幾枚もの山吹色の花弁でできたケープ
兄・ソラトに強い愛情を持ち、その欲望を叶える事と、彼に自分を依存させ助け守ることに、至上の喜びを感じている。兄にはとにかく甘く、それ以外の物には辛辣でそっけない二面性を持つが、自分と同じように愛で動く者には、兄とは比べ物にならないにせよ、好ましく思っているような態度を見せる。
なお兄が他の女性に心を向けることは絶対に許せず、兄が他の女性の名を一言口にしただけで、愛する兄を殺しかねないほどの力で「反省を促す」と言った、非常に嫉妬深い一面も持つ。自身の欲望が自身ではなく、全て兄という「他者」に向けられ、それに依存していることを除けば、「己の欲望に忠実極まりない、まったく“徒”らしい“徒”」である。
固有の自在法として、『揺りかごの園クレイドル・ガーデン)』を使う。『揺りかごの園』は封絶と似た力を持つが、内部の気配を外部に洩らさないという性質を持つ。そのためいかなる“徒”でもフレイムヘイズに気配を気付かれないでいる事が可能である。通常は身に纏うサイズに縮小して気配隠蔽に使うが、人間を喰う時には通常の封絶のように拡大させる。また、人間に組み込むだけで高度かつ複数の機能を秘めた植物型の“燐子”『ピニオン』を作り出す自在式を編み上げることができる巧緻な自在師でもある。
これに加えて、一種類に限るが自在式を自動で維持し続ける宝具『オルゴール』を使うことで、あらかじめ用意しておいた多数の『ピニオン』を起動・維持させ、『揺りかごの園』を街1つを覆うほどの巨大な規模に拡大させる。その際は他者を逃がさない隔離空間としても機能し、さらに『ピニオン』が拡大した『揺りかごの園』の維持、ティリエルの武器である蔦の精製に加え、周りの“存在の力”を奪い兄妹に“存在の力”を供給し続けるため、力をほぼ好き放題に振るえる。
他者(彼女の場合は兄)に尽くし、そのためには自分の命さえも厭わない彼女の存在の本質は『溺愛の抱擁』とも呼ばれ、自在法『揺りかごの園』の根源的な精神になっている。なお人間に自在式を打ち込んで多機能な“燐子”ピニオンを作り出すという行為は、『他者のために全てを捧げる』というティリエルの本質を他者に移殖するという行為であり、すなわちピニオンはティリエルの分離体である。
ソラトの欲望を叶える為に共に御崎市を訪れシャナを襲撃し、自身の“存在の力”の全てを兄のために最後まで使い、シャナの炎に飲み込まれて消滅した。この2人の互いにすがるような愛情表現にシャナは反感を覚えるものの、同時に愛するもののためならば自らの命を賭すことも辞さないその姿に大きな感銘を受ける。
水星を司る同名の天使が存在する。
“纏玩(てんがん)”ウコバク[Ukobach]
声 - 津田健次郎
男性の“紅世の徒”。炎の色は爛れた赤銅色。0巻『オーバーチュア』に登場。
己の本来の醜い姿を極端に嫌い、理想的な美しい人間型の姿を作る為に人攫いや写真撮影を行っていた。
他の“徒”と比較しても格段に弱力で、“徒”が持つ独特の違和感ですら、人間に紛れて気づかれない程度。自在法の技術も未熟で、顕現は不安定で炎が洩れ、“燐子”は作れるもののトレーラーの運転と写真撮影の手伝いといった雑用しかこなせない稚拙なもの。相手を閉じ込め停止させる泡を放つ金属の輪型宝具『アタランテ』が唯一の武器。
御崎市に程近い田舎町である寄木市(OVA「S」シリーズより)で『贄殿遮那』のフレイムヘイズ(=シャナ)と交戦し、討滅された。
ウコバクという同名の下級の悪魔が存在する。
“穿徹の洞(せんてつのほら)”アナベルグ[Annaberg]
声 - 真殿光昭
男性の“紅世の徒”。炎の色は鉛色。S巻『マイルストーン』に登場。
トレンチコートとソフト帽を身に纏い、火掻き棒のような手と丸型メーターの顔を持つ。
人間が作り出す文明や優れた物に心酔しているが、曰く「文明の加速」のため、それらの破壊を目的に活動している。これは、優れた物を破壊する事で「壊れた物を糧に、より優れた新たな物を作る」という人間の活動を促進させるという事。
固有の自在法は気配や“存在の力”をぼやかす蒸気を放つ事。この蒸気により奇襲や気配の誤魔化しなどが行えるが、敵味方問わず気配を混淆させてしまうため、フレイムヘイズの奇襲に“徒”が気付きにくくもなるという欠点もある。蒸気は袖口などから噴出させ飛行や姿勢制御にも使う。切り札として、発射した炎弾の任意爆破もできる。それなりにフレイムヘイズとの交戦経験があり、幾人か倒してもいる模様。
1930年代、対[革正団]戦でフレイムヘイズ達がニューヨークから離れた隙に、エンパイア・ステート・ビルの破壊を目論んで、護衛の“千変”シュドナイと共に渡米。同時期に渡米していた『弔詞の詠み手』マージョリー・ドーと戦闘になり、乱入してきた『魑勢の牽き手』ユーリイ・フヴォイカに討滅された。
第2期アニメにも登場し、アニメでは顔(にあたる圧力計)の表面に『ANNA BERG』というロゴを確認できる。
ドイツに、鉱山を守るとされる同名の悪魔アナベルグが存在する。
“澳汨肢”(おうこつし)ラハブ[Rahab][4]
“紅世の徒”。炎の色は腐った藻のような暗い緑色。S巻『マイルストーン』に登場。
巨大な蛸のような姿。
総称して「海魔(クラーケン」と呼ばれる、海洋上で人を襲う“徒”の一体。
1930年代にヨーロッパからアメリカに向かう移民船を襲撃したが、“虺蜴の帥”ウァラクと契約した直後のユーリイ・フヴォイカにわずか一撃で討滅された。
第2期アニメではユーリイの回想の中で姿だけ登場した。
ユダヤ教の伝承に、ラハブという同名の海の怪物が登場する。
“駆掠の礫(くりゃくのれき)”カシャ[Kasha]
声 - 松原大典
男性の“紅世の徒”。炎の色はアイボリー。SII巻『ゾートロープ』に登場。
薄手のジャケットにスラックス、首には洒落たストリング・タイという姿の青年。
使用者の意思のままに空中を自在に飛び、自在式を自由に込めることができる数十もの指輪型宝具『コルデー』に爆破の自在式を込めて武器とする他、踝に炎の車輪を発生させ、移動に使う。
ゾフィー・サバリッシュ曰く「逃げ足に定評がある」とのことだったが、ゾフィーに師事していた『贄殿遮那』のフレイムヘイズ(=シャナ)により討滅された。宝具『コルデー』は、その後シャナが保管しており、御崎市決戦において重要な役割を果たすこととなる。
第2期アニメでは、『ゾートロープ』の話は無かったことになっている。「売り出し中」ということで名を売るために御崎市に住むシャナに戦いを挑み、近衛史菜が人間かどうかを判断するために利用された挙句、あっけなく討滅された。
日本に、火車という同名の妖怪が存在する。
“羿鱗(げいりん)”ニティカ[Nitika]
男性の“紅世の徒”。炎の色は鼠色。SII巻『ゾートロープ』に登場。
巨体は翼竜とも見え、体中に鱗のように金貨を貼り付けている。
金貨を得る事を享楽としており、古美術商店の金庫を漁っていたところを『贄殿遮那』のフレイムヘイズ(=シャナ)の襲撃を受ける。移動式の封絶を使ってシャナの動揺を誘い逃亡を図るが、シャナを監督していたゾフィー・サバリッシュにより討滅された。
真名が雑誌連載時(鯨鱗)と文庫版及びDVD初回特典付属の冊子(羿鱗)で異なっている。
古代ギリシアの書物『ヌクテメロン』に、宝石を司るニティカという同名の人物が登場する。
“戯睡郷(ぎすいきょう)”メア[Mare]
声 - 小林沙苗
女性の“紅世の徒”。炎の色は朱鷺色。作者原案・監修のPS2版ゲームにオリジナルキャラクターとして初登場した。その後本編でもXIII巻にてサブラクの会話の中で言及されており、以後本編では「既に討滅された“徒”」として、外伝では存命の時の状態で登場している。
ゴスロリ風の衣装と日傘という上品ないでたちの、頭部に二対の太い角を生やした少女。この姿は寄生しているトーチの姿だが、頭部の角はメアに寄生された証であり、また顔もメア自身のもの。本性の姿は仮面を付けた道化で、仮面の下にはメアの素顔が隠されている。
ちっぽけな自身に強いコンプレックスを持つ、若く弱小な“徒”。休む事も決して出来ない“紅世”をその弱さから地獄と感じ、運任せで両界の狭間を越えて渡ってきた。自らを「蝶」と例えており、「本質の顕現」では蝶のような光を放つ等、蝶の性質を持っている模様。
気配を抑えて敵から逃れるために“ミステス”に寄生し、寄生している“ミステス”の蔵する宝具も使える。現在寄生している“ミステス”の蔵する宝具は、振るう事で炎弾を雨霰と放つ神楽鈴型宝具『パパゲーナ』。
また固有の自在法として、『ゲマインデ』を使う。『ゲマインデ』は周囲の者の意識を取り込み、取り込んだ者の記憶で構成された夢の舞台を作り出し自在に操る特殊な自在法。
『ゲマインデ』で作り出した夢の世界そのものがメアのようなもので、基本的に内部ではメアは無敵であり、本来メアには使えないはずの高度な自在法や攻撃を行う事もできる。しかし、夢の世界での出来事は現実世界の肉体には影響を与えず、また『ゲマインデ』が解けた時点で忘れ去るため精神的な影響もなく、夢の世界で過ごす時間も現実世界では一瞬に過ぎないため時間稼ぎもできず、また対象が夢であることに気づくと夢の主導権を奪われた上、夢から引き剥がされメア本体だけがダメージを受け『ゲマインデ』も解けるなど、欠点が多い。
『ゲマインデ』の主な対象は寄生先となる“ミステス”だが、対象以外の人間やトーチ(ミステス)、“徒”、フレイムヘイズも夢の媒介として同時に取り込むことができ、夢の主導権を奪われるのを防ぐため、保険として通常は複数の者を同時に取り込む。これは、夢の世界が取り込んだ者の記憶から作り出された世界であるため、1人の記憶では「知っていること」だけしか起きない世界に違和感を覚えるが、お互いしか知らない事を組み合わせる事で、違和感を出来る限り少なくする意味もある。
対象や媒介の意識に干渉することもできるが、メアより強い者の意識には干渉できず、フレイムヘイズや“徒”に対しては直接的には「夢で遊ばせる」だけの力しか持たない。しかしメアは夢の世界で相手の攻撃手段や防御力などを探り、現実世界で逃走する際に手助けとなる情報集めの手段としている。
意識に干渉を行えるトーチ(ミステス)や人間に対しては、“ミステス”に掛けられた『戒禁』を侵食し、取り込んだ者の記憶や力の軌跡などから抽出した情報を元に『敵』として組み換え、それを夢の世界に取り込んだ者に破壊させることで“ミステス”を守る『戒禁』を解かせる、『戒禁』破りの自在法として使用可能で、メア曰く「共に見る滅びの夢」。弱小な“徒”であるメアが『戒禁』を破るための唯一の方法であり、メアの生命線とも言える。通常は戦闘用宝具を宿した“ミステス”に使われるが、相手が戦闘用宝具を宿していないのに『戒禁』に守られているような例外の場合は、フレイムヘイズも夢に取り込み『敵』を倒させる。
本編開始の二年前、中央アジアで[百鬼夜行]の運行バスを利用していたが、[百鬼夜行]を追跡するフレイムヘイズとの戦闘を避けて途中下車(SII巻『ヤーニング』)。そのままカシュガルに向かう途中で、フレイムヘイズ『燿暉の選り手』デデに討滅されかけるが、偶然通りかかった“壊刃”サブラクに助けられた(外伝『ジャグル』、XIX巻)。以降、サブラクに同行するようになる。
出会う以前からサブラクの噂は聞き及んでいた。己の弱さゆえに、強大な力を持つサブラクを畏れ、羨みながら恨み、自身を恥じていた。彼に自分を見て、気にかけて貰いたいとの想いから、サブラクにも気後れせず突っ掛かっていた模様。
サブラクから『零時迷子』のミステスに関する情報を聞くと、彼と並んで歩くことが出来る「誰からも無視されない存在」になるべく、様々な陰謀が絡む『零時迷子』のミステスに寄生することを決意。サブラクと再会を約束して別れ、本編開始後の8月ごろに御崎市に現われた。
寄生対象である悠二、『敵』を倒させるための戦力および媒介としてシャナ(とアラストール)、夢を引き剥がされた時の保険として一美の三人の意識を『ゲマインデ』に取り込み、敵の姿をした『戒禁』をシャナと悠二に送りつけながら、『戒禁』を倒し解除していく彼らの様子を観察していたが、悠二の洞察力から夢の世界の違和感を気付かれて夢から引き剥がされ、“存在の力”への鋭敏な感覚から悠二の内部で『戒禁』を侵食し変換していたメア本体の位置を看破され、シャナにより悠二ごと本体を斬られたことで外部に引きずり出されて討滅された。『ゲマインデ』の崩壊と共にシャナたちからはその存在は忘れ去られ、夢の中のことも感情を伴った記憶が断片的に残ったのみであった。
DSゲーム版のみ搭載されているバトルモードをクリアした際には、喜びを真っ先にサブラクに伝えようとするなど彼女のサブラクへの思いの一端が見られる。
第2期アニメでは登場する時期が9月に変わっており、『ゲマインデ』も夢を操るところは共通するが、夢の中での出来事が現実にも作用したり、『戒禁』破りの自在法ではなく解除されても記憶が残るなど概要が大幅に異なる。また『零時迷子』に掛けられた『戒禁』の存在も知らず、『戒禁』に掛かっている。
名前に似た単語に、夢魔を意味するナイトメアという語がある。
“気焔の脅嚇(きえんのきょうかく)”ギヴォイチス
声 - アニメ版ドラマCD 樋口智透[5]
“紅世の徒”。炎の色は苔色
人化した姿は大柄な男で、本性の姿は直立する一本角の蜥蜴。腰帯に華美な装飾の剣『スクレープ』を帯刀していたが、ギヴォイチスはこの『スクレープ』を宝具だと他の乗客たちに吹聴していた(真相は不明)。
本編開始の二年前に、[百鬼夜行]中央アジア便のバス型“燐子”『温柔敦厚号』の乗客として登場し、「『大戦』に従軍して、敵陣に単騎突撃する“大擁炉”モレクと共にフレイムヘイズを数多斬り伏せ、『万条の仕手』を討ち取った」「『破約事件』に襲撃犯として関わった」などと大法螺を吹きまくった挙句、乗り合わせた客の一人と諍いを起こしてゼミナに実力行使で鎮圧された。その後、[百鬼夜行]が逃亡する際に、運賃と称して時間稼ぎの捨て駒としてヴィルヘルミナへ差し向けられた刺客たちの一人になった。対峙したヴィルヘルミナに向かって剣『スクレープ』を指して「『万条の仕手』をも屠った名剣」と口上を述べたことで、ものの見事に本人の顰蹙を買い、他4体の“徒”とまとめてヴィルヘルミナにあっさり討滅された。
スラヴ神話に登場するトカゲの姿をした守護精霊にギヴォイティスがいる。

[仮装舞踏会(バル・マスケ)]

盟主と三柱の強大なる“紅世の王”である『三柱臣トリニティ)』を中心とした、世界最大規模の“紅世の徒”の組織。数千年前に結成され、他の大集団とは頭一つ二つ抜きん出た桁違いの規模の兵力を備え、一騎当千の実力を持った錚々たる顔ぶれの将帥らが数多く在籍している。

数千年前に盟主を失って以降は、情報交換と支援を本分として、他の組織と情勢分析のための会合を行ったり、構成員ではない“徒”の保護、フレイムヘイズを避けるための秘匿交通路の確保や、この世に跋扈する“徒”にこの世で暮らすための訓令を与えたり、彼らに仇なすフレイムヘイズやその外界宿(アウトロー)の殲滅を行うなど、この世の“徒”に対する互助共生を行っている。

そうした活動の裏で密かに、盟主が掲げた『大命』の成就を目的として活動し、『大命詩篇』と呼ばれる自在式を中核に数千年という年月をかけて準備してきた。『大命』の成就は、三つの段階に分けられている。

  1. 『大命詩篇』を用い、『久遠の陥穽』に放逐された盟主の意思を受信し思い通りに動く代行体を精製すること
  2. 『久遠の陥穽』へ通じる『神門』を開き、放逐された盟主の神体を取り戻すこと
  3. 盟主によって両界の狭間に新世界『無何有鏡(ザナドゥ)』を創り出し、全ての“紅世の徒”を移住させること

当初『大命』について公には伏せられ、構成員の多くは『大命』という言葉すら知らされていなかったが、第一段階である代行体による盟主の「仮の帰還」が為された際に構成員に布告された。 また、新世界『無何有鏡』では“徒”が人間を捕食する必要がなくなること、この世と“紅世”の間に新世界『無何有鏡』が置かれれば“徒”がこの世へ渡る意義を失わせ、また“徒”がこの世へ渡るのを阻む壁となることから、坂井悠二の望みである「“徒”とフレイムヘイズの戦いを終わらせる」「家族や友人たちが“徒”に襲われずに済む」と合致し、シャナたちフレイムヘイズを支援していた彼を[仮装舞踏会]側に翻意させる大きな動機となった。

兵科としては『三柱臣』に加えて、戦闘を担当する巡回士ヴァンデラー)、フレイムヘイズの捜索・追討や組織のための情報収集を担当する捜索猟兵イエーガー)、組織の中枢と各地の捜索猟兵や巡回士らとの連絡を主任務とする布告官ヘロルト)、本拠地を守る禁衛員ヴァッフェ)などが存在する。通常、巡回士と捜索猟兵はペアを組んで任務を遂行する事が多い。

盟主を失った数千年前の一戦以降「主なしの組織」となり、一度として自ら武力闘争と呼ばれる程の戦いを仕掛けることはなかったが、『零時迷子』の発見以降は積極的かつ秘密裏に動き出し、『大命』の妨げになる世界各地の重要な外界宿を襲撃し、壊滅させ続けた。盟主が仮の帰還を果たした後、上海外界宿総本部での一大会戦にて東アジアのほぼ全てのフレイムヘイズごとこれを殲滅、事実上の宣戦布告をし、開戦状態となっていた。フレイムヘイズ兵団に大勝した後、両界の狭間への道を開くため、当時最も歪みが大きく狭間への壁が不安定になっていた御崎市へ襲来した。

そして御崎市決戦を経て、新世界の卵にシャナたちによって改変の自在式を打ち込まれたことによる「人を喰らえない」理を、結局は“祭礼の蛇”や“徒”たちも受け入れた為に、そのまま新世界『無何有鏡』は創造された。そしてベルペオルは、新世界での“徒”たちの動向を見定めるために[仮装舞踏会]を一旦散会させ、十年後に集結するように構成員たちに伝えた。

しかし、新世界『無何有鏡』では、新世界の事情に疎い新参の“徒”らが大規模な混乱をあちこちで引き起こしたため、かつて討ち手と契約した“王”を「同胞殺しとその道具」と蔑んでいた古参が、その「同胞殺し」を行ってでも止めなければならないという事態が発生していた。また、この時期には契約者を失った元討ち手の“王”ら『秩序派』が外界宿に合流し、新参の“徒”らは[マカベアの兄弟]をはじめとする組織を乱立させていた。この、後に『混沌期』と呼ばれる時期の、創造から数ヶ月の混乱を重く見たベルペオルは[仮装舞踏会]を再招集、構成員は二年弱の間に集結を果たした。現在は目下、[マカベアの兄弟]との抗争状態にある。

[仮装舞踏会]の“王”

