第五福竜丸事件とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 社会 > 社会一般 > 事件 > 第五福竜丸事件の意味・解説 

第五福竜丸

(第五福竜丸事件 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/10 05:29 UTC 版)

第五福竜丸第五福龍丸、だいごふくりゅうまる)は、米国ソ連核兵器開発が急進展した冷戦時代に、アメリカ合衆国ビキニ環礁で行ったテラー・ウラム型水素爆弾実験により、多量の放射性降下物(死の灰)を浴びた、乗組員23名の遠洋マグロ漁船。無線長久保山愛吉(くぼやま あいきち、1914年6月21日生)が、被爆した1954年3月1日から約半年後の9月23日に死亡した。政府調査によれば同時に被曝した船が1422隻あった。


注釈

  1. ^ 原水爆に限らず爆弾などの爆発に直接晒されることを「被爆」、放射線に曝(さら)されることを「被曝」という。東京都立第五福竜丸展示館での表記は「被爆」のため、本項目ではこの記載に統一する。
  2. ^ 絵本『ここが家だ ベン・シャーンの第五福竜丸』の記述による。背景には、当時の日本漁船乗組員の中には久保山を始めとして太平洋戦争徴用され、戦場での体験が豊富な者が多かったため、米軍側が水爆実験の詳細を隠すために第五福竜丸を拿捕撃沈する可能性が高いと判断したものとされる。乗組員らが監修した、映画『第五福竜丸』でも、無電を使わない理由として言及するシーンがある。
  3. ^ 放射能の単位にはベクレル毎リットル(Bq/ℓ)、ベクレル毎キログラム(Bq/kg)、放射線が人体に及ぼす影響を含めた線量については、ミリシーベルト(mSv)、マイクロシーベルト(μSv)、放射線の吸収線量(被曝量)についてはマイクログレイ(μGy)、ナノグレイ(nGy)がよく使われる[7]
  4. ^ 放射性物質除染スクリーニングレベルの基準は、福島原発事故以降は原子力安全委員会の助言に基づき、2011年9月16日以来「1万3000カウント」(cpm、カウント毎分)となっている(2022年現在)[9]経口摂取の基準から見た場合、8万6000カウントは現在の飲料水の基準値(10bq/kg)の1800倍の1万8000ベクレル毎キログラムにあたり、雨水を飲用に使用していた沖縄では1958年(昭和33年)に17万カウントの放射性雨が降った[10]。10万カウント は、約1ミリシーベルト毎時(mSv/h)にあたる[11][12]
  5. ^ 「第五福竜丸事件の約半年後に亡くなった乗組員の方については、当時の医療データが後年再度綿密に分析された。その結果、死の原因は輸血の結果感染したC型肝炎であると断定的に公表された。この結論は日米の医療関係社の間では今や共有されている。1954年当時、C型肝炎はまだ発見されていなかったのである。」[16]
  6. ^ 各種法定予防ワクチンの集団接種で使い回しされた注射針が原因でB型肝炎ウイルス感染が引き起こされ集団訴訟になったのは周知の事実である。
  7. ^ 1950年代当時、輸血用血液の多くは売血によって集められており、この事件の10年後である1964年に駐日アメリカ大使エドウィン・O・ライシャワーが襲撃を受け、日本国内で輸血を受けたところ肝炎に感染、これをきっかけに売血廃止に向かうまで輸血のリスクは高かった。
  8. ^ 日本で初めての原子炉が稼働したのは、1957年(昭和32年)、東海村日本原子力研究所東海研究所においてである。
  9. ^ 調査には、ローリッツェン検電器英語版電離箱式サーベイメータ、初期のガイガー=ミュラー計数管が使用された。また海鮮市場において陸揚げされたすべての水産物についても計測が行われた。ビキニ周辺海域の調査においては、NaI(T1)シンチレータシングルチャネル波高分析器によるスペクトロメータが使用された[21]。当時はまだβ線スペクトロメータは実用化されていなかった[22]
  10. ^ 第二次世界大戦中は日本の原子爆弾開発に参加し、戦後は日本の原子力政策に関わった人物である[24]
  11. ^ クイーンエリザベスの品種登録は1954年で第五福竜丸被爆事件と同年であるため、久保山愛吉が生前にこのバラそのものの株を育てていたとは考えにくいが、バラ栽培を趣味としていた愛吉の意志を継いで、すずが後年に植えたものと考えられる。
  12. ^ 日本共産党本部ビル屋上庭園、神奈川県横浜市青葉区寺家町ののむぎ地域教育センター平和のバラ園、宮城県石巻市雄勝町の雄勝ローズファクトリーガーデンにて4種全てが植樹されている。「アンネのバラ」との2種植樹としては、京都府京都市北区立命館大学国際平和ミュージアム大阪府大阪市都島区東野田町生活協同組合おおさかパルコープ本部ビル、東京都渋谷区広尾の私立東京女学館中学校・高等学校が挙げられる。

