硬性憲法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/18 03:53 UTC 版)
硬性憲法(こうせいけんぽう)は、憲法に関する論考において改正の困難さで各国の(広義の)憲法を二つに分類した場合に、改正が困難な側に分類される憲法のこと。それ以外の憲法、すなわち改正が容易な側に分類されるものは軟性憲法(なんせいけんぽう)と呼ばれる。分類の基準は論考毎に異なる。
注釈
- ^ 21世紀初頭現在の日本語の「憲法」は、ほぼこれと同義である[6]。
- ^ ブライスは法学者であるほか歴史学者・政治家ともされている。
- ^ 英語のConstitutionという単語も、制定された憲法を指す場合と、制度を指す場合の二つの意味がある。
- ^ ブライスの言うフレキシブル・コンスティチューションは、日本語の「軟性憲法」の意味・語感から遠いため、カタカナ書きのままとした。
- ^ これらの中で21世紀まで続いたのはイギリスのみと言える。
- ^ ブライスは単なる学者ではなくイギリスの政治家だった人物であり、イギリスの制度を称賛する論述には注意が必要かもしれない。
- ^ この説明でブライスはEntrenchedという単語を使っている。比較的古いエントレンチの用例と言える。
- ^ おそらくブライスの言う世論は、19世紀末という時期を考えると、全国民の意見を集めるものではないだろう。[独自研究?]
- ^ ブライスの予測は、形を変え、21世紀初頭現在のEUとイギリスとの関係に見ることができる。[独自研究?]
- ^ ダイシーもイギリスの学者であり、ダイシーの論述を見る場合も、その点に注意が必要かもしれない。[独自研究?]
- ^ 原文:A "flexible" constitution is one under which every law of every description can legally be changed with the same case and in the same manner by one and the same body.
- ^ 原文:A "rigid" constitution is one under which certain laws generally known as constitutional or fundamental laws cannot be changed in the same manner as ordinary laws.
- ^ この文では、ダイシーが「リジッド・コンスティチューション」と呼んだのは、明らかに制度のことであり、その下で法典である憲法あるいは基本法が設けられるとされている。[独自研究?]
- ^ 原文:Now this essential rigidity of federal institutions is almost certain to impress on the minds of citizens the idea that any provision included in the constitution is immutable and, so to speak, sacred.
- ^ 原文:To this one must add that a federal constitution always lays down general principles which, from being placed in the constitution, gradually come to command a superstitious reverence, and thus are in fact, though not in theory, protected from change or criticism.
- ^ 人々の保守化については、ブライスの論文でも触れられている。[要出典]
- ^ 原文: The constitutional monarchy of Louis Philippe, in outward appearance at least, was modelled on the constitutional monarchy of England. In the Charter not a word could be found which expressly limits the legislative authority possessed by the Crown and the two Chambers, and to an Englishman it would seem certainly arguable that under the Orleans dynasty the Parliament was possessed of sovereignty.
出典
- ^ 真次宏典 2014, p. 5.
- ^ a b 宮沢俊義 1938, p. 6-7.
- ^ a b c 高見勝利 2005, p. 9-11.
- ^ a b c 浅井清 1929, p. 216.
- ^ a b c アレッサンドロ・パーチェ 2005.
- ^ 「明鏡国語辞典」大修館書店、など
- ^ Bryce 1901, p. 127-128.
- ^ Bryce 1901, p. 132.
- ^ Bryce 1901, p. 131.
- ^ Bryce 1901, p. 139-143.
- ^ Bryce 1901, p. 149.
- ^ Bryce 1901, p. 152-155.
- ^ Bryce 1901, p. 160.
- ^ Bryce 1901, p. 151.
- ^ Bryce 1901, p. 171-174.
- ^ Bryce 1901, p. 178-181.
- ^ Bryce 1901, p. 184-185.
- ^ Bryce 1901, p. 186-187.
- ^ Bryce 1901, p. 191.
- ^ Bryce 1901, p. 196.
- ^ Bryce 1901, p. 197.
- ^ アレッサンドロ・パーチェ 2005, p. 70.
- ^ Bryce 1901, p. 198-204.
- ^ Bryce 1901, p. 205-210.
- ^ Bryce 1901, p. 209-210.
- ^ Bryce 1901, p. 212.
- ^ 井口文男訳 アレッサンドロ パーチェ 『憲法の硬性と軟性』友信堂、2003年169-181頁
- ^ a b c 石澤淳好 2014.
- ^ Dicey 1915, p. 65.
- ^ “Category The Constitution”. 2015年6月28日閲覧。
- ^ "Wim J. M. Voermans", "The consititutional revision process in the Netherlands", Engineering Constitutional Change : A Comparative Perspective on Europe, Canada and the USA (Routledge Research in Constitutional Law), Xenophon Contiades (ed.), September 9th 2012, p. 269
- ^ 大林啓吾「時をかける憲法」『帝京法学』28(1)、帝京大学法学会、2012年、129-130頁
- ^ Henry Bournes Higgins, "The Rigid Constitution", The Academy of Political Science, Vol. 20, No. 2, Jun., 1905, p. 203
- ^ 石澤淳好 2011.
- ^ 芦部信喜 1992, p. 5.
- ^ 美濃部達吉 1926, p. 80.
- ^ 美濃部達吉 1948, p. 72-73.
- ^ 樋口陽一 1992, p. 74-76.
- ^ 真次宏典 2014, p. 5-6.
硬性憲法(リジッド・コンスティチューション)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 22:10 UTC 版)
「硬性憲法」の記事における「硬性憲法(リジッド・コンスティチューション)」の解説
ブライスによれば、硬性憲法は歴史的に新しいものであり、19世紀からは多くの国で採用されてきた。始まりは17世紀北米の植民地である。硬性憲法が生まれるのは、政治的権利を持つ市民がそれを守ろうとする動機で立法するとき、または連邦が作られるときがある。他には、 君主により、君主の都合のため、あるいは権力の乱用を防ぐために 解放された国で 新しい集団 連合をよりタイトな連邦にするとき(United States of North America等) がある。 硬性憲法の改正には、主に次の四種類の方法がある。 議会で、特殊な方法で 改正のための特殊な会議体により 各州の代表で決める 直接投票 多いのは1に4をプラスした方式である。 硬性憲法の安定性は、相対的な改正の難しさによる。硬性憲法を、それ以外と明確に区別できる特徴は、通常法に対する優越である。すなわち変更不可性である。また硬性憲法は定義が明確であり、安定している。硬性憲法は、それに対する違反を見つけやすい。 硬性憲法は普通の市民が理解できるものであり、政府に関することが書かれている。しかし、硬性憲法に全てが予期され網羅されることは無理であり、省略または曖昧さがあるものである。それらは次の三種類に大別できる。。 立法府が行政、司法、州の領域を侵すか? →これに対しては、改正が必要となる。 立法府の権限を越えることか? →これに対しては、立法するか、行政に任せるか 意味が疑わしい場合 →これに対しては、解釈、立法で対応される。それらは、実際のところ、硬い幹に生じたフレキシブルな、「やどりぎ」である。 ブライスによれば、硬性憲法は鉄橋のように堅固ではあるが、風雨を受け限界を超えてしまうと壊れて、革命・内戦となる可能性がある。風雨に相当する状況の変化への対策として、改正が必要になるものである。しかし、硬性憲法の場合、必要とされる多数を得るのは難しい。改正に対する反対派は、手の込んだ手続きという城壁の向こうで守りを固め、コミュニティの安全に必要な変更を避けることに成功するだろう。結果として、安全のための規定が危険なものとなる。 硬性憲法では、緊急のため拡大解釈(Extensive Interpretation)が必要であり、それは実際、言い抜けに等しいようなものとなる。それは衆望には軽い衝撃を与えるだろう。そのような拡大解釈が必要であるため、解釈権が誰にゆだねられるかが重要である。解釈はイギリス、アメリカでは法廷にゆだねられ、ローマ系では立法府にゆだねられる。スイスの最高裁は(19世紀に)純粋に政治的な事項(purely political cases)であるとして判決を拒否したことがある。 歴史の経験が示すところによれば、世論(public opinion)が強く立法の先導する方向を好むならば、法廷もそれを受けて、立法の結果を有効とする。このような状況は、新しい行政課題において発生しやすい。そこに危険はあるが、世論と確立した伝統だけが危険を防ぐ。コンスティチューションが硬性憲法であるならば、フレキシビリティは裁判官の心(the minds of the Judges)から、補充しなければならない。
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