盟主
祭礼の蛇(さいれいのへび)”伏羲(ふっぎ)
声 - 速水奨
男性の“紅世の神”。炎の色は。この炎は通常とは違い、闇と区別がつかないような「輝かない炎」であり、「全てを染め上げ塗り潰す」とも形容され、その炎に照らされた物体は銀色の影を落とす。II巻からその存在が語られ、坂井悠二の夢に「真っ黒な悠二」として登場、XIV巻で仮の帰還を果たした。[仮装舞踏会]盟主。『天裂き地呑む』化け物とまで称される伝説の存在。
かつての中国での通名である伏羲は、仮の帰還を果たした際に「汚名に等しき通名」として捨てた。
その姿は、見る者に等しく畏怖と崇敬を抱かせる、銀色の目を持つ巨大な黒い蛇。強大な“王”ですら及びもつかない、常識の尺度から遥かに外れた圧倒的な力を持つ。
悠二曰く「いつも誰かの望みを叶えたくてウズウズして」いるとのこと。その特性上望まれることは何でもできるが、望まれない事は何も出来ない。また自身を「欲望の肯定者」と称し、大度にして無邪気。また、誰かの望みを叶える以外のことに興味はなく、融合後の悠二にも自由な行動を許していた。
“紅世”の世界法則を体現する超常的存在である『神』の一柱、“紅世”の『創造神』。神威召還時の御言葉は“祭基礼創”。その権能は「造化」と「確定」。踏み出し見出す力を司り、新たなものや流れを作り出す、始まりの神。“紅世の徒”の望みが一つの形に結実したときに現れその望みを叶える存在(一般的な神話宗教の創造神というよりは、願掛成就の神に近い)。言うなれば、創造神は創造神でも「これから作り出す神」。公式ガイドブック完結編『灼眼のシャナノ全テ 完』では「造物主だがゴッド(神)ではない方」とされている。
始まりの神の権能ゆえに新たな発見に溢れたこの世に興味を持ち、数千年前に『三柱臣』と共にこの世に現れ、良し悪しに関係なく求められるままに、この世の“徒”達に多くのものを齎した。
その後、“存在の力”に満ち溢れる封じ固められた都『大縛鎖』と、それを監視する宝具『玻璃壇』を作って世界の変革を行おうとした(当時それを願った“徒”については詳細不明)ため、阻みにきた古のフレイムヘイズ達との壮絶な死闘の末に、「この世や“紅世”へ到達するために必要な指標」が遮断された状態で、この世と“紅世”の狭間に放逐された(秘法『久遠の陥穽』)。この際、逃れられないと悟るや、この世に残る“逆理の裁者”ベルペオルの右目を『旗標』として受け取り、また『久遠の陥穽』を創造神の力で構造変容させて、共に巻き込まれた最古のフレイムヘイズたちの『久遠の陥穽』を作動させ続ける“存在の力”を、ほんの微か自分にも流れ込むよう改変した。
このときの戦いは『神殺し』の御伽話として、かつて「支配」というものに興味を覚えた“祭礼の蛇”が、『大縛鎖』を作った途端にフレイムヘイズ達に袋叩きにされ「一発昇天」したと、後世に伝えられた(II巻より)。また、実際にはこの世から「放逐」されただけだが、詳細を知らない後世のフレイムヘイズたちには「討滅」されたものと認識されていた。
両界の狭間では、神体から力の大部分を結晶として切り離して青銅塊に変化させ自身の神床である『祭殿』へと形成し、黒い蛇骨のみとなった神体をその中で休眠させた。一方で、最古のフレイムヘイズたちから得た減じない“存在の力”を、精神活動にて、休眠させた神体とこの世を繋ぐ道である『詣道』や、この世における自身の代行体を構築するための自在式『大命詩篇』の創造に当て、『旗標』を磁針としてこの世に残る“頂の座”ヘカテーへ『大命詩篇』を送り続け、数千年の間、帰還の時を待ち続けていた(XIX巻より)。
こうして現代に至り、『大命詩篇』が打ち込まれた宝具『零時迷子』を通じて坂井悠二を観察する。やがて「フレイムヘイズと“徒”の戦いを終わらせたい」という彼の願いを同調可能な思考と判断、自身と共に歩む唯一の“人間”と認め、自身のもうひとつの体となる「代行体」に悠二の意識を残す形で、彼と融合した。そして代行体“祭礼の蛇”坂井悠二らの手によって遂に覚醒・復活し、この世への帰還を果たした(XIX巻)。
しかし、再構成したばかりの神体は『詣道』を踏破するという強行軍に加えて、両界の境である『神門』を潜り抜けたことで微妙な軋みをあげており、ヘカテーによる神体顕現の安定化作業によって、中国南西部の決戦が終わる頃には五割方安定した模様。そして各軍との合流などの準備が整い次第、生き残りのフレイムヘイズの掃討を行いつつ、悠二や『三柱臣』たちと共に御崎市に向けて出発した(XX巻)。
御崎市に向かうまでは『秘匿の聖室』で姿と気配を隠蔽し、『星黎殿』の到着間近に吉田一美を迎え入れ、新世界『無何有鏡』創造の前段階として『調律』の逆転印章を起動させた。『星黎殿』が『真宰社』に変形してからは、“祭礼の蛇”神体はその上空でヘカテーを取り巻く『大命詩篇』の繭の周囲で環を作り、代行体である坂井悠二はシュドナイを護衛に、防衛線を抜けてきたシャナたちと交戦に入った(XXI巻)。そして、午前零時に神威召喚“祭基礼創”を発動し、広がった両界の狭間への隙間に黒い螺旋状の入り口である『天梯』を創造し、シャナたちが新世界の卵に撃ち込んだ『コルデー』に仕込まれた『大命詩篇』によって改変された「人を喰らえない理」を“徒”たちと共に受け入れた為、そのまま新世界『無何有鏡』創造を達成した。新世界『無何有鏡』完成後は、惜しみながらも悠二と分離。フレイムヘイズたちとアラストールに人を喰らえない理が新世界に組み込まれた事を告げ、ベルペオルと共に新世界『無何有鏡』へと旅立ち、一時の眠りに入った(XXII巻)。
創造神“祭礼の蛇”を阻み討滅することが出来るのは、彼と同格の存在である天罰神“天壌の劫火”アラストールのみであり、“祭礼の蛇”神体が帰還すれば、[仮装舞踏会]の勝利は確定するとされていた。
一般の構成員には代行体が完成して後の大命布告まで「遊行無頼に耽り不在」と説明されていた。
かつての性格は、フリアグネ曰く「すごくすごく偉い……でも、とてもとても変で、とてもとても甘い……ああなっても仕様がなかった……」との事だった。
伏羲は、古代中国神話に登場する神または伝説上の帝王。
第三期アニメに登場した。
銀”
『弔詞の詠み手』マージョリー・ドーが追い求める仇敵。銀の炎を吹き上げる歪んだ西洋鎧の姿をしている。名前も正体も不明であり、炎の色がであることから“銀”と呼ばれる。人間時代のマージョリーの前に現れ、鎧の隙間からは無数の虫の脚が這い出させ、まびさしからは無数の嘲笑に染まった目を覗かせながら、マージョリーの周りの人間全てを殺し喰い尽くした後に忽然と消えた。
その正体は、『久遠の陥穽』に放逐された“祭礼の蛇”の代行体を作るための装置の一つ『暴君II』が発生させる現象にして分身。『暴君II』は代行体の核となる“祭礼の蛇”の意思と共振し再現する「仮想意思総体」を完成させるために、人間の強い感情を収集する役割がある。強い感情に反応して『暴君II』は当該地に分身を転移させ、感情に伴う行動を真似ることで、その感情を写し取り『人格鏡像』として採取する機能が付いており、その分身が正体不明の“徒”・“銀”として認識されていた(炎の色の銀は、“祭礼の蛇”の黒い炎が作る影の色)。マージョリーの前に現れたのも彼女の感情をコピーするためであり、嘲笑の目で彼女の周囲の人間を殺し尽くしたのも(感情をコピーするために)彼女がやりたかったことを代わりに実行しただけであった。
代行体である“祭礼の蛇”坂井悠二には『暴君II』が補助武装として組み込まれており、その多重顕現機能を利用して“銀”を自身の意思で多数生み出し、自在に操っていた。
御崎市決戦で“探耽求究”ダンタリオンが両界の狭間に放逐された際、それに伴って『暴君』も機能を停止し、使えなくなった(XXII巻)。しかし、新世界が創造されてから数年後には、坂井悠二によって竜尾と共に再起動に成功しており、ハボリムから課題と引き換えに譲り受けた三十体もの新型“燐子”砲兵を出し入れして、『色盗人』の“徒”たちを一斉砲撃して撃滅した(外伝『クイディティ』)。
第一期アニメでは、マージョリーの回想の中で姿だけ登場した。第二期アニメから実体が登場した。
三柱臣(トリニティ)

創造神“祭礼の蛇”の眷属たる三人の“王”。「守り」「謀り」「起動する」、創造神のための「システム」の具現化。討滅される、生贄になるなどで死亡した場合でも存在が消滅することはなく、創造神の許で眠りにつき、機が熟すればまた復活するという特殊な存在。それぞれの意志や事情・目的によって組織に属する他の“徒”達とは違い、成り立ちから盟主に属することを宿命付けられ、古代から付き従っている特異な存在である。強烈なカリスマを持ち、通常束ねることが困難な“徒”をこれ程までに束ねているのは、『三柱臣』が重ねてきた長年の実績と、彼らと対面した際に抱かされる感情によるものである。基本的には全員が人間に近い姿をしている。

なお、“祭礼の蛇”は自身が生み出した彼らを「息子」「娘」と認識している部分があるが、彼ら自身にとって“祭礼の蛇”はあくまで自身が仕える「主」であり、生みの親と言う認識はなく、また互いを兄弟姉妹とも考えていない。

“千変(せんぺん)”シュドナイ[Sydonay]
声 - 三宅健太[3]
男性の“紅世の王”。炎の色は濁った紫。初登場はIII巻。[仮装舞踏会]『三柱臣トリニティ)』の将軍。絶大な戦闘力を誇り、古来より数え切れないほどのフレイムヘイズを倒してきた強大極まる“王”。作中で倒したフレイムヘイズの数も最も多く、“祭礼の蛇”を除けば最強の強さを誇る(センターヒルをして「最悪の敵」と称されていた)。
かつての中国での古い通名は蚩尤
他の“徒”とは異なり、その真名が示す本質から生まれる『変化』の力を持っているため姿は不特定であり、必要に応じて姿形を自在に変えることができる。普段は人間型をしており、プラチナブロンドをオールバックにし、サングラスを掛け、ダークスーツを着た長身の男性の姿をとる。しかし戦闘時や「食事」の時には、頭や腕や口を様々な場所に複数作ったり、全身や腕や口などの体の一部を巨大化させたり、切り離したり、蝙蝠、亀、大蛇、鳥など様々な動物(虎が比較的多い)に変えたり、高層ビルの内部を全て埋め尽くすほどに分裂したりなどと、自由自在に変化する(アニメでは、のような一本角のライオンの体に鳥の脚、蝙蝠の翼、爬虫類の尾、という姿で一定している)。『大戦』に出陣した際は、黒い全身甲冑にマントを身に着けた騎士のような出で立ちだったが、これもまた『変化』のうちらしく、鎧ごと体を変化させていた。
“祭礼の蛇”の眷属であり、盟主“祭礼の蛇”により「主を守る」使命を課せられた存在。彼の『変化』の力は主を守るため、あらゆる攻撃の全てに同時に対処すべく与えられたものである。しかし“祭礼の蛇”が『久遠の陥穽』に放逐されて以降は本来の使命を果たせなくなり、代替行為として長年、依頼を受けて依頼者である“徒”を護衛してきた。そのため周囲からは「他者の護衛を趣味とする変わり者」「護衛と言う道楽にかまけて[仮装舞踏会]の職務を怠けている」と見られがちだが、“祭礼の蛇”に対しては他の『三柱臣』同様、非常に忠実である。
普段は飄々として部下にも寛大な性格で、敵であるフレイムヘイズに対してすらも友人に接するかのような態度を取る事も多い。
戦闘時には「本質そのままの姿」へと姿をとる戦闘スタイルからか、人間の文化に憧れるあまり本質そのままの姿を陳腐とする最近の“徒”の風潮を、内心で寂しく思っている。一方で、人間の姿をとる際には当代の流行文化をいち早く取り入れる洒落者の面も持つことから、人間の文化そのものには好意的と言える。特に煙草が大好きで、いつも吸っている。
“頂の座”ヘカテーに好意を持っており「俺のヘカテー」と公言して憚らない。特にヘカテーの身に僅かでも危険が及ぶと、飄々とした態度から一転して怒り狂い、その原因を作った相手を攻撃、幾人もの名のある“徒”や“王”を葬ってきた。さらにその怒りはヘカテーを守れなかった味方の護衛にも向けられ、味方ですら真剣に自分の身命を危ぶむ事態となるため、周りは敵の襲撃以上に、ヘカテーに危険が及ぶことと、それがシュドナイに知れることを恐れている。本人曰く、ヘカテーを愛しているのであって、決してそういう趣味ではないとの事。
一方で“逆理の裁者”ベルペオルのことは公然と「ババア」呼ばわりしてこき下ろし、ベルペオルの方もいちいち皮肉たっぷりに接しているが、両者とも特に嫌い合っているわけではなく、単に両者の性格の反りが合わないだけであり、互いにその実力を認め合っている。
坂井悠二の事は盟主の代行体という事柄以外でも個人的に助力したいと思うほど気に入っている模様で、新世界『無何有鏡』完成後も『無何有鏡』へ渡らず、理由を作ってまで最後まで付き従った。
“祭礼の蛇”の眷属であるため、他の“徒”とは比較にならない絶大な戦闘力を誇る。単純なパワーだけでも抜きん出ているが、『変化』の能力によって他の“徒”では不可能な変幻自在の戦術を取り、想定外の攻撃で不意を撃ち敵を圧倒する。しかし「主を守る」性質からか望んで攻勢に出る場面は少なく、多くの場合「敵の攻撃から味方を守るために先手を打って」攻撃に出ている。なお、死亡しても“祭礼の蛇”が生きている限り完全に消滅はせず、祭礼の蛇かヘカテーが「守ってほしい」と望むことで復活する。
『大命』遂行に際しては、障害となるであろうフレイムヘイズの外界宿を予め掃討する役目を与えられていたが、道楽にかまけて一つもこなしていなかった。
『三柱臣』として大命遂行の際にのみその行使を許される宝具は剛槍『神鉄如意』。持ち主の体型変化に応じて大きさや形を変える槍であり、『変化』と合わせることで城の尖塔ほどにも巨大化させることや、穂先を数十に分裂・変形させたり、シュドナイが分裂した数に合わせて『神鉄如意』そのものを数千という数に増やすことも出来るなど、自由自在に変形させられる。本人が手を離した状態でも形状を自在に変化させられ、巨大化も維持できる。素の状態でさえ非常に強力な力の持ち主だが、この剛槍の使用によってさらに圧倒的な戦闘力を発揮する。その強大な戦闘力で、名の知られた強力なフレイムヘイズを幾十人も葬り去っている。
軍の指揮官としても練達にして無類の将帥である。しかし職務に対しては怠慢で、本拠地である『星黎殿』にも長らく立ち寄っていなかったが、そんな態度にもかかわらず[仮装舞踏会]の“徒”たちからの尊崇の念は絶大で、その強さ・将軍としての能力にも全幅の信頼を寄せられている。
三千年前の『大縛鎖』の儀式の際は、儀式に必要不可欠なヘカテーを守るために動くことができず、そのため盟主の放逐を許してしまった模様(XX巻より)。
16世紀初頭の『大戦』で[とむらいの鐘]を受けて参戦した際は、フレイムヘイズ兵団の副将『極光の射手』カール・ベルワルドを(カールが油断していたとは言え)わずか二撃で葬った(X巻)。
本編では“愛染の兄妹”の護衛をしている際に悠二と遭遇。“ミステス”と気づいて中の宝具を奪い取ろうとしたが、『零時迷子』に掛けられた『戒禁』(防御用の自在法)によって、右腕と本質の一部を失った(その後、再構成した)。その事と、大した力も持たずに“封絶”の中で動ける事から、悠二の宿す宝具が『零時迷子』だと察知し、それを[仮装舞踏会]へと知らせる(IV巻)。以降は「[仮装舞踏会]の将軍」という本来の職務に急に本腰を入れるようになり、軍勢を率いて世界各地の重要な外界宿(アウトロー)を襲撃・陥落させ、同時に幾十人もの名高いフレイムヘイズを倒してきた。上海外界宿総本部の一大会戦にて東アジアの討ち手らを一掃し職務を果たした後(XVI巻)、『星黎殿』へと帰還する。
その後、現在の盟主の在り様に懸念を抱きながらも、『大命』の第二段階として“祭礼の蛇”坂井悠二に付き従って『久遠の陥穽』へ出立(XVII巻)。『詣道』を踏破して最奥部の『祭殿』に到達し、“祭礼の蛇”神体の覚醒と復活を見届ける。そして『詣道』をこの世へと遡る途中でシャナたちに遭遇するものの、彼女らの妨害を撥ね退けて、“祭礼の蛇”神体と共に無事この世に帰還した(XIX巻)。
帰還後は[仮装舞踏会]全軍の総司令官として、フレイムヘイズ兵団に対する包囲殲滅戦を開始。兵団の前線基地である『天道宮』の探索と破壊のため自らも前線に出るが、シャナとヴィルヘルミナによって足止めを食らい、センターヒルやマージョリーの加勢で手こずるうちに、彼女らを救出に来たキアラの『ゾリャー』の一撃をくらい、そのままシャナたちを逃がしてしまう。足止めとして戦場に残ったセンターヒルは十分程で討ち取るが、シュドナイとしては画竜点睛を欠いた感じとなった(XX巻)。
御崎市決戦では、生贄となるヘカテーを見送った後に『真宰社』を狙い攻め込んできたシャナとヴィルヘルミナを“祭礼の蛇”坂井悠二と共に迎撃し、激しい戦闘を繰り広げる。カムシンによって『真宰社』が倒壊の危機に陥った際には、巨大化させた『神鉄如意』で『真宰社』の中心を貫き芯柱とすることで倒壊を防いだ(XXI巻)。『真宰社』の修復後は、再び悠二と共にシャナ、ヴィルヘルミナ、マージョリーを迎撃。新世界『無何有鏡』完成後も『無何有鏡』へ渡らず、悠二と共に御崎大橋の頂上でシャナたちを待ち構え、マージョリーと死闘を繰り広げるも、フレイムヘイズ数万人分の力を結集した『屠殺の即興詩』により死亡し、ヘカテーと共に一時の眠りに入った(XXII巻)。この時は周囲の“存在の力”を一切使わず自前の力のみで戦った半ば自殺であったが、多少なりとも消耗した上でマージョリーを限界まで疲労させたことから、その力の規模は作中でも最強の部類に入る。
アスモデウスの別名をもつ同名の悪魔が存在する。蚩尤は、黄帝(別名・帝鴻氏)に処刑された中国神話の怪神。
なお、アニメの番外編『頂のヘカテーたん』では、パロディであるがヘカテーの傍にいることに快感を得ており、また悠二に対して怪しい口調で話すシーンがある。その際にヘカテーから「変態」呼ばわりされている(後に「親父臭い」とも言われて、ショックを受けていた)。
“頂の座(いただきのくら)”ヘカテー[Hecate]
声 - 能登麻美子[3]
女性の“紅世の王”。炎の色は明るすぎる水色。初登場はIV巻。[仮装舞踏会]『三柱臣トリニティ)』の巫女。[仮装舞踏会]構成員からは大御巫(おおみかんなぎ)の尊称で呼ばれている。
かつての中国での古い通名は女媧
大きな帽子とマントに着られている印象の、表情に乏しい小柄な美少女。そんな見た目に反する強大な“王”だが、姿を見せることは極めて稀で、その真意や性向、能力などはほとんど知られていない。
“祭礼の蛇”の眷属であり、盟主“祭礼の蛇”の活動の先触れとなる存在。創造神“祭礼の蛇”は“紅世の徒”の願いを叶えることを権能としており、神が“徒”の願いを聞き届けた証、“徒”の願いの結晶としてヘカテーを生み出す。すなわち彼女の存在そのものが“徒”の願いが実現する予兆であり、そのため“徒”からは絶大な敬意を払われ、[仮装舞踏会]に属する“徒”たちからは最も尊崇され、『三柱臣』の中でも特異な存在として知られている。
他人の言動を字面どおりに受け止める生真面目で淡白な性格で、杓子定規な物言いが特徴。
自らに言い寄るシュドナイを相手にしないなど、基本的に他人に対して無関心で感情もほとんど示さないが、盟主たる“祭礼の蛇”のことは文字通り「彼女の神」とまでされるほどに崇拝し、“祭礼の蛇”に関する事柄に対してだけは喜怒哀楽を示し、感情的にもなる。しかし、代行体である『坂井悠二』に協力することには消極的である模様。その他、なぜか誰もが扱いに困る変人“探耽求究”ダンタリオンのことを「おじさま」と呼んで慕って(?)おり、彼の勝手な行動によってトラブルが起きても、庇ったりしている(しかし『大命』や“祭礼の蛇”に関することには限度がある)。これは彼の『素材』を生み出す能力が創造神に似ているため。
その真名の故か、“祭礼の蛇”の不在に耐える為に高い山の山頂で過ごす事が趣味。山を汚す登山家を嫌っており、過去に何度か出くわした際は例外無くその登山家の関係者ともども惨殺してきた。
神である“祭礼の蛇”が“徒”たちの願いを叶える際に行われる『神威召喚』の儀式で生贄となる役目を持つ。しかし生贄となり死亡しても“祭礼の蛇”が生きている限り完全に消滅はせず、願いを叶えた“祭礼の蛇”が眠りについた後、新たな願いが結実した時にそれを構成要素として復活する。
『大命』遂行に際しては、主に盟主の意思と『大命詩篇』を受け取る役割を担っており、『大命詩篇』の扱いも一手に担っている。通常は『星黎殿』の内部にある祭壇の間『星辰楼』にその身を置き、この世に渡り着いたばかりの“徒”たちに、この世で生きるための訓令を与えている。実際の遂行に当たっては、『大命詩篇』の起動と盟主の声を世界中に伝播させる役割を担った。
『三柱臣』として大命遂行の際にのみその行使を許される宝具は、三角形の遊環を持った大錫杖『トライゴン』。その具体的な能力や効果は不明であるが、作中の描写からすると“祭礼の蛇”の意志や声、力を受信・伝播するアンテナのようなものだと思われる。他にも教授に十六回も改造された笛型の宝具『トラヴェルソ』を所持している。この具体的な効果は不明だが、鳴らした後に竜の形をした強力な炎を無数に放つ他、『星黎殿』の停泊時間の終了などを伝える役目もある。固有の自在法として、自身の炎と同じ色の光弾を流星の如く飛ばす自在法『アステル)』を使う。一度に数十発飛ばす事も可能。華奢な外観とは裏腹に強靭な膂力と体術の持ち主で、シャナとも互角に渡り合える程である。その他、マージョリーが幾十重も張り巡らせた防御の自在法を一瞬で容易く破壊してもいる。
16世紀初頭、[とむらいの鐘]の要請に応じて[仮装舞踏会]が『大戦』に参戦。参戦の本来の目的である、“探耽求究”ダンタリオンが勝手に持ち出した『大命詩篇』の断片を探索・破壊すべく、最前線に設営された本陣に自らも赴く。そして“棺の織手”アシズの手に渡っていた『大命詩篇』の断片と共振している最中、他者では破壊不可能なはずの『大命詩篇』を“天壌の劫火”アラストールに破壊された影響で危機に陥ったところを、“逆理の裁者”ベルペオルに救われた(X巻)。このことから、「神をも殺す神」たるアラストールに対し強い警戒感を抱いている。
本編では、文化祭の騒動の際、“彩飄”フィレスが『零時迷子』を活性化させ出現させた“銀”を鎮めるため、“嵐蹄”フェコルーを伴ってシャナたちの前に出現。“銀”を鎮めると共に『零時迷子』に在り処を探知するための『刻印』を施し立ち去った(XIII巻)。彼女の出現は、[仮装舞踏会]が『零時迷子』を必要としていること、そして“ミステス”坂井悠二を破壊することはフレイムヘイズ側にとって不利になることを、シャナたちに知らしめる結果となった。
“祭礼の蛇”坂井悠二がシャナを捕らえた時には、盟主への忠義とアラストールの神力への警戒心から、盟主のためにその命に背き彼女を密殺しようとしたが、シャナの機転で“祭礼の蛇”坂井悠二に介入され未遂に終わる。その際に“祭礼の蛇”坂井悠二にシャナを殺す方が危険となることを説かれ、諭されたものの、なお納得しきってはいない模様。
『大命』の第二段階として、“祭礼の蛇”坂井悠二に付き従い『久遠の陥穽』に出立し、『詣道』にて自身の感知能力で両界の狭間との隔離が完全な場所と不完全な場所を見分けながら、盟主たちを“祭礼の蛇”の神体へと導いていく。そして遂に『詣道』の最奥部にある『祭殿』へと到達し、ベルペオルが黒い蛇骨の“祭礼の蛇”神体を覚醒させた後に『大命詩篇』を稼動させて、『祭殿』を形成していた青銅塊を力の結晶に戻した後、それを“祭礼の蛇”神体へ戻して、かつての豪壮な姿と莫大な力を取り戻させた。そして『詣道』を遡る途中で追いついて来たシャナたちの妨害を撥ね退けて、ついに“祭礼の蛇”神体と共にこの世に帰還する。
そして、この世に帰還した直後に自身の巫女としての能力を使って、盟主“祭礼の蛇”の一度目の大命宣布を全世界の“徒”やフレイムヘイズに伝達した。その後、『星黎殿』秘匿区画にある『吟詠炉』にある『大命詩篇』のバックアップを使って“祭礼の蛇”神体の顕現安定化を図る作業を行い、中国南西部の決戦が終わるころには五割方安定した模様。
二月に、全世界の“徒”やフレイムヘイズへ向けた“祭礼の蛇”の二度に渡る大命宣布を伝達した後、御崎市決戦においては『真宰社』頂上部の『星辰楼』上空で『大命詩篇』の繭に取り巻かれて、神威召喚の儀式を進め、新世界『無何有鏡』完成と共にその生贄となって死亡し、マージョリーに討滅されたシュドナイと共に一時の眠りに入った。
アニメでの設定では、膨大な器の持ち主で自分の器が満たされる事が望みだった。他者の器に自分の器を合わせるという能力をもっており、今まで様々な者に器を合わせてきたが満たされたことはなかった。また、性格も原作と多少異なる。第二期では自らの偽りの器である近衛史菜を作り出し、悠二の元へ送り込んでいる。
ギリシャ神話で呪術を司るヘカテーという同名の女神が登場する。女媧は、古代中国神話に登場する土と縄で人類を創造したとされる女神。
“逆理の裁者(ぎゃくりのさいしゃ)”ベルペオル[Bel-Peol]
声 - 大原さやか[3]
女性の“紅世の王”。炎の色は金色。初登場はVII巻。[仮装舞踏会]『三柱臣トリニティ)』の審神者(さにわ)軍師参謀。狡猾で智略に長けており、およそ彼女を知る者からは「この世で最も敵に回したくない」とまでに恐れられる鬼謀の“王”。
かつての中国での古い通名は西母
右目に眼帯をした、妙齢の三つ目の美女。
眼帯の下の失われた右目は、かつて秘法『久遠の陥穽』が発動する際に“祭礼の蛇”へ託された。この右目が『旗標』として、“祭礼の蛇”が創造した『大命詩篇』を受信者であるヘカテーへと正確に届ける為の磁針であると同時に、『祭殿』にて黒い蛇骨の姿で休眠していた“祭礼の蛇”神体の統括管理という副次的な役割も宛がわれていた。この『旗標』こそが不帰の秘法『久遠の陥穽』を根底から覆す元凶となった。
“祭礼の蛇”の眷属であり、盟主“祭礼の蛇”により「あらゆる事態に対処する」使命を課せられた存在。非常に用心深く、ありのままの現実を認めた上であらゆる状況を予測し、策略を立て、その読みを誤る事態が滅多にないがゆえに、この世のあらゆる陰謀に手が届くとまで謳われる。「思うままに生きる」ことを好む他の“徒”とは違い、その使命ゆえに「思うままにならない事にこそ挑む甲斐を感じる」という特質を持つ。
[仮装舞踏会]構成員らから絶大な尊崇の念を向けられているが、彼女自身は目的のためには他者を簡単に利用し、切り捨てることができる冷酷な性格でもある。だが“祭礼の蛇”に対しては非常に忠実で、彼を慕い、絶大な信奉を寄せている(その彼からは「寂しがりの娘」と形容されている。なおベルペオルは妹に当たる)。常から不在がちだった盟主と、託宣に明け暮れる巫女“頂の座”ヘカテー、不真面目な将軍“千変”シュドナイに代わり、実質的に組織を運営しており、盟主が帰還してからもそれは変わっていない。
三千年前の『大縛鎖』の儀式の際、フレイムヘイズたちの結束力により儀式を阻止され盟主を失った反省から(XX巻より)、「組織であるがゆえの強さ」を重んじ、数千年という単位で唱えている。
星黎殿』の司令室である『祀竃閣』にいることが多いが、大命遂行のために外出する事も多い。
[仮装舞踏会]は、桁違いの規模の大軍勢に、『三柱臣』を始め強大な“王”達が数多く在籍しており、いざ動いた時の脅威やベルペオルの智謀への評価から、対峙する者は事あるごとに「彼女の陰謀の一環ではないか」と疑心暗鬼に駆られてその勢いを押し留められることになり、本人もそういった評価を時に煽りながら有効に活用している。
『三柱臣』として大命遂行の際にのみその行使を許される宝具は拘鎖『タルタロス』。変幻自在に動く鎖であり、能力の詳細は不明だが、特定現象を切り離す能力や、鎖の環の一つ一つから存在を封じていた“燐子”を出現させる能力を持つ。『大戦』では、共振していた『大命詩篇』が砕かれた影響で苦しむヘカテーを救助するために鎖の一部を切り離し囲むことで共振を遮断し、シャナに鎖の一部を取り付けた際には、フレイムヘイズとしての能力を全て封じていた。一巡して結節させることで、その内にあるものを外部から完全に隔離し、攻撃を無効化し弾き返すこともできる。
「教授」ことダンタリオンを比較的上手くコントロールできる数少ない人物であり、彼から自在式を込める事のできる金塊『デミゴールド』をせしめ、それを使って『非常手段ゴルディアン・ノット)』などの宝具を製造している。
三千年前の『大縛鎖』の儀式の際、フレイムヘイズたちの「反逆」をある程度予想していたものの、対策はあまり考慮していなかったようで、そのために盟主の放逐を許してしまった(XX巻)。
シュドナイから『零時迷子』の発見の報を受けた後は、協力者たる“徒”を集め『大命』成就に向け準備を進める。『大命』第一段階の成就たる盟主の仮帰還後は、来るフレイムヘイズ陣営との史上最大の戦いに備え、世界中に散らばっていた[仮装舞踏会]の全軍・全構成員を『星黎殿』に集結させ、万全の戦備を整えている。そして『大命』の第二段階として、“祭礼の蛇”坂井悠二に付き従って『久遠の陥穽』に出立し、『詣道』を突き進んでいき、ついに『詣道』の最奥部にある『祭殿』に到達する。そして自身の右目である『旗標』によって黒い蛇骨の“祭礼の蛇”神体を覚醒させると同時に、『旗標』はその役割を終えて数千年ぶりにベルペオルの許に戻った。そしてヘカテーが『大命詩篇』を稼動させて“祭礼の蛇”神体にかつての豪壮な姿と莫大な力を取り戻させた後、『詣道』を遡る途中で追いついて来たシャナの姿とその決意を見聞きしたことで、シャナを自身の許容範囲外の危険因子と判断し、盟主の意向に背いてでもシャナを排除する決意をし、ヘカテーとシュドナイにシャナの抹殺を声なき声で暗に促した。そしてシャナたちの妨害を撥ね退けて、ついに“祭礼の蛇”神体と共にこの世に帰還する。
そして『祀竃閣』でヘカテーや教授たちの作業を監督しつつ、フェコルーの遺言である侵入路の捜索に当たる。中国南西部の決戦が終わった後に“祭礼の蛇”坂井悠二に状況を報告した。
二月の大命最終段階では、御崎市全体を包む封絶を張った後に“祭礼の蛇”坂井悠二の命令で『タルタロス』によって封絶内部の人間たちを存在の力として消滅させた直後に、悠二が連れてきた吉田一美にも『タルタロス』の一部をかけて彼女の所持する『ヒラルダ』の封絶内で動く以外の機能を封した。その後、変形した『真宰社』の中央制御室から儀式を監督した。
シャナやマージョリーによって『大命詩篇』や『吟詠炉』に収められたバックアップが書き換えられても動揺することはなかったが、それは『大命』の真の計画が、“祭礼の蛇”の「他者から望まれたことしか出来ない」制約を超えた、“祭礼の蛇”の自由意志による新世界『無何有鏡』の創造であり、シャナやマージョリーによる『大命詩篇』の書き換えも無効化できるためであった。しかし完成した新世界『無何有鏡』にシャナが望んだ「人を喰らえない理」が組み入れられたことに激しく動揺し、それが“祭礼の蛇”の望んだものと知って大笑いしたが、結局は納得した(XXII巻)。
新世界『無何有鏡』完成後は『タルタロス』で“祭礼の蛇”の仮装意思総体を坂井悠二から切り離し、坂井悠二に『タルタロス』の制御キーを渡し、“祭礼の蛇”と共に新世界『無何有鏡』へ旅立った(XXII巻)。新世界においては「策略家」「神算鬼謀」の悪名を、悠二に持っていかれた形となっている。新世界へ渡り来てから数年後に、“珠漣の清韻”センティアの運営する外界宿『ピエトロの食堂』でフレイムヘイズ側の代表として派遣されたシャナと新世界での初顔合わせし、『色盗人』への対策などを協議した(短編『クイディティ』)。
原作では最後まで直接戦闘を行う描写は無かったが、第1期アニメでは終盤にヴィルヘルミナと激突していた。『頂のヘカテーたん』では眼帯にハートマークが描かれた他、女子高生の制服を身に着けていた。
ベルフェゴールの別名をもつ同名の悪魔が存在する。
その他
“嵐蹄(らんてい)”フェコルー[Fecor]
声 - 間宮康弘
男性の“紅世の王”。炎の色は臙脂。初登場はVIII巻。兵科は禁衛員ヴァッフェ)。『星黎殿』の防衛を一手に任せられ、更にベルペオル不在の際の裁量まで任されていた、ベルペオルの副官的存在。
伸びた黒髪、蝙蝠のような大きな翼に細い尻尾、尖った耳と角、という悪魔のような特徴を持ち、鋲を打ったベルトに、空間を越えた斬撃を放つ湾曲刀型宝具『オレイカルコス』を提げた、平凡なスーツを着た押しの弱い小役人風な中年男の姿。が、そんな見た目に反して強大な力と恐るべき自在法を持つ強大な“王”。しかし後述の理由で、普段は『星黎殿』を隠蔽する『秘匿の聖室(クリュプタ)』の力を纏って強大な気配を隠し、名も無き一“徒”として振舞っており、[仮装舞踏会]の構成員のほとんどは彼が“嵐蹄”であることを知らなかった。
普段は『星黎殿』の出迎え・案内役をしている。これは組織の末端にまで眼を配り、構成員たちの生の声を聞いて、末端の構成員の立場から組織の姿を捉えようという彼自身の意図によるものである。末端の構成員として振る舞っているため、誰に対しても腰が低い。
一方で“嵐蹄”の名は構成員に知れ渡っており、ベルペオルの信任厚いということで絶大な信頼を置かれている。人目に付く場所で“嵐蹄”として振舞う際には、本来の姿を隠すため自在法『マグネシア』で全身を包み、棺のような臙脂色の直方体の姿を取っていた。
大量の臙脂色の粒子を嵐のように操る自在法『マグネシア』を使う。
臙脂色の粒子はフェコルーの意思に応じて自在に操作可能であり、主に一定の空間内に粒子の嵐を巻き起こすという使い方をされるが、粒子を凝固させた塊を瞬時に作り出して防御や不意打ちに用いたり、嵐の中に無風地帯を作り自身や味方のバリアーのように用いる(ただし、味方の位置を把握していないと味方も嵐に巻き込んでしまう恐れがある)と言ったことも可能。さらに粒子は見た目の数十~数百倍という超重量を持っており、『マグネシア』の嵐の内部にいるものは、吹き荒れる超重量の粒子よる圧倒的な打撃を常に受け続けることとなる。また、この粒子はこびり付くために嵐の中に留まるほど重い枷となっていく。
粒子の嵐は球状に広大な範囲内全域を猛烈に吹き荒れ、フレイムヘイズ屈指の大破壊力を持つカムシンレベッカゾフィーの攻撃をもってしても、嵐の表面を僅かに乱すことすら出来ないほどの圧倒的な防御力を持つ。この嵐と、巨大な粒子の立方体を猛烈な速度で大量に絶え間なく放ち続けるという、圧倒的質量でのごり押しによる攻防一体の鉄壁の防御陣である。また、凝固させた粒子を自身を中心に巨大な球状に膨れ上がらせるという「防御」によって、周囲を吹き飛ばし押し潰す、大規模かつ大威力の破壊を一瞬で行うこともできる。
その役目柄、『星黎殿』から外出することは滅多にないが、文化祭の騒動の際には“頂の座”ヘカテーの護衛として、彼女に付き従ってシャナたちの前に出現。『マグネシア』の圧倒的な防御力をシャナたちに見せ付けた(XIII巻)。
現在のフレイムヘイズ陣営との戦争でも、盟主や『三柱臣』不在の間の『星黎殿』の守護を任され、要塞司令官として要塞全体の統制を取り仕切っていた。突如『星黎殿』内部に侵入し『秘匿の聖室(クリュプタ)』を破壊しようとしたカムシンとレベッカの攻撃すらも、張り巡らした『マグネシア』は全く寄せ付けなかったが、突如現れた“天目一個”に不意打ちの奇襲を受け、突然『マグネシア』が消え去ったため、死亡したのではと思われていた(XVIII巻)。しかし瀕死の重傷ながらも『トリヴィア』の効果で辛うじて生存しており、残り少ない“存在の力”を使うべき局面を静かに待ちつづけ、『神門』を狙ったゾフィーの全力の攻撃を『マグネシア』で防ぎ、“祭礼の蛇”神体の帰還の一端を担った(XIX巻)。そして、帰還した『三柱臣』に不在の間の戦況を報告し、この世に帰還した“祭礼の蛇”の神体を見届けると、満足げな笑みを浮かべて静かに消滅した(XX巻)。
第二期アニメから登場し、ヘカテーの偽りの器である近衛史菜を悠二の元に送り込んだ直後にベルペオルに伺いを立てていた。
財宝を守るとされるフェコルという同名の悪魔が存在する。
“千征令(せんせいれい)”オルゴン[Orgon]
声 - 斧アツシ
男性の“紅世の王”。炎の色は錆びた青銅のように不気味な緑青色。V巻、X巻に登場。巡回士ヴァンデラー)の一人で、ベルペオルの古くからの直属の部下。フレイムヘイズ達の外界宿(アウトロー)を単独で全滅させる程の力を持つ強力な“王”であり、将帥としても優れていることから自他共に認める『戦争屋』として恐れられていた。虐殺・殲滅戦を得意とする。
帽子、マント、手袋が浮いているだけの姿で、自らの本質の顕現に使う力のほとんどは後述の『レギオン』に注いでいる。ラフスケッチでは「絵師泣かせのビジュアル」と書かれている。
かなり傲慢で尊大な性格で、馬鹿にされるのを嫌う。戦って敵を倒すことにしか興味がなく、それ故に戦いを避けるという観点に疎い面がある。また、気配や声音が非常に陰鬱で、「聞いているだけで憂鬱になる」と表現され。現れただけで周辺の景色が不穏に歪むほど。
自らの“存在の力”を込めた薄く鋭い紙の軍勢の自在法『レギオン』を用いて戦う。『レギオン』は、トランプのジャックの騎士の名(『ホグラー』『ラハイア』『ヘクトル』『ランスロット』)を冠す『四枚の手札』を中心に構成されており、一部を倒したり翻弄するのは容易だが、その全てを滅ぼすには骨が折れ、敵を疲弊させてその数を持って敵を蹂躙する。
なお『レギオン』は、一見するとマティルダの『騎士団(ナイツ)』と似ているが、“千征令”という存在の「千の軍を率いて討つ」という本質の顕現であるため、『騎士団』とは原理も由来も関係なく(そうと知らないヴィルヘルミナからは「猿真似」と評されたが、固有自在法の模倣は不可能レベルで困難であるために言いがかりに近い)、またオルゴン本体だけを討滅しても『レギオン』は消えない(しかし、意志総体の在る本体の消滅は、やはり死に繋がる)。
中世の『大戦』においては[仮装舞踏会]の軍勢が戦場から撤退する際の殿を務め、追撃に来たカール・ベルワルドを『レギオン』によって巧みに孤立化させて誘い出し、シュドナイに引き合わせて討滅に追い込んだ(X巻)。
その後も現代まで生き残っていたが、本編開始の数年前に外界宿を潰す任務の帰りに、[仮装舞踏会]からの連絡を受けて捜索猟兵(イエーガー)“琉眼”ウィネと合流。ウィネに『天道宮』突入の為の囮として利用され、“天目一個”に無視されてプライドを傷つけられ、ヴィルヘルミナに『レギオン』を翻弄され(とはいえ、ヴィルヘルミナも『レギオン』を減らすことはほとんど出来なかった)、『四枚の手札』も『ランスロット』は“天目一個”に斬られ、『ホグラー』はヴィルヘルミナに破壊され、最終的には突然現れたメリヒムの『虹天剣』によって全ての『レギオン』ごと一撃の下に消し去られた(V巻)。実力そのものは高かったのだが、最悪の敵と最悪のタイミングで面した不運が命取りとなった。
戦時における指揮官の一人でもあったオルゴンが討滅されたことで、シュドナイは戦時編成を見直すことになった。
第一期アニメで登場した。
西のデーモンを指揮するオルゴンという同名の悪魔が存在する。
“道司(どうし)”ガープ[Gaap]
男性の“紅世の王”。炎の色は浅葱色。V巻に名前のみ、X巻や漫画版『灼眼のシャナX Eternal song ‐遙かなる歌‐』に登場。ベルペオルの直属の部下。
四方に子供型の“燐子”『四方鬼』を引き連れた武装修道士の姿をしており、『Eternal song ‐遙かなる歌‐』第11話で太った中年男性という容姿で描かれた。
切れ者ではあるが、大仰で騒がしい、嫌味な性格。
東洋の[仮装舞踏会]構成員の中では五指に入る使い手の強大な“王”であり、有能な将帥でもある。駆ける速さで並ぶものはないと言われ、連絡役として動く事が多い。ただし、精度や機動性には欠ける。
戦闘では、『四方鬼』で固定した敵を体当たりで突き破る『大突破』という技などを使用する。
その駆ける速さから、『大戦』に伝令役として参加していた。撤退に際してはウルリクムミのもとに伝令として現れたが、帰り際にその肩に開いた穴を通り抜けようとして阻まれ、ウルリクムミに「[仮装舞踏会]では使者は人の肩を通って帰るのが作法なのか」と嫌味で切り返されてしまった。
シャナが『炎髪灼眼の討ち手』として契約する数ヶ月前に、史上最悪の“ミステス”・“天目一個”に敗れ、吸収された。
戦時における指揮官の一人でもあったガープが討滅されたことで、シュドナイは戦時編成を見直すことになった。
アニメには未登場。
ソロモン72柱の一柱のガープという同名の悪魔が存在する。
“淼渺吏(びょうびょうり)”デカラビア[Dacarabia]
声 - 吉開清人
男性の“紅世の王”。炎の色は鉄色。兵科は布告官ヘロルト)。
無光沢の鱗に藻の斑を纏った細長の大魚。本来の姿は戦場一帯に跨るほどの非常に長大な体躯であり、その真の姿を見た者はほとんど(味方でさえ)いなかった。普段は鉄色の水中のような異空間内におり、そこから外部に五芒星の自在式を出して会話をする。姿を見せる時は縮小の自在法(地表の波紋として見える)を使い、地面を水面のようにして現れる。上官である『三柱臣』の前であっても滅多に姿を現さず、現したとしても鎌首だけである。
常に感情を込めずに話し、極めて冷徹に物事を見て判断し、周囲の反応に気を払わないため、無礼な振る舞いも平然と行う。また、自身の実力に関して一切謙遜しない。その性格ゆえ周囲からの好悪の感情が極端に分かれており、オロバスやリベザルとは折り合いが悪い。しかしその率直かつある種公平な性格ゆえ、何かを判断する際には万事において事実と効果のみを基準とし、一切の感情を挟まず、必要とあらば自身の死すらも戦略に組み込む。そのため、まさにそのような判断が必要となる難局においては、逆に好ましく思われている。組織内での立場は、オロバスの上席に当たる模様。
シュドナイ曰く「有能ではあるが、とにかく変物」。有能と評される通り、その軍の差配の技量は非常に卓抜しており、盟主帰還後の戦において、シュドナイが不在となる間の[仮装舞踏会]の軍の統括を任され、それに誰一人として異議を唱えない程。その実力ゆえ、統括の責務や作戦の遂行、フレイムヘイズ兵団との戦にも一切気負っておらず、自身が統括する以上いかなる状況にも対処は磐石であると自負し、シュドナイからもその実力を認められている強大な“王”。
何かを連絡する際は、どんな状況でも名乗りから始め、「以上」で締める。
他に類を見ない特殊な自在法『プロビデンス』を使う。自身の鱗を自らの入出力器官として、鱗を通して見聞きし、喋り、自在法までも使用できる。他にも幾つかこれと似た機能の自在法は存在するが、それらはごく短時間・近距離でしか効果を発揮できないのに対して、この『プロビデンス』の持続時間と効果範囲は、永続的かつ全世界をカバーできる程に広大であるという圧倒的な差を持つことが特殊とされる所以である。これは、「遥かに広がるものを操る」“淼渺吏”の本質たるあらゆるものを通す力の具現であり、鱗はその媒体。この鱗を各軍に行き渡らせ、ひとつ所に居ながらにして全戦域を把握し、即座に判断・指示を下すことや様々な自在法でのフォローを行うことができる。全力を出す際は、これら散っている鱗を回収して隙をなくす(この状態のデカラビアに攻撃すると、鱗を「通して」別の鱗へと攻撃が転移するため、通じなくなる)。
盟主が帰還した後、『大戦』終結からベルペオルの命令で継続的に監視していた“螺旋の風琴”の前に現れ動員令を下し、“螺旋の風琴”を連れて『星黎殿』へ帰還する。対フレイムヘイズ戦略の作戦会議にも参加しているが、そこでもリベザルと一悶着起こしている。
フレイムヘイズ陣営との戦争では、外界宿征討軍総司令官に任命され、[仮装舞踏会]全軍の指揮を執りつつ、『星黎殿』直衛軍司令官も兼任して直衛軍を率いる。予測不能な本来有り得ない異常事態の連続にも冷静沈着かつ的確に対処し、奇襲を仕掛けてきたフレイムヘイズ兵団に対しても、直衛軍を指揮して互角以上に戦う。その裏で盟主と『三柱臣』の帰還まで『星黎殿』を堅守するべく、各地に派兵した[仮装舞踏会]全軍を撤退させて戦力の集結を図っていた。
そして理不尽な苦境の連続によって士気が大幅に低下した直衛軍とフレイムヘイズ兵団の猛攻に戦線崩壊の危機を感じ、援軍到来までの時間を稼ぐべく、ハボリムに後事を託し自ら出陣する。直衛軍の一人一人全員に防御の自在法をかけるなどして兵を守り、ゾフィーの攻勢を凌ぎつつ、ザムエルの築いた橋梁を破壊すべく頭部の防御を解いて攻撃に転じたところを、ゾフィーに討滅された。しかし計った通り、その直後にハボリム率いる西部方面主力軍が到着し、戦況は逆転した。
第三期アニメに登場した。
ソロモン72柱の一柱にデカラビアという同名の悪魔が存在する。
“驀地祲(ばくちしん)”リベザル[Ribesal]
声 - アニメ 山口太郎
男性の“紅世の王”。炎の色は弁柄色巡回士の一人で、ベルペオル直属の側近。『四神』からの呼称は「賢明な鎧」。
直立する象ほどの大きさの三本角のカブトムシの姿をしている。四本の腕を持ち、下の二本の腕を組んで、その上から水晶の数珠型の宝具『七宝玄珠』を巻きつけている。
勇猛で鳴らし、圧倒的な攻撃力を持つ強大な“王”。実力は折り紙付きだが言動も性格も荒っぽい。しかし決して愚鈍でも見た目ほどの猪武者でもなく、頭も切れる。指揮官としても有能であり、見た目に反して堅実な戦をする、百戦錬磨の将帥である。本人の圧倒的な攻撃力のみならず臨機応変な器用な戦法を取れ、知恵まで回ることから、フリーダーから「反則野郎」とも評される。
『三柱臣』への忠誠心が高いがゆえに、周囲と悶着を起こすことも多い。特に、極端なまでに冷徹で公正な性格の“淼渺吏”デカラビアとは反りが合わず、対フレイムヘイズ戦略の作戦会議でもデカラビアの無礼に対して一悶着起こすなど常に渋い態度を取っているが、最後の通達の際には「戻るまで持たせろ」と血相を変えて叫んでいた。
任務の際は捜索猟兵“蠱溺の盃”ピルソインと組んで行動することが多く、二人で数多くの大功を挙げている。かつて『内乱』の最中にアメリカ大陸へ派遣され、『大地の四神』と交戦した経験もある。
腕に巻きつけた水晶の数珠をばら撒き、散弾として攻撃することや、自在法を使用することができる。また、『七宝玄珠』を媒介にして七体の炎の分身を作り出すことが出来る。また、「只管に突き進む」“驀地祲”の本質ゆえ、突撃をもっとも得意としている。
“祭礼の蛇”が坂井悠二と合一した当初、彼を盟主と認めず貶しており、謁見の式典にて礼儀を叩き込もうとしていた。しかしその企図を“祭礼の蛇”坂井悠二に見透かされて逆に指名され、挑みかかるも“祭礼の蛇”坂井悠二の途方もない力とその在り様を見せられ、極限まで驚嘆・感動・敬服し、完全に平伏する(XVI巻)。
フレイムヘイズ陣営との戦争では、[仮装舞踏会]東部方面主力軍司令官に任命され、主力軍を率いてフレイムヘイズの東部防衛線=東京に侵攻する。自身も前線に立ってフリーダーらを圧倒しつつ指揮を執り、半日で東部防衛線最重要拠点である外界宿東京総本部を陥落寸前にまで追い込む。しかし『星黎殿』へフレイムヘイズ兵団の攻勢が及んだことで、東京全域を“存在の力”による爆発で市民もろとも全滅させ、『星黎殿』を守るため撤退を始める。
その途上、谷川連峰にてミカロユス・キュイの妨害工作によって東部方面主力軍は足止めされる。しかし『詣道』が崩壊することによって引き起こされた、“存在の力”を操る者だけが感じ取れる世界そのものを揺るがす震動『朧天震』によって一瞬動揺するが、すぐにその現象がベルペオルからの事前の通達にあった『警戒の要あれど喜ばしき、非常の天変地異』であることに気付き、東部方面主力軍に攻撃命令を下して突撃を開始した。
御崎市決戦では、東部方面守備隊隊長として市東部の御崎市駅に本陣を置き、ピルソインと共に市東部の守備隊を率いる。御崎市に流入してきた膨大な数の“徒”の混乱に守備隊を巻き込まれ、対処に苦慮しながらも隊を率いて、襲来して来た『大地の四神』の一人イーストエッジと交戦に入る。その後に、さらに膨大極まる数の“徒”が遅れて流入してきて以降は、守備隊は全て外来の“徒”の誘導のみに使い、外来の“徒”をイーストエッジにぶつけつつ、自らイーストエッジとの直接交戦に移った。
新世界『無何有鏡』完成後も生き残り、“祭礼の蛇”直々に新世界『無何有鏡』一番乗りを命じられると、相棒のピルソインと共に新世界『無何有鏡』へ旅立った(XXII巻)。
新世界『無何有鏡』へ渡り来た後も、ピルソインと共に[仮装舞踏会]の将帥として行動している。新世界が創造されてから一年後の春、日本のとある定食屋で人化した姿で悠二と再会し、忠告と助言を与えていた(外伝『フューチャー』)。その後、ボー近郊でハボリムやエギュンたちと共に兵を率いて、非道な新参の〝徒”の集団二百人余りを相手に戦い、完勝した。新世界へ渡り来てから二年弱でのロード・オブ・シーズ号への集合では、ピルソイン共々一番乗りを果たしている。ベルペオルへの報告では、坂井悠二への警戒を促す発言をしたピルソインを窘めていたが、続いてのオロバスとレライエの報告を聞いた時には、逆に言い負かされていた。そして騒動の終結後、ベルペオルたちと共に修復と改装が完了した『星黎殿』へ空を飛んで戻っていった(外伝『アンコール』)。
“紅世”からこの世(旧世界)へ渡り来て最初に踏んだ国が日本だったようで、人化した姿は日本人風の大男になる。
第三期アニメに登場した。
ポーランドの伝説にリベザルという同名の悪霊が存在する。
“煬煽(ようせん)”ハボリム[Haborym]
声 - 山本格
“紅世の王”。炎の色は楝色。兵科は捜索猟兵イエーガー)。誰もが認める腕利きの強大な“王”であり、フレイムヘイズ達からは「危険な上にも危険な奴」と非常に警戒されている。
双頭のガスマスクを着け、ボロマントを纏って体を隠している、どことなく案山子を想起させる姿。
組織の最前線に立つ実戦派の“王”として名高く、『星黎殿』にも滅多に姿を現さない。大きな戦いを幾度も潜り抜けてきた百戦錬磨の強者にして卓越した指揮官である。作戦遂行においては私情を挟まず事実を認めて対処する。
「炎を煽り広める」“煬煽”の力として、楝色の炎で地面を侵食し、その範囲内に居る味方を炎で覆い全能力を強化する自在法『熒燎原(けいりょうげん)』を使う。これは[仮装舞踏会]西部方面主力軍を丸ごと軽く強化できるほどの規模と、広大な戦場一帯を覆うほどの範囲を持つ。さらにハボリムは『熒燎原』内の事象全てを把握し、通信を行い、さらに一瞬で自在に移動できる。単体での戦闘力も非常に高く、自身が戦う時は体躯を三倍以上に巨大化させ、移動や攻撃の際に周囲に炎を渦巻かせ、それらの行動を補助する。また二体に分離することができ、それによって軍の指揮統率、挟撃や陽動などを行う。
盟主帰還後、来るフレイムヘイズ陣営との戦いのため『星黎殿』に帰還し、対フレイムヘイズ戦略の作戦会議にも参加している。
フレイムヘイズ陣営との戦争では、[仮装舞踏会]西部方面主力軍司令官に任命され、主力軍を率いてフレイムヘイズの西部防衛線に侵攻する。西部防衛線の最重要拠点であるアンドレイ要塞での攻防戦にて、フレイムヘイズは相当数殺すも、ダンの自在法『プレスキット』に強化された要塞そのものの破壊には予想以上に手間取ったため、自らが一度攻め入り、最初の城壁を強化していた『プレスキット』の位置を一瞬で見抜いて破壊させ、流れるような戦運びで最初の城壁を破る。しかし、当初からフレイムヘイズ陣営が長期戦を狙った戦い方であり、未だ短時間しか戦っていなかったため、その後の戦果はまだ少なかった。そして『星黎殿』へフレイムヘイズ兵団の攻勢が及んだことで、『星黎殿』を守るため撤退を始める。
そしてデカラビアの後任として外界宿征討軍総司令官の任に就き、ストラスの助力でデカラビア討滅直後に西部方面主力軍を率いて『星黎殿』へと帰還。卓越した手腕で『熒燎原』によって強化された軍勢を指揮し、勢いに乗っていたフレイムヘイズ兵団を一転して窮地に追い込む。
そして“祭礼の蛇”神体が帰還して2度目の宣布でフレイムヘイズ兵団が総崩れになると、シュドナイに指揮権を返上して後方で待機を命じられる。しかしセンターヒルの『トラロカン』によって『熒燎原』が阻害されてしまい、伝令線を編成し直すよう部下に命じる。そして、シュドナイがセンターヒルを討ち取った後に全軍を指揮して大規模な追跡と捜索に当たるが、もはや大きな戦果は挙げられなかった。
御崎市決戦では、西部方面守備隊隊長として御崎高校に本陣を置き、市西部の守備隊を率いる。御崎市に流入してきた膨大な数の“徒”の混乱を『熒燎原』によって治めて、外来の“徒”をもなし崩し的に隊に引き入れると同時に守備隊を率いて、襲来して来た『大地の四神』の一人サウスバレイと交戦を開始した。その後に、さらに膨大極まる数の“徒”が遅れて流入してきて以降は、それら外来の“徒”をサウスバレイの軍勢にぶつける飽和攻撃に“燐子”の砲撃を用いて、戦況を優位に進めた。
新世界『無何有鏡』完成後も生き残り、他の将兵たちと共に新世界『無何有鏡』へ旅立った(XXII巻)。新世界『無何有鏡』へ渡り来た後も、[仮装舞踏会]の将帥として行動している。坂井悠二本人の力も評価しているようで、将来に備えて即席ではない本物の軍事学を習得させるべきと考えている模様(外伝『ホープ』)。
第三期アニメに登場した。
ソロモン72柱の一柱にアイムの別名を持つ同名の悪魔が存在する。
“哮呼の狻猊(こうこのしゅんげい)”プルソン[Purson]
声 - 堀川仁
男性の“紅世の王”。炎の色は鉛丹色。登場はXVIII巻だが、XVII巻にもそれらしい容姿の“徒”が描写されている。兵科は禁衛員。歴戦の強大な“王”であり、頭も切れ、指揮官としても有能。
美麗な獅子の頭を持つ、派手な宮廷衣装を纏った男。
自信家で、鋭い声が特徴。
「激しく吼え猛る」“哮呼の狻猊”の力として、 『獅子吼』と『ファンファーレ』の二つの自在法を使う。『獅子吼』は凄まじい威力の衝撃波を放つ咆哮であり、カムシンの瓦礫の巨人やその攻撃すらをも軽々と粉砕し、相当離れた位置での余波でも全身を満遍なく鉄棒で強打されたかのような衝撃を喰らう。そして『ファンファーレ』は、その衝撃波を放つトランペットを多数出現させる。これを自在に操り、衝撃波を全方位に大量に放つことができ、さらに『ファンファーレ』は遠隔操作も可能で、自身から遠く離れた位置から衝撃波を放たせることもできる。『ファンファーレ』を直列に並べることで衝撃波を絞り、狙撃のように敵を狙い打つこともできる。
フレイムヘイズ陣営との戦争では、『星黎殿』の守備隊随一の使い手として要塞守備兵の指揮を担当。想定外の侵入者であるカムシンとレベッカにも全く動じず、守備兵を統率してカムシンを足止めさせ、自身はレベッカを引き付ける。その特性もあってレベッカと互角以上に渡り合い、即死に近い重傷を負わせたが、止めの一撃を放った瞬間に不運に見舞われ攻撃を外してしまい、レベッカから重傷のためタイミングが遅れた攻撃を喰らって討滅された。
教授には一定の理解を示していたようで、彼が開発した防衛機構もカムシンの足止めに積極的に活用していた。
第三期アニメに登場したが、こちらでは原作に比べて油断が多く、『星黎殿』の墜落に焦ったところをレベッカに撃破されている。
ソロモン72柱の一柱にプルソンという同名の悪魔が存在する。
“駝鼓の乱囃(だこのらんそう)”ウアル[Uvall]
声 - 後藤ヒロキ
“紅世の王”。炎の色は桧皮色。登場はXVIII巻だが、XVII巻にもそれらしい容姿の“徒”が描写されている。兵科は禁衛員
緩い衣を纏った直立するヒトコブラクダの姿をしている。
無数の蜂を操る自在法『ビト』を使う。蜂の大群は防御や気配隠蔽などの自在法を使用できる。さらに中身が空っぽの埴輪のような鎧の内部に『ビト』を潜ませ、これを多数操る。本体は姿を隠して、これら多数の鎧と蜂の大群によって戦闘を行わせる。これらは「調子外れに騒ぎ囃す」“駝鼓の乱囃”の本質の表れ。
フレイムヘイズ陣営との戦争では、『星黎殿』の守備隊として残り、『ビト』によって、行方をくらましたシャナと、潜入してきた敵の捜索に当たっていた。大伽藍にてシャナを発見し、捕縛しようとするも、自身の莫大な力の統御の仕方を捉えたシャナの前に埴輪の鎧は全く敵わず、潜んでいた本体を発見され、討滅された。
第三期アニメに登場した。
ソロモン72柱の一柱にウヴァルの別名を持つ同名の悪魔が存在する。
“冀求の金掌(ききゅうのきんしょう)”マモン[Mammon]
声 - 加藤将之
男性の“紅世の王”。炎の色は黄檗色。兵科は巡回士。強大な“王”であり、キアラたち強大なフレイムヘイズからも非常に警戒されている。
暗灰色のトップハットにテールコート、マントという、前世紀の紳士然の身形をした白皙の美貌の男。異常に長い犬歯を持つ。
冷徹な指揮官としての見識を持ちながらも、普段は貫禄に溢れた穏やかな性格をしており、フレイムヘイズにも同様の態度を取る。レライエからは、密かに胡散臭いと評されている。
「激しく欲し臨む掌」たる“冀求の金掌”の力として、望むものを引き寄せて捉え、または押しのけて払うという、原始的にして強大な力を持つ自在法『貪恣掌(どんししょう)』を使う。通常は掌・手の甲に黄檗色の紋様が浮かび上がるが、全力の際はこれが全身に波及する。
太古の『大縛鎖』の儀式にも参列した古参の“王”で、フレイムヘイズ陣営との戦争では、西部戦線のエジプト方面軍指揮官を務める。全軍撤退命令によって撤退していたところをオロバス率いるギリシア方面軍と合流し、実力こそ“王”クラスではあるものの“徒”でありながら撤退の総指揮を預かったオロバスに対して不服も示さず、むしろ積極的に協力を申し出て共に『星黎殿』を目指す。その際、サーレとキアラ率いる追撃部隊と交戦。キアラの『グリペンの咆』『ドラケンの哮』、同威力の極光の流星群すらも『貪恣掌』にて易々と捌き、捉えて、キアラを足止めした。
『星黎殿』に帰還してからは、銀沙回廊を使っての案内や情報の精査など、戦死したフェコルーの役職を引き継いだような役割をこなしていた。
御崎市決戦では“探耽求究”ダンタリオンと共に『真宰社』の防衛に当たり、主にキアラと空中戦を繰り広げる(XXI巻)。しかしダンタリオンの消滅に動揺した隙を突かれ、キアラの攻撃を受けて致命傷を負う。直後、ダンタリオンの消滅で制御を失った鉄巨人の爆発から『真宰社』を守るため、鉄巨人を『貪恣掌』で引き寄せ、範囲の狭まった鉄巨人の爆発に巻き込まれて消滅した(XXII巻)。
第三期アニメに登場した。
キリスト教にマモンという同名の悪魔が存在する。
“翻移の面紗(ほんいのめんさ)”オセ[Ose]
声 - 不明
“紅世の王”。炎の色は浅緑色。兵科は捜索猟兵
人型の仮面をつけた巨大な豹。
対象の視界を分裂させた自身の仮面と火の粉で埋め尽くし、空間識失調に陥らせつつ自身は視界を広げ、仮面から攻撃する幻惑の固有自在法『サイクル』を使う。
フレイムヘイズ陣営との戦争では、『星黎殿』直衛軍の部隊長を務める。フレイムヘイズ兵団の奇襲侵攻に際して総反撃のための一軍を率いて待機していたところ、突如『星黎殿』が落下してきたために部隊の七割以上を失ってしまう。本人はその大失態に処罰を望んだが、決定的戦機に投じられようとしていた部隊の指揮官を務めるほどの強力な“王”であるオセを、無為に処罰することを良しとしないデカラビアに戦場での挽回を許され、歓喜して前線へと参加し、デカラビアからの最後の命令であるザムエルが築いた『星黎殿』への橋梁の末端部で待ち伏せて敵軍の突撃を押し止める任務に赴いた。
そして、この世に帰還したシュドナイから要塞守備を任される傍ら、ストラスからロフォカレの捜索を頼まれる。「言うを憚る神」に対しては実在すら疑っていた。
御崎市決戦では、バルマと共に南方の守備を担当する。神器“ゾリャー”による突破を仕掛けてきたシャナたちを『サイクル』で幻惑・包囲するが、シャナの『審判』によって本体を見抜かれて、『断罪』で幻術もろとも半身を吹き飛ばされてしまったが生き残った。その後は、シュドナイに後方で陣を固めて体制を整え直すようにと命じられた。
新世界が創造された後も生き残り、他の将兵たちと共に新世界へ旅立った。
第三期アニメに登場した。
ソロモン72柱の一柱にオセという同名の悪魔が存在する。
“呻の連環(しんのれんかん)”パイモン[Paimon]
声 - 不明
“紅世の王”。炎の色は洗朱色。兵科は巡回士
ラクダに乗る貴公子然とした青年の姿で、男女様々の衣服を供連として従えている。
従えている周囲の衣服に瞬時に転移し、多角的な攻撃や、敵の攻撃を避けることが出来る自在法『王の供連』を使用していた。
フレイムヘイズ陣営との戦争では、『星黎殿』直衛軍の部隊長を務める。フレイムヘイズ兵団の奇襲侵攻に際してデカラビアの命令で三部隊から成る先遣隊を率いて敵軍の足止めにかかる。結果として三十分もたなかったが、直衛軍本体の迎撃体制を整える時間は稼ぎ、以降はデカラビアの命令で交戦を中止し、直衛軍本隊ではなく北上する南方防衛線の軍勢に合流する為に南方に離脱した。
そして“祭礼の蛇”による『大命』宣布後、南方防衛線の先遣隊を率いてフレイムヘイズの防衛拠点の一つだった南方の出城を襲撃するが、『大命』宣布の興奮とデカラビアへの復仇の念から常の冷静さと判断力を失って暴走・突撃し、その結果、敵の反撃準備のための偽装を見誤ってカムシンの逆撃を正面から受けてしまい、瀕死の重傷を負ったところをレベッカに爆砕・討滅された。また、彼の率いる先遣隊は崩れを立て直すための予備隊も編成せずに全軍を突撃させていたために、パイモンの死後はフレイムヘイズらの反撃を受け、諸共に壊滅した。
第三期アニメに登場した。
ソロモン72柱の一柱にパイモンという同名の悪魔が存在する。
“化転の藩障(かてんのはんしょう)”バルマ[Barma]
声 - 不明
“紅世の王”。炎の色は若苗色。兵科は巡回士。同じ“王”であるオセからは「バルマ殿」と敬称付きで呼ばれている。
様々な配色の糸で織られた巨大な象の姿をしている。
体を構成する糸を解き、状況に応じて再構成する自在法『羅梭(ラサ)』を使用する。
フレイムヘイズ陣営との戦争で『星黎殿』直衛軍の左翼部隊を指揮する。“祭礼の蛇”神体が帰還した後はシュドナイ率いる掃討部隊に随伴し、シュドナイがシャナたちとの戦闘に突入した後は包囲部隊の指揮権を委ねられた。
御崎市決戦ではオセと共に南方守備を担当した。そして最後まで生き残り、他の将兵たちと共に新世界『無何有鏡』へ旅立った。
第三期アニメに登場した。
同名の堕天使が存在する。
“匣迅駕(こうじんか)”バティン[Bathin]
“紅世の王”。炎の色は土器色
体に蛇を纏った騎士の姿をしている。
フレイムヘイズ陣営との戦争では、『星黎殿』直衛軍の右翼部隊を指揮した“王”。戦局の進展により、デカラビアの命令で『神門』を護る空中部隊を維持していたが、この世に帰還したシャナが『真紅』で顕現させた巨大な魔神の足によって周囲の兵諸共に踏みつぶされ、討滅された。
ソロモン72柱の1柱にバティンという悪魔が存在する。
“獰暴の鞍(どうぼうのくら)”オロバス
“朧光の衣(ろうこうのきぬ)”レライエ

