1995年、国は、一部の都道府県が運営していた精神科救急ベッド確保事業のうち、一定の条件を満たす事業に国庫補助を行うこととしました。これが、精神科救急体制整備事業です。一定の条件とは、都道府県をいくつかの圏域に分けて、各圏域に1か所は夜間・休日の精神科救急病院を待機させること(精神科救急病院は知事があらかじめ指定)、当番病院は精神保健指定医と入院ベッドを確保すること、この事業の円滑な運用のために、関係者による連絡調整委員会を設置することなどです。後に、電話相談窓口である精神科救急情報センターを設置することや、患者の移送制度を活用すること、外来診療のみの初期救急施設を設置することなどが追加されました。この事業は、2002年までに全都道府県に普及したことになっており、2007年度には国と都道府県から年間総額34億円(人口100万人あたり約2800万円)の公費が補助され、救急スタッフとベッドの確保料に充てられています。しかし、同じ名前のついた事業にもかかわらず、現実には地域差が大きく、どの地区でどの時間帯に救急患者になるかによって、受けられる医療や行政サービスの内容が大きく異なります。日本精神科救急学会は、「精神科救急医療ガイドライン」を出版するなど、精神科救急体制整備事業の均質化と水準向上を図るための提言をしています。