出典

  1. ^ a b c d e f 東京都立第五福竜丸展示館 展示の趣旨
  2. ^ IsotopeNews, 1984年3月、筧弘毅。
  3. ^ a b c 俊鶻丸』 - コトバンク
  4. ^ #事実の発掘
  5. ^ 第五福竜丸の航跡をたどる『廃船』を観る会 6月10日 - 東京都立第五福竜丸展示館
  6. ^ a b c d IsotopeNews, 1984年3月、加藤地三。
  7. ^ 日本原子力研究開発機構「放射能と放射線の単位」
  8. ^ 第五福竜丸 (09-03-02-16) - ATOMICA -
  9. ^ 国立保健医療科学院「除染の基準はどう考えるのがよいですか?」 、"40ベクレル毎平方センチメートル(Bq/cm2)は約13キロカウント(kcpm)"。
  10. ^ 伊東英朗「実は「992隻」の衝撃」講談社ホームページ。2015年1月5日。
  11. ^ 福島県 「放射線の単位について」 (カウントとベクレル毎平方センチとの換算方法)。
  12. ^ 日本原子力研究開発機構「マイクロシーベルトと他単位」英語版
  13. ^ Strauss, Lewis (1954), “The H-Bomb and World Opinion: Chairman Strauss's statement on Pacific Tests”, Bulletin of the Atomic Scientists 10 (5): 163-167 
  14. ^ Hewlett, Richard G.; Holl, Jack M. (1989), Atoms for Peace and War: The Eisenhower Administration and the Atomic Energy Commission, University of California Press, p. 177, ISBN 978-0520060180 
  15. ^ 毎日新聞2005年7月23日「第五福竜丸:『発症原因は放射能ではない』米公文書で判明」
  16. ^ 澤田哲生。iRONNA、2016年1月22日閲覧。
  17. ^ 高田純 『福島 嘘と真実』 医療科学社 78 - 79頁
  18. ^ 「原子力発電を考える(第17回)電力事業の歴史を追う――第五福竜丸事件と反核運動の成立」、松浦晋也、日経PC Online、2013年3月13日閲覧
  19. ^ ビキニ水爆実験:元漁船員原告で国賠訴訟へ 市民団体方針”. 毎日新聞 (2015年2月7日). 2015年2月22日閲覧。
  20. ^ 金とく 証言ビキニ事件
  21. ^ IsotopeNews, 1984年3月岡野真治
  22. ^ 橋爪朗(1966年)『Spectrometrie {beta} par detecteur a jonction. Application a l'etude des spectres du {sup 14}C et du {sup 35}S』。Commissariat a l'Energie Atomique, Saclay (France). Centre d'Etudes Nucleaires.(フランス語)
  23. ^ IsotopeNews, 1984年3月田島英三
  24. ^ 「核時代を生きた科学者 西脇安」展 開催報告 | 東工大ニュース | 東京工業大学
  25. ^ 第五福竜丸「廃船せず保存を」声欄の投書に問い合わせしきり『朝日新聞』1968年(昭和43年)3月12日朝刊 12版 14面
  26. ^ “「遺産」になった第五福竜丸 朽ちる木材、保存が課題:朝日新聞デジタル”. (2020年11月9日). https://www.asahi.com/articles/ASNC93C21NC5UTIL01R.html 
  27. ^ 赤十字国際ニュース。2019年。
  28. ^ 大石又七, 1991年
  29. ^ 水爆実験 60年目の真実〜ヒロシマが迫る"埋もれた被ばく"〜 - NHKスペシャル(2014年8月6日22:00放送)
  30. ^ ビキニ被ばく文書「あった」”. 中日新聞朝刊2面 (2014年9月20日). 2015年2月22日閲覧。
  31. ^ ビキニ核実験 被災は1423隻 文書に記載 紙議員に水産庁初めて提出”. しんぶん赤旗 (2015年2月22日). 2015年2月22日閲覧。
  32. ^ a b 久保山愛吉さんが愛したバラ/願い込め「ひろめる会」”. www.jcp.or.jp. 2021年5月27日閲覧。
  33. ^ 静岡)第五福竜丸、バラで伝える:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2021年5月27日閲覧。
  34. ^ “ビキニ被災事件終わっていない 愛吉・すずのバラ広げる”. しんぶん赤旗. (2020年6月11日). 非専門家向けの内容要旨 
  35. ^ a b ビキニ被ばく乗組員・愛吉さんのバラ脈々:中日新聞しずおかWeb”. 中日新聞Web. 2021年5月27日閲覧。
  36. ^ 島田人 Shimadajin File #102|マイ広報紙”. マイ広報紙. 2021年5月27日閲覧。
  37. ^ “愛吉・すずのバラを手渡しながら”. 原水協活動 FAX News. 原水爆禁止日本協議会. (2009年3月9日). http://www.antiatom.org/GSKY/jp/NDPM/Mov/09_News/090309_FAXNews_No19.pdf 
  38. ^ ぱるタイム第57号”. 生活協同組合おおさかパルコープ. 2021年5月27日閲覧。
  39. ^ 平和への願い、バラに込め/東京・板橋の中学で植樹式”. 四国新聞社. 2021年5月27日閲覧。
  40. ^ アンネのバラが咲いています! | 東京女学館 中学校・高等学校”. tjk.jp. 2021年5月27日閲覧。
  41. ^ 愛吉・すずのバラ”. 2021年5月27日閲覧。
  42. ^ 番組名 ドキュメンタリー「廃船」”. NHKアーカイブス・NHKクロニクル. 日本放送協会. 2023年12月6日閲覧。
  43. ^ 是枝裕和、東野真. “制作者研究─〈テレビ・ドキュメンタリーを創った人々〉【第 2 回】 工藤敏樹(NHK)〜語らない「作家」の語りを読み解く〜” (PDF). 日本放送協会. 2023年12月6日閲覧。
  44. ^ その時 歴史が動いた 3000万の署名 大国を揺るがす〜第五福竜丸が伝えた核の恐怖〜”. NHKティーチャーズ・ライブラリー. 日本放送協会. 2023年12月6日閲覧。
  45. ^ NNNドキュメント’15”. 日本テレビ放送網. 2023年12月6日閲覧。
  46. ^ 劇場映画 「X年後」公式サイト”. 南海放送. 2023年12月6日閲覧。
  47. ^ 証言 ビキニ事件 〜60年 語られなかった思い〜”. 日本放送協会. 2014年3月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月6日閲覧。
  48. ^ NHKスペシャル 水爆実験 60年目の真実〜ヒロシマが迫る“埋もれた被ばく”〜”. NHKアーカイブス. 日本放送協会. 2023年12月6日閲覧。
  49. ^ 『この人』 第五福竜丸事件を題材に記録映画を製作した米国人映画監督 キース・レイミンクさん”. ヒロシマ平和メディアセンター. 中国新聞社 (2019年3月1日). 2006年12月18日閲覧。
  50. ^ Day of the Western Sunrise - IMDb(英語)
  51. ^ ラウドヒル計画”. 静岡市民文化会館. 2023年12月6日閲覧。
  52. ^ チラシ(カラー用)2” (PDF). 静岡市民文化会館. 2023年12月6日閲覧。






第五福竜丸事件と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「第五福竜丸事件」の関連用語

第五福竜丸事件のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



第五福竜丸事件のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの第五福竜丸 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS