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種子

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2012/01/05 10:51 UTC 版)

(種子散布 から転送)

オオトウワタの種子

種子 (しゅし) とは種子植物有性生殖によって形成される散布体である。一般には、単にたね)と呼ばれることが多い。

種子は親植物の組織起源の種皮という皮に包まれ、その中には受精卵から発育した幼い植物体、すなわちが入っている。種子はめしべにある胚珠から発達する。被子植物の場合、種子は子房につつまれていて、これがのちに果実となる。裸子植物の場合は、めしべの表面に乗っている。

農業繁殖に用いられるものは、厳密には種子でなくとも、もみ芋・などと呼ばれる。

目次

種子の構造

たとえば、はさまざまなマメ科植物の種子である。これを例に説明する。

  • 豆は、普通、細長いの中にいくつか並んで収まっている(アメリカデイゴの豆果)。この鞘は、めしべの基部、子房がふくらんだものである。子房は胚珠を中に収め、胚珠が種子に発達してもそれを包んでいる。子房に由来する構造を果実という。
  • 個々の豆の表面は、薄い皮につつまれている。この皮を種皮(しゅひ)と呼ぶ。種皮は珠皮に由来する。
  • 種皮をはがすと、中には大きく2つに割れる部分がある。半球形の2つの部分は、小さな出っ張りの部分でつながり、その間には小さな折り重なったような構造がみられる。半球形の部分は子葉(しよう)といい、発芽すると双葉(ふたば)として地上に姿を現す(種子内にとどまるものもある)。丸くふくらんでいるのは、栄養が蓄えられているからである。
  • 子葉をつなぐ出っ張りは、胚軸(はいじく)と言って、芽生えた苗の茎になる部分である。胚軸に続く部分(子葉と反対側)が根となる幼根である。間に挟まった折り重なったものは、双葉の次の本葉が既にできているのが見えているものである。
双子葉植物の種子の断面模式図。a:種皮 - b:胚乳 - c:子葉 - d:胚軸

このように、種子の中には、既にこれから発芽する苗が含まれている。

カキの種子では、中の様子がかなり異なっている。種子を半分に切ると、幼い植物体は種子に比べてずっと小さく、種皮の中には半透明の固いものが詰まっている。これは胚乳といって、胚嚢(はいのう)の中央細胞(2つの極核を含む)と花粉管内に生じた精細胞の1つが受精したもの(核としては2個の極核と1個の精核、合計3つの受精する)に由来する。このような種子では、胚乳に栄養が蓄えられている。イネムギでは幼植物は種子の末端部分にあり、種子本体の大部分を胚乳が占める。

基本的に被子植物の種子は、カキの例のように、発生の出発点において極核を含む中央細胞と精細胞が受精した3倍体核に由来する胚乳を生じるが、マメ科など一部の植物では二次的に胚乳が退化し、かわりに子葉などに発芽のための栄養分を蓄える。ほかに、ラン科エビネの種子)など若干の植物で、発芽のための蓄えを持たず、菌類との共生に依存するなどして発芽する例がある。裸子植物の胚乳は1倍体の雌性配偶体自体に由来し、シダ植物前葉体相同の器官で、被子植物の胚乳とは異質な面がある。

多くの種子は、幼植物が発芽するための栄養分を子葉か胚乳に蓄えているため、動物から見れば魅力的な食料である。人間の食物の中にも種子はさまざまに用いられ、特にマメ科やイネ科のものは、しばしば主食の位置を占める。主食に使われるイネ科の種子を穀物と呼ぶ。蓄えられる栄養分は、デンプン油脂の形である場合が多い。

種子の散布

植物には基本的に移動能力がない。ある場所で種子が発芽をすれば、そこに一生とどまるのが基本である。したがって、種子が好適な場所に到達する事ができなければならない。現に親植物が生息している以上、親の足元は好適地であるから、親が自分の足元に種子を落とすのは一つの方法だが、それでは親子あるいは子供同士で無意味な競争をせねばならない。また分布拡大の意味からも、種子はある程度以上、遠くに運ばれる必要がある。

実際には、種子にも移動能力はないので、種子の散布は何か外の力に頼らざるを得ない。そのためそれぞれの植物は、何かに頼って種子を散布するための方法を発達させてきた。

風による散布 
物理的な力に頼るものとしては、よく見られるものの一つである。裸子植物クロマツアカマツでは、種子の一端が薄い膜状に伸びており、空中にでると風を受けて、回転しながら飛んでゆく。同じような構造を発達させたものに、カエデ科のもの(モミジの仲間)やアオギリなどの果実がある。同じ風を利用するにも、キク科タンポポセイヨウタンポポの痩果)などは、果実の一端から多数の毛を生じて、これが風を捉える方法を取っている。同様なものは、ガガイモ科ガガイモの種子、イネ科ススキの果実など、多くのものに見られる。
水による散布 
水はものを運ぶ力が強く、特別な適応がなくても勝手に運んでくれるので、多くの種がその恩恵をこうむっていると思われる。特に、水による運搬への適応を示しているので有名なものにラッカセイ(落花生・ピーナッツ)がある。豆の鞘が空気を含み、水に運ばれやすくなっている。スゲの仲間の果実は後述のアリによる種子散布に適応したものと水による種子散布に適応したものの2つに大別される。
海流による散布 
海岸性のごく限られた植物に見られる。陸上植物には海水が有害なので、まず塩分に耐えられる事が前提になる。ハマユウマングローブの胎生種子や、ゴバンノアシなど、熱帯の海岸性植物には、大きくふくらみ海水に浮かぶ果実や種子をつけるものがあり、これらは海流による散布に適応したものである。ココヤシの果実は遠い海岸に流れつくことで有名である。
動物による散布 
これにはいくつかの型がある。
  • 餌となる事による散布をめざすものは、種子や果実が動物の食料として選ばれ、この時に散布の手助けをしてもらうことを期待するものである。
    • いわゆる果物(くだもの)を多く含む漿果の果肉はそのために発達したものである。哺乳類鳥類などに果物を食わせておき、同時に種子を丸呑みさせ、糞と一緒に排出され、そこで発芽する訳である。この場合、果肉は大きく柔らかく、糖分や脂肪を多く含む。それに対して種子は小さかったり、大きくて硬く、壊されにくい構造になる。ドリアンレイシイチイのように果皮起源の果肉ではなく仮種皮を果肉として発達させるものも多い。
    • ドングリの場合、食料になるのはデンプンを多量に蓄積した種子そのもの(コナラの堅果)である。種子散布に寄与する動物はリスのように種子を集めて貯蔵する習性がある動物である。餌になるとその時点で種子としての役割を失うが、それでも絶滅することがないのは、壊されるのが子葉の一部に過ぎなければ充分発芽に役にたつという側面があるとともに、貯蔵種子の一部を忘れてしまったり、食べ余したものも種子散布に役立っていると考えられている。
はじけたツリフネソウの仲間の果実
  • 動物の体表面にくっつき、運んで貰うための種子を発達させたものもある。果実や種子の一部に粘着物質を出したり、棘や毛で絡み付いたりするようになっているものである。人間の衣服にもよくくっつき、結実期(日本では主に秋)の山野にでかければ、必ず何種類かの種子に絡み付かれ、後で取るのに苦労する、いわゆる「ひっつき虫イガオナモミの「いが」がこれにあたる。
機械的に種子を飛ばす仕組みを発達させたもの 
有名なのはホウセンカで、成熟した果実は何かの刺激があると割れて、皮が大きくゆがみ、中の種子を跳ね飛ばすようになっている。





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