[仮装舞踏会]の“徒”

“琉眼(りゅうがん)”ウィネ[Vine]
声 - 鈴木達央
男性の“紅世の徒”。炎の色は藤色。V巻に登場。兵科は捜索猟兵イエーガー)で、ストラスやフェコルーに気に入られ、会った事の無いシュドナイにも名前を覚えられているなど、捜索猟兵の中では優秀な存在。
バイクをこよなく愛し、外見はライダースタイル。この世で手に入れ、手入れも欠かさない年季の入った中型バイクに跨り、フルフェイスのヘルメットのシールドには大きな両目が描かれている。この目は気分に応じて表情を作り、力を使う時などは大きな一つ目となる。
比較的若年の“徒”で、この世に渡り来て半世紀もたっていない。ベルペオルを女神と崇め心酔していた。
鋭敏な知覚能力に加え、自身の知覚を他人に伝染させて広範囲を探索する『知覚の感染』という能力を持っているため、探知と索敵に優れていた。また、他者の視界を任意の方向にねじ曲げるという、味方のサポートなどの使い方次第では強力な武器になる能力も持つ。戦闘には向いていないが、それらの力を駆使して過去に三十人余りのフレイムヘイズを発見し、その中の十人を自身の手で打ち倒した功績を持つ。その功績によってベルペオルから勲章代わりとして『非常手段(ゴルディアン・ノット)』を手渡されていた。
組織の大方針の一つである、「『炎髪灼眼の討ち手』の再契約阻止」を果たそうとするため、本編開始の数年前に自身の能力で『天道宮』の場所を突き止めて奇襲したが、“天目一個”などの妨害に遭って失敗。最期は彼が女神と崇めるベルペオルによって『非常手段』に込められていた自在式の使用に命の残り火を利用され、絶望の中で消滅し、その自在式によって『天道宮』は一度は崩壊した(V巻)。
なお、ソラトとティリエルの兄妹を[仮装舞踏会]に紹介したのは彼である。彼らと別れる際、「因果の交差路で、また会おう」という“徒”の交わす別れの挨拶を教えたが、彼らの因果の道は再び交差する事はなかった。
第一期アニメでは、原作とは最期が異なり、“天目一個”に攻撃を受けながらも抵抗するが、難なく吸収された。身長は180㎝(アニメの設定)。
ソロモン72柱の一柱にヴィネという似た名前の悪魔が存在する。
“翠翔(すいしょう)”ストラス[Stolas]
声 - 林和良
男性の“紅世の徒”。炎の色は(はなだ)。布告官ヘロルト)の一人で、その中でも古株的な存在。
全身は獣毛に覆われ、頭部は無く、大きく張った胸に一対の眼、腹部に裂けた口を持ち、両腕は翼になっている、鳥とも獣とも人ともつかぬ異形の“徒”。 作中では「鳥男」と描写される。
見た目に反して温厚であり、非常に律儀で礼儀正しい。その性格ゆえに人付き合いも上手く、多くの“徒”達から人望を得ている。
鳥肉が好物で、鵞鳥を丸のまま喰らう(“徒”に通常の食事は不要であり、これはシュドナイの煙草などと同様、彼の嗜好である)。
高速輸送の自在法『プロツェシオン』を使う。ストラスの口から吐かれた砂鉄のような不思議な粉を纏わせた対象を鳥に変えて、大量の人員を高速で運ぶことができる。また、この自在法はフレイムヘイズには知られていない。
中世の『大戦』には参加していないが、その少し前に北フランスの組織[巌楹院]へ伝令に向かい、その根城に滞在していた際、先代『炎髪灼眼の討ち手』の襲撃に巻き込まれ命からがら逃げ延びたことがあり、その経験から『炎髪灼眼の討ち手』の復活を極度に恐れ、“琉眼”ウィネを始めとする多くの捜索猟兵を焚き付けて『天道宮』の捜索と再契約の防止を図っていた。シュドナイの大命遂行に付き従い、シュドナイとベルペオルとの間で作戦の連絡・報告を行っている。『ドレル・パーティー』襲撃の際には、包囲網の指揮を取った。
上海会戦終結後に『星黎殿』に帰還しており、盟主お披露目の式典では盟主に挑もうとするリベザルを、ピルソインと共に止めようとした。その後、シュドナイに現在の盟主の様子を報告していた。
フレイムヘイズ陣営との戦争では、西部方面主力軍に従軍し、布告官として主戦場の戦況の推移を見守っていた。西部方面主力軍の撤退に伴い、デカラビアより撤退の助力を命じられ、『プロツェシオン』を使って西部方面主力軍の全員を短時間で『星黎殿』へと帰還させた。
そして“祭礼の蛇”神体が帰還すると、姿を消したロフォカレの捜索をオセに頼む傍ら、ロフォカレの素性を伝えた。
フレイムヘイズ兵団に大勝した後は、『星黎殿』でマモンの補佐として情報の精査を手伝った。
御崎市決戦では、戦闘に参加せず、新世界が創造された後は、他の将兵たちと共に新世界へ旅立った。
第二期アニメでは、姿だけ登場していた。第三期アニメで声が初披露された。
ソロモン72柱の一柱にストラスという同名の悪魔が存在する。
“獰暴の鞍(どうぼうのくら)”オロバス[Orobas]
声 - 島﨑信長
男性の“紅世の徒”。炎の色は。シュドナイの副官の一人で、兵科は巡回士ヴァンデラー)。
“徒”とされてはいるが、それは目立った大功に恵まれていないためであり、実際には十分に“王”と呼ばれるだけの実力を持つ[仮装舞踏会]きっての俊秀。盟主帰還後のフレイムヘイズとの戦いにて“王”と呼ばれるようになると、衆目は一致していた。
人化の自在法による姿は、黒服の青年。本性の姿は黒馬で、戦闘時には状況に応じて黒馬の姿と青年の姿を使い分けている。中世の『大戦』時には黒騎士姿のシュドナイが騎乗していた。
実直で堅苦しい性格をしている。シュドナイに心酔しているが、実力では及ばないシュドナイの戦いぶりを真似て、周囲から諌められる場面も見られる。
自身と自身に接触している者を炎で包み、強化することができる自在法『鐙の寵』を使用する。このため、戦闘時には黒馬の姿で他者を騎乗させることも多い。ただし接触が解けた者は効果が切れる。
青年の姿では長柄の斧を得物として使う。
外界宿襲撃の際には、シュドナイの副官として[仮装舞踏会]の軍に同行していた。上海外界宿総本部殲滅後にシュドナイと共に『星黎殿』へと帰還し、対フレイムヘイズ戦略の作戦会議にも参加している。
フレイムヘイズ陣営との戦争では、西部戦線の第二軍司令官に任命され、指揮を執っている。部下の生死に応えるため、自らが先頭を切って突撃し、かなりの使い手のフレイムヘイズを瞬殺し、敵陣に防御を張っていた自在師を殺して敵陣を瞬時に制圧する。しかし他戦場との協調を無視した命令違反の強攻と指揮官自らの突撃という行為によりレライエとデカラビアに激怒され、叱責を受けて制圧した陣地より一旦下がらせられた。その後、西部方面主力軍の撤退に伴い、最も前方に戦線を持っていたため、ハボリムに変わり西部戦線の総指揮を譲渡され、西部全軍の撤退の総指揮を取りながら自らも『星黎殿』へと撤退を始めた。
その撤退途中にマモン率いるエジプト方面軍と合流し、テヘラン近郊のイラン軍基地で通信と「補給」とマモンとの協議を終えてギリシア・エジプト混成軍に出発を号令した直後に、サーレキアラ率いるフレイムヘイズ陣営の西部防衛線の追撃部隊の襲撃を受けた。しかし、レライエの『ニムロデの綺羅』とマモンの『貪恣掌』によって襲撃を凌いだ。
御崎市決戦では、北部方面守備隊隊長として市北部の井之上原田鉄橋に本陣を張り、レライエと共に市北部の守備隊を率いる。御崎市に流入してきた膨大な数の“徒”の混乱に守備隊を巻き込まれ、対処に苦慮しながらも隊を率いて、襲来して来た『大地の四神』の一人ウェストショアと交戦を開始する。その後に、さらに膨大極まる数の“徒”が遅れて流入してきて以降は、対処にかかり切りとなっているウェストショアにレライエと共に自ら奇襲を仕掛け、直接の交戦に移った。
その後も攻めきれずに戦闘を続行するが、新世界が創造されて戦火が収まると、『真宰社』の神殿に集まった後、レライエたちと共に新世界へ旅立った。その後、現代の『大戦』での働きにより、レライエ共々“王”と認識されるようになっている。
新世界においては再集結した[仮装舞踏会]の一員として精力的に行動している。渡り着て1年ほどの間に、チェンマイを中心に[マカベアの兄弟]と小競り合いを起こした、未だ人界に馴染み切れていないところがあり、ロード・オブ・シーズ号のシージャック事件ではブリッジを乗っ取った犯人達の無力化の方法が思いつかず困っていた(結局レライエの助言で、両手足を叩き折って放置することになった)。
第三期アニメに登場した。
ソロモン72柱の一柱にオロバスという同名の悪魔が存在する。
“朧光の衣(ろうこうのきぬ)”レライエ[Lerajie]
声 - 中嶋アキ
女性の“紅世の徒”。炎の色は灰白色。シュドナイの副官の一人で、兵科は捜索猟兵
白服の女性。
やや砕けた性格をしており、丁寧な口調ではあるがどことなく人を食ったような物言いをする。オロバスとは正反対な性格ながらも良いコンビ。場の空気を読む周旋の才に長けているという点でも重宝されている。
優れた自在師であり、防御系自在法『ニムロデの綺羅』を使う。自らの衣の裾や袖を風に解かせて広大な白い壁を作り出し、攻撃を逸らし、受け流す。数百のフレイムヘイズが放った無数の炎弾をも防ぎきる。
外界宿襲撃の際には、オロバスと共にシュドナイの副官として[仮装舞踏会]の軍に同行していた。上海外界宿総本部殲滅後にシュドナイと共に『星黎殿』へと帰還し、対フレイムヘイズ戦略の作戦会議にも参加していた。
フレイムヘイズ陣営との戦争では、西部戦線の第二軍に従軍し、オロバスの副官として補佐していた。指揮官自ら突撃して戦うオロバスの行動に怒り、総司令官であるデカラビアと共に叱責していた。その後、オロバスと共に『星黎殿』へと撤退を始めていた。その途中、テヘラン近郊のイラン軍基地でサーレたちの追撃を受けた時は、自身の『ニムロデの綺羅』と途中合流したマモンの『貪恣掌』により、炎弾の弾幕を撥ね退けていた。
フレイムヘイズ兵団に大勝した後に、『星黎殿』に合流する。御崎市決戦ではオロバスと共に井之上原田鉄橋に北部守備隊の陣を張り、『大地の四神』の一人ウェストショアと交戦を開始する。その後に、膨大極まる数の“徒”が遅れて流入してきて以降は、対処にかかり切りになっているウェストショアをオロバスと共に『ニムロデの綺羅』でウェストショアの操る水の干渉を防いで奇襲を仕掛けるが、ウェストショアに上手く捌かれてしまった。その後も攻めきれずに戦闘を続行するが、新世界が創造されて戦火が収まると、『真宰社』の神殿へ集まった後、オロバスたちと共に新世界へ旅立った。
新世界へ渡り来た後もオロバスと行動を共にしており、先の戦争での戦功からオロバスと共に“王”と認められるようになった。そして、新世界へ渡り来てから一年後の春までの間に[マカベアの兄弟]の一派と小競り合いを引き起こしていた。しかし、そこに現れた坂井悠二に共闘を持ちかけられ、オロバスが承知した事で共闘した。しかし、坂井悠二に対してはピルソインほど明確ではないが警戒心を抱いており、リベザルに自分たちから先に[マカベアの兄弟]と交戦し始めた事を報告しなかった。
新世界へ渡り来てから二年弱、オロバスと共に豪華客船『ロード・オブ・ザ・シーズ』号を占拠していた人間の武装集団の一部と遭遇し、対処に困っていたオロバスに両手足を折って行動不能にした上で、通信機を全部壊しておいてとアドバイスした。そして、貴賓室のベルペオルの下にオロバスと共に参上し、その際に客室でベルペオルの傍にいる客室乗務員セレーナ・ラウダスをオロバスと共に見つめた後、[マカベアの兄弟]の内部で[真なる神託]という小さな一派が発生し、内部抗争を起こしていることを報告した。また、オロバスが軽々しく「人喰い」を口にしたことをベルペオルと共に窘めていた。騒動の終結後、ベルペオルたちと共に修復と改装が完了した『星黎殿』へ空を飛んで戻っていった(外伝『アンコール』)。
第三期アニメに登場した。
ソロモン72柱の一柱にレライエという同名の悪魔が存在する。
“蠱溺の盃(こできのはい)”ピルソイン[Pirsoyn]
声 - 田村睦心
男性の“紅世の徒”。炎の色は菖蒲色。兵科は捜索猟兵で、その凶悪な自在法から広く名が知られており、フレイムヘイズからは戦時平時を問わず恐れられ、忌避されている。『四神』からの呼称は「忍び寄る毒」。
ブカブカなローブを着て、泥棒のような大きな袋を背負ったやぶにらみの子供の姿をしている。
相棒の“驀地祲”リベザルと共に多くの大功を挙げている。激昂しがちなリベザルをよく諌めている。指揮官としても優れている。かつては『内乱』の最中にリベザルと共にアメリカ大陸へ派遣され、『大地の四神』と交戦した経験がある。
毒の靄を放つ自在法『ダイモーン』を使う。この毒の靄を吸い込んだ者を酩酊・錯乱状態に陥れ、フレイムヘイズであれば契約する“王”ごと酩酊・錯乱する。吸い込めばまず戦闘不能となり、最悪の場合は同士討ちや卒倒などが起こる。油断して死んだフレイムヘイズも数多い、世界でも指折りの悪名高さを持つ自在法。これに相棒であるリベザルの圧倒的攻撃力が合わさることで、さらにその悪名は高くなっている。
盟主の仮の帰還後、『星黎殿』に帰還した。対フレイムヘイズ戦略の作戦会議にも参加していた。
フレイムヘイズ陣営との戦争では、東部方面主力軍に従軍し、リベザルの副官として補佐していた。その後、リベザルと共に『星黎殿』へと撤退を始めていた。その途中、谷川岳でミカロユスたちに足止めを食らわされている最中に発生した『朧天震』には、自在師ゆえの惑乱を起こしていた。
フレイムヘイズ兵団に大勝した後に、『星黎殿』へ帰還した。御崎市決戦では、市東部の御崎市駅を拠点として、リベザルと共に『大地の四神』の一人イーストエッジと交戦を開始した。その後、“祭礼の蛇”坂井悠二からの命令で[百鬼夜行]によって連れ去られた吉田一美を捜索することになり、現在の盟主が自分たちの盟主たりえるのか疑問を持ちながらも、リベザルの言葉によって市東部の戦場から離れた。そして、キアラによって致命傷を負わされたマモンを煙幕で助けるが、すでに致命傷を負っていたマモンの言葉で、その場を離れた。そして、新世界が創造されて戦火が収まると、リベザルのすぐ後に『非常手段』によって『真宰社』の神殿に転移させられると、ベルペオルからリベザルと共に新世界への一番乗りを命じられて、リベザルと共に新世界へ旅立った。
新世界『無何有鏡』でも[仮装舞踏会]としてリベザルと行動しており、新世界へ渡り来てから一年後の春にリベザルのいる定食屋に悠二を案内している。悠二の事は、勿体つけた言い方から未だに何か裏があるのではと疑ってはいるが、その力を評価してはいる。
第三期アニメに登場した。
ソロモン72柱の一人にグシオンの別名をもつ同名の悪魔が存在する。
“聚散の丁(しゅうさんのてい)”ザロービ[Zarovee]
声 - 御園行洋
男性の“紅世の徒”。炎の色は飴色。XIV巻に登場。兵科は捜索猟兵
柔和な笑顔を浮かべ、神父のような法衣を着た痩身の老人。
巡回士の“吼号呀”ビフロンスと組んで任務に当たる事が多い。一人称は「ワタクシ」。
それぞれが細い力の紐で繋がった赤、青、黄、緑、桃のスカーフをそれぞれ巻いた同じ姿(人数と色分け、及びオーバーアクションは『秘密戦隊ゴレンジャー』など『スーパー戦隊シリーズ』のパロディ)に分身したり、離れた自分と融合する事が出来るが、一体一体の力は、残り火の強いトーチ程度と非常に弱小。
“壊刃”サブラクを発見した結果、ベルペオルより『大命』の要たる坂井悠二の奪取、及び妨害するフレイムヘイズらを討滅する任務を授かったが、彼らはサブラクの襲撃のための囮に過ぎなかった。人質を取った上で常勝の作戦を行おうとしたが、悠二によって人質を使う隙を与えない速攻を受け秒殺討滅される。第二期アニメにも登場したが、登場する時期が原作より早くなっている。
ヌクテメロンの危地を支配するザロビという似た名前の悪魔が登場する。
“吼号呀(こうごうが)”ビフロンス[Bifrons]
声 - 安元洋貴
男性の“紅世の徒”。炎の色は樺色。XIV巻に登場。兵科は巡回士
土管を2つ繋げたような身体に虫のような足が幾対も生え、拷問器具のような鉄棒で編まれた頭部という異形の姿。
ガリガリという金属音のような笑い声と、読点の多い口調が特徴。捜索猟兵の“聚散の丁”ザロービと組んで任務に当たる事が多い。入手経路や具体的にどう使用しているかは不明だが、携帯電話を使ってザロービと連絡を取り合っていた。
普段は宝具『タルンカッペ』で気配を隠しているが、この状態では移動速度が非常に遅い。大破壊を得意とし、その砲身のような体に瓦礫を吸い込み、砲弾として強烈な一撃を放つ。
常勝の作戦で挑むもののザロービと共に囮として使われており、最期にはシャナと自身の攻撃の相殺による爆発に至近距離で巻き込まれ瀕死のところをサブラクによって遠隔操作され、自身の全ての“存在の力”を砲撃に使い果たして消滅した。
第2期アニメにも登場したが、原作と異なり登場する時期が早くなっており、シャナの一撃によってそのまま消滅していた。また、公式サイトでも“紅世の『王』”という扱いになっていた。
ソロモン72柱の一柱にビフロンスという同名の悪魔が存在する。
“放弾倆(ほうだんりょう)”ファレグ[Phaleg]
男性の“紅世の徒”。炎の色は藍錆色
人狼の姿をしている。
フレイムヘイズ陣営との戦争で西部戦線第二軍に従軍し、先鋒として突撃していた。黒馬状態のオロバスの背に半ば無理矢理乗せられ、防御されながらフレイムヘイズの防御陣地へ突撃した。砲弾を跳ね返していた自在師を仕留めようとしたが、敵にオロバスから引き摺り下ろされ、強化の自在法『鐙の寵』が解けたところを攻撃され、討滅された。
魔道書グリモワールに登場する、同名の火星を支配する天使・戦争の神がいる。

名前だけ登場した“王”

“駒跳の羚羊(くちょうのれいよう)”ブファル
“紅世の王”。炎の色は杏色。容姿は不明。
フレイムヘイズ陣営との戦争で外界宿征討軍東部方面主力軍の部隊長に任命された“王”。外界宿東京総本部攻防戦の開始直前に、フレイムヘイズ奇襲部隊による襲撃を受けるが、上官のリベザルや同僚のエギュン同様、護衛と共に撃破した。
そして『星黎殿』への撤退途中に、谷川岳でミカロユス・キュイたちに足止めされた際には、『プロビデンス』がデカラビアに回収された後の[仮装舞踏会]各方面軍の戦況の詳細に関する情報確認に行った模様。その後の消息は不明。
グリモワールの伝説の中に、ブファルという同名の悪魔がいる。
“珠帷の剔抉(しゅいのてっけつ)”エギュン
“紅世の王”。炎の色は生壁色。容姿は不明。
フレイムヘイズ陣営との戦争で外界宿征討軍東部方面主力軍の部隊長に任命された“王”。外界宿東京総本部攻防戦の開始直前に、フレイムヘイズ奇襲部隊による襲撃を受けるが、上官のリベザルや同僚のブファル同様、護衛と共に撃破した。
そして『星黎殿』への撤退途中に、谷川岳でミカロユス・キュイたちに足止めされている最中に突如『朧天震』が発生した直後に、何が起きたのか聞く部下に対して一言「俺に聞くな」とだけ答えた。
新世界『無何有鏡』へ渡り来てから二年弱までの間に、モー郊外において一隊を率いてハボリム隊やリベザル隊と連携して二百余の新参の“徒”たちを包囲殲滅し、完勝と言っていい成果を上げた模様(外伝『アンコール』)。
エノク書の文献の中に、北の悪魔の王とされるエギュンがいる。

[とむらいの鐘(トーテン・グロッケ)]

古く強大な“紅世の王”、“棺の織手”アシズを中心に組織され、16世紀初頭にフレイムヘイズ兵団との『大戦』の結果消失した当時最大級の“紅世の徒”の集団。理由は“徒”によって異なるが、フレイムヘイズとの戦闘を前提に置く戦闘軍団。その総員は万を超え、ヨーロッパのブロッケン山に要塞を築き、拠点としていた。アシズの掲げる『壮挙』の実現を目的としており、[とむらいの鐘(トーテン・グロッケ)]の名は、世に新しい理を作る際に、古い理に対してとむらいの鐘を送るという意味を持つ。

都市オストローデにおいて、敵対する“紅世の徒”の組織や、彼らを一網打尽すべく集ったフレイムヘイズたちとの戦いの中で秘法『都喰らい』を発動させ、一度に生じた物としては史上空前の規模の歪みを生み出した。その18年後の16世紀初頭には『壮挙』を為すために必要不可欠な宝具である『小夜啼鳥ナハティガル)』の争奪戦を所有者の“徒”とフレイムヘイズ兵団との間で起こして奪取したことで、その5日後に『大戦』の決戦へと流れ込んだ。

彼らの『都喰らい』及び『壮挙』は“紅世”で静観を決め込んでいた“徒”にも衝撃を与え、これを阻止すべく多数のフレイムヘイズが生み出され、さらに本来一人一党の討ち手達が、フレイムヘイズ兵団と呼べるまでの集団となる原因となった。特に後者の時期に「乱造」されたフレイムヘイズは、「ゾフィーの子供たち」と俗称される。

ブロッケン山、オストローデ(オステローデ)ともに同名の土地が現ドイツ中部に実在する。「ゾフィーの子供たち」にゲルマン系の姓名が多いのは、同地方の出身者が多いからと思われる(物語のオストローデ市は都市ごと“存在の力”を喰われたので、人間同様「最初から存在しなかった事」となる筈であり、現在のオストローデ市と同一ではない可能性がある)。

“棺の織手(ひつぎのおりて)”アシズ[Asiz]
男性の“紅世の王”。炎の色は。I巻から秘法『都喰らい』を行った“徒”として語られ、X巻およびS巻『キープセイク』に登場。カムシンには「青き棺の天使」と形容された。[とむらいの鐘]の首領であり、構成員からは「主」と呼ばれている。
仮面をつけた蒼い天使の姿をしている。
思慮深く温厚で、他者に対してあまりにも優し過ぎる性格。それは在り方がかつての己に似た、マティルダとアラストールに対しても向けられていた。
「神聖不可知の完全な輪」である“冥奥の環”固有の自在法として、『清なる棺』という、周囲の因果から閉鎖された強力な凝固空間を作り出す能力を持つ。優れた自在師であり、同時に強大な統御力を持つ当時の乱獲者の中では最強の“王”。自在法『都喰らい』を編み出し、無数のトーチに『鍵の糸』という仕掛けを使うことで『都喰らい』を行い、都市丸ごとの“存在の力”を得るとともに使いこなすことで自身を強大な存在にした。また、その“存在の力”を『九垓天秤』にも分け与え、強化していた。
本編で直接戦闘したのは一度だけであり、その相手は神威召喚により対象を必滅する存在として顕現したアラストールであったため全く歯が立たなかったが、その強さは『灼眼のシャナの全テ』において作者からアラストールとともに別格と称されている。作中での真正の神に対する立ち位置は「大魔法使い」。
元々は最古のフレイムヘイズの1人として活動していた“王”で、本来の真名は“冥奥の環めいおうのかん)”。世界のバランスを守るという使命に燃え、契約者の少女『棺の織手』ティスと共に“徒”の組織をいくつも壊滅させた英雄だった。太古の“祭礼の蛇”を『久遠の陥穽』に放逐した戦いには、ティスと共にフレイムヘイズ側として参戦し、イルヤンカたちと戦った模様。
しかし、契約者ティスが人間の裏切りで殺された際に彼女への愛情に気づき、彼女の喪失を恐れて『清なる棺』で亡骸の崩壊を防ぎ、同時に周りの人間を無数喰らい“存在の力”を得ながら、ティスという「心通じた場所」を起点として自身の紅世との繋がりを代償に自身を強引にこの世に再召喚、世界のバランスを脅かす“徒”と同様にこの世に顕現した。
以後は、自身と契約したフレイムヘイズの称号である“棺の織手”を名乗り、フレイムヘイズの使命を放棄してティスを蘇らせるための方法を求め、フレイムヘイズと敵対しながら世界を旅する。その彷徨の中、後に『九垓天秤(くがいてんびん)』と呼ばれることになる九人の強大な“王”が付き従ったのを皮切りに、次々とその在り方に惹かれた“徒”らが集い(“徒”は「欲望の肯定」こそを全てとするため、己の望みを断固として目指すアシズの生き様に感銘を受けた)、[とむらいの鐘(トーテン・グロッケ)]を組織するに至る。
契約者ティスを蘇らせることは叶わなかったが、彼女の最後の願いであるアシズとティスの子を作り出す為に、存在の『分解』と『定着』の自在式を刻んだ金属板(『大命詩篇』の断篇)と宝具『小夜啼鳥ナハティガル)』の力を用い、自身と愛するティスの存在を融合させた『両界の嗣子』を生み出そうとした。これは結局のところアシズ個人の目的でしかなかったのだが、それを叶えるためにひたすら突き進むアシズに感銘を受けた“王”たちが、個々の理由からそれを助けようと付き従い始めた。その中でモレクが、組織の指針とすべくこれに『壮挙』という名前と『両界にとって革新的な試み』という大義名分を与えたことにより、当時の人間社会に倦み疲れていた“徒”達がこれに惹かれて集まり、様々な理由・大義・名目をまとい、最終的にはアシズですらどうにも出来ないほど尊大で抽象的なものとして捉えられていた(事実、『壮挙』の内容はともかく、その意味するところを知る者は組織内にも少なく、『九垓天秤』らがその遂行に助力していたのは内容や意味のどうこう以前に「主たるアシズの目的だから」という理由が大きい)。
[とむらいの鐘]が強大な組織となったのは彼が出会った“徒”を誰も見捨てなかったからであり、癖の強い『九垓天秤』全員から慕われているところからもその人格面での優しさをうかがえる。愛し合う者同士が共に生きる事を望んだが叶わなかった過去を持つためか、マティルダとアラストールが愛し合っている事を知ると、世界のバランスを守るために死ぬことを承知で自身を討滅しようとする二人に同情し、二人の間にも子供である『両界の嗣子』を作らせ仲間にしようと説得するが、最終的に“天破壌砕”で顕現したアラストールにより討滅された。
ユダヤ教キリスト教で堕天使アザゼルの別名をもつ、カナンで崇拝されたアシズという同名の砂漠の神が存在する。

『九垓天秤』

[とむらいの鐘]の最高幹部たる九人の“王”。世界を放浪していたアシズに最初に付き従った者達で、組織の力の象徴。この呼称は、組織の保有する同名の宝具から採ったもので、宝具の方は九つの腕を持った上皿天秤(『Eternal song -遙かなる歌-』では上皿ではない吊り下げ型の天秤として描かれている)。能力は皿に乗った“徒”同士で“存在の力”をやり取りするもの。サイズの調整が可能で、SII巻『キープセイク』では人間ほどの大きさに、X巻ではイルヤンカが乗れるほどの大きさに変えられている。 『都喰らい』の戦いでフワワが、『小夜啼鳥』争奪戦でニヌルタが討たれ、中世の『大戦』にてメリヒムを除く全員が戦死。残るメリヒムが数百年後、次代の『炎髪灼眼の討ち手』となった少女に倒されたことで、完全に壊滅した。

“虹の翼(にじのつばさ)”メリヒム[Merihim]
声 - 小西克幸
男性の“紅世の王”。炎の色は虹色虹の色数は時代や文化によって異なるが、作中では七色とされている)。V巻およびX巻、S巻『キープセイク』に登場。『九垓天秤』の1人で、役柄は[とむらいの鐘]が誇る力の象徴『両翼』の右。あだ名は「虹の剣士」。シャナの育ての親の一人で、彼女からは白骨の容貌から「シロ」と呼ばれていた。
銀髪の青年騎士の風貌をしており、『九垓天秤』中で唯一、その姿は人間のものと酷似している。ただし顕現の規模を抑えることで服装は襤褸に、体は肌や肉が削げ骸骨の姿へと近づく。なおこの状態でも『虹天剣』は使用可能。
自己中心的で傲慢な癇癪持ちだが、主への忠誠は堅く聡明かつ冷静な部分や一途な面も見せる。[とむらいの鐘]の宿敵であり、当代最強を誇ったフレイムヘイズのマティルダ・サントメールを一途に愛し、恋敵であるアラストールを嫌っていた。ヴィルヘルミナには好意を抱かれていたが、最後まで振り返らず(気づかなかったわけではなく全て了解し、その上で無視していた)真っ直ぐにマティルダを愛し続けた。
一体一体が並のフレイムヘイズに匹敵する力を持つマティルダの『騎士団』を一瞬にして切り伏せる剣技に加え、「空を貫く七色の光」たる“虹の翼”の力である、距離による減衰が無い一直線の虹の破壊光線を剣尖から放つ、当代(中世の『大戦』当時)最強の破壊力を持つと称される自在法『虹天剣』の使い手(剣を使うのは照準を合わせる意味が大きく、白骨の状態では素手で放っている)。さらに『虹天剣』の反射・変質を行う、硝子の盾型“燐子”『空軍アエリア)』を多数使役しており、空に無数舞わせることで自身の戦闘力の向上に加え、[とむらいの鐘]全軍を支える空中での強大な抑止力となっていた。これらは『小夜啼鳥』争奪戦でマティルダに殲滅されており、作戦立案段階でモレクを大いに嘆かせることになった。また、『虹天剣』の七色の内一色か二色のみを飛ばして威力を抑えたり、ある程度広範囲に放つ事や、切り札として七人に分身し相手を囲み、それぞれが放つ七色の光で虹の輪を作り破壊力を集中させ撃砕する技も持つ。
なお『虹天剣』は本来、光背状(要するにリング型)の虹の翼を背後に表し、それを収束させて剣尖から放つ自在法だが、『天道宮』でシャナと戦った際は消耗していたためか、翼は輪にならない双翼となり、それを剣に沿って屈折・収束させ、放つという流れになっていた。
アシズに付き従ったのは、『九垓天秤』の中では一番後だった。
中世の『大戦』ではイルヤンカと共に先代『炎髪灼眼の討ち手』マティルダ・サントメールと熾烈な戦いを繰り広げ、最終的に一騎討ちで敗北。敗れた後、彼女への愛を証明するため、マティルダから別れ際に託された三つの「誓い」を守り、“天壌の劫火”アラストール、『万条の仕手』ヴィルヘルミナ・カルメル、“夢幻の冠帯”ティアマトーと共に『天道宮』にて次代の『炎髪灼眼の討ち手』育成に携わった(X巻)。なお、後にシャナが御崎市に居着いた後、その過去に関して悠二達にも説明されているが、彼の存在は教えられていない(精々が人数で「他にも一人いた」ことを示唆する程度)。
数百年を経た後、日常となっていた不意打ちの鍛錬の中で、後にシャナと名乗る少女の落とし穴の罠に引っかかり、中に詰められていたトマトケチャップを浴びた際、マティルダが致命傷を負った際の光景とその死、アシズの敗北による『壮挙』の失敗がフラッシュバックして一時パニックを起こし、『虹天剣』を暴発させて『秘匿の聖室』を破ってしまう。その後、これを感知して現れた“琉眼”ウィネを足止めして戦っていたが、同じく現れた“天目一個”に両断されて湖に転落、一時戦闘不能に陥る。しかし、シャナがフレイムヘイズ『炎髪灼眼の討ち手』となった直後、マティルダとの「誓い」を果たすため、残された最後の力で“紅世の王”として顕現。肩慣らし代わりに目の前にいたオルゴンを『虹天剣』で消し飛ばし、その後この世を乱す“徒”の立場で全力を以ってシャナと戦い、身を持ってフレイムヘイズの戦い方を教えた。その決着は、『虹天剣』による一撃を命中させる直前、自らを弾丸と化したシャナの突撃を受け、胸郭を吹き飛ばされるという敗北(同時に、マティルダへの誓いの完遂)で終わった。倒された後、シャナに『最強の自在法』の存在を教え、自らの愛の完遂とシャナの成長に満足しながら『天道宮』の崩壊と共に消滅した(V巻)。しかし、マティルダの死が「彼女の生き様のただの結果」だという事には最期まで気づかなかったらしく、アラストールのことを未だ「愛する者を自分の思惑のために使い捨てにした奴」と認識していた。
アニメの設定では身長は187㎝。炎は色が次々と移り変わるように表現されている。また倒された後のシャナとの最後の別れのシーンは第1期では省かれ、第3期にてシャナの回想の形で描かれた。
雷と稲妻を齎す『空の軍勢』の君主たる悪魔デーモン、または地獄の九階級の第六位、アエリアエ・ポテスタテス(“空の軍勢”の意)の『メリジム(Merizim)』という似た名前の君主が存在する。つまり、『空の軍勢』が共通点であった。
“甲鉄竜(こうてつりゅう)”イルヤンカ[Illyanka]
男性の“紅世の王”。炎の色は鈍色。X巻、S巻『キープセイク』に登場。『九垓天秤』の一人で、役柄は[とむらいの鐘]が誇る力の象徴『両翼』の左。あだ名は「鎧の竜」で、カムシンには「鎧の竜王」と形容されていた。
体中が鈍色の鱗で覆われた、四足・有翼の巨竜の姿をしている(『Eternal song -遙かなる歌-』では四足ではなく、両腕を持った二足の竜として描かれている)。
自らを老人と称する、非常に古株の“王”。戦闘時は獰猛な面を見せるが普段は温厚かつ思慮深く、ともすれば激発しがちなメリヒムらの抑えにまわる、『九垓天秤』の長老格。チェルノボーグのモレクに対する想いや、ヴィルヘルミナのメリヒムへの好意にも気付いていた。人間に対する認識は、他の“徒”と同様「麦の穂」程度にしか見ていないため、『壮挙』に何の引け目も感じていなかった。
巨大の重量と全身を覆う鱗による高い防御力を併せた打撃や、口や全身から噴出し留まらせる事で強大な防御力を発揮する、「不変不壊の鎧を纏う竜」たる“甲鉄竜”の力、当代最硬の防御力を誇る鈍色の煙の自在法『幕瘴壁』を使い戦う。また、『幕瘴壁』は先端のみを硬化させることで強大な打撃力をもつ推進弾としても応用できる。これは連射が可能だが、原作X巻では単発でしか放っておらず、『Eternal song -遙かなる歌-』II巻でかく乱として放っている。
3000余年前に行われた『大縛鎖』の儀式に招待されていた模様で、“祭礼の蛇”が『久遠の陥穽』に放逐された『神殺し』の戦いにもオオナムチと共に参戦してナムを討ち取り、当時フレイムヘイズだったアシズとは敵同士だった。しかし、その後“王”として顕現し、世界を放浪していたアシズに真っ先に付き従ったのも彼である。
中世の『大戦』の折、メリヒムと共に宿敵マティルダとヴィルヘルミナと戦い、激闘の末にヴィルヘルミナの手によって形質強化を受けた尖塔の上に投げ落とされて致命傷を負い、討滅された。
ヒッタイト神話イルルヤンカシュ(イルヤンカ)という同名の邪龍が登場する。
“大擁炉(だいようろ)”モレク[Molech]
男性の“紅世の王”。炎の色は黄色。X巻、S巻『キープセイク』に登場。『九垓天秤』の1人で、役柄は組織の運営や裁量を行う宰相。あだ名は「牛骨の賢者」。チェルノボーグからは「痩せ牛」とも呼ばれる。
豪奢な礼服を纏った、直立した牛骨の姿をしている。
役職上組織のNo.2であり、『九垓天秤』の実質的なリーダーだが、普段は控えめというより小心で、地位に伴う威厳は皆無である。「強者」ではなく「賢者」として恐れられた数少ない“王”であり、戦闘には向いていないため戦闘面では主に作戦の立案などを担当している。作戦案などが通った際は、相手が「従った」のではなく「提案を受け入れた」という考え方をする。
小心かつ臆病、という一面は見せかけではなく完全な素で、万事危機に配慮し常に慎重、という賢者としての側面の裏返しである。他の面々や組織外の者のような、いざとなれば自分で何とかする、という「強者の気楽さ」とは無縁の男。そのため、アシズの許に迎えられてからは戦い以外での敵の弱体化と組織の強化に努めてきた。また、究極的にはアシズ個人のためでしかない『壮挙』が“徒”達への新たな指針とまで受け取られたのは、モレクが喧伝したため。
同志に対しては穏やかで優しいが、人間は「自分達と同じ様な精神を持つが決定的に弱い種族」として、他の“徒”同様、「麦の穂」程度にしか思っていない。また、他人の自分への思いを察知するのにも疎く、最後まで周りからの密かな尊敬やチェルノボーグの好意にも気付けなかった。他人からの気遣いにも基本的に疎い。
また、ものを見る目や知識は並外れており、後にヨーハンも宝具について調べていた時に「会えればよかった」と述べている。
小心な性格に反して、その力の大きさは異常な程。自らを山をも覆う巨大な牛型の迷宮へと変質させ敵を閉じ込め、同時に取り込んだ味方を有利な戦場で戦わせサポートする、「抱いて守り閉じ込める」“大擁炉”の力、空間制御の自在法『ラビリントス』を使う。この『ラビリントス』は空間制御の自在法の中では特に秀でた範囲を持つが、形質強化は出来ないため破壊が容易に出来るという弱点を持つ。その反面、それを『ラビリントスという形』へ組み直すことで修復がいくらでも可能という利点をも持つ。発動にはモレクの体を構成する骨を一度火の粉に分解して効果範囲に浸透させ、それを自在法として再構築する必要があるため、時間がかかる。この力はモレクがアシズの許に迎えられて以来、彼の千年の放浪と、ブロッケン山脈に落ち着いてからの数百年を守り抜いた実績を持つ。
主たる“棺の織手”アシズが『壮挙』を成すための時間稼ぎに『ラビリントス』を展開、『炎髪灼眼の討ち手』マティルダ・サントメールと『万条の仕手』ヴィルヘルミナ・カルメルの動きを封じるものの、一部を破壊されても修復できる『ラビリントス』を全域一挙に破壊するという二人の作戦により討滅された。
旧約聖書ではモレクという同名の古代中東の神が登場する。
“闇の雫(やみのしずく)”チェルノボーグ[Chernobog]
女性の“紅世の王”。炎の色は枯草色。X巻、S巻『キープセイク』に登場。『九垓天秤』唯一の女性で、役職は隠密頭だが、『頭』とは言っても部下などはおらず、単独で行動する暗殺者である。あだ名は「黒衣白面の女」。
鉤爪を備えた巨大な右腕と獣の耳を持つ、黒衣を纏った黒髪で痩身の女性であり、顔と耳の白い毛以外は全てが黒く覆われている。
“大擁炉”モレクに好意を寄せ、彼から与えられた仕事をこなすこと、彼を守る事にこの上なく大きな充足感を覚えていたが、表面上は彼を「痩せ牛」と呼んで蔑むそぶりを見せ、いつもきつい態度で当たっていた。なお、これについてはアシズや、モレク以外の『九垓天秤』全員が(真意の計れないジャリはともかくとして)気づいている。モレクと自身、双方の炎の色を持つセイヨウタンポポを好む。
右の巨腕を織り交ぜた体術や爆破攻撃、「暗闇に滴る」“闇の雫”の力として、影に身体の一部や全体を潜り込ませ近距離へと転移する『影浸』という自在法を駆使し闘う。また両腕は自在に伸ばすことが出来、『影浸』を応用して腕だけを敵の下に伸ばすことも可能。
戦場に『炎髪灼眼の討ち手』マティルダ・サントメールと『万条の仕手』ヴィルヘルミナ・カルメルが現れた後、後続を断つべく『天道宮』へ突入、『天道宮』の主たる“髄の楼閣”ガヴィダを殺害。直後にモレクが討滅されたことを知り、最後に『九垓天秤』としてアシズのために行動すべく、要塞に一度戻って守備兵を集合・出撃させ、要塞周辺を包囲する形で配置。自身はマティルダに奇襲をかけて致命傷を負わせ、向かってきたヴィルヘルミナとの戦闘に入る。少なからぬダメージを与え片腕をもぎ取るも、常の冷静さを失っていたことから『戦技無双』に同じ手を二度使うというミスを犯して勝機を逃し、討滅された。
スラヴ神話チェルノボグという似た名前の黒の神が登場する。
“凶界卵(きょうかいらん)”ジャリ[Jarri]
男性の“紅世の王”。炎の色は亜麻色。X巻、S巻『キープセイク』に登場。『九垓天秤』の1人で、役柄は組織のための情報収集にあたる大斥候。あだ名は「奇妙な卵」。
魔物・老人・女の面が張り付いた人間大の卵の姿をしていて、その3つの面から、付き合いの長い仲間でさえもなんとなくしか意図が知れない意味不明な声を繋げて喚く。これらは基本的に大まかな意味を込めた出鱈目の羅列で、その意味を理解するには言葉尻と状況から察するか、かなり大回りな解釈が必要となる。まともな発言は現在の所、『Eternal song -遙かなる歌-』III巻における「御意!」と同I巻におけるニヌルタの最期に対する「命を賭し!」「使命を賭し!」「任務を全うした!」。
内心については全く描写されておらず、言動も意味不明なことが多いため精神面はまるで不明であり、「変人」と呼ばれている。[とむらいの鐘]の中でも古参の“王”で、アシズに付き従った年月はイルヤンカやウルリクムミに次いで長い。チェルノボーグのモレクに対する想いにも気付いているようで全く関係ないような、微妙な発言もした。あまりに意味の分からない言葉から、「ジャリの内心を図るのはフレイムヘイズを百屠るより難しい」とまで言われている。なお、アシズだけは彼の真意を明確に理解している模様。『九垓天秤』の共通項として、アシズには忠実。アシズに礼を取る際は卵の姿という都合上姿勢が取れないため、代わりに崇敬の意を込めた出鱈目を吐く。
戦闘向きの力は持たないが、絶大な規模で自在法を展開し制御することが出来る。「不吉を収めた卵」である“凶界卵”の力として、無数の蝿を統御して索敵・情報収集・攻撃を行う自在法『五月蝿る風』を使い、多くの情報を集める組織の枢要。一定以上の防御力を持つ相手には攻撃効果がないが、防御手段を持たないフレイムヘイズは蝿に喰われ、燃やされてしまうため、中世の『大戦』では戦場となった平原の空中に密集させることで、『空軍(アエリア)』を失ったメリヒムに代わり討ち手の大部分の飛行を封じていた。
最強の敵マティルダを前に最後まで主のアシズに付き従ったが、マティルダにより神威召喚『天破壌砕』を行う際の生贄とされて消滅した。
ヒッタイト神話・小アジアに同名の疫病の神が存在する。
“巌凱(がんがい)”ウルリクムミ[Ullikummi]
男性の“紅世の王”。炎の色は濃紺。X巻、S巻『キープセイク』に登場。『九垓天秤』の1人で、役柄は先陣を切って[とむらいの鐘]の軍を率いる先手大将。あだ名は「鉄の巨人」。
分厚い鉄板もしくは鉄塊を巨大な人型に組んだような姿で頭部は無く、胴体部分に双頭の白い鳥の絵が描かれている。言葉を発するのはこの鳥で、語尾を大きく震わせる特徴的な喋り方をする(原作では思考の際の心の中の声も同様だったが『Eternal song -遙かなる歌-』では普通)。背中側には四つの翼を持った何かの紋章が描かれている。
卓抜した戦術眼と統率力の持ち主であり、公明正大な人格者で、仲間からの信頼も厚い。また戦場を離れた常の状態では非常に慎み深い性格。
濃紺の炎を混ぜた竜巻を自身の周りに発生させて周囲の鉄を引き寄せて巻き込み、質量に速度と“存在の力”を加え強化された鉄による濃紺の激流を放つ、「勝鬨を上げる岩山」たる“巌凱”の自在法『ネサの鉄槌』を使う。原作では体の周囲を渦巻かせ、敵の頭上へ落とす形で使用していたが、『Eternal song -遙かなる歌-』では腕に力場を展開して鉄を引き寄せ渦巻かせ、それを横向きの奔流として放つ形で一貫している。
組織ではかなりの古参で、イルヤンカに続いてアシズに付き従っている。
中世の『大戦』では、先手大将として軍勢を率いて、ゾフィー率いるフレイムヘイズ兵団と戦い続け、終始フレイムヘイズ兵団と互角以上に戦った。アラストールの顕現により大勢が決した後は、より多くの同胞を生かすため、生き残っていた全軍を[仮装舞踏会]へ任せ、自身はフレイムヘイズを足止めするために残り、ゾフィーに討滅された。
ヒッタイト神話に登場するウルリクムミという同名の巨人が存在する。
“架綻の片(かたんのひら)”アルラウネ[Alraune]
女性の“紅世の徒”。炎の色は薄桃。X巻、S巻『キープセイク』に登場。名前が判明したのは『キープセイク』で、X巻では「妖花」名義で通されていた。
その姿は、美女の顔を中心に抱いた妖花。この顔は常に目を閉じており、開けることはない。
よく気の回る性格で、隠れた内心や表に出ない意図を素早く的確にくみ取り、対応する。これは、ウルリクムミという文字通りの鉄面皮にして不言実行の上官を持つことから身に着けた職能である。語尾を疑問系で結ぶ癖がある。
援護や補助の自在法を得意とする自在師で、“巌凱”ウルリクムミの副官を務めていた。常に疑問形で話す癖がある。最後まで先手大将としての使命を果たそうとするウルリクムミに付き添い続け、彼と共に散った。
アルラウネという同名の人の形をした植物が存在する。
“焚塵の関(ふんじんのせき)”ソカル[Sokar]
男性の“紅世の王”。炎の色は黄土。X巻、S巻『キープセイク』に登場。『九垓天秤』の1人で、役柄は“巌凱”ウルリクムミと同じく先陣を切って[とむらいの鐘]の軍を率いる先手大将。あだ名は「石の大木」。
木の葉一つ無い石の大木の姿をしており、洞から甲高い声で喋る。
見栄っ張りな性格で、ブロッケン要塞落成の式典の際には、入城の序列を巡って騒ぎを起こしたりもした。話が回りくどく、「つまり」を重ねるほどに論点が整理されなくなっていく。ウルリクムミいわく「陰険悪辣の嫌な奴」である為か、他の面々、特にニヌルタとは反りが合わない。“千変”シュドナイと知らぬ仲ではない模様。
「焼き尽くす門」たる“焚塵の関”の力、周囲一帯を覆い尽くす規模の石の木を多数生み出し操る防御の自在法『碑堅陣』の使い手。ソカル自身はこの中に潜み、入り込んだ敵を石の樹木で圧殺する、枝を伸ばして突き殺す、茨で縛り殺す、あるいは自身の手を巨大化させて握り潰すなどの直接攻撃を行う他、陣内の樹木に目を開いて様子を伺う、味方の姿を隠して潜ませるなど汎用性が高い。
名うての戦上手であったが、中世の『大戦』では、防御陣と性格の相性が悪いこともあってカール・ベルワルドの速攻を受けて序盤戦で討滅されてしまった。『Eternal song -遙かなる歌-』ではベルワルド集団の進撃を何度も阻んだが、突撃して来たカールを捕獲したのが仇となり、防御に転用された『グリペンの咆』で逃げられた上に右目を穿たれ、『グリペンの咆』と『ドラケンの哮』の斉射を受けて戦死した。
同名のメンフィスの墓地の神が存在する。
“天凍の倶(てんとうのぐ)”ニヌルタ[Ninurta]
男性の“紅世の王”。炎の色は(あおぐろ)。S巻『キープセイク』に登場。『九垓天秤』の1人で、役柄は全軍の中核となるアシズを守りつつ、[とむらいの鐘]の主力軍を統率する中軍首将。「氷の剣」と形容されていた。
その姿は槍や剣や棍棒など様々な武器が刺さったガラスの壷(中に刺さっているのではなく、外周部分に「突き刺さって」いる)で、戦闘時はこれらの武器に霜が降り始める。
謹厳実直な性格で、公正ならば文句は言わないが、自己顕示欲の強いソカルとはよく激突していた。
固有の自在法などは不明だが、『Eternal song -遙かなる歌-』の描写を見る限りでは刺さっている武器を展開・浮遊させて操る能力を持っていた模様。
中世の『大戦』直前の『小夜啼鳥』奪取の際に、フレイムヘイズらによって討滅された。対[とむらいの鐘]戦を描いた外伝コミック『Eternal song -遙かなる歌-』では、アシズたちの退路を守って戦い抜き、マティルダに討滅された。
同名のバビロニア神話の戦争の神ニヌルタが存在する。
“戎君(じゅうくん)”フワワ[Huwawa]
男性の“紅世の王”。炎の色は焦茶。S巻『キープセイク』に登場。『九垓天秤』の1人で、役柄は戦機に応じて動き、強襲や危険な任務を遂行する遊撃部隊の長・遊軍首将
腹まで口が裂けた巨大な狼の姿をしており、「牙剥く野獣」と形容される。
戦いにしか関心のない性格で、自身を誇ることにはまるで興味がない。また、口も悪い。
中世の『大戦』以前の『都喰らい』発動後の戦いで、手勢を駆り、敗走するフレイムヘイズ達を殲滅しようと追撃していたが、マティルダによって討滅された。
バビロニア神話に登場する怪物フンババ(Humbaba)の古名に、似た名前が存在する。

[革正団(レボルシオン)]

19世紀後半に現れ始めた『“紅世の徒”の存在を人の世に知らしめる』という思想を元に活動する者たちの集団。メンバーの大半は“徒”だが、極一部とはいえ一般人やフレイムヘイズも所属していたという点で他の組織とは一線を画している。

その実体は『組織』というより『集団』と例えたほうが的確な思想結社。通常の組織と違って明確な組織の首魁などが存在せず、根拠地すら定めず、各地で散発的にこの集団である事を本人たちが名乗り、『運動』と称して活動していた。1930年頃には欧州で活動が活性化し、遠く離れたアメリカ大陸からもこの集団を止めるために多くのフレイムヘイズが駆り出されていたため、その頃にはメンバーは相当な数に上っていると思われる。

普通のフレイムヘイズや“徒”からは狂気の集団の如く扱われていた。その活動目的から封絶を良しとしない傾向がある(その為、[革正団]のメンバーは封絶をあまり使わない)。

フレイムヘイズとの対[革正団]戦争(または[革正団]覆滅戦)において、最小単位での浸透戦術を使用されて敗退し、根絶されるに至った。また、[仮装舞踏会]とフレイムヘイズとの間で、暗黙の了解の内に共闘が行われた模様である。

第二期アニメではマージョリーの回想の中で名称だけ語られた。

“征遼の睟”サラカエル一派

19世紀末~20世紀初頭のハワイ近辺で活動していた[革正団]で、“征遼の睟”サラカエルを事実上のリーダーとする一派(上記の見出しは便宜上の仮のもの)。活動拠点はハワイ島マウナロア山の地下基地。

“探耽求究”ダンタリオン製作の『オベリスク』(正式名称『我学の結晶エクセレント27071-穿破の楔』)を使い、全世界にサラカエルのメッセージを発信しようとしていた。そのため1895年にハワイのホノルル外界宿から宝具『テッセラ』を強奪、それを用いて地下基地の存在および『オベリスク』を隠蔽していた。しかし1901年『空裏の裂き手』クロード・テイラーの行方を追っていた『約束の二人』、ホノルル外界宿の再設置にやって来た『鬼功の繰り手』サーレ・ハビヒツブルグ『極光の射手』キアラ・トスカナにより壊滅する。

“征遼の睟(せいりょうのすい)”サラカエル[Sarakiel]
男性の“紅世の王”。炎の色は碧玉。XV巻に登場。
長髪で美麗な男性の聖職者の風貌をしているが、戦闘の際には後光が射して、髪の間に無数の縦に開いた瞳が現れる。
理知的な性格で、自分の思想に共感するのであれば、敵であるフレイムヘイズも、“徒”から食われれば非常に弱い人間も、『同志』としてどちらが上も下も無い対等な関係である事を望む。
自覚も無く“徒”に喰われ続けるだけの人間を憂い、“徒”と人間との間に『明白な関係』を打ち立てることで、2つの種族が住まうこの世をより良く変えようとしていた。これは人間が“徒”に比べて劣った搾取される種族である事を世に知らしめる行為と同義であり、混乱や虐殺の増加を招きかねない上に、人間という種族全体が失意と落胆に陥る可能性のある行為でもあったが、彼は人間ならばそれすら乗り越え、“徒”と向き合ってより良く生きて行けると本気で信じていた。
睨んだ対象に自在法を飛ばし、瞳を対象に宿らせる事で強化や干渉を行う自在法『呪眼(エンチャント)』を使う。また『呪眼』である瞳自体を飛ばし、防御や攻撃にも用いる。
自らの“存在の力”を動力源に『オベリスク』でメッセージを発し、『明白な関係』作りのためのささやかなきっかけを作ろうとしていたが、1901年に『極光の射手』としての真の顕現を果たしたキアラに妨害され失敗、最期を悟った後は、自らの願いをほんの少しだけ発信し、この世と人間を蹂躙する事のできる力を持った“紅世の徒”の存在の説明と、そんな“徒”とも対等に関わっていく事のできる人間の『心』についての語りの中途で『オベリスク』ごと粉砕され討滅された。
キリスト教に、サリエルの別名をもつ同名の天使が存在する。
“吠狗首(はいこうしゅ)”ドゥーグ[Doog]
男性の“紅世の徒”。炎の色は灰色。XV巻に登場。
二足歩行の黒犬の姿をしている。句点の多い、たどたどしい話し方をする。
物覚えが悪く、いつも手帳を持ち歩いてさまざまなことを書き付けていた。また達筆で、自分が消滅しても書いた内容が消えないよう、筆記にはサラカエルに教わった暗号を使っていた。
犬の面と毛皮を付けた岩石獣人の“燐子”『黒妖犬(モディ)』を使う。簡単な命令をこなす程度の最低限の知能しかないが、大量に作り出すことや、機能を凍結させ長期保存させる事もできる。奥の手として『黒妖犬』自身が崩壊するほどの強烈な咆哮を放つ『金切り声(トラッシュ)』を持ち、サラカエルの『呪眼』の強化と組み合わせることで、複数のフレイムヘイズや“紅世の王”をしばらくの間行動不能にさせる事が出来る。
[革正団]として活動する200年ほど前からサラカエルと行動しており、その頃はサラカエルを『お頭』と呼んでいた。[革正団]となって以降は「同志サラカエル」と呼ぶように言われていた。
地下基地の近域で行われた戦いで、基地に設置しておいた『黒妖犬』の『金切り声』で時間を稼いだ後は、サラカエルの言い付けで戦線を離脱。瓦礫に飲まれかけた同志ハリエットを助けた後は、サラカエルの遺言で、他の同志にサラカエルの遺志を伝えるべく、彼の考えが書かれた本を持ってアメリカ大陸へ泳いで渡ろうとし、消息不明となる。また、この地下基地の最奥部には、凍結状態の『黒妖犬』が一体保存されていた。
その後の経歴の詳細は不明だが生存しており、1920年代に欧州で何度も[百鬼夜行]の手助けのもとに[革正団]運動を続け、多くの“徒”に人間との関係を意識させることとなった。XXII巻で新世界『無何有鏡』が創造され、[百鬼夜行]が新世界へ旅立った直後に御崎市の封絶に入ってきて、新世界が探し求めてきたものか確かめるために新世界『無何有鏡』へ旅立った。
新世界においても[百鬼夜行]の協力の元、人間との共存を引き続き説いて回った。それは少しずつ効果を表しており、渡り来てから2年弱の間に、3つほどの“徒”の組織がその思想を受け入れ、人間との関わり方について罰則まで設けた上でそれを厳守するようになった。これにはベルペオルも驚いており、他の“徒”からは[革正団]の思想上の首魁の一人だと考えられている(外伝『アンコール』)。その後、新世界へ渡り来てから二年の間に坂井悠二と出会い、『オベリスク』のことも含めた話をした模様(外伝『アンフィシアター』)。新世界が創造されてから数年後、『両界の嗣子』ユストゥスのお披露目の式典が行われる豪華客船『ロード・オブ・ザ・シーズ』の点検口に隠れている中で、偶然ユストゥスと遭遇する。そして、ユストゥスに自動販売機のジュースをおごった後で、ユストゥスから自身の『両界の嗣子』という存在が何なのか自分でもわからないことをどうやって皆に伝えればいいのかわからないという悩みを聞き、焦らずにじっくり時間を掛けて考えればいいと助言した。その直後に現れたサーレ・ハビヒツブルグキアラ・トスカナにユストゥスを託して、隠れて様子を見守っているからとユストゥスに告げて去っていった(外伝『ローカス』)。
第三期アニメでは姿だけ登場した。
マン島に、妖精犬モーザ・ドゥーグが存在する。

[百鬼夜行]

“紅世の徒”を時代に応じた乗り物で運び、送る事を生業とする運び屋。隠蔽と遁走に秀でた3人の“徒”が営む集団。古くから弱小の“徒”の移動手段や大物の“徒”の隠遁行動の助けなど、多くの“徒”を運び届けてきた。モットーは「安全運転、安全運行、危機に対さば、即退散」。

3人ともそれなりに大きい力を備えているが、力を誇らないために“王”とは見なされず(また、強大な“王”達に比べればその力も自在法も格段に見劣りする)、 ゼミナ以外は戦闘にも向いていない。しかし、小知恵が回り、人心の操作や相手の裏をかく事に長け、慎重に根気強く潜伏しながら業務を行い、自身らの脱出・逃走を行動原理の最優先として、危機に際してはその能力の全てをかけて手段を選ばず逃げる事で、何度となく死に掛けながらも遥か昔から生き残ってきた。数百年前にはマティルダ・サントメールとヴィルヘルミナ・カルメルの“最凶”コンビからも、首の皮一枚ながらも逃げ延びた。

20世紀初頭に起こった欧州での[革正団]の騒動では彼らの足となり、外界宿の警戒網を掻い潜って[革正団]の構成員を運び、外界宿の指導部に暗殺者を送り届けるなど、影の花形として活躍していた。

本編開始の2年前まで30年ほど運営していた中央アジア便を、ヴィルヘルミナと『約束の二人』との遭遇から放棄し、逃亡した。

現代の[仮装舞踏会]とフレイムヘイズ陣営との決戦では、傍観を決め込んでアメリカ南部に隠棲しており、“祭礼の蛇”の『大命』宣布にも興味を持たなかったが、『永遠の恋人』ヨーハンの頼みで『風の転輪』を使って彼らを探していた“彩瓢”フィレスから、仕事を依頼された(XX巻)。その後、フィレスの依頼でニューヨークにある外界宿『イーストエッジ外信』に滞在中のシャナたちと接触。御崎市決戦で、シャナ一派をニューヨークから御崎市まで運んだ後、カムシンとマージョリーを『真宰社』の内部へと密かに運び込んだ(XXI巻)。

『真宰社』の頂上にフィレスが現れヨーハンが悠二から分離すると、『約束の二人』とその場にいた吉田一美、途中合流のカムシンを連れて御崎市からの脱出を図った。しかし御崎市に流入する“徒”の多さに圧倒されて逃げ切れず、カムシンを護衛に置いて『真宰社』に戻り隠れるが、それが偶然にも“探耽求究”ダンタリオンの逃走経路を絶つことになり、本人たちも知らぬ間にダンタリオン消滅に一役買った(XXII巻)。

新世界『無何有鏡』完成後は、運び屋を続けるために新世界『無何有鏡』へ渡る事を選び、新世界へ旅立った(XXII巻)。新世界へ渡り来た後で“吠狗首”ドゥーグと再会し、彼の依頼で活動している(『灼眼のシャナノ全テ 完』)。新世界が創造されてから数年後、ヴィルヘルミナ・カルメルからの依頼で『両界の嗣子』ユストゥスのお披露目の式典が行われる豪華客船『ロード・オブ・ザ・シーズ』まで、自分とユストゥスとレベッカ・リードを運ぶ仕事を遂行している(外伝『ローカス』)。

日本の説話に登場する、鬼や妖怪などの異形の群れ、及びその行進のことを百鬼夜行と呼んでいる。

“深隠の柎(しんいんのふ)”ギュウキ[Gyūki]
声 - 北村謙次
男性の“紅世の徒”。炎の色は唐紅。初登場はSII巻『ヤーニング』。[百鬼夜行]の頭目。パラからは「ボス」、ゼミナからは「ギュウキさん」と呼ばれている。
長く伸びた首の先に角ばった木彫りの獣顔が付いた、獅子舞や西洋のシーツお化けのような姿の“徒”。シーツ状の体の端からは、必要に応じて木製異形の腕が出て来る。人化した姿は、がっしりした体格の大男。
万事において用心深く慎重で、人間を利用する事に長けた[百鬼夜行]の3人の中でも、特に優れた手腕を持つ。物事を説明する際、翡翠でできた兵棋の駒をよく使う。
透明な布状の力で覆う事で自身・他人を大人数、大きくも小さくも気配隠蔽を施せる自在法『倉蓑笠(くらのみのかさ)』を使う。これは他者の姿を自分達そっくりに偽装させる事も出来る(偽装させられた側は声を出せなくなり、偽装の口からはギュウキ達の言葉が勝手に放たれる)。
御崎市決戦では、フィレスからの依頼でパラやゼミナと共に『真宰社』の頂上に現れて、吉田一美と『約束の二人』を『苦尽甘来号』に乗せて離脱し、久しぶりに自ら戦闘に参加するまで苦労しながらも、新世界が創造されるまで逃げ切った。新世界が創造された後は、パラやゼミナと共に『無常迅速号』に乗ってドゥーグのことを話しながら新世界へ旅立った。
第三期アニメに登場した。
日本に牛鬼という同名の妖怪が存在する。
“輿隷の御者(よれいのぎょしゃ)”パラ[Para]
声 - 青木強
男性の“紅世の徒”。炎の色は白緑色。初登場はSII巻『ヤーニング』。[百鬼夜行]の運転手。
緑の制服、白手袋、ゴーグルを身に着け、口元にスカーフを巻いた、暗い翳りのような姿。人化した姿は、眼鏡をかけた青年。
あらゆる物体を“燐子”に変化させる技巧者で、[百鬼夜行]の乗り物は彼が作り出す“燐子”である。また、パラ自身も乗り物の運転に関しては名人とのこと。パラとギュウキの能力の組み合わせによって[百鬼夜行]の通常活動は行われている。[百鬼夜行]は時代の移り変わりと共に様々な乗り物を使って運び屋家業を行ってきており、20世紀初頭の[革正団]の騒動時には軍用の大型飛行艇をも使用している。なお、乗客は乗り物の中では人化の自在法を使うことを義務付けられる。
体組織の黒い翳りをばら撒き、それを取り付かせた物体を幾十百も操作する自在法『ヒーシの種』を使う。ただし、ばら撒く範囲が広すぎると制御しきれない場合もある。
フレイムヘイズ兵団が大敗した半日後には、フィレスからの依頼でニューヨーク外界宿『イーストエッジ外信』の地下蔵の床板をノックしてシャナたちと接触した。
御崎市決戦では、ギュウキやゼミナと共に『真宰社』の頂上に現れて、吉田一美と『約束の二人』を『苦尽甘来号』に乗せて離脱し、超絶的なテクニックで『真宰社』周辺を逃げ回ったが、ピルソインの『ダイモーン』で『苦尽甘来号』が操縦不能になってしまった。やむを得ず、『真宰社』に1つだけ存在した奇妙な出入口から内部に逃げ込み、入った先の何に使うのかよく分からないチューブの機能を麻痺させたが、これが実はダンタリオン教授の強制脱出装置だった為に、ダンタリオン討滅の原因を作るという珍功績を残した。
新世界が創造された後は、近くにあった幼稚園バスを新たな“燐子”『無常迅速号』に仕立て、ギュウキやゼミナと共に『無常迅速号』に乗ってドゥーグのことを話しながら新世界へ旅立った。
第三期アニメに登場した。
フィンランドの伝承に同名の家事の聖霊が存在する。
『大人君子号(たいじんくんしごう)』&『温柔敦厚号(おんじゅうとんこうごう)』
パラの“燐子”で年代物のボンネットバス2台。SII巻『ヤーニング』に登場。
[百鬼夜行]中央亜細亜便の移動手段。斜度五十度を越える急斜面にへばり付いて走行することもできる。話すことはできない。運転しなくても動き、内部の様子や受けた痛みがパラに伝わるなど、パラとは精神的に繋がっている模様。
乗客を運ぶ際は『大人君子号』にパラが、『温柔敦厚号』にゼミナが乗り込み、ギュウキはフードマスコットの姿で両方のボンネット先端に張り付いて気配隠蔽を施していた。本編開始の2年前、[百鬼夜行]の客となった“徒”が「運賃」としてヴィルヘルミナを襲撃した際、彼らの逃走を防ぐためヴィルヘルミナによって破壊された。
『苦尽甘来号(くじんかんらいごう)』
パラの“燐子”で丸っこいライトバン。XXII巻に登場。
“彩瓢”フィレスの依頼を受けた彼らが用いた移動手段。御崎市から逃走する際、御崎市へ殺到する狂乱状態の“徒”たちに目をつけられ襲われた挙句、“蠱溺の盃”ピルソインの自在法『ダイモーン』によってコントロールできなくなり暴走、真南川へ沈んでいった。
第三期アニメに登場した。
『無常迅速号(むじょうじんそくごう)』
パラの“燐子”で動物の顔を模った幼稚園バス。XXII巻に登場。
真南川へ沈んだ『苦尽甘来号』に変わる移動手段として、パラが調達してきた乗り物。新世界『無何有鏡』完成までの時間稼ぎには間に合わなかったが、新世界『無何有鏡』へ旅立つ三人の移動手段となった。
第三期アニメに登場した。
“坤典の隧(こんてんのすい)”ゼミナ[Žemyna]
声 - 慶長佑香
女性の“紅世の徒”。炎の色は竜胆色。初登場はSII巻『ヤーニング』。[百鬼夜行]の用心棒。
外見は20代半ばでざんばら髪を雑に束ね、眼の周りに隈取をした和装の女。人化すると、隈取が無くなる模様。
三人中唯一戦闘向きの“徒”で、非常時(主に戦闘・逃走)の対応担当。武器として常にゴツいツルハシを持ち歩いている。
地面に大穴を掘り離脱する遁走の自在法『地駛(じばしり)』を使う。地面から遠く離れると使えない。
御崎市決戦では、フィレスからの依頼でギュウキやパラと共に『真宰社』の頂上に現れて、吉田一美と『約束の二人』を『苦尽甘来号』に乗せて離脱し、新世界が創造されるまで逃げ切った。新世界が創造された後は、ギュウキやパラと共に『無常迅速号』に乗って、ドゥーグのことを話しながら新世界へ旅立った。
第三期アニメに登場した。
リトアニアの民間伝承に同名の自然の女の精霊が存在する。
“剡展翅(せんてんし)”セムルヴ[Sēnmurw]
“紅世の徒”。炎の色は銀鼠。SII巻『ヤーニング』に登場。[百鬼夜行]の斥候(臨時雇い)。
鳥とも竜とも見える姿をしていた。
本編開始の二年前、[百鬼夜行]を追って中央アジア入りしていたヴィルヘルミナに「斥候らしき不審者」として目をつけられ、逃走。渓谷に潜伏していた“壊刃”サブラクによる『約束の二人』襲撃に巻き込まれて命を落とした。
イラン神話シームルグの別名をもつセーンムルヴという似た名前の霊鳥が登場する。

[巌楹院(ミナック)]

『灼眼のシャナX Eternal song ‐遙かなる歌‐』に登場。16世紀初頭の北フランスで大きな勢力を有していた、“盤曲の台”ゴグマゴーグを首領とする組織。“徒”達の代理戦争協定『君主の遊戯』の遊戯者の組織の中でも大物であった。『大戦』の直前、ベルペオルの要請により他の遊戯者たちと連携してフレイムヘイズ兵団への一大包囲網を張ろうとしていた所、それを未然に阻止するために襲撃してきたマティルダ・サントメールとヴィルヘルミナ・カルメルの2人によって壊滅させられた。

“盤曲の台(ばんきょくのだい)”ゴグマゴーグ[Gogmagog]
男性の“紅世の王”。炎の色は憲房色。[巌楹院(ミナック)]の首領。
一見すると舞台の上で踊っている等身大の女性型人形の姿をしているが、実はその人形と人形の踊る舞台が丸ごと本体であり、戦闘時には舞台に偽装していた巨大なロボットが迫り上がり、動き出す。女性型人形か巨大ロボットのどちらかにダメージを受けるともう一方もダメージを負う。功を挙げるためには己の部下も城も容赦なく切り捨てる。幻覚を生み出し、幻覚による攻撃の中に実体のある機械人形での攻撃や女性型人形からの炎弾を織り交ぜることで敵を惑わし、巨大ロボットの拳で叩き潰すという戦法を取る。
中世の『大戦』の直前、[厳楹院]の本拠地にて、ベルペオルの計画したフレイムヘイズ兵団包囲網への加勢の要請をストラスから持ちかけられ、了承した直後にマティルダとヴィルヘルミナの襲撃を受け、乗り込んできたマティルダとの一騎討ちに臨む。自身も深手を負わされながらもマティルダを追い詰め、とどめを刺す寸前、助けに来たヴィルヘルミナに動きを止められ、その隙にマティルダの攻撃を受けて討滅された。
イギリスの伝説にゴグマゴグという似た名前の巨人が存在する。

導きの神と眷属

“覚の嘯吟(かくのしょうぎん)”シャヘル[Shahar]
声 - 甲斐田裕子
女性で、『喚起』と『伝播』の権能を司る“紅世”真正の『導きの神』。炎の色は純白。この色は「全てを掻き消す忘我の色」とも称される。神意召喚の儀式名は“嘯飛吟声(しょうひぎんせい)”。
実体を持たない神霊として眷属の間を漂う、神としての権能のみに特化した「それだけの存在」(ゆえに神「威」ではなく神「意」召喚となる)。
『喚起』と『伝播』の行使に値する導きなくば儚く失せる、新たな灯火を見出した時のみ神意召還を行使して「導く」、他の神が受動的に神威召喚を執り行うのに対して能動的に行う神。実体を持たないため単独では見聞きすることが出来ず、創造神により眷属というシステムが生まれた後は探知に長け好奇心旺盛な“徒”たちを眷属に任命し、彼らの耳目を通して、導くに値する物事を探している。神意召喚に応じた眠りに就くこともなく同じ真正の神であるアラストールや“祭礼の蛇”から見ても特異な神格の持ち主。“祭礼の蛇”からはその在り様を「珍しがり」と形容されていた。眷族が見聞きした中に神託に値する物事を発見すると、霊告『知らしむるべし』をその眷属に降ろし生贄として神意召喚を行い、全世界の“徒”(及び“王”を身に宿すフレイムヘイズ)に他心通(神託)を行う。なお、この神託は“ミステス”にも聞こえる他、何らかの理由で自在法の影響下にある場合は人間にも影響する。
召喚の執行者である眷属がそのまま儀式の生贄でもあるという性質から、召喚の儀式たる“嘯飛吟声”の内実や神託の基準などは眷属以外には全く知られておらず、同じ真正の神であるアラストールでさえ権能のことしか知らなかった(ゆえに自分達の試みを「広めてもらう」ための作戦が立てられており、当然のごとく失敗した)。
彼女が神託を降ろすべしと判断する事象は、新たな事柄でありながら「今あるままに放っておいても成るもの」「既にその流れができあがっているもの」は含まず、「放って置いては消えるもの」「大きな流れの始まりの端緒に過ぎないもの」でしかないため非常に少なく、眷属が数千年を空しく彷徨い続けることも珍しくはない。“徒”がこの世に渡り来てからの数千年間に神託が行使された事例は、作中で明かされている限りでは両界渡り・宝具・人化・封絶・表明思想・フレイムヘイズの生成がある。しかし、前代未聞の事象が世界規模で告知されかつ忘れられることがない(しかもどういう偶然か、振り回される方にとって最悪のタイミングで神意召喚が起きる)という性質上、振り回される当事者にとっては災難以外の何物でもないため、言葉だけで多くの者を唆し物事を変質させる神として、他の多くの“徒”から忌み嫌われて(一部では実在すら疑われて)いる。温厚な性格のストラスをして「導きの名で他者を誑かす、口先だけの神」と称するほどである。
神託が為される際、聞く方にはシャヘルの声が「耳元で叩かれる割れ鐘のように異様なまでに明瞭な、記憶に刻む痛みさえ伴い、遠くから途切れ途切れに響いて来る、聞くものの総身を劈く声」として聞こえる。神託は距離の遠近、因果を断絶させる封絶の内外、聞くつもりの有無に関わらず、強制的に「聞かされ」て、神託を受けている間は禄に身動きも取れなくなる。容易には忘れられない強烈な印象を聞く者に刻み付けるが、その内容を強制する性質は持たない。
新世界『無何有鏡』の創造を行うべく創造神の神威召還『祭基礼創』が発動したとほぼ同時に、『約束の二人』により『両界の嗣子』が生成されようとしているのを眷族たる“笑謔の聘”ロフォカレが発見したことで、彼を生贄に神意召喚を行使。御崎市決戦において新世界の創造を巡る戦いと興奮に最中にあった“徒”とフレイムヘイズたちに強制的に『両界の嗣子』生成の神託を聞かせて行動を中断させ、そのまま去った(XXII巻)。しかしこの神託は、新世界『無何有鏡』では「人が喰らえない」という理を組み込んだままの創造を“徒”たちに受け入れさせる一因となった模様。
第三期アニメに登場した。
ウガリット神話に、明けの明星の神としてシャヘルの名が存在する。
“笑謔の聘(しょうぎゃくのへい)”ロフォカレ[Rofocale]
声 - 藤田圭宣
男性の“紅世の徒”。炎の色は常磐色。初登場はXIII巻。“紅世”の導きの神“覚の嘯吟”シャヘルの眷属。
大きな三角帽に襟を立てた燕尾服で顔を隠した男で、古風なリュートを抱える。
自称「楽師」。「他者を以って己を表現する」という芸術家的な一面を持ち、そのためミカロユスのような同類には一定の敬意を示す。自称のとおり、事あるごとにリュートを爪弾いては詠っており、何かを語る時も合いの手代わりにリュートを鳴らし、詩を吟ずるかのように語る。導きの神の眷族としての使命に従い、この世を見聞するため様々な場所を渡り歩いているが、彼が訪れた場所、身を寄せた者達はどういうわけか大きな事件の中心になったり、苦難に際して振り回されているため、それを知る一部からは敬遠されていた(ストラス曰く「あ奴が姿を見せると碌なことにならない」)。
眼によらず遠く離れた場所を見ることが出来る『千里眼』という自在法を使用し、優れた探知・索敵能力(本人曰く感受性)を持つ。
眷属としての使命を果たす機会を得るべく『星黎殿』に向かう途中シュドナイ率いる軍に同行し、索敵の形で協力していた。年が明けてからは『星黎殿』に居付いており、なぜか“祭礼の蛇”坂井悠二とヘカテーやベルペオルらの散策に同席することを許されていた(というより空気のように扱われていた)特殊な存在。
『大命』第二段階でも、“祭礼の蛇”坂井悠二らと共に『久遠の陥穽』へも同行するが、やはりそのことも空気のように扱われ、触れられていない。そして『詣道』の最奥部である『祭殿』にて、“祭礼の蛇”神体の覚醒と復活を見届けた。そして、追いついて来たシャナたちの妨害を撥ね退けて、“祭礼の蛇”神体と共にこの世に帰還した。そして戦場から退転し、北の山中へ歩いていく姿を『星黎殿』直衛軍の兵に目撃されていた。
その後、天山山脈を歩きながら『千里眼』により御崎市決戦の様子を見ていたが、ミカロユス・キュイが事前に仕掛けていた『パラシオスの小路』によって捕捉された。そして現れたフリーダーたちに導きの神の「神託」を依頼されるが、「神託」の特性からその依頼を断り、その理由をフリーダーたちに説明した。しかし、『千里眼』で『両界の嗣子』ユストゥスとなる歪んだ球形のフラスコを発見し、その存在を「知らしむるべし」と判断したシャヘルが霊告を降したため、眷族の悲願たる神意召喚を執り行う栄誉に歓喜しながら『先触れの歌』を吟じ、生贄となって消滅した(XXII巻)。
第三期アニメに登場した。
地獄の宰相にルキフゲ・ロフォカレという同名の悪魔がいる。

[マカベアの兄弟]

新世界『無何有鏡』が創造された後に、“紅世”から新世界へ渡り来た大量の新来の“徒”たちの一部が結成した集団群の中でも、極めて厄介な集団。

新来の“徒”たちの中に、新世界創世の「神話」に対する羨望と嫉妬から導きの神“覚の嘯吟”シャヘルの偽りの神託(偽託)を騙る者たちがおり、蔓延した偽託の中で「人間を殺せ」という偽託を掲げた者たちが結成した。

組織といえるほどのリーダーを持たない不特定多数の集団という点では[革正団]に似ているが、掲げる思想は正反対である。

[マカベアの兄弟]の中で司祭的な立場にある者たちは“王子”と呼ばれており、その意味は「古き“王”たちに先駆ける、新世界にて殺す者」という意味である模様。また、他の構成員を「兄弟」と呼んでいる。

新世界が創造されてから一年後の春までの間に、チェンマイで[マカベアの兄弟]の一派が坂井悠二とオロバスとレライエたちによって殲滅された模様。

外伝『ホープ』でシャナたちが[マカベアの兄弟]の構成員たちに対して行った天罰神の『疑似神託』以降は、[マカベアの兄弟]内部に人間との共存を掲げる小さな一派[真なる神託]が発生し、内部抗争に突入している。

“潜逵の衝鋒(せんきのしょうほう)”ダーイン
声 - 稲田徹(ドラマCD)
“紅世の王”。炎の色は雄黄色
人化した姿は、恰幅の良い小男。本性は、炎を吹き出す岩石の巨人の姿をしていたが、緊急時には岩石の巨人を地上に残したまま本体を地中に潜伏させることが可能。
[マカベアの兄弟]の中で“王子”の称号を名乗る者の一人であり、同じく“王子”であるカルンと行動を共にしていた。
新世界が創造されてから一年後の春、新世界の外界宿の情報操作によって、カルンと共に日本のとある古びた陸上競技場に誘き出され、生贄のふりをして待ち構えていた坂井悠二と遭遇。すぐに現れたシャナと交戦するが歯が立たず、カルンが討滅された後で操っていた岩石の巨人の地中に本体を潜伏させて逃走の機を窺っていたが、シャナの『断罪』によって岩石の巨人ごと本体を焼き尽くされて討滅された。
北欧神話で登場する鹿の一頭にダーインがいる。
“紊鎚毀(びんついき)”カルン
声 - 矢部雅史(ドラマCD)
“紅世の王”。炎の色は茶鼠色
人化した姿は、痩せた長身の男。本性は、十余もの鎖付きの鉄槌を振り回す櫓の姿をしていた。
“王子”の称号を名乗る者の一人であり、同じく“王子”であるダーインと行動を共にしていた。
新世界が創造されてから一年後の春、新世界の外界宿の情報操作によって、ダーインと共に日本のとある古びた陸上競技場に誘き出され、生贄のふりをして待ち構えていた坂井悠二と遭遇。坂井悠二と交戦するが歯が立たず、苦し紛れに放った炎も『アズュール』によって防がれ、坂井悠二に『吸血鬼』を突き刺されて討滅された。
エトルリア神話に登場する男女の悪魔族にカルンがいる。

[宝石の一味]

人間や“徒”の秘蔵する宝を入手する過程に喜びを見出す変わり者で曲者の“王”四人組。

コヨーテを頭目に、フックス、トンサーイ、イナンナの四人で構成され、それぞれ目的や志向の合致で纏まっている。

かつて戦闘用“ミステス”『異形の戦輪使い』のことを書いた本を所有していたが、『零時迷子』を作り出す前のフィレスとヨーハンに奪われた。また、1864年の時点で『極微の歯車』事件、『黄金窯』奪取、[猪嶽党]壊滅など、様々な大きな事件に関わった模様。

現代もまだ存在しているかは不明。

モチーフは『ルパン三世』のルパン一味で、コヨーテがルパン三世、フックスが次元大介、トンサーイが石川五ェ門、イナンナが峰不二子、何度もやり合っている『擒拿の捕り手』オルメスが銭形に当たる。

“瓊樹の万葉(けいじゅのまんよう)”コヨーテ
“紅世の王”。炎の色はナイルブルー
人化した姿は、三十がらみの愛嬌が特徴といえる容貌の男で、ひょろ長く肩幅が大きい。旅塵にまみれたフード付きオーバーを着込んでおり、両手首に金輪状の鍵束を付けているのが特徴である。
[宝石の一味]の頭目で、過去に人間と組んだオルメスと何度か交戦したことがある模様。また、フリアグネとは16世紀後期に接触したことのある古い友人である模様。
1864年に、符丁(掌大の徽章で十余ある)を持つ者を(符丁が発動するまで時間はかかるが)旗の許に召喚する吊り旗型の宝具『金旌符』の符丁の一つを持っていたことで、フリアグネに呼ばれる形で『内乱』の最中の北米大陸に一人で現れて、280年ぶりにフリアグネと再会した。そして、報酬の為にフリアグネたちとその協力者であるビリー・ホーキンと、情報収集がてら二ヶ月ほど行動を共にした。なおフックスとトンサーイは、『内乱』でフレイムヘイズが集結している北米大陸に飛び込むのを恐れて同行せず、イナンナはどこにいったかもわからない模様。そして、ビリーの仇である[パドゥーカ]を待ち伏せる場所で、事前の打ち合わせ通りにマリアンヌと他の“燐子”たちの護衛としてその場を離れた。そして、復讐を果たして死んだビリーの墓の前で、約束の報酬である『テッセラ』を受け取った。どうやら、アメリカ西海岸で欲しがっている奴がいた模様。
XXI巻で、チューリヒ外界宿総本部での不毛な論争の中で、“祭礼の蛇”や“棺の織手”アシズや“探耽求究”ダンタリオンのように世界の構造を弄りバランスを左右する暴挙に出た者として語られている。しかし、実際にはコヨーテ自身がそのような事件を起こしたわけではなく、他者が起こした事件に首を突っ込み、面白おかしく打破することを楽しんでいたのみであり、そのような事件の現場に何度も現れるうちに危険な存在と認識されたに過ぎない。
現代まで生存しているかは不明。
北米大陸に生息する野犬もしくは小型の狼、北米神話の神にコヨーテがいる。
“狙伺の疾霆(そしのしってい)”フックス
“紅世の王”。炎の色はグレイ
容姿や性別は不明。
[宝石の一味]に所属する4人の“王”の1人で、1864年にはトンサーイと同じく『内乱』でフレイムヘイズが集結する北米大陸を恐れ、コヨーテに同行しなかった。
現代まで生存しているかは不明。
狐のドイツ語読みがフックス(Fuchs)である。
“無比の斬決(むひのざんけつ)”トンサーイ
“紅世の王”。炎の色はフォッグ
容姿や性別は不明。
[宝石の一味]「に所属する4人の“王”の1人で、1864年にはフックスと同じく『内乱』でフレイムヘイズが集結する北米大陸を恐れ、コヨーテに同行しなかった。
現代まで生存しているかは不明。
兎のカンボジア語読みがトンサーイまたはトンサイ(Tunsay)で、カンボジア民話ではトリックスターの立ち位置を占めている。
“絶佳の望蜀(ぜっかのぼうしょく)”イナンナ
“紅世の王”。炎の色はマゼンダ
容姿や性別は不明だが、コヨーテは「ちゃん」づけで呼んでいる。
[宝石の一味]に所属する4人の“王”の1人で、XII巻の回想でヨーハンが言っていた『誇大妄想の狂信的な“王”』とはイナンナのことである。富と美術品の集積に執着する拝金主義者で、コヨーテたち3人は度々その口車と手管に乗って、余計な財宝探しや盗みに駆り出されている。
1864年には、コヨーテもその動向を把握していなかった。
現代まで生存しているかは不明。
シュメール神話における金星の女神がイナンナである。

[轍(ラット)]

“探耽求究”ダンタリオンを信奉する“徒”たちが新世界『無何有鏡』で結成した組織。組織に所属する他の構成員たちを『同門』と呼んでいるが、構成員全員が己をダンタリオンの一番弟子を自称しており、統制され命令を伝え合う繋がりはなく、同志といえる程の熱狂を共にする間柄でもない為、処罰に厳しい。

構成員の誰もがダンタリオンの『一番弟子』を自認する為に、総じて傲慢な性格であり、他の『同門』にも非協力的でなおかつ自分を特別視している為、自分たちを一纏めに呼ばれる事すら不快感を覚え、ダンタリオンの教えを歪んで受け止める他の愚か者と一緒にされては敵わないとまで考える程の、特異な組織。

新世界が創造されてから二年後、両界の狭間へと消えたダンタリオンを新世界へ迎え入れる為、“頒叉咬”ケレブスが『大計画』の主導者となって西日本の伴添町で携帯電話や無線を経由させて自在法『ストマキオン』と狭間渡りの術を掛け合わせた『神門』を創り出しダンタリオンを迎え入れようとしたが、[轍]の策謀を感付いたシャナと悠二によって[轍]の構成員たちはことごとく討ち取られ、創り出されようとしていた『神門』も粗悪な模造品に過ぎず悠二の『グランマティカ』で解析・分解され、[轍]は壊滅状態となった。

“頒叉咬(はんさこう)”ケレブス
“紅世の徒”。炎の色は老竹色
人化した姿は作業着姿の貧相な小男で、本性は三つ頭の烏。使用する自在法『ストマキオン』は、本来は一定の法則に従って自在式を組み上げるだけの力で、せいぜい自在法の効率化程度にしか使えない力である。
[轍]の一員。外伝『アンフィシアター』では、伴添町で[轍]の『同門』たちを利用して携帯電話や無線を介して無数の『ストマキオン』の断片を伴添町に分配した上に、狭間渡りの術と我学の結晶『伝令の短剣』から抽出した誘導の自在法を掛け合わせる事で『神門』を創り出そうする計画を発動するが、シャナに発見されてあっけなく三つ頭を斬り飛ばされて討滅された。
『ゴエティア』のソロモン72柱の序列24位の悪魔ナベリウスの異称の一つに、ケレブスというのがある。
“攵申(ひょうしん)”ギータ
“紅世の徒”。炎の色は錆浅葱色
[轍]の一員で、外見は巨大な肉食恐竜に類似した姿。新世界へ渡り来た古参の“徒”で、新世界へ渡り来てから二年後に全世界の『同門』たちが集う『大計画』の策源地である伴添町の間近で、『同門』たちとの合流直前で坂井悠二に追い付かれ、悠二の異名である『廻世の行者』を聞いて驚愕した後に、悠二の挑発に乗って襲い掛かるが実際は単なる戦闘員に過ぎず、数分で討滅された。
スペインのカタルーニャ地方の伝承に、ギータという同名のドラゴンが登場する。

『色盗人(いろぬすびと)』

新世界が創造されてから数年後に、多数の“徒”やフレイムヘイズから固有の炎ごと“存在の力”の一部を奪って、その奪った炎を自分たちに継ぎ足して自身を強化して、新世界各地で暴れていた“紅世の徒”の集団。なお、『色盗人』という呼称は自分たちで名乗ったものではなく、他称である。根拠地は首領である“踉蹌の梢”バロメッツが滞在していたアメリカ合衆国北東の荒野のゴーストタウンで、バロメッツたちは根拠地を『桃源(エデン)』と呼称していた。

短編『クイディティ』で、シャナたちに誘導された構成員たちによって『桃源』を突き止められ、バロメッツを除く構成員たちは討滅された上に、バロメッツもシャナたちの降伏勧告を受け入れたことで壊滅状態になった。

“踉蹌の梢(ろうそうのすえ)”バロメッツ
“紅世の王”。炎の色は極彩色
『色盗人』の首領で、人化した姿は様々な生地を継ぎ接ぎしたコートを纏った青年。この世(旧世界)では、息を潜めて生きる半端な自在師の“紅世の王”でしかなかったが、新世界へ渡り来た後に“存在の力”が無限に満ちているのを利用して改良した特殊な隠蔽と潜伏を特性とする罠の自在法『啖牙の種(マールス)』を指先大の種として新世界各地にばらまいて、条件付けに引っかかったフレイムヘイズや“徒”たちの“存在の力”の一部を炎ごと無理矢理に本体のバロメッツの元に転移させただけでなく、株分けさせた分身を存在に寄生させて強化を行う自在法『隠羽織(ミュステリア)』も使用して『啖牙の種』で奪い取った“存在の力”を吸収せずに保存した状態のまま自他の存在に根付かせることで、“存在の力”の統御限界を継ぎ足す方法を編み出して、安易に力を欲する“徒”たちに『隠羽織』を施術する必要条件である相手の同意を得た上で『隠羽織』を施術して分け与えることで寄生させて、本人たちに気づかせないまま被施術者の“徒”たちを自分の分身にして支配し、支配と勢力拡大を続けていた。
しかし、新世界へ渡り来てから数年後にシャナたちに根拠地『桃源』を発見されて、『隠羽織』で自身を極彩色のキメラに変化させて対抗しようとしたが、シャナの『真紅』で顕現した天罰神の疑似神体の拳の一撃で叩きのめされて身動きもできなくなり、坂井悠二からの降伏勧告を受け入れて自身の名を名乗った。降伏後は、根拠地であったゴーストタウンに呆然と立ち尽くしていた。
その後、豪華客船『ロード・オブ・ザ・シーズ』で『両界の嗣子』ユストゥスの御披露目の式典が行われた際には、坂井悠二の補佐として式典の進行役を務めるなど、“紅世”関係者の間で一定の立場を得た模様(外伝『ローカス』)。
名称は、ヨーロッパ各地で語られている伝説の植物バロメッツに由来している。

出典

  1. ^ a b 灼眼のシャナ|アニメ声優・キャラクター・登場人物・2005秋アニメ最新情報一覧”. アニメイトタイムズ. 2023年4月23日閲覧。
  2. ^ 外伝『ノーマッド』
  3. ^ a b c d 灼眼のシャナII|アニメキャスト・キャラクター・登場人物・2007秋アニメ最新情報一覧”. アニメイトタイムズ. 2023年4月23日閲覧。
  4. ^ 『灼眼のシャナノ全テ 完』より。
  5. ^ ドラマCDでは「角蜥蜴」と表記されている。



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「紅世の徒」の関連用語

紅世の徒のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



紅世の徒のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの紅世の徒 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS